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複雑・ファジー小説
- Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.10 )
- 日時: 2024/01/20 10:54
- 名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)
episode 10
「それじゃ、行くね。」
リュックサックを背負って、少女は言った。
「..おう、達者でな」
威勢良くかっこのいい言葉をかけてみたが、本心は、ものすごく震えている。
最初から、一人で仕事をしていたはずなのに、いつしか彼女が必要な存在になった。
俺にとって最高の癒しで、初めての"友達"みたいな存在だ。
けど、俺は泣かない。
"笑って見送ってほしい"というスライムの願いに応えられるように、
今は、精一杯の愛想笑いで少女の後ろ姿を見つめている。
少女はさよなら、と言ってスライムと共に小屋を出ていく。
小さな小屋には、またひとりぼっち。
俺が寂しさに浸っていると、向こうからダーっと走ってくる音がして振り向いた。
「短い間だったけど、楽しかったよ!」
少女が満面の笑みでこちらまで戻って来て、少年の肩をぎゅっと握る。
スライムも少女の隣で、キラキラと笑っている。
涙をこらえようとしてもあふれでそうになる。
「う..」
少女とスライムがここにいたこの2日間がきっと、
今までで一番幸せだったと思える。
「俺も、楽しかった..」
返事をすると、少女はにこっと微笑むと、
小屋の外へ出ていってしまった..。
少女は遠くの方で最後まで手を大きく振っている。
「さよなら!」
さよなら、さよなら。
またいつか、会える日まで
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