複雑・ファジー小説

Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.19 )
日時: 2024/01/20 10:52
名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)

episode 19

「うわ、泣いた」「弱」
宿舎の子供たちがわんわん泣く少女の悪口を言うのを見て、スライムは
「弱くなんかないやい!この子はおまえらなんかよりずーっと強いやい!」と言い返したが聞く耳も持たれなかった。

わんわん泣く少女を撫で撫でしながら、スライムは宿舎へわいわい戻る子供たちの後ろ姿をにらんだ。
そこへ、マキコさんが来た。
「おや、アルバイト諸君どうしたってんだ?」心配そうに少女の顔をのぞきこんだ。

全く泣き止まず一言も発しない少女を見て、
マキコさんがおろおろしていると、マキコさんのおばあさんも駆けつけた。
「こら、マキコ何してんだい。この子泣かして。」
おばあさんは「もう、みんな、店に戻ってきなさい」とマキコさんも、少女もスライムも店につれ戻した。

「なるほど」

落ち着いた少女から、やっぱろ親友がいないと寂しいこと、宿舎の皆は冷たかったこと、
火事を消すためにスライムを連れてきたこと、すべてを聞いたおばあさんは、納得した。

「もう騎士団、いきたくない」か細い声で少女はポツリと言った。
それでいいよ、とおばあさんは言った。

「騎士団、そんな嫌なのか..?」マキコさんは困った表情で聞いた。
少女は首をコクリと縦に振って正直に答えた。

「んなことはどうだっていいんだ。アンタって奴は無責任に連れてきて、泣かせやがって」
おばあさんはマキコさんをきつく叱った。

マキコさんもきつく叱られて反省したみたいで、
「宿舎のやつら..自分のことしか考えないんだ。あたしだってそうだった。ごめんね、アルバイト諸君..。」
と二階の自室にこもってしまった。

おばあさんは「辛い思いをさせてしまったね、..もうそろそろお家に帰りなさい。お家の人も心配してるよ」
と申し訳なさそうに言ったのだが、少女は小さな声で「..お母さんと、お父さんは、その、今、探してるから。」と呟いた。


おばあさんは一瞬、少女の言っていることが分からなかったが、
少女の寂しそうな顔を見てすぐ理解した。

「あんた...孤児こじなのかい?」
おばあさんは驚いていたが、ありゃ、そうか..。と黙り混むと、
「んじゃ好きなだけここでパン食べるがええ。もう泣かせはしないさ」と目を細くしてにっこり微笑んだ。



次の日の朝。
「おっはよーございます!!」
起こされる前に早起きをして、少女は元気に挨拶し、トングでパンを掴んだ。

マキコさんはすまなそうに二階から下りてきたが、
少女は「気にしないでください!悪いのはわたしですから!」と明るく振る舞った。

その日から、少女が騎士団に行くことはなかった。