複雑・ファジー小説
- Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.9 )
- 日時: 2023/08/06 21:21
- 名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)
episode 9
出来立てのパンと、熱々のシチューを分けあって、モグモグ食べた。
「おいしいね!」
満面の笑みを浮かべる少女に、いつの間にかユージは恋をしてしまったのだ。
「あのさっ..」
"これからも自分と、一緒にいてほしい"
そう言おうとした矢先、少女が口を開いた。
「..わたしたち、明日ここ出るね」
「!!」
えっ..。
予想外の言葉に、ユージは驚きを隠せなかった。
なぜだ?
俺がそっけない態度だったから?ご飯がまずかった?やはり仕事はしたくないのか?
嘘つきとは一緒にいたくない?色々な考えが頭の中をよぎった。
「ユージの、ご飯とっちゃうのは嫌だし、」
なんだそんなこと?
俺の飯なんかどうでもいい。少女と一緒にいられるなら。
「それに、、わたしまだ旅したいから。まだ名前、思い出せてないの。」
ああ、そうか。
天使と一緒にいるなんて、そんなこと考えるなんて、わがままな。
まだまだ、俺は未熟だ。
「..そっか。」
俺はまたそっけない返事をして、後ろを向いた。
「それじゃ、ごちそうさま!..もう寝るね。」
少女は俺に気を使うように素早く寝袋を準備して、眠ってしまった。
「おやすみ、」俺は急いで階段をかけ上がり、二階の布団にくるまった。
本人だってずっと一緒に居てくれるなんて、言ってもないのに
勘違いしてしまった自分が悔しくて、寂しくて、涙がボロボロ出てきた。
「泣いてるの?おわかれを、そんなに悲しんでくれるなんて、嬉しいな」
背後から声がしたので、振り向くと、少女と仲良しのスライムがいた。
少女じゃなくて良かった..と安心していると、スライムが、こっちに近づいてきた。
「あの子も、心配してるよ。それに、おわかれするのすごく悩んでたよぉ」
スライムがキラキラした目で言うので、なんだかまた悲しみが込み上げてきた。
あの子、少女が悩んでいたなんて...。
そっか、俺と一緒にいたくなかった訳じゃないのか。
少女は、最後まで俺の天使なんだな、
「だから、もう泣かないでぇ、笑って見送ってほしいな」
スライムはそう言って2階から出ていった。