複雑・ファジー小説

Re: 戯構築世界ノ終末戦線 ( No.15 )
日時: 2023/03/15 16:15
名前: htk (ID: Wp/04zaT)

1章〜〜第1幕、挿話その3ーーコノミの話



「毒キノコかな?気持ち悪っ、、!?
あんま触りたくないし、、?」
 手に取ろうとして、止めた。
 でもこれって、何かのアイテムだよねーー?
 たぶん敵を毒状態にするとか、そういう感じのーー。
ーー手を止めていたわたしは少々迷った末、その動きを再開した。
 貰えるものはひとまず貰っておくのが、ゲームの定石だ。
 後で何かの役に立つかもしれないし、って思ってるとーー。
「ちょーっと待ちなさっーい!?」
 向こうでそっぽ向いてたエイミーが、超々高速で飛んできた。
 いきなり来られてもびっくりするよねーー?
「それはワタクシのっ!ワタクシが女王になる為に必要なものなのですっ!
勝手に採らないで下さいっ!?これだから野蛮なヒュームは、、プンプンっ!?」
「あ、そうなんだ、、
、、女王?」
 悪趣味なキノコは無視して、訊いてみた。
 ひとまず怒りを収めたエイミーは、不満そうながらも口を開く。
「そうなのですっ!ワタクシには叡智のキノコを食し、この妖精の森の次期女王となる重大な務めがあるのです!」
「なら、今食べとけば良いんじゃないかな?
、、どうしてこんなところに放っとくの?」
「それは、まだまだ生育に時間が掛かるからなのです!
叡智のキノコは大きければ大きい程、女王になった時の恩恵が増す偉大なキノコなのですっ!
だから、間違っても食べたり盗んだり紛失したりはしないで頂きたいのですっ!」
「そ、そうなんだ、、?
、、へえ」
 偉大なキノコって、何だろうーー?
ーー何となくいかがわしいものを感じながらも、その話題から引いた。
 このゲームってそういえば、ソッチ系の要素も充実してるーーって聞くし、案外この妖精もそういう生態なのかもしれない。
 わたしが目の前の小さな姿に想像を逞しくしてると、エイミーが言う。
「ところでそろそろ説明を始めたいのですが、いつまで次期女王たるワタクシを待たせる気なのですっ!?」
「あ、待ってたんだ、、
さっきはちょっと言い過ぎて、ごめん、、謝るよ」
「急にしおらしいことですねっ!まあ、次期女王たるワタクシの覚え目出度くば、騎士に取り立てて差し上げても良いのですよっ!フフんっ!」
 急に機嫌が良くなった。
 まるで話に聞くーーヨイショされるとすぐ増長する会社の上司みたいだ。
 勿論、わたしは学生だから例えとしてそれが適切なのかは知らないし、たぶん微妙に違うような気もする。
 そんな事を思ってると、エイミーがまた言ってくる。
「そうっ!アナタの想像通り、ヒュームと妖精には種として隔絶した開きがあるのですっ!
ワが妖精族を上位の存在と見て取るその感性、なかなか悪くありませんよ?褒めて仕わしますっ!」
 まだヨイショもしてないのに増長してきた。
 そのあたり、やっぱり話に聞く会社の上司とは別物だ。
 ってゆうか今、心読まれたよねーー?
 読心術かなーー?
ーーわたしが戸惑ってると、したり顔で上位存在とやらの妖精が言う。
「フフんっ!身の程を知り狼狽えるそのザマっ、ヒュームの小娘如きにはなかなかお似合いなのですよ?」
「どうしてそうマウント取るのかな?
、、そういうNPCなの?」
 何気無く訊いたつもりだった。
 でも、その発言は少し迂闊だったように思う。
 ほらーー?
 よく海外で日本人がジ〇ップなんて呼ばれるのは、馬鹿にされてるからだって聞くよねーー?
ーーこのゲームの世界でもそういう設定、ってゆうか文化なのかがあるとは思わなかった。
 つまり、今ーー。
ーー激怒に顔を染めた妖精が見る見る内にそのサイズを大きくしていく。
「よくも、、
、、よくもまあっ!?〝えぬぴいしい〟などと古来っ、土民を意味した暴言が吐けましたねっ!?
己の矮小さを知り、潔くその身を冥陸大地へ沈めなさいっ!
、、愚鈍で野蛮なヒュームの分際如きがっ!?」
 言われたわたしはこうーー。
ーー巨大化したエイミーの足裏でプチっとヤラレタ。
 ドスンっとーー。
ーーこういう経験は誰にとっても一生に一度きりの筈だけど、うっかり失言したわたしは生まれて初めて死を体験した。



「ごめんなさい、、」
 まさか一生に一度の経験をするとは思って無かったけど、このゲームーー割と理不尽だ。
 わたしは今ーー土下座の体勢で元のサイズに戻った妖精を伺ってる。
 窺うーーじゃなくて伺う、だ。
 このあたりに言葉のニュアンスを感じて欲しいぐらいには、わたしはこの妖精にビビってた。
 辛い姿勢に耐えたその甲斐もあってか、やっと機嫌を直したエイミーが言う。
「、、まあ、良いでしょう」
いつものキンキン声じゃないあたりにこの妖精の内心が伺えるけど、そのあたりには深く突っ込まない。
 次いでにいうと死んだ筈のわたしはついさっき、少し離れたところにあるメモリアル・クリスタルーー所謂、セーブポイントで復活した。
 死に戻る仕様らしいーー。
ーーこれで、一度死んだらキャラクターロストするとかそういうタイプのゲームだとお終いだったけど、その手のタイプじゃなくて良かったって思う。
 せっかく作成したアバターがいきなり使えなくなるとか、流石のゲーム好きのわたしでも暫くは立ち直れそうに無いしーー。
ーー頭の中でグダグダと考えてると、エイミーは元の調子を戻して言う。
「まあっ?そう畏まらなくてもよろしいのですよ?
何せワが妖精族は数多居る諸人種の中でも上位種に包括される種族なのですから!フフんっ!
、、だから心に妖精の偉大さを認めた者には、寛容であれと母様も仰っていたのですっ!」
「そ、そう?
、、ならお言葉に甘えて」
ようやく足が痺れて動けなくなりそうな姿勢から解放されると、わたしはその上位種に訊く。
「それなら、その説明とか?
、、なんかそういうの始めて欲しいかな、みたいな?」
「フフんっ!これでようやくワタクシも役目を果たせるのですねっ!
まずは古えの呪言、〝すていたす〟と声高に叫ぶのですっ!」
「す、ステータスっ!」
 言われた通りにした。
 ここでまた機嫌を損ねて、死に戻りしては無駄も良いところだ。
 若干の気恥ずかしさを抑えて、その古えの呪言を口にするとーー。

〈ーー/
名前=コノミ
種族=ヒューマン
年齢=15歳
資格=《勇者》《蹴士》
称号=〈初代勇者〉
〈妖精の弟子〉 new!
職業=【無職】

生命値(LP)=66/66
通力値(TP)=35/35
在命値(PP)=??/??

膂力値=28
頑強値=19
知性値=15
精神値=23
敏捷値=29
技量値=20
運命値=34

主幹コマンドスキル=
《勇者道》┳〈聖装決壊氣〉
ーーーーー┣〈人助け〉
ーーーーー┣〈勇者の徴収〉
ーーーーー┣〈勇気への誘い〉
ーーーーー┣未開〈?〉
ーーーーー┣希少〈妖精師事〉 new!
ーーーーー┗固有〈天剣技〉
《蹴士道》┳〈蹴術〉
ーーーーー┣未開〈?〉
ーーーーー┣未開〈?〉
ーーーーー┗未開〈?〉

派生コマンドスキル=
〈聖装決壊氣〉━表示 off
〈天剣技〉━表示 off
〈妖精師事〉━表示 off
〈蹴術〉━表示 off
/ーー〉

 目の前に半透明の表示が浮かんだ。
 これぐらいはRPG初心者のわたしでも、何となくは知ってる。
 何かの小説を原作にしたアニメでも似たようなの見た事あるし、これが定番ーーってゆうものなんだと思う。
 それにしてもなんか、スキル多いよねーー?
 職業も勇者だし、プレイヤーはみんなそうなのかなーー?
ーーちょっと疑問に思ったけど、何か他にも色々と突っ込みどころが多かった。
〈妖精の弟子〉とか〈妖精師事〉とか、内心言いたい事はある。
 でも、今はまだーー雌伏の時だ。
 どうしてゲームでこんな情けない思いをしなきゃいけないのか分からないけどーー。
ーー少しデキる人がみんな、実は隠れてコッソリこれ系をプレイしてたのか、って思い至ったわたしはその後もキンキン煩い妖精の話を聞いた。
 こっちが浮かべた疑問に逐一、まだ訊いてもいないのにエイミーが答えるの繰り返しーー。
ーーって言ってもそれは最低限で、詳しい事はメニューから閲覧出来る掲示板で探れ、って事だった。
 何故かある某チャンネルみたいなものでの情報収集を勧められ、その通りにする。
 そうーー。
 この時のわたしはそれが波乱の始まりとも気付かずにーー。



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