複雑・ファジー小説

Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.28 )
日時: 2023/10/09 08:19
名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)

episode 28

僕はむかしっから、弱虫だった。
"にんげん"という種族が支配する"ちきゅう"という世界で、気づけば僕は、生きていた。

"ちきゅう"は自然豊かで、空気も美味しくて、悪くない生活だった。
が、"にんげん"は僕を嫌った。

僕は"まもの"で、人間を襲う種族らしい。
だから"にんげん"は怖がって僕をやっつけようと、僕を追いかけ回したり、殴ってきたりした。
実際に、僕は弱いし、人を襲ったりなんかできっこなかったんだけど。

体が小さいので、背の高い大人には踏み潰されるし、
堂々と町中を歩けば、すれちがう人達は皆、まるで化け物を見るような、おぞましい目で僕を見た。

でも、僕のとなりにはずっと、あの、優しい少女が居た。
少女は僕を、拒まなかった。

出会ったのは、4年くらい前のこと。
草原で泣いていると、誰かに聞かれた。
「何で泣いてるの」
「..ひとりぼっちで、かなしいの。」
「へぇ、私と同じだね。運命かなぁ」そう言って、少女は、くすりと笑った。

それからボクは、少女と共に日々を過ごした。
「わたし、ずっとひとりだったけど、あなたが居れば二人になるから、寂しくないね」
そう言って微笑む少女は、花のように可愛らしかった。

"まもの"を連れて歩く少女は周りの"にんげん"から変な目で見られるときもあったが、
「 ともだちだよっ」
よく少女は僕に言ってくれた。

"ともだち"とは悲しいときも、嬉しいときも、一緒に居て、楽しいもの、といつか少女は教えてくれた。
僕は、僕を必要としてくれてる、認めてくれてる、と心から跳ね上がった。



なのに、そんな大切な、世界で、宇宙で一人の"ともだち"を僕は、失ってしまった。
僕が無力で無知なせいで、少女を痛めつけてしまった。

「ごめんなさい...」
僕のせいなんだ。

見放されるのは当然なんだ。

今まで1ミリも分かってなかった。
君のその深い愛想笑いの意味も、ずっと君が思い悩んでいたことも。

今までずっと、苦しい思いをさせてた。


僕なんか居ない方が楽になるのかもしれない。



でも。


それでも、


僕は君に会いたい。
だから神様、もう一度だけ、チャンスをください。



今度こそ君が、
君が、愛想笑いなんかしなくていいように。
我慢しないで泣いて、笑えるように。
幸せを、掴めるように。


(強くならなくちゃ!)

___僕の意識は、そこで

途絶えた。