複雑・ファジー小説
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- 【短編集】日常とは何なのかと申しますと【1話完結型です】
- 日時: 2012/12/17 14:27
- 名前: 稲荷 ◆6RQCIAKXwE (ID: npMPGGPe)
初めまして、稲荷と申します。読み方は「いなり」です。由来は、先日京都の伏見稲荷大社に行ってきたことから。特に深い意味はございません。
さて、こうして文章を書くときに口調をどうしようか迷いましたが、あまりはっちゃけるのも馴れ馴れしいと思い、結果的にこのようになりました。堅いイメージをお受けになる方もいらっしゃると思いますが、単純に
——あ、こいつ電波だ。
と思っていただければ、少々イメージが和らぐかと思われます。
さて、このスレの内容ですが。私の文章力向上を目的とした、気まぐれ更新の短編集です。一話完結で、一話ごとに関連性はありません。
ですので、個々の作品と見てください。
×注意×
・荒らし・チェンメはお断りしております。
・誹謗中傷は読む方が不快に思いますので、おやめください。
・更新は不定期で、遅いです。
・なお、上記のことが納得いかない方はお戻り下さい。
○目次○
・目次>>0
<短編>
・『とある友人の家族事情』>>1
・『家庭内上下関係』>>4
・『無感状態』>>5
・『居候は座敷童か煩わしいか』>>6
・『この世界は誰トクなのだろうかと問う日曜日の午後3時』>>7
・『夏から秋の移り変わり』>>11
・『明日があるさと信じてみる』>>14
・『赤とんぼが帰る頃』>>15
・『大さじ一杯の甘味料を苦い毎日に』>>16
・『哲学? いいえ、これはただの弱虫なだけです』>>18
<ご挨拶>
・参照100突破のお礼>>8
・参照200突破のお礼>>17
□お客様□
・モッチリ様
ここまでお読みくださり、誠にありがとうございます。
そうぞ、お楽しみ下さいませ。
- Re: 【短編集】日常とは何なのかと申しますと ( No.5 )
- 日時: 2012/08/10 15:20
- 名前: 稲荷 ◆6RQCIAKXwE (ID: SGJxjeZv)
『無感状態』
何も感じない。心の中にぽっかりと穴が開いてしまったように、私は底知れない虚無感に覆われていた。目は何を見るわけでもなく虚空を映し、乾いた上下の唇は合わさることなく開いている。暗いリビングの中央に置かれたソファの上で、私はただ息をするだけの人形に成り果てていた。
——ボーン。ボーン。ボーン。
廊下に置かれた大時計が音を立てた。低い、鐘の音。そのとき私は、初めて今の時刻を知った。
「…………」
12回鳴った後、再び静寂に包まれる。この時間帯ならば、外は漆黒の闇が広がっているのだろう。確認するまでもない。
一体いつからこうしているのだろう。四肢をだらしなく下げ、生きる気力もなくなった私。つい最近までは、生活する上で必要最低限のことはしていた。食事や入浴などなど。けれど、それをしなくなったのがいつだったかは定かではない。一日だけかもしれないし、三日かもしれない。それほど、今の私は時間の感覚を失っていた。
「…………」
一体いつまでこうしているのだろう。
お腹が空いた——かもしれない。頭がかゆい——かもしれない。トイレに行きたい——かもしれない。あぁ、ダメだ。五感も失われてゆく。
「…………っ」
乾いた笑い声は声にならずに虚空へ消えた。ついで、喉に痰が絡んで咳き込む。
——せっかく、向こう側に行けるかと思ったのに。
残念があるうちは、こちらに踏みとどまらなければならないのだろうか。だとしたらおかしい。私は、この世に残念などないのだから。
視覚、聴覚、嗅覚、触覚、痛覚。全てが肉体から消え失せたなら、そこに残るのはなんなのだろうか。魂は何処に行くのだろうか。肉体はどう滅びるのか。
そんなことを考えながら、また、私は私でなくなっていく。
————————————————————————————————————————————————————————————
ちょっと短すぎましたでしょうか。シリアスを目指して書いてみました。
やはり難しい。いまいちリアリティに欠ける描写でした。
川上稔先生の「境界線上のホライゾン」という作品で、主人公が亡くなった友達がいる“向こう側”に行こうとした。という話があるのですが、
そのときに思いついたのがこの「無感状態」でした。全ての感覚が肉体から切り離された後、魂だけが残ったその体は屍同然なのではないだろうか。と、そんな風に思いました。
- Re: 【短編集】日常とは何なのかと申しますと ( No.6 )
- 日時: 2012/08/13 21:31
- 名前: 稲荷 ◆6RQCIAKXwE (ID: SGJxjeZv)
『居候は座敷童か煩わしいか』
きんきんに冷えた部屋の中で、白いキャミソールにホットパンツ姿の女性が寝転がっている。否、寝転がっているというよりも単純に転がっており、その塊は微動だにしない。私は涼しいを通り越して寒くなっている原因であるクーラーのリモコンを手に取ると、問答無用にその活動を停止させた。
「……生きてる?」
私の問いに屍同然と化している友人は、うつぶせになっている体をごろりと仰向けにした。決して豊かとは言えない女性的部位がわずかに上下する。良かった、息はしている。文明の利器によって危うく物言わぬ体となるのを防げたようだ。とは言っても、この冷蔵庫の中と言っても過言ではない部屋の中で冷たくなっていても、あまり大差がない気がするけれど。
「世の中は節電だというのに、よくもまぁ20度まで下げることが出来たね」
「熱かったんだもん」
「字が違う」
「厚かったんだもん」
「あんたの脂肪が?」
無言で側にあったハート型のクッションを剛速球で投げられた。ラブリーな形をしているけれど、凶器に近い早さで投げられると自分の心臓を連想させて怖かった。
キャッチしたクッションを床にたたきつけると、部屋を見渡した。白と青を基調に整えられた部屋は、清涼感漂うクールな色合いだ。けれどその部屋主である友人は、ダメ人間を具現化したような人間であり、なおかつこの部屋は元私のだというのだから笑える。
「居候が電気料上げるなんて、良いご身分ね」
「居候じゃないって、座敷童だって」
「こんな現代社会に毒された座敷童はこっちから願い下げよ」
「幸をとどけるぞ〜」
「辛の間違いじゃないの?」
「漢字のミステリー」
「バカなこと言ってないで、さっさと起きなさいよ」
マグロの如く横たわっている友人をつま先で軽く蹴飛ばすと、私はフローリングの上にぺたりと座った。心地よい冷たさが肌に伝わり、思わず頬が緩む。
近くの本棚から分厚い小説を取り出し、用意しておいたポテトチップスの袋を開ける。ティッシュボックスも用意して、完全装備。嬉々として表紙をめく——
「……何であんたがポテチをどか食いしてんのよ」
ろうとした手を止めた。触れるはずの袋はそこに存在しなく、代わりにむなしく中をかいただけ。
「そこにあったから」
「ジャイアニズムか」
「あなたのものは私のもの。わたしのものはわたしのもの。地球全部はわたしのもの」
「ジャイアンよりひどいわね」
もうやだこの人。
心の中で溜息をついているにもかかわらず、友人はそのままポテトチップスを全て平らげてしまった。あぁ、さようなら私の嗜好品。
「ねぇ、もうないの?」
「自分の胃の中から取りだしては如何?」
「あはは。冗談きついんだから」
絶対零度の笑みを見せて居るであろう私の言葉が、冗談に聞こえたら友人は耳鼻科に行った方が良いかもしれない。
ちぇー、と呟いた友人は再びごろごろの魔神となる。きっと部屋の掃除をさぼっているのだろう。うっすら誇りのかぶっているフローリングを、自らの体で掃除を始めた。
……ごろごろしている人間も、役に立つらしい。掃除機として。
私はその光景を目尻にとらえながら、本の世界に没頭することに決めた。
————————————————————————————————————————————————————————————
自由奔放な友人と、それを冷ややかに見つめている「私」のお話でした。
私はおそらく「友人」の方だと思いますが、それを見る私の友人はきっとこんな風なのだろうかななどと。
やや遠回しな言い回しは、現在アニメ化もしている田中ロミオ先生の「人類は衰退しました」の書き方だったので、少しそれを意識しながらかいてみました。
- Re: 【短編集】日常とは何なのかと申しますと ( No.7 )
- 日時: 2012/08/25 18:50
- 名前: 稲荷 ◆6RQCIAKXwE (ID: 5oJbC9FU)
『この世界は誰トクなのだろうかと問う日曜日の午後3時』
ヘッドフォンから流れる軽快な音楽に合わせ、テーブルを指先でリズムを打つ。アップテンポなその曲は歌詞も早口であり、聞き取れなかったフレーズがすでに何個もある。あとでもう一度ゆっくり聞こうと頭の片隅で重いながら、私はすでに冷め切ったコーヒーに手を伸ばした。
日曜日の午後特有の、どこか気だるげな空気を含ませた喫茶店。決して繁盛しているとは言い難く、いつ来ても人の気配がぽつりとしかない。今もカウンター席に一人と、上品そうなおば様×3。おば様達は一杯のコーヒーで、すでに2時間は居座っている。話の内容が耳に入ったときは、どうしてその程度の情報でわいわい出来るのだろうかと不思議に思ったものだ。
カウンター席に座っているのは、難しそうな顔をしたおじいさん。背筋が伸びた体を包む、チャコールグレーのスーツ。新聞を広げ、時折「ふぅむ」 などと声を上げている。このおじいさんは常連さんで、同じく週に5日ほど通っている私とは顔なじみである。長年勤めていた会社で先月定年を迎えたらしい。
外の世界とは切り離されたような、この空間。窓の外でうごめく人の波が、ビデオを早送りしているような錯覚を覚える。
「…………ふぅ」
そんな光景をずっと見ていただろうか、ふいに目眩に似た感覚が襲った。小さく息を吐き、頭を数度軽く振る。
タオルで汗を拭く人、スマホをいじりながら歩く人、隣を歩く友人とのおしゃべりにこうじる人——。全てが別世界のように思え、私はすっかり傍観者だ。
全てが別々の行動をする人々でも、せわしない動きは共通していた。きっと、限られた時間をなるべく有意義にすごそうと必死なのだろうか。
「……そっか」
何かに追われるように歩く人たちは、きっと時間に追われているのだ。
私はポケットに入れていた音楽プレーヤーの電源を切ると、ヘッドフォンを首にかけた。とたんに耳に入ってくる音が減り、代わりにマスターお気に入りのジャズが入ってきた。
「おかわりは、どうですか」
「ぁ……。いただきます」
いつの間にマスターが来ていたのだろうか。蓄えひげが自慢のマスターは、にっこりとしながら上品な手つきでコーヒーを注いだ。ほのかな香りが鼻腔をくすぐる。
「外に、何かあるんですか」
「え? ……いや、何もないです」
「そうですか? では、何かを考察していた」
「当ててみますか?」
「そうですね……」
こういった応答が好きなマスターは、楽しそうに手を顎に持って行った。
しばらく顔を伏せた後に、マスターは実に晴れやかな顔で言う。
「ずばり、この世界は誰のものだろうか」
「その心は?」
「今流れている曲をもとに」
その答えに思わず苦笑する。どうやらマスターのお気に入りの曲は、その思考すらも支配するらしい。
私はいたずらっ子のような笑みで言った。
「残念。今まで軽快なJ-POPを聞いてました」
「なんともったいない。このすばらしき世界には、すばらしいジャズという捨てがたいものがあるというのに。それをのけ者にしてまで聞くなんて」
「のけ者にした覚えはないですよ?」
マスターはやれやれといった風に肩をすくめると、カウンターの中に入っていった。
——この世界は誰のものだろうか。
神様? 天皇? 総理大臣? 大統領? 私の? それとも、名も知らない誰かの?
それを考え出したら、きりがなかった。けれど、果てのない思考は私の脳を支配し、コーヒーの香りという情報さえも遮断する。
この世界があって利益を得るのは誰? ——私たち人類。
この世界があって良かったと思うのは誰? ——私たち人類。
この世界がなくなると困るのは誰? ——私たち人類。
「この世界は誰のためにあるの?」
——私たち人類。
どこかでそんな声が聞こえた気がした。
しかし、それは脳内にいるもう一人の自分かどうかは知らない。私自身の声だったかもしれないし、他の誰かだった気がする。
その声を合図に思考が戻り、割れんばかりの蝉の声が入れ違いに入ってくる。何事かと思い、その進入経路のドアを見た。おば様達が帰って行く。
時計を見ると、すでに4時を回っていた。空にはまだ輝き足りないと思わしき太陽が姿を見せている。
「世界は、あなたのためにあるの?」
私の呟きに返ってくる答えは————。
- Re: 【短編集】日常とは何なのかと申しますと ( No.8 )
- 日時: 2012/09/04 19:02
- 名前: 稲荷 ◆6RQCIAKXwE (ID: 5oJbC9FU)
【ご挨拶】
皆様のおかげで、参照が100を突破しました。まだ作品数も少ないというのに、本当に有り難い限りです。
さて、こんな私ではありますが、実は言うと今年は受験を控えております。数学の点数が平均を下回り、担任教師より
「お前ヤバイからなマジで」
なんて脅s……ご忠告を頂き、夢にまで数学の問題が出てくるほど追い込まれている状況です。
そんな中ではあまり時間がとれず、なかなか作品を執筆できておりません。楽しみにして下さっている方がいるとは思っておりませんが、お待たせしてしまって申し訳ありません。
なるべく、合間や気分転換を利用して書こうと心がけております。
こんな私ではありますが、今後ともご贔屓にして下さると嬉しいです。
それでは、また。
9月4日(火)作者:「最近数学の参考書に追われる夢を見た」稲荷
- Re: 【短編集】日常とは何なのかと申しますと ( No.9 )
- 日時: 2012/09/04 20:51
- 名前: モッチリ (ID: tnkG6/9W)
お久しぶりです(。・ω・。)
また読ませていただきました!
私自身も今年受験生なのです。仲間がいて嬉しい限りです。
しかも私も数学がピンチ。し、親近感が…
お互いに頑張りましょう(;´Д`)

