複雑・ファジー小説
- Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.17 )
- 日時: 2023/05/03 21:09
- 名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)
episode 17
「それにしても、びっくりだなぁ」
おばあさんが作ってくれた豪華な夕食ををむしゃむしゃとご馳走になっていると、マキコさんは言った。
「急に店を飛び出してしまうから、ビックリしたけど。」とおばあさんは笑って言った。
「す、すみません..」親友と謝罪をすると、そういえば、とマキコさんは思い出したようにポツリとつぶやく。
「そこのあんたは、明日から騎士団に特別入団だ。」
マキコさんはわたしの方にビシッと指を指す。
アルバイトは減るけど、この町のみんなを守れるぞー!と勢い良くマキコさんは手を突き上げた。
親友は引き続き、店でパン生地をこねるようだ。
「..ひとりぼっちかぁ」
今までずっと親友と一時も離れることはなかったため、ちょっと寂しい。
「こらマキコ。また勝手に決めて。この子にだって考えがあるだろうに」
おばあさんはマキコさんを叱ったが、わたしは大丈夫です、と返事をした。
「嫌だったら、すぐに断ってきていいからね」とおばあさんは優しく言ってくれた。
次の日の早朝、マキコさんはフライパンをガチガチ鳴らしてわたしたちを起こした。
「さ、今日は午前から騎士団を見学だぞー」
昨日につづき、もちもちパンをたくさん食べさせてもらうと、わたしは親友に別れを告げた。
「すぐ戻ってきてねぇぇえ」悲しそうに親友が泣く。おばあさんになだめられながら、親友は泣き止んだ。
「いってくるね、」とわたしは店を出た。
騎士団の本部はとても大きくて、門が開くと、ギギ..と大きな音が鳴った。
「成人してない見習いはこっちだ。」とマキコさんに案内されて、わたしはちいさな宿舎に入った。
宿舎に入ると、早速「だれー?新入り?」と
わたしより背丈が大きな子供がたくさん回りを囲んできて、言った。
「よわそ、」と誰かが呟いたので、わたしはムッとした。「そんなことないもん!」
ユージと同じくらいの背丈の男の子がいたので、わたしはふと、ユージの事を思い出してしまった。
「仲良くしろよー。午後になったら交代だから」とマキコさんは手を振って宿舎を出ていった。
でも、皆はユージみたいに優しく接してくれず、プイッと向こうをむいて、話してくれなかった。
「..。」
あ、でもユージも、最初はこんな感じで冷たかったけ。
じゃ、じゃあ、この人たちもすぐなかよしに、なれるよね!
そう思って我慢して打ち解けるのを待っていたが、宿舎の中はにぎやかなのに、
自分の周りだけは静かで嫌な空気が漂っていて、なんだか胸がざらざらした。
親友のような話し相手もいなくて、すごく寂しかった。
泣いたらまた何か言われそうだと思って、ずっと床に座っていた。