複雑・ファジー小説

Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.36 )
日時: 2024/01/04 21:34
名前: sumo (ID: 8kWkLzD1)

episode36

「...ちゃん..いちゃん。..にいちゃん、おにいちゃんってば!」

目を覚ますと、そこには小さな女の子の顔があった。

「おにいちゃん寝ないでよ!お母さん帰ってきちゃうよぉ」
眉を上げて女の子は頬を膨らませる。

辺りを見渡すと暖炉や椅子、テーブルがあって、
床には、折り紙や色紙、紙くずが落ちていた。


「ほら、はやくはやく!何で寝ちゃうのかなぁ」
女の子はぶつぶついいながら折り紙で輪っかをつくっている。
その横顔は...なんだか見覚えがある気がする。
「さぷらぃずするっていったの、おにいちゃんじゃんか~」
誰かのパーティーでも開くのだろうか。

「ほら!立って!ケーキ作ってよ!早くしないと間に合わないよー」
無理矢理押し出されてキッチンの方へ向かう。
「お兄ちゃんはケーキ担当だったでしょ!」

この子は、僕の..妹?
うーん。
なんだか面影は誰かに似てる気がする。
君は誰?と聞きたくて口を開こうにも、体が思いどうりに動かない。

すると、女の子は何かに気がついたようで、声を漏らした。
「あっ!ろうそく!ろうそく買ってない!どうしようっ」

女の子はケーキに飾るろうそくが無いことに慌てている様だ。
「おかあさんにふぅってしてもらわないと...わたし今から買ってくる!」

小さなお財布を手に、廊下をパタパタ走って、女の子は扉を開けた。
声をかける隙もなく、手元を見ると...


(あれ、)


手だ。


僕は、人間になっていた。
自分の手を見ると、人間と同じ、五本指があって、ちゃんと2本足で立っていた。

(人の体だっ)
驚いて声をあげる間もなく光がさしこんで、眩しくて、目が開けられない。


「おにいちゃんはケーキ作っててーー」
外から聞こえた女の子の声と共に、僕の意識は途切れた。