複雑・ファジー小説
- Re: 美貌にストーカーはつきもの ( No.4 )
- 日時: 2022/05/22 22:31
- 名前: かまめしきり (ID: p/lGLuZQ)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
四話 利益に別れはつきもの
なんやかんやの場面をお送りいたします。
◆ ◆ ◆
「で、どうするんですか。」
彼女はさっきと変わらない平坦な口調で言った。
表情が変わらないからか、少し怖い。
「何が。」
お酒を少し口に入れる。実に上手い...気がする。酒は缶の安いやつ。
「私を誘拐してする事ですよ。」
「ブフッェ」
思わず一気に飲んだ酒を床に吹き出す。決して驚いたわけではない。酒が苦い。安いからかな。そうに決まっている。
彼女にかかっていないのを確認してティッシュを取りに行く。
「どうしたんです。年下に大人ぶって酒を飲んだみたいな表情してますが?」
「分かってんならそう言え!」
実に恥ずかしい醜態を晒してしまった。こんなに恥ずかしい思いをしたのは幼稚園の時から生理が始まっているのが同級生に知られた時以来だ。
?何を言っているのだろうか。私は男だ。
「顔が赤くなっていますよ?発情してるんですか?」
「違うわ!」
「では何故?」
「酒だお!」
危うく噛む所だった。許容範囲で良かったよ。もし噛んでた事が知られたら醜態に醜態を重ねたミルクレープが出来上がってしまう。
「なるほど、動揺した上に酒が不味くて恥ずかしく赤面した所で動揺して噛んでしまったと。」
祝ミルクレープ完成!
「な、何を言っているのかね?神宮君。」
ポコッ
クソガキが頭を殴った。結構強めに。
「何だよ!」
私はあまりの痛みに頭を押さえながら言った。
「私は女なので「神宮ちゃん」です。」
「そこは良いだろ!」
何故、今日はこんなに年下に叩かれるのか分からない。さ、さっきのはそ、そういうつもりじゃなかったんだけどなー(棒)
それにしても助けた理由か...無いんだよなー。
「まーこの会話も飽きたんでそろそろ抜けます。」
「ここはネトゲか!辛辣なタイプの!」
負けが決まった瞬間の奴もよく言うよな。
「本当に飽きたんで、さっきの質問の答えをどうぞ。」
彼女は私のツッコミがお気に召さないようだ。え、メンタル死ぬよ。
神様もメンタルまでは変えられなかったらしい。
「いや別に深い意味はないよ。そこにお前がいたからだぜ!」
決まった。
「なるほど、私をストーカーしてたんですか。」
決まらなかった。
「違うからね。無理やりタイトル回収しようとするなよ。」
「じゃーなんであんな所にいたんですか?」
犯人を追い詰める刑事みたいな口調だ。抑揚のない声と真顔が合わさって、かなり怖い。
私は誰かさんが吹いた酒を拭きながら答えた。
「本当に深い意味なんてないよ。本当にたまたま...まー良かったじゃん、死ななかっただけ。」
「それが私に言うことなんですか?」
あ、そっか。コイツ死のうとしてたんだ。コイツが自殺志願者だと言うのをすっかり忘れていた。こいつがあまりにも普通そうだったから。普通に喋ってくれたから。
『死にそうな奴に見えなかったから、つい』
心にふと浮かんだ言葉をかき消した。
「これは言い訳か。」
「どうしました?」
平坦に喋る彼女。俺が何かを言おうとしているのを察したらしい。
「お、お前が初めての友達...みたいな。俺と喋ってくれる人なんてなかなかいなかったからさ。ちょっと嬉しかったんだ。だから少し調子に乗った。ごめん。失礼なことを聞いて。」
今必要なのは謝罪だ。死ぬ。それはどんな事よりも重く、どんな事よりも儚い。生あるものに必要なのは、生きている者に対しての最大限の配慮だ。
「良いんですよ。こちらこそ、貴方と会えて少し得しました。昔を思い出しましたし、もうちょっとだけ 現世にいても良いかなーとか思えましたしね。」
ちょっとだけ敬語を崩し、俺の謝罪を受け入れてくれた。そしてその言葉を言った時、彼女の顔は少し笑った。少しだけ心がキューと締め付ける何かが起こった。これはきっと友情の証だろう。
「あと一人称「俺」でしたっけ?」
いつも通りの真顔になった彼女が、少し不思議そうな顔をしてるようにも見えた。
「あーーーーーーーーー!そうだ風呂に入ろう!お風呂だよ。お・風・呂。」
私は直様、話を切り替える。もし男と言うのがバレたら友情が大破産するかもしれない。
「なんか隠してませんか?」
「イ、イヤ、ナニモカクシテマセンケド。」
やっぱり不思議そうな顔をしている彼女。いくら彼女でもこれは読めなかったらしい。
あとがき
これぐらいの方が飽きずに読めそう。と私は悟った。
誤字報告などする所も作りました。
プロフィールから飛んで、そこから誤字報告のとこにとんでいただけると出来ます。