複雑・ファジー小説
- Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.23 )
- 日時: 2023/07/04 21:33
- 名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)
episode 23
少女は満面の笑みを浮かべて言った。
「..あの、この前は勝手に動いてごめんなさい。」
スライムは驚いた。
悪口をみんなから言われて、
泣いてしまうかと思ったのに、少女はにっこり、笑っているからだ。
宿舎の子供たちは少女の意味不明な謝罪に動揺したが、
「はぁ?お前、何、それ」
「謝れば良いってもんじゃないんだよ」「そうそう。出てけって言ってんの。」「その笑顔ムカつく。」
と口々に嫌味を言い放った。
それに対しても、少女は、「ごめんなさい、」とヘラヘラと笑いながら返事をする。
(一体、どうしちゃったんだろう..。)
少女が泣かずに我慢したことに偉い!と言いたかったが、いつもと違う少女にスライムは不安を抱いていた。
「ヘラヘラ笑いやがって、てめぇ..」
「あたし、あいつめっちゃ腹立つ!!」
何を言ってもヘラヘラ笑って謝ることしかしない少女にとうとう、宿舎の子供たちが怒り始めた。
「このぷよぷよはお前の、友だちっつたか?踏み潰してやる」
少女の態度にカチンときた一人の男子がスライムに近づいて言った。
(え、踏むの!?痛いからやめて!だ、誰か、助けて..)
スライムはぎゅっと目をつぶった。
その瞬間、少女は鋭い目付きで男子の頬を、勢い良くバチンと叩いた。
力強く叩かれて、男子はよろめいて地面に叩きつけられた。
「痛っ」
「お前、仲間に何てことしてんだよ!?」
「さいてー」
突然の出来事に、周りはざわつき、少女を批難した。
「わたしが、仲間?」
口々に言われる言葉に、少女は首をかしげた。
「..まあ、そんなのどうでもいいから。ふまないでくれる」
言葉を吐き出した少女の目は狂って、真っ黒だった。
自分のことを守ってくれた、ということには感謝したいが、
今の少女は自分が知っているいつもの優しい少女ではなかった。
「騎士団の大人に言いつけるから!!そしたらあんた、ここにいられなくなる!!」
女子達がびくびくしながら外に出て大人を呼ぼうとした。
しかし、そんな脅しには全く動じず、少女は「ありがとう。」と逆に喜んだ。
数分後、
「喧嘩はやめろと言っただろ。」と大きな男性が宿舎に入ってきた。
「違うんですっこいつが俺をぶってきて..」
ぶたれた男子が自分が良いように言いつけても、少女は何も言わずその場に立っていた。
結局、"仲間に暴力を振った"と少女は悪者扱いされ、騎士団から放り出された。
たちまち噂になり、少女は「裏切り者」だと皆が言った。
「ね、ねぇ。」
外に放り出されて、スライムは少女の顔色を恐る恐る確認しながら声をかけた。
「なあに?」
少女はまた、いつもと同じ笑みを浮かべて返事をしてくれた。
ホッとした。
「う、ううん。あ、あの、助けてくれてありがとう。」
「どういたしまして。」にっこりとする少女は、もういつもの少女だった。