複雑・ファジー小説

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流星をつかむ。
日時: 2011/05/22 14:42
名前: 桜庭遅咲 ◆ilG1GceQB. (ID: khvYzXY.)

こんにちは、こんばんは、おはようございます。
桜庭遅咲というしがない文字書きです。
ファジーでは二作目になりますねー。



目次
雑多
>>0 目次
>>1 注意点

人物
>>2【リン】【ヨウト】【クラン】

設定
>>3 設定とか!

本編
>>4 0
>>5 1
>>6 2
>>7 3
>>8 4『更新』

序章 ( No.4 )
日時: 2011/05/05 12:15
名前: 桜庭遅咲 ◆ilG1GceQB. (ID: khvYzXY.)

「序章」

学校からの帰り道。

今日も疲れたなぁ、なんて空を見上げた。

そしたら、光の筋を作って、星が流れた。

初めて見た…流星、だ。

素直に、綺麗だと思う。

自分の心が、プログラムされたものだと、忘れてしまうぐらいに。

本当の心が、自分にあるみたいに。

届かないと知っていて、少しだけ、手を伸ばした。

本編1 ( No.5 )
日時: 2011/05/07 17:49
名前: 桜庭遅咲 ◆ilG1GceQB. (ID: khvYzXY.)

ざわざわと、朝の教室。

学校の隅のほうにある“A組”の教室。

いつもと大して変わらない談笑。

全員の笑顔が同じものに見える。

当たり前。

表情も、感情も、同じようにプログラムされているんだから。

僕ら、A組の生徒は全員、ヒューマノイドだ。

プログラムされた心に疑問を持つ奴なんていない。

そもそも心が無いなら疑問なんて抱くわけが無いし、仮に疑問に思っても心のない僕たちが独自に答えを導き出すことは不可能に近い。

「おっはよー!今日もいい天気だな、ヨウト」

席につきながら、隣の席の奴に挨拶をする。

そいつの名前は、ヨウト。人間風に言うと中西陽斗。

作られたとき…つまり工場からずっと一緒にいる。

人間は、こういう関係を幼なじみ、とか腐れ縁っていうらしいね。

「おー、おはよ、リン」

ちなみに、関係ないけど、ヨウトの方が型番的にも設定年齢的にもおにーさんだ。

「あのな!昨日の夜、星がすっげぇ綺麗だったんだよ!」

少し興奮したように話を切り出すと、ヨウトは無表情になり首を傾げた。

別にくだらない、とか思ってるわけではなく適切な表情、感情を探してるだけ。

最新型のΣ型には困る、という感情、表情があるらしいけどね。

残念ながら僕もヨウトもS型である。

と、いうかここA組の生徒はA型かS型だけだ。

「その興奮したような口調と興味の対象が凄く人間ぽいな」

ヨウトが無表情なまま言う。

どうやら適切な感情が見つからなかったみたいだ。

「そうかなぁ?」

ちょっと苦笑い。

苦笑い、は曖昧で使いにくい表現だって言われてる。

興奮もおんなじ。

まぁ、心のない僕たちがプログラム外のことに大きく興味を示すことがないから、興奮なんてほとんどするはずないんだけど。

本編 2 ( No.6 )
日時: 2011/05/08 14:49
名前: 桜庭遅咲 ◆ilG1GceQB. (ID: khvYzXY.)

「うん、だって俺らは、そういうのには感動しないはずだろ?上辺だけ綺麗って言うことは可能でも」

そう言ってヨウトはやっと、にこりと笑った。

人間のような曖昧な心を持っていなくても、人工的な美や、プログラムされた芸術的な美、ストレートな言葉…直喩っていうのかな?は僕らでも理解できる。

ただ、風景…風情ってやつ?とか、抽象的な美、抽象的な言葉…隠喩っていうの?は正直なとこ、理解不能だ。

…もし、この空をキレイだって思う感情がプログラムなら、それでもいい。

それでも俺は、空や星が好きだから。

空は、万人から好かれるよね、ちょっと羨ましい。

…いつか、ネオンの光に汚されてない夜空を見たい、なんて昔(と言っても1・2年前だけど)ヨウトに言った気がする。

その時もヨウトは無表情で首を傾げてたなぁ。思い出してちょっと笑う。

「__ン!リン!」

「え、あ、はい!」

名前を呼ばれて我に返る。

いつの間にかホームルームが始まっていて、黒板の前には先生(勿論ヒューマノイド)が呆れたような表情で立っていた。

僕の癖、としてプログラムされている、『考え出すと周りが見えなくなる』という性質(であってるのかな、知らん)

正直なんでこんな癖をつけたのか理解に苦しむ。

「__我々ヒューマノイドは、あくまで__、我々は製作者であるニンゲンより〜___」

先生の『いつもの話』が始まる。

僕らA組の生徒にだけ伝えられる言葉。

もう、何十回…いや、何百回何千回ときいた。

こういう時に欠伸がでるのは、なんでなんだろうなぁ。

きょろ、と教室をこっそり見回しても欠伸をしてる奴なんかいない。

皆真剣に聞いている。

本編 3 ( No.7 )
日時: 2011/05/15 21:35
名前: 桜庭遅咲 ◆ilG1GceQB. (ID: khvYzXY.)

【ヒューマノイドは造られたモノである】

【ヒューマノイドはニンゲンにより造られた】

【ヒューマノイドはニンゲンより上位に立ってはいけない】

【ヒューマノイドはプログラム以上のものを知ってはいけない】

【ヒューマノイドに自由などない】

【ヒューマノイドに心などない】

【ヒューマノイドに…】


入学したときから毎朝毎朝呪文のように言われる言葉。
それによって僕らはヒューマノイドなんだって、いやでも認識させられる。

もう、飽き飽きした。
だから、目の前の人物の赤髪を軽く引っ張る。

「なに…?」

僕のほうへ怪訝そうな顔で振り向く深い闇色の瞳。

彼女は、クラン。
僕よりもずっとおねーさんの型番A−0020
昔あった事故のせいで視覚プログラムの一部にバグが生じるらしい。
その自己のせいで、右目の人工皮は剥がれて、修復不可能なレベルにまでなってるらしい。

だからクランはいつも、右目に包帯を巻いている。

「ねぇ、先生の話つまんなくないの?」

「なに言ってるの、リン。大切で有り難い話でしょ?」

クランの口調は呆れつつも、諭すような感じ。
ヨウトにも聞いてみようかとも思ったけど、どうせ同じ返答がくるだろうと思って、やめた。

たまに、僕は不良品なんじゃないかと思う。
感情的で、自由主義で、ヒューマノイドらしくない、としょっちゅう言われる。

もし、不良品なんかじゃなくて、本当のニンゲンだったら、なんて絵空事を思い描く。
ありえっこない。

型番S−0425、固体名リン、ニンゲン風に言う時は中村鈴。

それが、僕…ヒューマノイドS−0425。

本編 4 ( No.8 )
日時: 2011/05/22 14:41
名前: 桜庭遅咲 ◆ilG1GceQB. (ID: khvYzXY.)

少し、気分が沈む。

落ち込む、というのもひどくニンゲンらしい気がするが、まぁいいや。

僕は、僕として生きる(正しくは稼動するかもしれないけど)それだけ。

気がつくと、とっくにホームルームは終わっていて、あと2分で1時間目が始める時間だった。

A組に、移動教室はない。

入学当初はなんの疑問も持たなかったが、今は理由がわかる。

ちょっとだけ、ニンゲンは自分勝手な気がする。

理由は簡単。

この学校…嶋岡第三高等学校…通称嶋高に通うニンゲンたちにみつからないため、だ。

一応ここの生徒達は、僕らA組の存在を知っている。

それでも、ヒューマノイドを毛嫌いする連中がいるので、なるべくニンゲンと接触しないようにされている。

…自分たちで作っておいて嫌悪するなんて、勝手なやつらだなぁ、と思ったり。

…あれ?なんかもうお昼の時間じゃん。

先生、注意してくれればいいのに。授業全く聞いてなかったよ?

とか、責任転嫁しつつ、ヨウトを見る。

「リン、飯」

布に包まれたものを投げてくれるヨウト。

風呂敷、っていうんだっけか、この布。

「さんきゅ。クランも誘うよね?」

僕の問いかけに、ヨウトは勿論、と頷いた。

僕ら3人はニンゲン的に言うと“気が合う”

妙に似たプログラムなのかなんなのかはよく知らない。

「クラン、今日の飯、なに?」

「苺ミルク」

ちなみに、僕らの主食は、というと。

大体予想はつくだろう。そうオイルだ。

最近では、いろんなフレーバーのものが売っていて楽しい。

つまり、クランの言う苺ミルクっていうのは苺ミルクフレーバーのオイルのこと。

あ、ちなみにねじや釘を食べるのは初期型の清掃用ロボットさんたちくらいだ。

あと、エネルギー源にはならないけど、僕らはニンゲンと同じ食事もとれる。

「ヨウトは?」

「俺も苺ミルク。リンのはアップルティーと最近気に入ってるぽいニンゲン食…おにぎりだっけ?あれ」

「あ、ほんとだ」

僕は結構ニンゲン食が好きだ。

と、いうよりも好き嫌いがない、というようにプログラムされてるみたい。

さて、食べようか…と手を伸ばした時だった。


『A組、S-4025。校長室まで至急来なさい」


放送が、入った。


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