複雑・ファジー小説

Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.24 )
日時: 2023/07/04 21:34
名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)

episode 24

「あの人たちに許してもらえなかったけど、外に出れたね!!」
笑みを浮かべてこちらを向く少女はいつもの少女に戻っていた。

ほっと、ひと安心したスライムは、そうだね!と元気に返事をした。
さっきの怖い少女は全部少女の作戦だったのかな、と思うことにした。

少女もさっきの男子を叩いた件についてはなんにも、喋らなかった。

「..それで、、これからどうするの?」
このままずっと、外でつったっている訳にもいかないので、スライムは少女に聞いた。

「ん?ここを出るよ」
笑顔で少女は答えたが、スライムは動揺した。
「え?ここを出るって..どういうこと..?」突然の発言に、スライムは再度聞き返した。
少女は「だからー。この町から、出るんだよ」と当たり前のように言い放った。

「あ、荷物、お店に置いてきちゃった。」
ちょっと、取ってこなきゃと少女は困り顔でお店に戻った。

「あら、あんたたち!?暴力を振るったというのは本当なのかい?」
「なあ、騎士団で何があったんだ?」

おばあさんとマキコさんは店に戻ってきた少女を目にすると、質問攻めにした。

が、少女は答えなかった。
ただ、にこやかに笑って、二階に上がっていった。

さっき町から出ると言ったはずなのだが、少女は
「今日はここに居させてもらお!」と言って寝床でお菓子を食べ始めた。

スライムの頭の中は、"?"でいっぱいだった。
なぜ、そんなににこやかで居られるのか、この状況が不穏に感じないのか、なぜ今町を出ていくのか..

おばあさん達の質問にスライムは一生懸命答えようとしたが、
すぐに少女が「何も言わないで欲しい」とずっと目で訴えてくるのだ。

「なんで..?」
おばあさんたちにまで悪者扱いされたら可哀想だ、と
必死に少女をかばおうと思って質問に答えようとしたのに。

"何で止めるの?"

いつの間にか、親友しょうじょに腹が立ってきた。
自分だけ買ってな行動をして、おかしい、と思うようになった。
おばあさんが用意してくれた夕食も、むしゃむしゃと美味しそうに食べるし、布団もいつも通り強いて、
昨日までと全く変わらない。

しかし、おばあさんたちの質問には、答える気が全く無いようなのだ。
そんなこんなで寝る時間になり、もうその頃にはおばあさんも、
「何か、辛いことがあるなら相談しなさいな。」と質問攻めにするのをやめた。
マキコさんは、「..アルバイト諸君。しんどいならアルバイト、辞めてもいいんだからな、」と優しく諭してくれた。
少女は、はい。と返事をした後、何もなかったかのように布団に入った。


その日の朝3時過ぎごろ。
少女がいきなり、「起きて」と声をかけた。
パン屋の準備だとしてもまだ早い時間だろうに、とスライムは目を開けた。

いくら早起きのマキコさんだって5時過ぎくらいに起きるのだから、
今は二人ともぐっすり眠っているだろう。

「どうしたの..?」
少女に言われるがまま、ついていくと「忘れ物はないよね?」と確認してきて、
ないけど。と返事をすると、少女はひっそりと抜き足さし足、と階段を下りていった。

ありがとうございました、と小声で呟き、ぺこりとお辞儀をして少女は店から出た。
スライムも真似してペコリとしたら、少女は静かに店の扉を閉めた。


「..次は、どこいっこっか。」

少女は駅の方へ歩き始めた。
まだ暗いので、少女が今どんな顔をしているのか、
スライムには全く見えなかった。

肌寒い風がすうっと吹き抜けて、少女の髪はサラサラと揺れた。