複雑・ファジー小説

Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.15 )
日時: 2023/02/26 17:02
名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)

episode 15

「はいはいはい~!!」
マキコさんの掛け声と、フライパンがカンカンとうるさくなり響いた音が聞こえて、わたしたちは慌てて目を覚ました。

ふかふかのベットで心地よく眠っていたが、朝5時すぎくらいにマキコさんに叩き起こされた。
「パン屋は早起きが基本だよ。ほら、アルバイト諸君!頑張って起きっろ~」
威勢良くマキコさんは言って、エプロンに着替え始めた。

「さ、自慢の朝御飯だよ!さっさとお食べ」とマキコさんが出してくれたのが、
わたしたちお目当ての"もちもちパン"だった。

「もちもちだー」もっちりしていてとても弾力のある美味しいパンだった。
親友と一緒に「うま、うま」とパンを頬張っていると「これも、ばあちゃんが作ってんだ」
マキコさんはフフンと自慢げに言った。

「食べ終わったなら、準備しろー」とマキコさんから次の指示が入ったので、
わたしは急いでマキコさんの真似っこをして、着替えて準備をする。

「ほらあんた、手袋はずして、手ぇ洗えー」
そう言われたが、わたしは断った。
「..右手は、絶対に、はずしちゃいけないんです」

わたしが真剣な目付きで伝えると、マキコさんは不思議な顔をしたが、わたしがじっと見つめたら、諦めたようで、
「何か事情があんならしかたないね、パン作りはできないから、このパンを並べてくれ」と新しい仕事を任せてくれた。

わたしはトレイに乗った大量の焼きたてパンを、トングでお店の前に並べた。
親友は自らビニール袋を被って、パン生地を体を使ってこね始めた。
「ほお、便利なもんだ」マキコさんは感心して、興味深そうに見ていた。

わたしたちがせっせと仕事を始めていると、
マキコさんは「んじゃ、あたしは行ってくるよ」とパン屋を出ていってしまった。

ポカンと口を開けて見ていると、キッチンのからマキコさんのおばあさんがひょっこり出てきて、
「あの子は騎士団に入ってるからね、そっちが本業なんだよ」と困ったように言った。
「あの子ったら半日店にいないくせに、勝手にこの子たちを連れてきて..。はぁ。」
困ったもんだね、とおばあさんはわたしに言ってきた。

おばあさんはキッチンに戻ってせっせとパンを作っている。
マキコさんはこの都市の騎士団という防衛隊の一員だそうで、とっても強いんだそうだ。
「実力が隊長に認められたみたいでね、最近は半日部隊で仕事をしとるんよ」
おばあさんは素早くカレーパンを揚げながらそう言った。

「だから、人手が足りなくってね。あんたらが来てくれて正直助かってるよ。」
にっこり笑ってありがとう、とおばあさんが言ってくれるので、わたしたちは嬉しくなった。