複雑・ファジー小説
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- 幻想のツァオベライ 第二章開幕!
- 日時: 2013/12/30 22:56
- 名前: 将軍 (ID: a.Rbkzip)
知っている方はご無沙汰です。知らない方は初めまして将軍です。
今回も懲りずに新たな小説を書かせていただきます。
【お願い】
・チェーンメールなどの迷惑行為は全面的に禁止
・R-15ぐらいになりそうな予感。グロなどに全く耐性がない方はご注意を
・私が嫌いな方は回れ右を
・できたらコメント下さい
以上が私からのお願いです
【目次】
・プロローグ>>1 ・用語集>>4 ・登場人物>>14
・第一章 変わらぬ世界 変わる自分
第一話>>2
第二話>>3
第三話>>5
第四話>>6
第五話>>7
第六話>>8
第七話>>9
第八話>>10
第九話>>11
・第二章 学院動乱
第一話>>13
- Re: 幻想のツァオベライ ( No.5 )
- 日時: 2014/02/25 18:26
- 名前: 将軍 (ID: RwTi/h2m)
第三話
「雪、急げ!」
雪の手を引いて一心不乱に地下シェルター直通エレベーターを目指す。
地下シェルターは50m下に埋められており、直通エレベーターで向かうしかない
今は一階を走っているから、もうすぐ着くはずだ。
「悪性霊体って全滅したんじゃないの?」
EU軍の「戦姫の咆哮」作戦以降、悪性霊体の姿が確認されていなかったためその際に悪性霊体は殲滅されとされた。
「そのはずだが、今はそんなこと言ってる暇は」
「! お兄ちゃん下がって!」
雪が思いっきり俺の手を引っ張った。
「雪? なにを……」
立ち止まった瞬間、自分の目の前の廊下がゴッソリと抉れるように陥没した。雪が止めてくれなかったら、そのまま落ちてあの世行きだっただろう。
陥没した廊下から現れたのは2mぐらいの大きさの人とも獣ともとれる醜悪な容姿をした怪物だった。
「悪性、霊体……」
ギョロリと大きな目をこちらに向けると口を大きく開け、こちらに向かってきた。
「逃げるぞ!」
雪を抱き上げ、霊魔体法の中でも脚部を向上させる【疾】を使い、来た道を駆け抜けた。
「お兄ちゃん、追いつかれる!」
巨体に似合わず、俊敏な動きで徐々に差を詰めてき、おもむろに鉤爪のついた大きな手を振りかぶってきた。
「くそったれ!」
大きくジャンプし避けるが、着地したところが脆く、大きく崩れた。
「きゃーーー!」
「大丈夫だ! 上手く着地する」
上を見ると悪性霊体が追ってきているのが分かる
「地面まで数メートル」
霊魔体法の全身の筋肉を硬くする【剛】を使い、衝突に備えた。
「つぅ……やっぱ、キツイな」
着地出来たが衝撃を直に受け、足がジンジンしていた。霊魔体法がなければ死んでいただろう。
「無理し過ぎたな」
ポケットから固体魔素を出すが、固体魔素を手に持つとサラサラと崩れ去った。
「お兄ちゃん、あっちに道がある!」
「あいつが来る前に急ぐか」
道なりに走っていった。
- Re: 幻想のツァオベライ ( No.6 )
- 日時: 2014/02/25 18:28
- 名前: 将軍 (ID: RwTi/h2m)
第四話
「地下シェルターと学校の間にこんな空間があったなんてな」
道の突き当たりにあった部屋に逃げ込み、一息ついた。
「この部屋の魔障壁はすごい強度だし、ちょっとの間は大丈夫そうだね」
雪はポケットから一枚のお札を出した。
「西方の守護神たる四神の白虎、我の命に応えよ!」
自分の親指を噛んで血を出し、お札になすり付けた
「なんだ我が主よ。のろけ話なら聞かぬぞ」
「……お前いつも白虎になに話してんだよ」
「いつもじゃないよ! たまにだよ」
「では何の用だ?」
「悪性霊体がここに来るから、シロはそれの迎撃」
「ほぉ、そのようなまともな呼び出しは久方ぶりだな」
白虎___シロは目を光らせ、強敵との戦いを待ちわびるように震えていた。
「でも、ここは何の施設なんだ? ん、隠し扉か」
一条は部屋の中を探索しているとさらに別の部屋に通じているであろう隠し扉を見つけた。
「これは……」
隠し扉の先の部屋で見つけたものは一振の刀だった。
その刀は色々な管で繋がれており、封印しているように見える
「お兄ちゃんどうしたの?」
隠し扉から雪が顔を出してこっちを覗き込んだ。
「雪、これ見てみろよ」
「これ、すごい魔素放ってる。これはたぶん新魔武装。お兄ちゃんは触ってもいいけど絶対使っちゃ駄目だよ。適格者じゃないんだから」
雪は一条に厳しい視線を浴びせた。
それもそのはず新魔武装は適格者の中でも選ばれたごく一部の者しか扱うことが出来ない
「分かってるよ」
苦笑を浮かべながら返事をした
「ならいいけど」
雪をまだ納得し切れていない様子だが一応了承した。
隣の部屋から大きな衝突音が聞こえてきた。
「主よ。そろそろ破られそうだ」
シロの声が響いてきた
「分かった。お兄ちゃんはここに居て」
「お前が行くなら俺も」
「剣術じゃお兄ちゃんは強いけど、でも今のお兄ちゃんは足手まといだから。大丈夫だよ、すぐに戻るよ」
笑顔を見せると部屋を出て、外から閉めた。
「……くそっ! 大切な時に俺は、無力だ」
拳を壁に叩きつけた。
「お兄ちゃん、ありがと」
部屋を出た後小さい声で呟いた。
「シロ、勝てる?」
「無論、と言いたいが厳しいかもしれんな」
魔障壁の入り口は軋み始め、もうすぐ破られるだろう
「でも勝たなきゃ死んじゃうし、私はお兄ちゃんと結婚するまで死ねないし」
「欲望に忠実だな。我が主は」
フッと笑うとシロは表情を引き締め
「さて、久方ぶりに暴れるか」
「うん、思う存分暴れて」
魔障壁の入り口を破られ、悪性霊体が乗り込んできた
- Re: 幻想のツァオベライ ( No.7 )
- 日時: 2014/02/25 18:37
- 名前: 将軍 (ID: RwTi/h2m)
第五話
「! 始まったか」
突然、爆音が隣の部屋から響き渡ってきた。音だけ聞いてもかなり熾烈な戦いが始まっているようだ。
「こんな強力な新魔武装を保管している部屋なんだ。探せばどこかに術式武装ぐらいあるだろう」
部屋中を必死に駆けずりまわりなにかないか探した。しかし中央に封印されている新魔武装以外には影も形もなかった。そして中央にある新魔武装を食い入るようの見つめた。
「これを使えば雪を……」
手を伸ばしていたが、寸前で思い止まった。使えなければただの犬死だ。
「くそっ!」
なんで俺には剣術以外に才能がないんだ! 俺にも呪霊技法の才能があれば! 術式技法の才能があれば! そもそも適格者であれば、女一人敵の前に置いていかず済んだのに!
やりきれない思いを拳に乗せ、何度も壁に叩きつけた。
「シロ、大丈夫?」
荒い息を吐きながら相棒の安否を確認する。
「傷は負っているが、そこまで大事ではない」
と言いつつも体中に傷を負い、美しかった純白の毛並みは血の紅い鮮血でくまなく染められていた。だが、目に宿っている力強さは健在だった。
対する悪性霊体は少ししか傷を負っておらず、まだ十全とした様子だった。
「シロはあいつを引きつけて、その隙に天狗を呼ぶから」
「心得た!」
シロが勇猛果敢に悪性霊体に飛びかかって行くのを確認するとポケットからお札を出し
「善と悪の両を兼ね揃えた深山の君よ、我の願いを聞き入れたまえ」
「我を呼び出すとは何事だ小娘よ?」
呼び出された天狗は大人とそう大差ない大きさだが、威圧感や霊力が感じられる程に強い。
「あの化け物をやっつけて」
「ふっ、任せておけ」
天狗は余裕の面持ちで悪性霊体に太刀で斬りかかった。悪性霊体はシロの相手でていっぱいで新たな襲撃者の奇襲に対応できず、そのまま太刀で一刀両断された。
「やった!」
「ふっ、造作もない」
太刀についた血を払い、鞘に納め、悪性霊体の死体に背後を向けた。
「グオォォォォォ!」
まさにその瞬間死んだと思われていた悪性霊体は咆哮をあげながらが立ち上がり、その大きな鉤爪で天狗の心臓を迷うことなく突き刺した。
「な、なんだ……と!?」
天狗は驚きを隠せず、そのまま消えていった。
悪性霊体はそのまま雪に狙いを定め向かってきた。
「我が主をやらせはせん!」
シロが雪との間に割って入り、悪性霊体を止めようとしたが如何せん力に差があり過ぎて、シロの決死の行動は功を奏さず、シロは壁に叩きつけられシロは消えていった。
「ッ!」
シロが叩きつけられた衝撃波が雪を吹き飛ばし、雪を壁に叩きつけた。
悪性霊体が大きな鉤爪を振り上げ、その凶刃で雪の命を刈り取ろうとした。
- Re: 幻想のツァオベライ ( No.8 )
- 日時: 2014/02/25 18:35
- 名前: 将軍 (ID: RwTi/h2m)
第六話
「雪ッ!」
悪性霊体の咆哮が聞こえ、その直後に雪の悲鳴が聞こえてきた。
「コッチだ化け物!」
体が勝手に動きだし、部屋の扉を開け放つと同時に飛び出るとそこら辺に落ちていた瓦礫を拾い上げ、悪性霊体に投げつけた。
「! グオォォォォォ」
瓦礫を投げつけられたことに怒った悪性霊体は見事に一条に狙いを変え、襲ってきた。
「よっと」
剣術を習っているおかげか悪性霊体の攻撃を見切り、余裕を持って避けていた。
何度も同じ事を続けていると、ついに悪性霊体が勢い余って壁に激突した。
「雪、逃げるぞ。立てるか?」
「う、うん」
雪がいる場所に走って向かい、雪に手を差し出し立たせた。
悪性霊体が激突の衝撃から立ち直り、怒りの形相でこちらを向いてきた。
「雪、走れ! 」
雪を破壊された出入り口の方に押し出し、自分は悪性霊体の方に走っていった。
こうすれば少しぐらい時間を稼げるだろう。そうすれば雪を逃がすだけの時間は手に入る。決死の覚悟だった
「お兄ちゃん!」
だが一条の目論見とはまったく異なり雪は出入り口ではなく一条を追ってきた。
「バカ! 戻れ!」
悪性霊体が一条ではなく雪に襲いかかった。
「きゃぁーー!」
「くそっ! 間に合え!」
雪を押しのけ悪性霊体の攻撃をモロに受けた。
「かはっ!」
悪性霊体の攻撃をモロに受けた一条は紙細工のように吹っ飛んで壁に激突した。
「けっこ、う……痛てぇ、な」
幸いにして【剛】の効果がまだ残っていたようで骨は折れていないが、衝撃が強すぎて少しの間は動けそうにない。
「お兄ちゃん! 大丈夫? 大丈夫だよね?」
雪が駆け寄ってきて、傷の手当てをしようとお札を出そうとしていたが、すぐ背後には悪性霊体が迫っていた。
「雪……逃げ、ろ」
「嫌! お兄ちゃんを見捨てるぐらいなら一緒に死ぬ!」
雪が抱きついてきた。
ちくしょう、このまま死ぬのか? こんなとこで死ぬのか?
不意に手に硬いものが当たる。目線だけその物体に送るとそれは封印されていた新魔武装だった。さっき壁に激突したときの衝撃でこっちまで飛んできたらしい。
(これを、使えば……)
新魔武装に手を伸ばそうとするが
(だけど、それだと雪との約束を破ることになる)
チラリと雪の方に目をやると必死に俺の体に抱きついて、震えを抑えていた
(このままだと雪も死ぬ。俺だけならいいが、雪も道連れなんて、俺が許さない)
「……お兄ちゃん?」
一条の意を決したような顔に若干違和感を感じているようだ。
すまんな、雪。俺は約束破ることになる
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
新魔武装を手に取った。その瞬間身体の中の神経を一本一本丁寧に焼かれるような激しい痛みが体中を駆け巡った。
- Re: 幻想のツァオベライ ( No.9 )
- 日時: 2014/02/25 18:41
- 名前: 将軍 (ID: RwTi/h2m)
第七話
「お…………ちゃ………。おに……ちゃん。…お兄ちゃん!」
ふらつく頭をゆっくりと持ち上げながら辺りを見回した。
自分の胸元には雪が泣きながらしがみついていた。
「お兄ちゃんが、死んじゃう、かと……」
綺麗な顔をぐしゃぐしゃに歪めながら泣いていた。
「大丈夫だ。今蹴りをつける」
微笑みながら雪の頭を撫でてから悪性霊体の方を振り向くと、悪性霊体が怯えているのか若干逃げ腰であった。
「こいよ、この化け物野郎!」
新魔武装___刀を鞘から抜き、正面で構え、敵の初動を待った。
「グォォォォ!」
勢いをつけ、両手の鉤爪を振り下ろしたり振り上げたして攻撃してきたが
「甘いんだよ」
全ての攻撃を弾き、受け流し、時には回避することで擦りもせずに悪性霊体に肉薄した。
「グ、グォォォォ」
焦ってきたのかもうめちゃくちゃに鉤爪を振り回しているだけだった。
「一閃流 一之太刀 紫電」
右手首を大上段から斬るとそのまま勢いをつけながら一回転し左手を斬りあげた。
「グギャァァァァァァァ!」
悪性霊体は今までの咆哮とは違い、苦痛で歪んだ咆哮をあげた。
「終わりだよ」
刀に神経を集中させると刀身に纏わりつくように霊力が集まり、刀身が輝きだす。
「ッ!」
集まり出した霊力に怖気付いたのか恥も外聞もなく悪性霊体は背中を向けて逃げ出そうとした。
「これでも喰らえ!」
霊力を纏い、巨大化した刀を悪性霊体目掛けて振り下ろした。
悪性霊体は断末魔をあげる暇すらなく跡形もなく消滅した。
「やった……な」
刀身に纏わりついていた霊力が消え、通常状態に戻った刀を鞘に納めるとその場に倒れこんだ。それほど消耗したわけではないと思っていたがかなり消耗していたようだ。
「やったね! お兄ちゃん。でも……」
雪がふくれっ面になると頬を引っ張ってきた。
「雪さん……痛いです」
「お兄ちゃんが私との約束破るからでしょ?」
ニコニコしていた。
……うん、その笑顔、すっごく怖い。
だが、頬からすぐに手を離した。
「でも、助けてくれてありがとう。お兄ちゃん」
「あぁ、なんせ俺は雪のお兄ちゃんだから」
「ふふっ」
「ハハハッ」
どちらからともなく笑い出した。
「でも、どうしてお兄ちゃんが使えたの? 適格者じゃないのに」
「それは分からん」
腕を組み考えていると急に一条が真剣な表情になり
「雪、下がれ」
不意に立ち上がり、雪を自分の背後に立たせ、鞘に手を添えて出入り口を睨みつけていると武装した集団がなだれ込んできた。