複雑・ファジー小説
- Re: 戯構築世界ノ終末戦線 ( No.13 )
- 日時: 2023/03/14 19:20
- 名前: htk (ID: LH/LPtL4)
1章〜〜第1幕、挿話その1ーーコノミの話
《終末戦線オンライン》ーー。
ーー略して終戦オンライン。
あんまり略せてないよねーーって内心突っ込んだけど、特に誰も気にしてない。
わたしはやらないジャンルだから知らなかったけど、有名なシリーズみたいだった。
夕陽の差し込む窓際を背に、男子生徒が言う。
「終戦オンラインどうする?
買うのか?」
「え?難しそうなゲームはちょっと、、」
そう聞かれて答えたのは、自分で言うのも何だけどーープリティカルな女子生徒だった。
プリティーとクリティカルを掛け合わせたんだけどね。
わたしはどちらかというと格ゲーとかアクションはよくやるけど、RPG要素の強そうなゲームは基本的にやらない。
某国民的人気RPGの魔王を倒す冒険物語も中途で手付かずだったから、きっと向いて無いんだと思う。
仲間内で何かーーオンラインゲームでもやろうって相談してて、この会話の下りだ。
「でもコノミん……格ゲーだと強過ぎて敵わないし、ハンデは必要……」
「そうだそうだ、お前格ゲー強過ぎなんだよ
、、つっても終戦もなあ?
前作の《崩壊都市オンライン》もアクション要素強かったから、プレイヤースキルでちゃっかり上位陣に喰い込めそうなんだよな、お前」
他の何人かも頷いていて、それがわたしに対する共通認識みたいだった。
次いでにいうと、今ここはーー放課後の学校だ。
時々部活の掛け声とかが聞こえてくるけど、わたし達は特に部活動らしい部活はやってない。
一応、ゲーム愛好会なんて学校非公認の活動はしてるけど、それも自宅活動が主だった。
プレイヤースキルが通用するーーって聞いたわたしは、ひとまず頷いておく。
「ならいいかな?それで」
「うっしゃ!決まりだな!
愛好会のみんなは出来るだけサービス開始初日に間に合わせること!」
愛好会会長を務める男子生徒が言った。
そこに同じく会員の女子が補足するように言う。
「事前情報だと……確か、初期地点選べるみたいな話……どうする……?」
「みんな好きな場所選んでその内全員集合で良いだろ?
、、よし、決まりだな!
じゃ、解散だ」
会長の言でその場はお開きになった。
事前情報は特に調べて無いけど、それでも聞こえてくる評判はーー良くも悪くも話題性があるゲームなんだって。
だから、最初は流されて頷いたわたしも、発売日が秒読みに入るとすっかりその気になっていた。
そして、約束通りサービス開始初日ーー。
ーーVRゴーグルを付けたわたしは横たわり、ゲームを起動した。
スタート画面を視線の操作ーーアイプッシュで押して、サポートの声が丁寧な挨拶をするのを聞く。
ふうん、こういうものなんだーー。
ーー昔ながらのRPGをイメージしてたわたしは、少しだけ意表を突かれた。
思えば、かの国民的人気RPGもうんと小さい頃遊んだだけだったから、こうして始めてみると新鮮だ。
サポートは細々とした内容を告げ、こう切り出す。
〈ーー/
それでは、これよりキャラクターメイキングを行いますが、《終末戦線オンライン》ではユーザー様の情報をスキャンした最適作成の他、全てをご自身の手によりメイクする任意作成、各項をこちらの随意により斡旋する自動作成がございます。
/ーー〉
「どう違うの?」
〈ーー/
まず、ユーザー様の情報をスキャンする最適作成は《終末戦線オンライン》を遊んで頂くのに最も合理的なアバターを算出し、現実での後遺症もほぼ出ない事が証明されています。
/ーー〉
現実での後遺症ーーってゆうのは聞いた事があった。
人の頭は長い時間をVR空間内で過ごすと、現実との間に齟齬が生じーーとか何とかで、何年か前からニュースで取り沙汰されている。
そうした問題をほぼ解決済みで発売前から評判だったのがこの《終末戦線オンライン》で、どうたらこうたらーーってゆうのがあの愛好会会長の言だった。
それで、最適作成ーーってゆうのがオススメで、サポートの説明によると他に、任意作成はユーザーが各項を好きに弄れて、顔や体型、種族や性別も変えられるって話。
それから、自動作成はユーザーに危険性の無い範囲で、サポート側から適性のある種族とか職業を更新する毎に提示してくれる作成方法だった。
「早くゲームしたいし、最適作成で良いかな?」
こういう時ーー。
ーー焦らされてるみたいで、少し急かしたくなる。
〈ーー/
では、ユーザー名ーーコノミ様の情報をスキャンさせて頂きます。
暫くの間、お待ち下さいーー。
/ーー〉
そう言われる前に個人情報がどうとか、何かの確認の書類とかが表示されたけど、わたしはほとんど読まなかった。
これを逐一読んでられるなら、わたしはきっと毎テストで90点台をキープ出来てると思う。
サポートの声を待ってる間、何かーーデジタルな流線型が段々と人型になっていく映像が流れた。
出来上がった姿はーーわたしそっくりだ。
鏡写しのような顔が、その息遣いから瞼のちょっとした動き、肌の質感まで余す事なく伝えてくる。
〈ーー/
コノミ様のアバターの作成が終わりました。
任意で髪色や目、肌の色等を変更出来る他、年齢や身長、体型等を無理の無い範囲で修正可能です。
/ーー〉
「ううん?非の打ち所がないと思うんだけど?
あ、でも髪の毛の色は黄色にしてみよっかな?
それから、目の色は赤、、ってゆうより緋色?」
〈ーー/
このような色調でよろしいでしょうか?
/ーー〉
これもわたしの脳波を検知して向こうが判断してるみたいで、すぐに結果が出る。
「うん、良いよそれで」
〈ーー/
それでは、次に職業ーー。
/ーー〉
「ぅああっもう!?
そうゆうのは終わらせて、そろそろゲームしたいんだけど!?」
〈ーー/
それでは、職業選択無しのフリーチュートリアルから、拠点か野外のどちらかをスタート地点に選べます。
尚、職業選択に消費されなかった割り振りポイントはゲーム中のメニュー画面からステータスウィンドウを表示する事で、割り振る事が出来ますのでご了承下さい。
/ーー〉
サポートの声がそう言うと、別のウィンドウが表示される。
〈ーー/
・拠点
・野外
/ーー〉
「どう違うの?」
〈ーー/
拠点をお選びになられますと、央陸大地のいずれかの町をスタート地点に選べます。
野外をお選びになられますと、央陸大地のいずれかのフィールドからランダムに抽選された地点からのスタートとなります。
/ーー〉
ってゆう事は、つまりーー野外を選ぶとすぐに戦闘が始められそうな気がする。
「それなら、野外でお願い」
即決だった。
〈ーー/
ではこれにて、キャラクターメイキングを終了します。
コノミ様の意識はこれより《終末戦線オンライン》の世界へコンバートされます。
それでは、良き終末ライフをーー。
/ーー〉
サポートの声に送られ、キャラクターメイクを終えたわたしは、《終末戦線オンライン》の世界へダイヴした。
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