複雑・ファジー小説

Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.16 )
日時: 2023/02/27 15:54
名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)

episode 16

昼下がり。
わたしはパン屋で熱々のカレーパンを店頭に並べていた。

親友はパン生地が子ね終わったようで、汗をかきながらビニール袋を脱いだ。
マキコさんのおばあさんのパン作りの方は一区切りついたようで
「これが終わったら余りのミニクロワッサン、おやつに食べましょうね。」と言ってくれた。

「はーい」と作業のスピードをあげてせっせとパンを並べていると、
店の外から「キャー!」と悲鳴が聞こえた。

どうやらだいぶ遠くから聞こえてきた声のようだ。
心配なので、わたしはおばあさんに「ちょっとみてくる」と言って走って店を出た。
親友が「まってぇ~」後から追いかけてきて、わたしの頭にぴょんと飛び乗った。

声が聞こえた方には人だかりができていた。皆に囲まれるようにして中心でうずくまる女の人がいた。
どうやら女の人が泥棒にあったようだ。

「わ、私の大切なペンダント..。母の形見なんです。誰か..」
しくしくと泣く女の人を見て、とても可哀想に思えたので、わたしは聞いてみた。
「泥棒はどっちへいったの」女の人はあっち。と指差したが、
きっと、もう大分遠くにいってしまってる、と諦めた顔で嘆いた。

わたしはすぐに女の人が指差した方に向かった。
屋根にひょいと登って、下をみると思ったより近くで泥棒らしき人物が逃げているのを発見した。
「ははっ。騎士団もまだ来てないし、このまま逃げ切れるぜっ。」

泥棒は右手にたくさんの盗んだものを担いでいた。
わたしは屋根からまっすぐに降りてそのまま泥棒の右手めがけて、高く足を振り上げた。
「おりゃ」

バコ!と音がして、泥棒の右腕の骨が軽く折れる音がした。
その勢いで盗まれたペンダントがポトリと落ちた。
わたしが回収していると「っ..!?」

泥棒は痛みに耐えきれず、しゃがみこみ、驚いた表情でこちらを見上げた。
後ろから「我らが騎士団!泥棒よとまれ!」と声がしたので振り替えると、数名の"騎士団"と名乗る人たちに出会った。

「きょ、協力ご苦労だった。..お、お嬢ちゃん。」
騎士団の人たちは唖然としてわたしたちを見つめた。
その中に、マキコさんと思われる面影の人物がいた。

「わ!うちの店のアルバイト諸君じゃないか!!しっかし、君たちがこの凶悪犯を..?」
たいしたもんだとマキコさんは喜んでわたしたちを褒めた。

「君のような強い者は、ぜひとも騎士団に入団してくれ。..気が向いたらぜひ。」
騎士団の人たちはわたしにそう言うと、泥棒を引っ張って去ってしまった。

最後に、「君たちの活躍をたたえて、今日はごちそうだな!」
とマキコさんは軽快なステップで列の後ろをついていった。