複雑・ファジー小説
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- 【完結】A Corpes Love - 花の死体【後書き】
- 日時: 2014/03/22 13:22
- 名前: 午時葵 ◆9ccBFQYMG2 (ID: nRHlsEri)
短編です。
少しだけ性描写と死亡描写がはいります。
* * *
花は、死んでしまった方が——死体になってしまった方が綺麗よね。
* * *
『僕』と『彼女』と『花』と『花の死体』のお話です。
A Corpes Lover >>1-5
あとがき(ST) >>6
【Special Thanks】
新潮文庫:NHK取材班「被曝治療83日間の記録〜東海村臨界事故〜」と、事故に立ち向かった全ての方々。
アトリエサード:トーキングヘッズ叢書No.42 特集:ドールホリック 機械仕掛けの花嫁を探して に関わりました全ての方々。
" The Flower Of Romance " とその著者、本橋牛乳氏。
唯柚氏。
それからお読み頂いた皆様。
- Re: A Corpes Lover - 花の死体 ( No.1 )
- 日時: 2014/03/01 20:56
- 名前: 午時葵 ◆9ccBFQYMG2 (ID: wA2Rnx1Q)
【 A Corpes Lover - 花の死体 】
「花は、死んでしまった方が——死体になってしまった方が綺麗よね」
そう言いながら静かに笑って、彼女は腕一杯に溢れた『花の死体』を暖色のベッドの上に撒き散らした。
ふんわりと香る、死後の甘い香り。
花は死体のほうが美しい。 僕も、そう思う。
* * *
日雇いの仕事を終えて、僕は普段と同じ様に、国から与えられた国営のアパートへと足を向けた。
この国の都市部では、何もかもが生活保護で賄えた。 衣類、住居、最低限の食事や、安心とまではいえないが必要充分な医療費。
都心部で躍起になって働いている奴は馬鹿だと思う。 そんな事を言っては小言を言われ続けた学校でさえ、きっと生活保護で行けるのだろう。
この国は人に優しかったけれど、人を育てるのは苦手だったみたいだ。
そんな、僕にとっては居心地のいい国の、居心地のいい都市で、極稀に、僕の目を引くものがある。
誰が見向くのかわからない彫刻だとか、将来設計の為のアドバイザーだとか、もっと稼ぎのいい仕事を紹介する仲介業者だとか。
この都市に、そんなものを求めてる奴が居るとは到底思えないもの。 そういったものが、稀に僕の興味を引く。
今日も、そうだった。
普段から歩き慣れた道に、今日まで気付かなかった店舗がひっそりと建っている。
それは、花屋だった。
遠い昔に両親に連れられて行った観光地なんかでは見たことがあるけれど、この都市で、花屋を見た記憶が僕にはなかった。
気付くと、僕はその花屋の前で、生暖かい都市の風に撫ぜられる花を眺めていた。
こんな都市で、一体花の需要があるのだろうか? 一体誰が買うんだろうか?
そんな事を考えながらも、僕は花の前に屈み込んで、その艶やかな葉艶と瑞々しい彩色に夢中になった。
どのぐらいそうしていたかは解らない。 だけれど気付いたとき、店の奥で何処かで見たことのある女の人が、優しい笑みを浮かべてこちらを眺めていた。
僕はどうするべきか少し悩んで、再び花へ視線を落とした。 それから、何故だかそうしなければならないような気がして、目の前の小さな鉢植えをレジへ持っていった。
それが僕と、花と、それから彼女との出会いだった。
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