複雑・ファジー小説

Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.11 )
日時: 2023/02/24 15:43
名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)

episode 11

少女たちが去ってしまったあと、少年ユージは涙をこらえて、
また羊小屋の仕事にすぐ取りかかった。
雇い主は「人手が減った」と悲しんでいたが、深く追求しなかった。

雇い主がふらふらと酒を飲みながら、町へ出掛けてしまうのは変わらなかったが、
ユージの手際はよくなった。
素早く仕事を終えられるようになったので。晩飯を抜かれたり、叱られることは減った。

少女がいなくなって3日ほど経ち、ユージは寝床から手紙を見つけた。

"ユージへ_また会えると、いいね。これからもお仕事がんばってね。"
宛名は書いてなかったが、きっと少女が残していったのだろう。

ユージは、また少女てんしに巡り会える日をひそかに楽しみにしながら、
今日も仕事を一生懸命に頑張るのだった。



一方、少女とスライムの方は、羊小屋を出て、すぐ次の町へ行くための列車に乗り込んだ。
"特急 アルストロメリア行き"
アルストロメリアという大都会を目指して特急に乗り込んだ。

乗車賃は、自分達の貯金から少しと、羊小屋を出るときに、
ユージがこっそり自分の給料から渡してくれたもの。

使うのは気が引けるが、ユージがどうしても、と押してきたため、もらった。
せっかくもらった貴重なお金なので、次の旅の資金にしようと今使ったのだ。

切符をなくさないようにポケットに入れ、早速少し慌てて列車に乗り込んだ。

駅弁はちょっと大きくて高いので、ちょっとお酒に酔った雇い主さんが
「ここを出ていくなら」
と渡してくれたおにぎりを親友と一緒に食べた。

列車がゴトンと揺れて、前に向かって発車すると、窓から見える景色がぐんぐん右へ動く。
「ユージ、元気にしてるといいな」
少女が窓の外を眺めて言う。

「手紙、気づいてくれたかなぁ」

「気づいてるさ」あれこれ考えて落ち着かない少女をスライムがなだめる。
おにぎり食べて、落ち着こう、そう言いながらスライムは、ぱくぱくおにぎりを頬張る。

少女はそうだね、とニパッと笑って、おにぎりを口の中に入れた。
..おいしい。

ユージと一緒に食べたなつかしいおにぎりの味がよみがえる。
少女は悲しい気持ちをおにぎりと一緒に飲み込んだ。

「ばいばい、ユージ」

新しい出会いを求めて、特急列車はずんずん進んでいった。