複雑・ファジー小説

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クイーンの世界
日時: 2013/02/12 23:45
名前: 夜人 (ID: HhjtY6GF)


簡単なご挨拶から。名前は夜人やひとと申します。
話のジャンルは「超能力」と「サバイバルゲーム」───まぁ普通です。
コメントやアドバイス、ご指摘などを宜しくお願いします。



@主要登場人物とルール>>003
@登場人物
 ⇒超能力者
 ⇒東京都民


@物語
 chapter-01『始まり』
  01-01(2013年12月19日) >>001 subtitle"地震"
  01-02(2013年12月19日) >>005 subtitle"赤い目の白い少女"
  01-03(2013年12月19日)
 chapter-02『飛ぶ男』
  02-01
  02-02






Re: クイーンの世界 ( No.1 )
日時: 2013/02/12 15:57
名前: 夜人 (ID: HhjtY6GF)

chapter-01『始まり』



2013年12月19日 冬



高校生になると、クリスマスの日である25日も学校に登校しなければならない。
ましてや3年生なんて、大学受験を控えているからクリスマスを楽しむ暇もない。
東京都内の私立高校に通う上野優は、上の空で数学の授業を受けていた。
窓の外では雪が降っており、天気予報が正しければ今夜は豪雪になるそうだ。優は大きな欠伸をする。
黒板の前では初老の数学教諭が白いチョークを持ち、延々と問題の回答となる証明を書き続け、それを生徒たちがノートに板書していく。しかし、全員ではない。
数名の男子生徒は優のようにボォーっとしていたり、談笑している。女子の幾人かも同じだった。
彼らは推薦入試ですでに大学が決まっている、この高校で言う「大学決まり組」だ。優もその一人である。
本入試を本番にしている生徒にとっては、お気楽な「大学決まり組」は邪魔者以外のなんでもない。

「あぁ・・・」

優の横に座っている元女子ソフトボールの部長である東薫が、小さなうめき声を上げた。
優がチラ見すると、薫は額から汗を流し、冬真っ盛りの時期にあるにも関わらず暑そうにしていた。

「おい、大丈夫か?」
「え・・・あぁ、なんか暑くて・・・・・・」
「熱じゃないの?保健室行ったら?」
「うん・・・そうしようかな・・・・・・」

優の提案を聞き、薫が席を立ち上がる。その直後だった。
突然、教室が激しく揺れ始めた。
クラス内の生徒たちはノートから顔を上げ、お互いの顔を見合わせる。

「机の下に入れ!!」

初老の数学教諭の叫び声が、教室内に響き渡る。
その瞬間、数名の女子生徒は悲鳴を上げながら机の下に潜り込み、続けて生徒たちが机の下に避難する。
優も机の下に潜ろうとしたが、バランスを崩して倒れた薫を見て、彼女の下に駆け寄る。

「机の下行けるか?」
「う、うん・・・・・・」

優が手を貸し、薫を机の下に避難させる。
優も机の下に避難する、それと同時に揺れが大きくなり始める。
教室内に女子生徒の悲鳴が飛び交い、いつも強気の運動部の男子生徒の表情も強張っていた。
揺れは1分経っても収まらず、それはおろか時間が経つにつれて激しくなっていく。
全員は机の足を手でしっかりと掴み、机が倒れないように踏ん張る。
頭上でパリンッ!!という音が聞こえ、教室の電気が一気に消えた。
壁に亀裂が入り、学校の至るところで窓ガラスが割る音が聞こえる。
亀裂は壁から天井にまで達し、ガラガラッと瓦礫が落ち始める。
そして次の瞬間、優の目の前は真っ暗になった。










──────










「・・・・・・お前も・・・・・・か・・・・・・」


聞いたことのない男性の声が、優に耳に微かに聞こえる。
優は自分が倒れていることに気がつくと、すぐに立ち上がろうと手足を動かす。
だが、動かない。
朦朧とする意識の中で、ようやく自分の状況を優は知った。
優の体はうつ伏せの形で瓦礫に埋まっており、潰れていないのが不思議なほどの状況だった。
優が顔を上げると、ちょうど目の前の部分の瓦礫がなく、瓦礫の隙間から外が見えた。
瓦礫の山の上に、2人の人影が見えた。
その一つに、優は見覚えがあった。

「東・・・・・?」

瓦礫の山の上には、学校が崩壊する直前まで体調を悪そうにしていた東薫の姿があった。
不思議なことに薫は傷一つなく、また制服を汚すこともなく、瓦礫の山の上で膝をつき、胸を両手で苦しそうに押さえていた。そしてその薫の前に、誰かが立っていた。
体つきで男性ということは分かるが、優の位置からは瓦礫が邪魔で顔が見えない。

「いやはや、まさかこんなか弱い女の子も巻き込まれるとは」
「はぁはぁ・・・・・・」
「どうやら、自分の立場を理解していないようだね。まぁそれが一番良いことだ。
 世の中、知らない方が良いモノもある。安心してくれ、痛みはない。一瞬だから」

瓦礫の山という風景に釣り合わないダークスーツを着た男は、薫の頭に手を添える。
薫は何もできず、真っ青な顔で男を睨みつけた。

「さようなら」

男がその一言を放った、まさにその瞬間だった。
薫は一瞬両目をカッと開いたかと思うと、口、目、耳、至るところから出血が起こり始めた。


「あぁぁぁああぁぁぁ・・・・・・・・・────」


薫は悲鳴を上げながら、胸を両手で押さえる。

「ぼんっ!」

男のその言葉と同時に、薫の体がはじけた。
まるでお祭りの水風船を地面に落とし、衝撃で破裂したように、薫も破裂した。
周囲に薫の残骸が散らばり、ちょうど優の目の前に薫の頭部が飛んできた。
ゴッという音をたてて薫の頭部は落ち、バウンドをすることもなく停止した。
目や口からは血を流し、その表情は何とも言えない顔だった。
優は言葉を失い、自然と両目から涙が溢れる。
気づけば男はすでに消え、遠くで建物が倒壊する轟音が優の耳に届いた。

「う、うぅ・・・誰か・・・・・・助けて・・・・・・・・・」

優は涙声で助けを呼ぶが、その声はとても小さかった。
遠くの方で誰かの悲鳴や助けを呼ぶ声が聞こえ、多くの救急車やパトカーのサイレン音が聞こえる。

「死にたくない・・・・・・誰か・・・助けて・・・・・・」

目の前にある薫の頭部を見ながら、優は何度も助けを呼ぶ。
こんなところで、一人寂しく死にたくない───。
まだやりたいことはたくさんある───。
彼女も作りたいし、結婚もしたいし、夢も叶えたい───。
死にたくない───。
死にたくない───。
死にたくない───。
視界がゆっくり、暗くなる。
生きたい───。
誰か───。
助けて───。
頼む───。

嫌だ───。


あぁ───。




神様───。






・・・・・・・・・────。










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