複雑・ファジー小説
- Re: スターワグナリー冒険記 ~ドレトンの宝玉編 ( No.5 )
- 日時: 2023/10/07 00:01
- 名前: 〆切 逃 (ID: T3oqfZAk)
……そんな大層な人がライバルだァ?
…中々に不思議な話だ。しかし、彼の筋骨隆々なその姿に体に浮かぶ幾多もの傷痕。それは彼の発言を裏付けるかのように異様なまでの存在感を放っている。
彼の身体をマジマジと眺めていると、フン、と彼ため息を溢した。ピクリと驚き彼の顔を覗いてみると、血管が兎に角浮かび上がっている上に僕を睨み付けているじゃあないか。なんだ…?と、彼の様子を伺っていると…
「信じてねェみたいだな。もしかして…俺の『師匠』のことでも疑ってんのか?」
と、彼が切り出して来た。正にその通りだから困る。図星ですとしか言えない。そうしている合間にも彼の表情がみるみる険しくなっていく。僕が瞬きをしようとしたその一瞬、前方から勢い良く左足が突っ込んできた。チャキ、っと剣が鞘から抜かれる音がする。
「…テメェ。そこまで信じらんないんなら……見せてやろうか?」
そう言いながらひんやりとした何かが僕の首筋にチョン、と叩きつけられる。こんな状況じゃあそれがグラディウスの刃であることは丸分かりだが、そうだと分かったところで何の意味もない。しかし、幸い僕の首が断ち切られることはなかった。
「…黙ってないで外へ出ろ。見せてやる。」
グラディウスを持ち出したまま彼が外へ飛び出した。
生きている実感が全くせず、浅く息を吸いながらベッドからゆっくり飛び起きた。さて、気付けば村長ももう外へ出ているようだった。ベッドの傍らにいつの間にか携えられていた木刀を手に持つ。(勝てはしないだろうけれど…もしあいつに襲われてもこれで応戦はできるはず…)それは非力な僕への唯一の希望である。木刀を手に、ビクビクしながら玄関の戸を開けると………
外は意外にも賑わっていた。村民達が僕に向けて応援や祝福をしてくれている。戸惑いながら玄関の前で突っ立っていると、近所の家から飛び出してきた男の子が、
「お前スゲーな!!あのカシのにーちゃんと闘うんだろ!?」
とか言い出しやがる。それを聞き付けたのかぞろぞろと子供達がここに集まってくる。みんながみんな大体そんなことを言っているようだ。噂の伝達速度程恐ろしいものはないだろう。それはそうと…あの男は『カシ』という名前なのだろうか。とりあえず覚えておこう。
ゆっくり、恐る恐る前へ歩んで行く。子供達が群れを作り僕の周りを囲っていた。子供達が調子に乗ってきて、みんながみんな僕を煽り始める。その時だった。
ドン!!!
と、地面を何か鈍い物で叩きつけるような音が響き渡る。子供達は大慌てで泣きながら帰ってった。僕もその物音に驚いて逃げようとした…が。逃げようとした時、後ろから誰かに左腕が強すぎる力で引っ張られていたのだ。
気付けばそこは村と森の外れ。実に…訓練場として扱うには相応しい大きさで。
その周囲には観客として並ぶ村民達に…
泣いて帰ったと思った子供達も目をキラキラさせて村民達の側に並ぶ。
となると………後ろにいるのは………………………。
僕が振り返るよりも前に、彼が口を開く。
「テメェ……逃げんなよ?」