複雑・ファジー小説
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- —Book on happiness—
- 日時: 2011/08/18 16:12
- 名前: サポロ (ID: T3.YXFX2)
始めまして、サポロと言います。
多分グッチャグチャになると思いますけど、これからよろしくお願いします。
Book on happinessというのは、幸せの本という意味です。
【登場人物】
・幸物 世界 (さちもの せかい)
性別、男。
図書館の《館長》でいつも本を読んでいる。
幸せの本を探しているアンドロイドの少女、ソラと出会う。
《世界の図書館》館長のみが使える《言霊》が使える。
・ソラ
アンドロイドの少女。
幸せの本を探していて、世界の図書館に訪れる。
本人はこの図書館に本があると考えているが・・・。
いつもカンテラ(ランプの事)を持っていて、その中の炎は蒼白い。
・《死神》
長年ソラに付き添ってきた男。
名前は皆知らない。
誰も知らない。
第一《死神》と呼ばれる理由も判らない。
【種族】
《人類》—ヒューマン—
お互い助け合って文明を開花してきた種族。
天界人とは仲が悪いが、精霊達や巨人族など自然達と助け合っている。
《精霊族》—スピリット—
女神アイリスによって生まれた種族。
自然達と助け合い、人類を護っている。
治療能力を得意とする種族でもある。
《巨人族》—ジャイアント—
その名のとおり巨体の種族。
精霊達や人類と助け合い、生きている。
特に種族間同士の争いを好んでいる。
《天界人》—アマント—
他の種族をあまり好まない種族。
戦争や争いを好まないが、戦闘能力は高い。
背中に羽根が生えている事が特徴。
《機械人》—キャスタニック—
身体の一部が機械の種族。
何かを作る事や旅をする者など好奇心が旺盛な種族。
他の種族とは争わない、平和主義の種族。
《図書館館員》—ライブラリー—
他の種族たちとは違い、争わず、また干渉することも無い。
図書館という人の強い意志が宿った本を護り続ける守護者でもある。
人の心を癒す—言霊—が使える唯一の種族。
図書館館員には3つの仕事があり、《図書館館長》《館員》《本狩り》がある。
《図書館館長》は言霊を使い、他者の心に干渉し、心を癒したり物語を読んだりする事ができる。血筋のみで後継者が決まる。
《館員》はその助手。
《本狩り》は本を調達する者。本を書いたり物語を書いたりしている。
・目次
《プロローグ》—白紙—
>>1
《第一話》—世界の図書館—
>>2 >>3
《第二話》—外の世界—
>>4 >>5 >>6
《第三話》—ユグドラシル—
>>9 >>10
- Re: —Book on happiness— ( No.1 )
- 日時: 2011/08/17 22:40
- 名前: サポロ (ID: T3.YXFX2)
《プロローグ》—白紙—
コノ世界には、幸せの本と言う、本が存在していると噂されていた。
悪魔でも噂だ。
———そんなの、あるわけが無いじゃないか。
そういう大人たちの話は最もだと思う。
けども、僕の図書館には、ある絵本が一冊だけある。
その本には、幸せの本という題材で物語が描かれている。
僕はいつもその物語を父から聞かされていた。
幸せの本———。
小さい頃は良く、信じたものだ、と。
今は思う。
———カラランッ
鐘が鳴って。
扉は開く。
「こんにちわっ!本を読みに来たよっ」
少女は———アンドロイドだ。
機械。
その脇には、黒い服を着た男が居座っている。
彼の名は———知らない。
誰も知らない。
長年付き添ってきた彼女でさえ知らない。
ただ、こう呼ばれている。
《死神》———と。
「おはよう。何を読みにきたの?」
「今日は———」
世界は今日も平和だ。
本を読もう。
- Re: —Book on happiness— ( No.2 )
- 日時: 2011/08/17 22:54
- 名前: サポロ (ID: T3.YXFX2)
「ねぇねぇっ!世界っ今日は何がおすすめ?」
「・・・ヘブンズ・ヘブン、かな」
《第一話》—世界の図書館—
「ソレ、何回も読んだッ」
「・・・じゃあ何時もどおり幸せの本を探せばいいじゃないか」
「たまには普通の本を読みたいんだよ」
そういって棚に手をかける少女。
ソラの右手から、蒼い粒子が飛び散っている。
彼女はアンドロイドだ。
粒子が飛び散っていても、別に可笑しくは無い。
コトンッ・・・と、机の上にカンテラが置かれた。
「・・・ん」
「今日のおやつはヘブンズ・プリンです」
「天国のプリン?」
「えぇ。このプリンは実際に天国からお取り寄せした物です」
真顔で言う彼に、僕は溜息を吐いて、プリンを口にした。
美味しい。
「あー!うぁうぁーっ」
——ガシャァァァンッ
・・・転んだな。
「全く、貴方と言う方は・・・」
「うぅー、ゴメンなさいーっ」
「別にいいよ。あぁ、《死神》。アリガトウ」
「いえ、我が主がした不始末ですから」
「うぅーっ」
頭をさすりながら起きるソラに、僕は少しだけ笑って、本を棚にしまっていく。
「・・・楽しそうですね」
「・・・あぁ、しばらくこんな常連は来なかったからね」
「そうなのですか?」
「うん。十年間ずっと1人だった」
「・・・」
「そんな苦い顔しないでよ。寂しかったけど、今は楽しい」
一冊だけ本を抜き取って、僕は椅子に座る。
本を開いて、歌うように僕は言葉を口にした。
コトバは館内に響く。
羅列のように空中に、泡のように広がっていく言葉に、ソラは眼を輝かせた。
「《世界の図書館》の館長のみが使える《言霊》ですか」
「うん。綺麗でしょ?」
空中に浮く、泡の様な色とりどりの言葉を見ながら、僕は言った。
- Re: —Book on happiness— ( No.3 )
- 日時: 2011/08/18 08:06
- 名前: サポロ (ID: T3.YXFX2)
空中に浮遊した色とりどりの言葉は、泡となって消えていった。
僕の弱い力じゃここまでが精一杯だ。
「あぅーっ綺麗だったのにー」
「明日また使ってあげるよ」
「今日じゃダメなの?」
「これは一日限りの魔法だからね」
まぁ、僕の実力不足、って事もあるんだけど。
「・・・珍しいな、お客さんだ」
——カラランッ
扉が開き、ソコに立っていたのは1人の少女だった。
髪は白く、綺麗な長髪にされている。
「あの、ここが、《世界の図書館》ですか?」
「えぇ、確かにここは《世界の図書館》ですよ」
「あの、私、探している本があるんですけど・・・。《青い鳥》っていう本なんです」
「あぁ、その本なら今調度、一冊だけありますよ。ソラ、取ってくれる?」
「オッケー」
ソラは棚から青い本を取り出すとその本を僕に本を渡してくれた。
青い本は僕が手にすると反応するように青く光を放ち始める。
「では、物語を語りましょう」
青い本の表紙を開き、僕は言葉を放つ。
《言霊》の力だけど、これは少し違う。
相手の心に共鳴して、人の心に届く言葉を放つ《言霊》だ。
気が付けば、少女の頬から涙が伝っていた。
人のココロに干渉し、人の傷を癒す一日限りの魔法は、上手く行った様だった。
フワリフワリと浮かんだ言霊はまたしても直ぐに消えて言った。
粒子となって弾いていった。
「・・・ゴメン、なさい・・・ッ」
(・・・視える)
彼女の心が、鮮明に僕の心に映し出される。
——アンタなんかっ・・・
———アンタなんて要らない子なんだよッ
——邪魔者!
——・・・皆、何で私を否定するの?何で・・・?
———許せない・・・!許せないッ復讐してやるッ・・・
そう言った彼女の側には、横たわった黒髪の少女。
肌が———死人のように、蒼白かった。
——ドンッ
———キャァァァァァッ
少女は少女の背中を押した。
残ったのは屋上に木霊する声と、目標を失った少女だけ。
僕の心に響く、彼女の声。
———《世界の図書館》・・・?ソコに行けば、私が犯した罪を・・・
少女は悲痛に呟いた。
そして、記憶は粒子となって消えた。
「・・・ゴメンなさい・・・っ」
「《青い鳥》・・・。この物語はかつて友人を傷つけた親友が、その親友の本当の真意を知るために旅をする物語です。そして最後のページは白紙。この物語は途中で終わっているのです」
「途中で、終わって・・・?」
「・・・主人公次第だからです。この先の物語は、主人公が運命を決めるのです」
「・・・」
少女は再び涙を流す。
「・・・う・・・」
「《世界の図書館》は全ての生命を祝福します。傷ついたココロがあるなら僕達はその傷ついた心を助けましょう。もし、貴方のそばに貴方と煮たような方がいれば、この図書館を紹介してみてください」
「・・・ハイ・・・ッ・・・アリガトウございました・・・」
すっきりしたような顔立ちで、少女は笑った。
「いい笑顔だ。それでは、またの来店をお待ちしております」
少女は図書館を後にする。
《死神》が僕の側によってきた。
「・・・知っているのでしょう?」
「何を?」
僕は少しだけおどけて見せて、笑った。
「・・・彼女は罪なんて、犯してないことです」
「さぁ、何のこと?」
「・・・」
確かに彼女は罪なんて犯していない。
だから彼女は罪の意識なんて要らないんだ。
罪を背負っているのは———。
「あの物語の最後のページ・・・白紙の前のページです。《本当は、友人が親友を傷つけるために行った行為》、ですから」
「・・・」
僕はソラを横目で見た。
ソラは机にベッタリと座り込んで寝てしまっている。
「・・・《死神》、ソラに毛布かけてくれる?」
「わかりました」
《世界の図書館》に、何時もどおりの静けさが戻った。
聞こえるのは、誰かも知らない《精霊》達の声だけだった。
- Re: —Book on happiness— ( No.4 )
- 日時: 2011/08/18 09:09
- 名前: サポロ (ID: T3.YXFX2)
僕は図書館の外を知らない。
外の世界は僕を知らない。
《第二話》—外の世界—
「僕は外の世界を知らないんだ。ねぇ、ソラ。外の世界ってどんなの?」
「うーん、なんて言えばいいんだろー?」
「平たく言えば、残酷ですね」
「残酷?」
「動物は生きるために食べなければいけませんから。一部は機械人ですけど。たいていの動物は食べて生きなければいけません。貴方だってそうでしょう?食べなければ死んでしまう。ソレは人としてあり続ける行為です。食べなければ動物は動物ではないですから」
「・・・良くわかんないな」
「食物連鎖、というものです。知らないのですか?」
僕は首をかしげる。
「《精霊》達に聞けばわかるかな?」
「無理じゃないですか?」
はっきり言われて僕は考え込む。
この図書館には世界の本が全て揃っているけど、判らない事だってある。
「どんな本でも《外の世界》は語ってくれないから」
「・・・《図書館館員》は外に出てはいけない決まり、規則でしたね」
「うん。《図書館法則》第1条。図書館館員は外に出てはいけない。理由は図書館館員の力を外に漏らしてはいけない、図書館館員を護るため、図書館館員の仕事ではなく、《本狩り》の仕事であるから」
「世界っ!窓の外見ればいいじゃないかー」
「《図書館館員》は外の世界の空気に触れただけで《霊障》が起こる可能性が高いです。万が一起こってしまうと、」
「図書館館員は《純度》を失ってしまうから」
僕は溜息を吐いた。
小さい頃、そのことを何度も父さんから聞かされた。
父さんは外の世界から来た、《図書館館員》だ。
本当にゴクまれに。
父さんのような、《図書館館員》がいる。
《霊障》を受けず、外の世界に歩ける《図書館館員》。
僕もそうだったらいいのに。
「世界ッ」
「?」
振り向くとソラが僕にひまわりを差し出していた。
いつの間にそんな物を取ってきたの?
聞こうと思ったけど、彼女はアンドロイドだった。
・・・それくらい当たり前、か。
「世界ッ外のひまわりだよっプレゼントッ」
「・・・アリガトウ」
「途中で《巨人族》に会っちゃってさー。大変だったんだー」
カランッと、音を立ててカンテラが揺れた。
相変わらずカンテラの中から蒼い光が漏れている。
「・・・ソラ、悪いんだけど手伝って欲しい事があるんだ」
「手伝って欲しい事?」
「材料を調達して来て欲しいんだ。これ、メモだよ」
「うんっ行こう《死神》」
「では、直ぐに帰ってきますので」
———カランッ
カンテラを持ったアンドロイドが、外の世界に出て行った。
————ガタンッ
「・・・?」
僕は物音がした、棚の後ろを見た。
棚の後ろには、白い羽根を生やした少年が座り込んでいた。
「《天界人》・・・?」
ビクッと震えて、少年は僕をキッと睨んだ。
「怪我してるね。今治療してあげるから」
《精霊》達と心を通わして、精霊達に彼の傷を癒してもらった。
ココロを癒すのは僕達の仕事だけど、身体の傷を癒すのは《精霊》達の仕事だ。
「これでもう平気だよ」
「・・・お前」
「ん?」
僕は首をかしげた。
《天界人》の声は、僕達《図書館館員》しか聞ける事はできない。
勿論、《精霊》の声も同様だ。
僕達は心を通じて言葉を聞いている。
だから、言葉が判る。
「何で、《天界人》を助ける?」
「何で?ソレを《図書館館員》に聞くのは可笑しいことじゃないか?」
僕は少しだけ笑って、彼に答えた。
「・・・《図書館》の中でもこの《世界の図書館》は、《天界人》でも有名だ」
「そうなの?」
ソレは初耳だ。
「《天界人》———。俺達は、《図書館館員》を良く思っていない」
「ソレは知ってる」
「けど、お前みたいな変わり者も居るってことがわかった」
「・・・ソレ、褒めてるの?」
「さぁな」
羽根を一度、二度羽ばたかせて。
少年は本を一冊取り出して読み始めた。
僕は館長の椅子に座って、ペンを走らせる。
———ガコンッ
「ただいまーっってうわぁっ!?《天界人》!?」
「何があったのですか?」
「怪我してたところを治療したんだよ」
僕は二冊本を取り出しながら二人に言った。
- Re: —Book on happiness— ( No.5 )
- 日時: 2011/08/18 11:33
- 名前: サポロ (ID: T3.YXFX2)
「天界人を治したのですか?」
怪訝そうに聞く《死神》に、僕は頷いた。
「元々他種族とはあまり関わらない、僕達はそんな種族だからね」
「うっわぁー!《天界人》初めて見たッ!」
「ソラも興味を示したし、別にいいでしょ?図書館で本を読むくらい。それに、僕が館長だ」
「・・・」
少し不満気味な《死神》に、僕は紅茶を差し出した。
黙ってソレを受け取ると、少し口に含んでいる。
「・・・元々《機械人》は好奇心旺盛ですから」
「まぁね」
僕は黄色い本を一冊取り出して、歌う。
粒子が泡のように空中に舞った。
「・・・これが言霊」
「まぁ、僕の弱い力じゃせいぜいこうやって、粒子みたいに飛ばすので精一杯なんだけどね」
強い力の持ち主なら、粒子をより多く飛ばす事ができたり、具現化したり、色んなことができるんだけど。
言霊をしばらくジッと見つめる少年。
「そういえば君の名前、聞いてなかった。君の名前は?」
「・・・エリアス。・・・お前、さっき弱い力って言ったよな。お前の力は弱いんじゃない」
「?」
「お前自身が力の使い方を良く判っていないからだ。お前の言霊は不協和音だ」
そういえば、変な音がする。
耳を済ませて僕は聞く。
言霊はそれぞれ音がある。
音は《精霊》が共鳴して奏でる物だ。
けど、《精霊》がかなで切れないほど強力だと鈍い音がする。
「・・・」
「まぁ、俺も《図書館館員》じゃないから良く判らないけどな」
———ポーンッ
一度、二度、澄んだ音がなった後で音の共鳴は崩れて行った。
「・・・そろそろ帰ろうと思う。じゃあな」
「あぁ、これも持っていくといい」
僕は一粒だけ、ビンの中から黄色い飴玉を取り出して彼に渡す。
「これは?」
「《ココロの飴玉》。《菓子屋》で買ってきてもらったうちの一粒だよ」
「・・・」
エリアスはツバサを羽ばたかせ、空を見上げた。
「・・・また、来てもいいか?」
「勿論だ。《世界の図書館》は全てを祝福するから」
エリアスは少しだけ笑って、翼をはためかせた。
「世界ッ!私にもソレ頂戴ッ」
「ハイハイ」
「主、もう少しわきまえてください」
「いいじゃんー」
僕はフッと、床を見た。
床に、一枚の白い羽根が落ちていた。
僕は拾い、ソレを本の間に挟んだ。
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