複雑・ファジー小説

Re: 連翹(れんぎょう) ( No.2 )
日時: 2022/11/12 00:55
名前: @(アット) (ID: p/lGLuZQ)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi


弐話 金盞花とルピナス 



 私の小説に挿絵はついていなかった。イラストレーターの人に連絡を取ろうと思ったが、根暗で初対面の者と会話がまともにできない私にとっては、自費出版を行うより難しいことだった。(簡単に言えばマンツーマンが無理ってこと)

 そもそも私は狭く深く付き合うタイプだったので、あまり色々な人とコミュニケーションをとることを好まなかった。

 笑えないことに、そんな狭く深く付き合ったはずの者達が数年後には一人もいなくなってしまったのだが...

 そんな私の小説、もとい苦い思い出「スノードロップ´s」

 そんな中に登場する「卯月 京介」

 「キリッとしていて、細身、長身で瞳孔の色は赤く顔立ちはイケメン」で私のタイプNo,1

 そして私の心残りで最後の希望。

 だからこそ分かる。目の前にいるのは「卯月 京介」その人だと。

 だからこそ分かる。彼の行動が...

 彼は右手を前に左手を背に、腰を低くして左足を少し前へ、そして空中を駆け、私に迫ってきた。

 彼の動きは見えなかった。彼がその構えをとった途端、私の目の前にいた。

 それこそ彼の顔で視界が覆われるくらいの距離に。

 ``来る``

 彼の右足が私の頭の上を蹴った。横薙ぎ。

 やはりだ。やっぱりだ。彼は小説と同じ動きをする。

 次に来るのは「上下」で振り下ろしからの蹴り上げのキック。「右左右左」の拳だ。

 なんかこうするとコ◯ミコマンドみたいだ。

 でも次の攻撃は避けられない。キックは避けられるが、パンチで食らう。 

 その主人公は彼の攻撃を受け、血が吹き出している。

 これが小説通りの攻撃を食らったなら私は死ぬ。

 でも私は避けきれる。じゃぁなぜ主人公が食らったのか。

 それは主人公が自分の力を理解していないから。
 
 「ホープ発動、時間加速」

 彼の振り上げた足が地面に届く前に、私は彼の後ろにいた。

 これが水無月の「ホープ」、時間操作。

 ふぅ、これで私が「水無月に転生」で確定。

 ふと上を見る。満月だ。

 彼と彼女が戦っていた時も満月だった。

 彼女の吹き出した血が満月に晒され、光沢を帯びていた...だったかな

 私が身構え、視線を彼に移すと...彼は「攻撃」していた。

 私にではない。そこにいないはずの...というか見えない水無月と。

 彼は戦っていた。

 その彼を見て驚いた反面、少しガッカリした。

 もう目の前にいるのは「卯月」ではないのだな。そう思った。

 私の考えから離れ私を魅せてくれた、あの特別だった彼は。

 私は見えない水無月にエゴを放っている彼の頭をぶち抜いた。

 「 時間弾(タイム・ショット)」

 倒れていく彼を見て、私は決意した。

 「ホープ発動。時間圧縮。」

 時を重ねる。今と「スノードロップ´s」が始まる少し前の時を。

 そして広げる私だけがその``流れ``に乗り、過去に戻っていく。

 もちろん自分が若返る訳ではなく、あくまでも自分が移動をするだけだ。

 この物語を作り直そう。

 修正液で塗りたくって、「卯月」を主人公にしてやる。

 「...ッ」

 意識が遠のく。

 力を使いすぎてしまったらしい。

 私の意識と体は時間の広がりに身を任せるようにその場から薄れていった。



 そして月日は二学期の二学期の初め、「スノードロップ´s」の始まりの日の一ヶ月前になる。