複雑・ファジー小説
- Re: 戯構築世界ノ終末戦線 ( No.14 )
- 日時: 2023/03/14 22:33
- 名前: htk (ID: rCT1hmto)
1章〜〜第1幕、挿話その2ーーコノミの話
ダイヴしたわたしの視界に、モノトーンの映像が流れ始める。
オープニングかなーー?
大地に根差す柱ーー。
ーーそれを取り巻く誰かが次々と立ち消え、怪物らしい姿が映る。
昔話みたいだ。
そんな映像と一緒に、昔語り風の音声が聴こえてきた。
〈ーー/
触レ人ーーそれは來たる日、突如として世界に現れ、世に終末を齎す者也。
まだ、神々が世界を分割統治していた時代ーー。
ーー方陸大地を支えた天地ノ柱は砕かれ、世に災いが齎されたり。
大地の其処彼処へ散りし欠片より、幾多の魔物が世界を脅かさん。
神々、これに伐ち克つべく、御使いを創り給う也。
彼の御使いは幾多の魔物を平らげ、世に再び平穏が取り戻されたり。
しかし、神々は地上を去り、世界の命運はいずれ尽く。
厄災也。
天地ノ柱より砕かれし欠片ーー。
ーーそれらは方陸大地の各地に根差し、未だ数多の魔物を生まんと欲し、最期に触レ人來たらむ。
終末也。
欠片より生ずる彼らが來たるその刻ーー。
ーー五つに分割されし方陸大地は未曾有の危機に見舞われ、その悉くは泡沫と帰らむ。
地に蔓延りし諸種族はどう抗わんやーー?
或いは争乱を逃れ、無為の日々の末にただ滅びを受け容れんやーー?
ーー神々の去りし方陸大地に、終わりの刻近し。
されど、触レ人らの中にーー御使い在り。
世界の存続願わんば種を超え、ヒトの垣根を超え、手を携えられたし。
さすれば、未曾有の危機に抗い、世の終末を乗り越えられん。
汝らの命運を委ねられしは古の神々が創り給う、御使い也。
斯くなるは、触レ人らより生ずる〝其方〟だけーー。
ある終末文書の文に曰く、狂人の戯言
/ーー〉
俯せた姿勢で、目が覚める。
ベッドで横たわっていた筈のわたしの目には、別の光景が映っていた。
丈の短い草が並び、その向こうには林が見える。
草の葉先が、鼻先を撫でた。
ボーっとした頭でそれを眺めてると、何処からともなく声がする。
「アラアラんっ?いつまで寝ているのです?
、、随分と呑気な勇者様ですことっ!?」
寝覚め際の最中に、突然話し掛けられた。
あれーー?
ーーわたし、何してたっけ?
そう思って周りを見渡すと、そこはーー林の中でこの場所だけ整えられたような、木々の広間だった。
誰かの声を聞いたような気がしたわたしは、キョロキョロとする。
するとーー。
「こっちですよっ!」
声が聞こえた方に注意を向けると、キラキラと光が舞った。
多彩な光子が徐々に人の形を象り、小さな人形さんが現れる。
そうだったーー。
ーー此処は今、ゲームの世界だ。
わたしの前でふわりと浮かんだのは、妖精に違いない。
「ワタクシはエイミー!
アナタの、ええと、、?そうなのですっ!
〝なび〟役を務めるよう女王様に言われて来ました」
「ナビ役?
わたし、そういうの要らないから」
言い、くるりと背を向けた。
その場を離れようとすると妖精ーーエイミーはわたしの前に回り込んでくる。
「もうっ!?いきなり何なのですか!?
こっちがお行儀良く挨拶したら、まずは平伏して名乗りなさいっ!
ヒューム風情の分際で無礼なっ!?プンプンっ!」
「うるさいし、耳元で喋らないで!」
キンキンしてきた。
わたし、ゲームは好きだけどまずは一通り自分で試してみて、それから情報を集める方だ。
その為に出来るだけ事前情報には触れないようにしてきたし、せっかくの努力が無駄になる。
だから急にナビ役って言われて妖精が出て来たって、それはありがた迷惑ーー。
「ちょっといいかな?
始めだから言うけどわたし、ゲームは事前情報無しで楽しみたい方だから
、、少し黙ってて」
早くも仲良くなれない気がしたわたしは、多少キツく言った。
この手のタイプはつけあがらせると、後々面倒を起こすーー。
ーー別のゲームとかで見てきた、これまでの経験則なんだけどね。
本当の所は実際、この妖精がどうなのかは分からないけど、一目見て単純にウマの合わなさは感じた。
エイミーはプイッと面白く無さそうに距離を取り、遠巻きにこちらを見つめてくる。
そんなのは今はーー放っておこう。
少々キツく言い過ぎた気もするけど、人との関係は最初が肝心なんだよね。
そういえば、寝てる間に見たオープニングらしい映像でも種族がどうとかーー。
ーーそんな事言ってた気がするから、あの妖精がNPCだとしても、扱いには気を付けた方が良いのかもしれなかった。
でも、過ぎた事だからしょうがないし、謝れば赦してくれるかもしれないしーー。
ーー言い訳じみた考えを浮かべたまま、軽く木々の広間を回ってみる。
草を踏み締める感触や音ーー。
ーー地面から生えるその一本々々が微妙に形が違うのも、しゃがんでみると分かった。
その一本を、手に取ってみる。
〈ーー/
雑草:|耐久値:8/10|:価値:0G|
ただの草。スキルがあれば鑑定可能。
/ーー〉
「ふうん?鑑定?
持ってるのかな?」
わたしはそれを仕舞おうと思って、自分の身体を見下ろした。
簡易な格好だ。
腰に木剣が差してある他は、如何にもなファンタジー世界の服装だった。
膝まであるチュニックみたいな上着に、同じく膝程度のハーフパンツみたいなズボンーー。
ーーそんな格好の腰に木剣の差してある鞘の他、ポーチがぶら下がってる。
わたしはそれに今取った草を仕舞うと、何か無いかと思って探した。
RPGの経験はほぼ0に近いけど、拾えるアイテムは拾った方が良いことぐらい、いくら経験が浅くっても知ってる。
他にも何かないかと、ぐるりと周りを見渡した。
すぐに目に付くのはーー誰が見ても、木々の広間の真ん中だと思う。
その部分を避けるように、林で囲われたこの場所ーー。
ーー此処の中心にある、他の木々より一回り大きな樹が目に入った。
わたしはその根本に、何かを見付けるーー。
ーー近付くと、紫と緑の色合いが気持ち悪いキノコだった。
次話=>>15