複雑・ファジー小説
- Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.18 )
- 日時: 2024/01/04 21:58
- 名前: sumo (ID: 8kWkLzD1)
episode 18
静まり返った宿舎で、わたしは体育座りをして、ついさっきのことを思い出していた。
すぐ戻ってきて、と言って泣いていた親友が懐かしくて、懐かしくて_
ついさっき店を出たばっかりじゃないか、自分は弱虫だ、と思い言い聞かせていたが、
やっぱり一刻も早く店に戻りたかった。
それでもわたしは、こんなとこで寂しさに負けてたまるかと、意地を張って座っていた。
すると突然、リン、リンと鐘が鳴って、皆が外へ出ていった。
わたしも慌てて真似をするようについていくと、外には大人の騎士団の人がいて、
町中で火事があったようだ、と教えてくれた。
「皆、消化に向かえ!」と指示があって、宿舎の子供は一斉に火事の現場へ走り出した。
現場の家は勢い良く燃えていて、周りは煙たかった。
親友ならすぐ水を出して消してくれるのに、と作業をしながら思った。
大きなバケツに水道の水をくんで、パシャッと水をかけるという作業を繰り返し行って、
皆ヘトヘトだったが、そんな小規模な消化活動じゃ火はいっこうに消えなかった。
消えるどころか、火はどんどん勢いを増す。
やっぱり、親友の手を借りないと火は消えない!
そうおもったので、わたしは親友がいるであろうパン屋の方へ走った。
急いでお店に戻り、扉を開けると、親友が
「やった!戻ってきた!おかえり~」とのんびりとした口調で出迎えてくれた。
親友の和やかな表情を見て、抱き締めたくなったし、再開を喜びたいところだったが、我慢して「ちょっと来て!」と親友をつかんで店の外に出た。
親友はとびきりおどろいて「うわぁぁぁぁ」と困っていたが、
わたしが火事の現場まで連れていくと「なるほど」と頷いた。
「さっきおばあさんがパンをたくさん食べさせてくれたから、元気有り余ってるよ!」と体をぷるんとさせて、
親友は家の方に大量の水をぶちまけた。
「うぉぉぉぉ」
スライムは出会ったときから、体から水を噴出できる。
ずっと不思議に思っているのだが、何で水を出せるのかな?
こんなに威力のある水が出せるのに、本人の体力があるときと、気が向いたときしか使ってくれないため、いつもは弱いのだ。
ほんとはすごいのにな、とわたしは残念に思ったが、無事火事はおさまった。
騎士団の人たちは、皆驚いて目を丸くさせた。
また役に立てたな、と誇らしく思ったのと、宿舎の皆に認めてもらえる!
仲良くしてもらえるかなと期待した。
けれど。
「なんだ、そいつ。」「変なの。」「お前、勝手な行動すんなよ」「きも」
案の定、皆は冷たかった。逆に否定の言葉を口々に言われて、腹が立ったと同時に悲しくなった。
せっかく火を消したのに。役に立ったのに。
なんで?
少女は気がついたら泣いていた。涙がポロポロと溢れていた。
やっぱり認めてもらえなかった。
悔しい、悲しい。