複雑・ファジー小説

Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.30 )
日時: 2023/11/03 14:37
名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)

episode 30
「マキコさん、僕は強くなりたい!」
僕は宣言した。

応援するよ、とマキコさんは微笑んだけど、
「ちょっと出掛けてくる」と言って外へ出てしまった。
散歩かなぁ。

僕も散歩すればマキコさんみたいに強くなれるかな!!
散歩に行こう!
ランニングをしてみよう!

「まずはうぉーみんぐあっぷだ!」
100回跳ねてみる。
「っはぁ、はぁ....」
後半はもうそんなに跳べず、100回終わると、
すぐぱたり、と地面に張り付いてしまった。
体力が無さすぎて虚しくなった。
(こんなんじゃ、ダメなのに...。)
「こんなでへこたれるな!」と自分を励ました。

そうだ。走らなくちゃ。
散歩に行くんだった!
パン屋から飛び出して、一向に速くならない速度を追い上げるように、
僕は何回も何回も町の中を走った。
僕が一人で走ると、町で買い物をする人々は、驚いた顔をしてこちらを見たり、
眉間にしわをよせたりする。
少女と一緒じゃないと、より一層目立つ。
僕は、嫌な、邪魔な、嫌われものの魔族のスライム。
(やっぱり僕は、なんにも、変わってないんだ)
虚しくて、悔しくて、僕は泣きながら走った。


パン屋に戻ってくる頃には、汗がびっしょりで、日が暮れていた。
扉から顔をつき出してマキコさんが待っていた。
もう散歩から帰ってきてたんだ。

「頑張ってるね」マキコさんが笑った。

「でも、、なにも、変わってない」
一日なんかじゃ変わらない、それは分かっているけど、僕はもう生まれてから何も、変わってないままだ。
「強く、ならなくちゃいけないのに...。なのに...」
僕はわんわん泣いた。マキコさんはおてふきで僕の顔を何度もぬぐってくれた。

「君は強いよ、今もずっと。」
マキコさんは笑って言ったけど、どういうことか分からなかった。