複雑・ファジー小説

Re: 戯構築世界ノ終末戦線 ( No.16 )
日時: 2023/03/17 16:12
名前: htk (ID: ywuu9mPA)

1章〜〜第1幕、挿話その4ーーコノミの話



 掲示板でイベらしい情報を見たわたしは、せっかくだからスレを立ててみた。
 何故か名前表示になったのは誤算だったけど、後々ーーゲーム愛好会のメンバーと合流する事を思えば、別に名前バレしても問題無い気はする。
 妖精のアドバイスもそこそこに切り上げ、わたしは《妖精の森・深奥》と表示される森に向かった。



 その後、野犬の魔物に襲われたわたしは華麗に舞い、蝶のように刺すーーってゆう風にはいかなかった。
 脇腹を食い破られ、何だか見てはイケナイ自分の中身が零れるのもそのままーー光となって消える。
 次に目を開けると、メモリアル・クリスタルーー所謂、セーブポイントの前だ。
「アラんっ?まーた戻ってきましたね!?
どうなのですっ!?
、、そろそろ自分の卑小さを認め、次期女王たるワタクシに助力を請うべきなのですっ!」
 勝ち誇ったようにエイミーがそう仰るけど、まだまだーー。



 最初は野犬、その次は蜘蛛、そしてまた野犬ときて、その次は巨大な豚だった。
 ピグルミートンってゆう魔物で、睨み合っていたのも束の間ーー。
ーーいきなり猛進してきた大質量に轢き潰される。
「くっへウ?!」
 既に内臓の幾つかが潰されたような感じだけど、わたしは立ち上がった。
 痛みと吐き気で気持ち悪くなりそうになりながらも初期装備の木剣を構え、次なる突進を迎え撃つ。
 コマンドプレートを表示し、最初から使えたスキル【飛燕斬】ーーそれをアイプッシュで発動。
 跳躍中、翻りざまに剣を打ち下ろすけど、巨豚の頭上を跳び越えただけで当たらない。
 これが高い所の敵とか空を飛んでる敵なら効果覿面なんだと思うけど、このピグルミートンとは相性が悪い。
 お世辞にも体格が良いとはいえないわたしの身体だと、幾ら能力値で普段以上に動けるっていってもーー所詮は付け焼き刃だった。
 折り返しの突進を躱し、何度目かの【飛燕斬】で辛くも逃れる。
 でも、遂には恐れてた事態がきた。
 TPーースキルを使用する際に支払われる、通力値切れだ。
 このゲームは一風変わってて、わたしでも知ってるMPでも無ければ、TPーーテクニカルポイントでも無く、通力値で技を使用する。
 その通力値ーーTPが切れたわたしは、正面衝突される前に何とか跳び出した。
 進路上に身体を残してたら、今度こそ生命値ーーLPが底を突いたと思う。
 爪先スレスレを掠めた巨体は、すぐ側を通過されただけで吹き飛ばされそうだった。
 人が自動車やバスと戦ってるみたいな感じで、あまりにも無茶振りだ。
 わたしは地面に着いた掌をそのまま叩き付けたくなってーーそうして気付く。
 避けた背後でドシンーーって大きな物音がして振り返ると、木に突っ込んだ巨豚の上でヒヨコが回ってた。
 格ゲーでもお馴染みの、気絶表示だ。
 本能的にそれを悟ったわたしは、一気に駆け寄る。
 もうTPも無いし、もしあったとしても【飛燕斬】だと命中しそうに無いけど、今が絶好のチャンスだ。
 木剣で左右に乱れ斬りーーみたいなつもりで攻撃を繰り返す。
 途中、それに物足りなさを感じたわたしは爪先や肘、後ろ回し蹴りをキメつつ最後に跳躍した。
【飛燕斬】ーーは既に打てないから、生家伝来の踵落としだ。
 巨大な体躯に重く乗しかかるような一撃だったって自負してるけど、でもーー。
ーー着地の瞬間に軸足がズレたのが良くなかった。
 既にピヨリ状態のヒヨコは何処かへ飛び去り、唐突に振り上げられた巨豚の後ろ脚ーー。
ーーわたしはそれを顔面に受け、また死に戻った。



 視界が一瞬暗くなった後、アナウンスが流れ始める。

〈ーー/
称号、〈伝来の足癖〉を獲得しました。
それに伴い、《蹴士道》の主幹コマンドスキル、〈門弟育ちの足癖〉を習得しました。
〈蹴術〉の派生コマンドスキル、【感覚系?ラッシュ】を習得しました。
〈蹴術〉の派生コマンドスキル、【チョー!跳躍踵落とし】を習得しました。
/ーー〉

 何か、一気にきた。
 それで目を開けると、何度目かのメモリアル・クリスタルの前だ。
 難しい顔をするわたしに、妖精が語り掛ける。
「コノミっ、よく聞きなさい!
アナタはもう少し人の言うことを聞くべきなのですっ!」
「何で?
、、わたしはわたしのやりたいようにするし」
 意地だ。
 さっきのピグルミートンなら、もう一度出食わせば可能性がある気がした。
 まだ一度も魔物を倒せて無いけど微妙に能力値がアップした他、新しい称号とスキルが増えてる。
 私が難しい顔でステータスを見詰めてると、横からエイミーが覗き込んだ。
「フンフン?なるほどですっ!
表示〝おふ〟が邪魔なのですよ!?」
「あ!勝手に触っ、、?!」

〈ーー/
名前=コノミ
種族=ヒューマン
年齢=15歳
資格=《勇者》《蹴士》
称号=〈初代勇者〉〈妖精の弟子〉
〈伝来の足癖〉 new!
職業=【無職】

生命値(LP)=69/69 3up!
通力値(TP)=36/36 1up!
在命値(PP)=??/?? 1up!

膂力値=29 1up!
頑強値=20 1up!
知性値=15
精神値=24 1up!
敏捷値=31 2up!
技量値=21 1up!
運命値=34

主幹コマンドスキル=
《勇者道》┳〈聖装決壊氣〉
ーーーーー┣〈人助け〉
ーーーーー┣〈勇者の徴収〉
ーーーーー┣〈勇気への誘い〉
ーーーーー┣〈?〉
ーーーーー┣希少〈妖精師事〉
ーーーーー┗固有〈天剣技〉
《蹴士道》┳〈蹴術〉
ーーーーー┣未開〈?〉
ーーーーー┣未開〈?〉
ーーーーー┗希少〈門弟育ちの足癖〉 new!

派生コマンドスキル=
〈聖装決壊氣〉┳【天帝剣・振り下ろし】
ーーーーーーー┣未開【?】
ーーーーーーー┣未開【?】
ーーーーーーー┣未開【?】
ーーーーーーー┣未開【?】
ーーーーーーー┣未開【?】
ーーーーーーー┣未開【?】
ーーーーーーー┣未開【?】
ーーーーーーー┗未開【?】
〈天剣技〉┳【飛燕斬】
ーーーーー┣未開【?】
ーーーーー┣未開【?】
ーーーーー┣未開【?】
ーーーーー┣未開【?】
ーーーーー┣未開【?】
ーーーーー┣未開【?】
ーーーーー┣未開【?】
ーーーーー┗未開【?】
〈妖精師事〉┳【聖装授与】
ーーーーーー┣【妖精の悪戯】
ーーーーーー┣【フェアヒール】
ーーーーーー┣【妖精の追弾】
ーーーーーー┣未開【?】
ーーーーーー┣未開【?】
ーーーーーー┣未開【?】
ーーーーーー┣未開【?】
ーーーーーー┗未開【?】
〈蹴術〉┳【感覚系?ラッシュ】 new!
ーーーー┣【チョー!跳躍踵落とし】 new!
ーーーー┣未開【?】
ーーーー┣未開【?】
ーーーー┣未開【?】
ーーーー┣未開【?】
ーーーー┣未開【?】
ーーーー┣未開【?】
ーーーー┗未開【?】
/ーー〉

 派生コマンドスキル欄が全て表示onにされた。
 既にわたしは確認済みだったけど、最初は未開ーー未開放スキルが多くて目が回りそう。
 エイミーは勝手にそれを見て、こう言ってのける。
「コノミのこの〝すていたす〟なら森を抜けるぐらいワケないのですよ!」
「どういうこと?
わたし、さっきも死に戻ったんだけど?」
 疑わしい視線を送った。
 いくらこの妖精が巨大化出来るからって、それとわたしとは関係無い。
 エイミーはしたり顔で、何も分かってないのねーーみたいに言ってくる。
「フフんっ!そこに〈妖精師事〉があるじゃありませんかっ!?」
「え、、?だって使いたくないし、、」
 思わず本音を言っちゃったけど、それに構わずエイミーは続ける。
「アナタの《勇者道》の主幹スキル、〈勇気への誘い〉を使い、ワタクシとパーティを組むのですっ!
それから〈聖装決壊氣〉を使えば、あんな犬や豚や蜘蛛なんかすぐにでも蹴散らせるのですよっ!?」
「え、、?でも、その〈聖装決壊氣〉って光か聖属性の武器を引き換えに大技出せるみたいなスキルだよね?
、、光属性の武器、持ってないんだけど?」
 気を良くしてるとこ悪いけど、指摘した。
 確かに〈聖装決壊氣〉からの派生コマンドスキルーー〈天帝剣・振り下ろし〉ならその字面を叫ぶだけで敵が吹き飛びそうな気はする。
 悪い意味でーー。
ーー思わず吹きそうな技名だけど、現状は使えないんだからどうにもならない。
 そう考えてると、エイミーは首を振る。
「これだから野蛮なヒュームはスキルの何たるかを何も理解していないのですっ!良いですかっ!?
まずはワタクシを〈勇気への誘い〉でパーティに誘い、そこで〈聖装授与〉なのですっ!
、、付いて来るのですよっ」
 言われたわたしは、若干ムッとしながらも妖精の後ろに付いていった。
 木々の広間の中央にあった大きな樹のーーその向こう側だ。
 陽射しがよく降り注ぐそこは、透き通りそうな水面ーー。
ーー泉が湧き出ていて、ちょっと思っていた景色と違った。



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