複雑・ファジー小説

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デッドバスター 【完結】
日時: 2015/08/23 08:12
名前: KING ◆zZtIjrSPi. (ID: TPJwhnvu)
参照: http://mb1.net4u.org/bbs/kakiko01/image/1643jpg.html

どうも、またまたKINGです。
今回もまた趣味丸出しの小説を書こうと思っています。
もうひとつの小説とともに頑張ります。あっちは週一か月一ペースで頑張ります!(更新は相変わらず亀ですが)
オリキャラ応募は話が進み次第募集します!
荒らしや中傷はまだ体験した時はありませんが、絶対に止めて下さい!


アンケート>>154


用語>>4  人物紹介>>7>>127
プロローグ>>1  オモカゲ  
No1.            一撃必殺>>5>>6
No2.            ヒーロー>>10>>13>>33
No3.            「さ」「い」「か」「い」>>53>>57
No4.            「瀬良隊」>>60>>61
No5.            本部基地へ>>62>>63
No6.           元エースVSしがないCランク隊員>>64>>67
No7.           お家大騒動>>68>>69>>70>>76
No8.           戦場の死神>>97>>100
No9.           黒と白の世界>>104>>112
No10.          想い>>113>>114
No11.          不穏な来訪者>>117>>118>>119
No12.          神光国家>>120>>136
No13.          かぐやと秀也>>137>>138>>139
No14.          切望のフリージア>>140-141
No15.          帝の日記>>142-143>>144
No16.           ここにいて>>145-146
No17.          最高戦力“トップエデン”>>151-152>>153
No18.          猫かぶり似非淑女>>159>>162-163
No19.          神話>>166>>169
No20.          悲しき記録>>170
No21.          覚悟>>172>>>>175
No22.          潜入開始>>178>>181
No23.          瀬良隊VSレオン・ミック>>182>>183>>188
No24.          不遇のラプソディ>>189-190
No25.          不器用>>191-192
No26.          凍てつく躰>>193-194
No27.          襲撃者>>195
No28.          悲劇の再来>>198
No29.          復讐>>199>>200
No30.          秘めたる思ひ>>201
No31.          実力者>>202>>203
No32.          月の剣>>204
No33.          勇者たち>>205
No34.          ラストバトル>>206
No35.          amazing aria>>207>>208
No36.          光の槍と帝>>212
No37.          司令官として>>217
No38.          事の末路>>224
No39.          意気地なしと天邪鬼>>225
No40.          コクハク>>226>>227
最終回            先導者>>228>>229
エピローグ          壊れることのない幸福>>230



番外編 >>103

夏希さんのイラスト  瀬良さん>>105 8年前>>124 かぐや(文字付)>>164 ナル姫さんのイラスト  聖&麗>>110  siyarudenさんのイラスト 雁渡さん>>147 西園寺>>179

Q&Aについて>>75
>>91>>92  >>93>>94  >>95-96  >>101-102  >>121-122  >>125-126 >>173-174

殲滅者紹介>>71
軽い人物紹介>>55>>72

■オリキャラ様
・三城隊
隊長 三城秀也
隊員 来栖 仁
   荒咲 美也子>>11

・瀬良隊
隊長 瀬良 怜音>>28
隊員 草薙 迅>>15
   薔薇園 麗>>46

・雁渡隊
隊長 雁渡 朔揶>>37
隊員 西園寺 零奈>>22
   陸奥 花江>>51

Bランク
神宮司 聖>>8
花京院 空悟>>39

Cランク
櫟 秋良>>21

・幹部者
残像虚無 レオン・ミック>>128
氷の主  イリヤ・シーリン>>130
月の剣  ゴットフリート・フォン・エルリックスハウゼン>>132
雷の羽衣 リム・アミラス>>134

Re: デッドバスター  第二次敵オリキャラ募集終了 ( No.138 )
日時: 2015/04/20 15:39
名前: KING ◆zZtIjrSPi. (ID: KnTYHrOf)

「……いいのか?瀬良さん。三城のこと止めなくて」
「それに竜堂さんもですよ。引く気が見られない」
「………」

 ベランダを覗き込むようにしてかぐやと秀也を静観する瀬良隊。
 草薙と麗は真剣に彼に言うが、瀬良は腕を組んだままで何も言おうとはしなかった。
——ただ、思い出していた。
 【ここ】に来る前のことを。

———秀也?お前も呼ばれたのか?任務でか?
——……瀬良さん……!最近また眠っていないようだな。みんな心配しているぞ。
———今に始まったことじゃないだろ。俺はいいんだよ。……あんときの償いでさ。寝るよりだったら働いたほうが贖罪になると思ってな?……おいてか話逸らすなよ。
———呼ばれたのは任務じゃない。
———任務じゃなかったら……何でだ?
————後で、わかるさ。




              No13    かぐやと秀也



「王の鍵を守るためだったら……こうするしかないのね」
「ああ。俺を殺せたら、だ」
「!!」

 秀也の言葉に大きくかぐやは目を見開かせる。
 「殺す」という言葉に反応してか、斧を持つ手が震えていた。
 そんな彼女を見て苛立ちを隠すことなく舌打ちをした。
 そして勇魚に顔を向ける。

「勇魚司令官。戦闘を開始してもよろしいのですね」
「先ほどもいった通りだ」
「了解」

 簡潔に会話を終わらせる。
 そして如月をしっかり握ると、かぐやに思い切り迫る。
———ガキィン!!
———キィィィン!!

「どうした!剣筋が鈍っているぞ」
「そういうアンタは如月に集中しすぎよ!リザルテ!」

————ドォォォォォン!!!!
 かぐやは背後に隠していたリザルテを秀也に浴びせる。
 直撃はしていなくとも、煙で目くらましにはなっているはずだ。
 そう思っていたのだが——背中にパンパンと乾いた音とともに鈍痛が走る。

「……いつの…間に……っ」
「お前がリザルテを発射したときだ。すぐにお前の背後に配置した。リザルテの煙は前方にしか噴射されないからな」
「さすが秀也ね!」
「……ぐっ!」

 すぐさまかぐやは秀也に足かけをした。
 体勢を崩した隙に、かぐやは斧で秀也の脇腹を斬った。
 だが、背中へのダメージが残っているためか、かぐやは苦痛で顔を歪ませた。
 何事もなかったかのように秀也は立ち上がる。
 大したダメージではなかったようだ。

「———なぜ戻ってきた」
「それは」
「一回姿を消したお前が!!なぜ戻ってきた!?」

 ギィン、キイン、と。
 如月と斧の金属の交わる甲高い音が響き渡る。
 かぐやの言葉を聞かない秀也。その眼は怒りに満ち溢れていた。

「聞いて秀也!わたしは……」
「言い訳なんぞ聞くか!!!!」
「うっ————……!」

 ズザァ、とかぐやは後ずさってしまった。
 今、確実に劣勢なのはかぐやだった。
 先ほどより格段に剣筋が上がった秀也と、その戦う相手が秀也だという事実がかぐやを戦わせないようにしていた。
 否。おそらくこれが目的だったのだろう。
 これが成功すれば王の鍵とかぐやの軟禁は確実だ。あの堅物な勇魚がやりそうなことだ。
 瀬良はしばらく考えた末————……。

「悪いな、草薙、麗。ちょっくら出てくるわ」
「!?どこに?」
「あの……肝心なところで出ないクソSランクのとこだよ!!」

 珍しく怒り任せに叫んだ瀬良。
 バン!と乱暴に扉を閉める。
 麗と草薙は顔を見合わせて、のちに梶原の顔を見た。
 梶原も瀬良と同じ考えだったらしくその表情は少し笑顔だった。

「……絶対郡司さん殴られるパターンだよね」
「絶対にな」

Re: デッドバスター  第二次敵オリキャラ募集終了 ( No.139 )
日時: 2015/04/22 19:22
名前: KING ◆zZtIjrSPi. (ID: KnTYHrOf)

———ドンドンッ!!
 秀也の弾丸がかぐやの体擦れ擦れで突き抜ける。
 彼女はよけたが、これはよほどの動体視力と反射神経でないと成し遂げられない。
 だが、こんなことをずっとできるはずもなく。
 かぐやは弾丸を避けるために後方へ下がっていくしかなかった。

「——今までの威勢はどうした?」
「うっさい……わね……っ!」

 明らかにかぐやは疲弊している。
 それは、彼に攻撃せず防御に徹しながらの結果であった。
 心臓の音がうるさい。

「このままだと死ぬぞ?」
「わたしを殺す気なんてないくせに」
「……言ってくれるな」

 かぐやの強い目に一瞬、肩が動いたがすぐに如月を握りしめる。
 そして、相変わらずの淡々とした冷たい口調でこう言うのだ。

「そこまでいうなら殺してやる。今すぐ」
(————……今だ!)

 彼が如月を振り下ろした瞬間だった。
 かぐやは秀也の振り下ろすほんの数秒のモーションを狙って自らの武器である斧で、如月を真っ二つに斬った。
 パキン、と音立てた如月を見てしばらくボーっとしていたがすぐさま秀也はジャコッとガンスタイルを膝ついているかぐやの眉間に向けた。

「……俺とは戦わないと思ったんだがな」
「抵抗しないとは言ってないわよ!」

 不敵に笑うかぐや。
 だが、その状況に耐え切れなくなった梶原が勇魚を見る。

「もういいだろう勇魚さん。こんな無駄なこと……」
「無駄?無駄ではない。これは我々人類にとって大切なことだと私は実感している」








「飛来っ!」
「今取り込んでるから関わってる暇ないよ瀬良」

 恐ろしい形相で郡司に駆け寄る瀬良。
 だが郡司はヒラリと彼をかわす。
 その表情はいつになく真剣なものだった。
 ハッと何か感づいた瀬良はいつもの表情に戻る。

「……かぐやはどこ?」
「おい、クソエリート……」
「かぐやはどこだ」

 ビリビリとした威圧が瀬良を襲う。
 これは皮肉も冗談も言えない雰囲気だ。
 ゴクッと瀬良は生唾を飲んで、ゆっくり言葉を発した。

「———会議室。勇魚さんの命令でかぐやと三城が命がけのガチンコバトルしてる。……梶原さんも止めようとしてくれたけど、ダメだった」
「……そうか。ありがとう、瀬良」

 先ほどの雰囲気から一変、郡司の表情が柔らかなものになる。
 ポン、と郡司は瀬良の肩に手を置くと凄まじい勢いで走って行った。
 通り過ぎる人の顔なんて見ていられない。
 【観て】いたはずなのに。肝心の場所がわからないだなんて。

(……どうか、信じていない神様。かぐやを。秀也を酷い目に逢わせないでくれ—————……。)

Re: デッドバスター  ( No.140 )
日時: 2015/04/25 10:06
名前: KING ◆zZtIjrSPi. (ID: KnTYHrOf)

【かぐやが会議室に入る1時間前】

———三城。お前に再び使命を与える。
———はい。如何なさるのですか?
———……今度こそ竜堂かぐやの首飾り——王の鍵を奪い取れ。強奪という形になっても構わない。一刻の猶予もない。
———あちらは、必ず抵抗するでしょうが———その時は?
———愚問だ。最悪……殺し合いになっても構わない………。

(——……嗚呼、残酷だ。俺が愛してる女を殺せというのか)

 俺は、目も合わせず命を出した勇魚司令官を凝視した。
 それと同時に失望した。
 王の鍵は世界を左右する。それだけは知っている。
 だけど、だけど—————……!!





                   No14        切望のフリージア






「……ったく、放っとけばいいのによぉ」
「………ダメ……。貴方の監視を梶原長官に命じられたの……。だからここにいて……」

 病室には、鬱陶しそうに頭を掻く花京院。
 そんな彼を蛆虫のような目で見るのは西園寺であった。
 西園寺は大きくため息をつくと膝の上に置いてあるDVDを撫でた。

「……あなたがいなかったらこの映画も見られたはずなのに……。怪我をしたあなたのせいよ……。モブ以下だわ……」
「だれがモブ以下だよこの陰険女」

 苛ついた様子で花京院は吐き捨てるように言い放った。
 すると、タタタタッと何か焦るように走る音が聞こえた。
 西園寺は全く気にしていない様子だったが、花京院はこの足音は歴戦の経験で誰のものだかわかっていた。
 この足音は郡司だ。
 本来ならスルーしようと思う場面だが、花京院にはやらなければならないことがあったのだ。

———頼む、空悟……。妹……かぐやに……!
(……そういや、帝さんに……)
「飛来ぃ!!!!」
「うおっ!?行き成りなんなのさ花京院さんそんな大きな声だせんだったらもう退院でいいんじゃないの!?」

 全身の力を込めて大きな声を出す花京院。
 その声に驚いた飛来は駆け足をしながら反射的に花京院のいる病室へ顔を出した。
 そんな彼らに西園寺は眉をひそめた。

「……ちょっと……。ここは一応病室よ……。大人しくするのが常識なのにそんなこともできないだなんて……虫ね」
「それは花京院さんに行ってほしいな西園寺ちゃん」
「黙れ。……おい、それより飛来。これ、持ってけ」
「?」

 ブンッと花京院は懐にしまっていたらしい白い手帳を郡司に投げつけた。
 難なくそれをキャッチするが、郡司はこのことに何の意味があるのか理解できず、首をかしげた。

「……そこに、帝さんの思いが全部書いてる。俺の話なんざ聞かなくても全部記されてる」

 そう言って花京院はごろんと郡司の顔とは逆方向へ体制を変えた。
 郡司は納得したようにあえて何も言わず、小さく「ありがとう」と呟いて再び走って行った。
 ようやくうるさいのが消える……と思った西園寺。
 だが、それとは真逆に花京院はすぐそこにあった車いすに手を伸ばしていた。
 ギョッとした西園寺は慌ててその手から車いすを遠ざける。

「……な、何をしているの……!?あなたは動けない身、安静にしている身……。それに梶原さんの命も受けているわ……。あなたはここから動かせない」
「……うるせぇんだよ。俺は行かなきゃならねえんだ」
「……どこに……?」
「———アイツがいるとこだ」

 苦しそうに脂汗を額に滲ませながら花京院は無理やり車いすに乗り移った。

「……心から愛せない俺への、投げやりのプレゼント……心を失った者への手向けだ馬鹿野郎」
「え………?」

 それは、誰に行っているのかわからなかった。
 私か、かぐやか、秀也か。あるいは郡司——この世界の人間か。
 彼の言葉は西園寺の頭では理解できなかった。

Re: デッドバスター  ( No.141 )
日時: 2015/04/26 13:03
名前: KING ◆zZtIjrSPi. (ID: KnTYHrOf)

「……もう我慢ならん!モニター室に言って直接戦闘を制止する!麗、草薙!一緒に来てくれ」
「わかりました」
「……俺は上の言うことは……」
「いいから行くんだ」
「いっ……!わかった、放せ……!」

 バタバタと会議室から出ていく梶原。
 梶原の命を受け麗も走り出す。
——が、上層部の言うことはあまり聞かない草薙は眉をしかめた。
 いつもの彼はどこ行ったといわんばかりに麗は草薙の耳を引っ張り、無理やり会議室から出した。








「うっ……」

 ガラ……。とコンクリートの日々入った瓦礫を背もたれにするかぐや。
 その姿はあまりにも痛々しく、見ているほうが目をふさぎたくなるほどのダメージを負っていた。
 打撲や切り傷、脱臼はあるだろう。
 そんな彼女を見下ろして秀也は皮肉気に笑った。

「ボロボロだな……。さっきも言ったがなぜ攻撃しない?俺と互角——あるいはそれ以上の勝負ができただろうが。余裕の憐みか?」
「違う。わたし、秀也と戦いたくない」
「……!」

 やめろ、やめろ———……!
 そんな目で俺を見るな。昔みたいな目で俺を見るな。
 お前は“強すぎる”。
 それじゃ、ダメなんだ。だから俺は———……!

「戦う理由は、俺にある!!」
 
 ガンスタイルの銃口をかぐやの眉間に向ける。
 引き金を引こうと人差し指を動かすが、彼女には恐怖や迷いが一切見られなかった。
 だ経真っ直ぐ秀也を見上げていた。

———パァァァン!!!!

 引き金が、引かれた。
 勇魚やモニターを指導しようとする最中の梶原たちもそう思った。
———パキィィィン……。
 ガラスを砕くような、そんな音が響いた。
 かぐやはハッとガラスが砕けたようなものが下に落ちたので、それを見ると、銃弾が真っ二つに斬られていた。
 彼女の目の前には攻撃重視の三日月型の剣で威力は凄いが脆い面もあるブレイブ——サイクロンで居合切りをした雁渡が立っていた。

「……これは一方的じゃないかな?勇魚司令官殿、そして、三城君」
「雁渡さん!」

 優雅に言う彼女にかぐやは嬉しそうに雁渡の名を呼んだ。

「何の真似だ雁渡さん。これは勇魚司令官の命によってやっていることだ。なぜ邪魔をした!?」
「邪魔をしたつもりはないよ。さっきも言った通り——これはただの一方的な攻撃だ」
「………」

 唸るような秀也の言葉に雁渡は柔和な笑みを浮かべながら傷だらけのかぐやを横目で見た後、凄む様に勇魚を見た。
 勇魚はそんな彼女にも動じずただ、様子をうかがっていた。

———ピギィィィィ!!
 ギュルン、とかぐやと秀也の体がロープのようでロープではないものに拘束された。
 それは、光状でとても固い。何大抵措定校では解けそうになかった。

「な、何よこれ!動けない〜〜〜っ」
「バインド……!?」

 んー!と抵抗するかぐやとグググ……。と手を動かす秀也。
 ガチャっと音とともに頭上から梶原のアナウンスが聞こえてくる。

『かぐや。三城。悪いがこれ以上は君たちに危険が及ぶと判断して拘束させてもらった。君たちの怪我は後で———』
『ごめん梶原さんそこどいて!!!!』

 梶原を押しのけたらしい息遣いの荒い声。
 それは郡司のものであり——マイク越しにガサガサと何か髪をめくる音が聞こえてくる。

『かぐや。今から俺からいうことを聞いてくれ。さっき花京院さんからもらったんだ。帝さんの日記』
「……兄さんの……!?」

 ドクン。
 と、かぐやの心臓は高鳴った。
 兄の遺物は子の首飾りとしか思っていなかったのに。
 日記があるだなんて。

『じゃあ、今から書いてあるこというから』



Re: デッドバスター  ( No.142 )
日時: 2015/04/29 14:07
名前: KING ◆zZtIjrSPi. (ID: KnTYHrOf)

(兄さんの日記……!)

 ドクン、とかぐやの心臓が鳴り響く。
 ギュッとベランダの杭を握ってゆっくり立ち上がる。
 秀也は郡司を射殺すような視線を送っていたが、邪魔はしないらしい。
 ガンスタイルを下していた。
 すると、スッと雁渡が手を上げて会議室の出口へ向かっていく。

「悪いが私はここで下がらせてもらおう。……私はいてはいけないようだから」

 そういうと、コツコツとヒールの音を響かせながら会議室から出て行った。
 それを見送る郡司は日記のページをめくると少し微笑んだ。

「いろいろ書いてるよ。かぐやのこと。斧の使い方上手になったとか、弟みたいなやつが出来たとか、友達出来たってこと、よく書いてる」
「……それを見ようとしたら帝さんに怒られたな」

 キィ、と車いすを引きながら花京院は会議室に入っている。
 ブースにいる梶原の声が聞こえるが彼はあえて無視し、かぐやの顔を見た。
 かぐやは不思議そうに彼の顔を見る。

「空悟!アンタ、医務室にいたんじゃないの?どうやってここに来たのよ」
「俺の甘っちょろい監視役が運んでくれたぜ」







「……おや、霊奈。君もここを通ったのかい?」
「………はい」
「何か不満げな顔だね」

 会議室を出た雁渡は花京院によって無理やりここへ運ばされた西園寺に声をかけた。
 彼女は花京院の行動が気に入らなかったらしく、目つきを鋭くさせていた。
 おおよそのことを雰囲気で理解した雁渡は腰に手を当てて、西園寺とともに帰路に入る。

「———後で梶原長官に叱られてしまいます………」
「今回のことは仕方ないさ。梶原さんなら許してくれるだろう。——……それに……」
「……それに?」

 何か言いかけた雁渡に西園寺は彼女の顔を見上げ、首をかしげた。
 フッと彼女は微笑を浮かべる。

「今回の件であれば花京院は最高戦力“トップエデン”が止めても止められなかったと思うよ」





                        No15      帝の日記





——————この日記を読んでいるということはきっと、俺は死んでかぐやを生涯孤独にさせているということになる。それをまず謝ろうと思う。
 そして日記なんてマメなものをあまりつけられない俺が書いたのもちゃんと理由がある。
 明日起こる大規模な侵略があるからだ。
 まずはそれを止めたい。

「兄さん……?8年前の侵略を分かっていたの!?」
「……我々上層部は知っていたんだ。すまない、かぐや」

 梶原がすまなそうに口を挟んだ。
 かぐやは気にしてない、と言いたげに首を横に振った。

「じゃあ続きを読むな」

———かぐや。俺がこの侵略を知っていたのは、俺等の血筋に関係ある。
 実は俺たちは元は神光国家【ノータス】王家の子孫だ。何百年という時を超えて、その地は俺たちにめぐってきた。
 お前が持っている古文書と首飾りのような王の鍵がその証拠だ。
 だがいくら王家の子孫と言っても世界を開ける王の鍵を使えるほどの強い血を持っていなければ意味がない。
 強い血を持っていなかったせいで俺たちの両親はそれを狙った殲滅者に殺された。
 それを知った時、俺は殲滅者と血を恨んだ。
 けど、無邪気に笑ってるお前を見てそんな気持ちどこかへ消えたんだ。むしろ、お前を幸せにしよう。これだけを生きがいにしてきた。

「……字面でもかわんねーな、帝さん」

 ボソッと花京院が呟く。

———だけど、両親と違って俺等は鍵と適合できるだけの血の強さがあった。
 だがら日々殲滅者に狙われる日々。
 俺は元から戦えたから大した脅威ではなかった。けど。お前は。かぐやは。
 女の子、俺の妹に武器なんて持たせたくなかったけど。
 殲滅者にやるぐらいだったら、と思って武器を持たせてしまった。今思えば俺がずっとそばにいて守ってやるって思えばよかったのに。
 そして、かぐやが4歳ぐらいから特訓を始めさせて、アイツはもちろん怪我して泣いた。
 そんなかぐやを見て俺も泣きたくなった。武器なんて持たせたくなかった。普通の女の子でいてほしかった。こんな血なんてなくなってしまえばってずっと思った。
 でも毎日特訓して斧の使い方を覚え始めたかぐやは笑っていた。
 次第には「兄さんに勝つ!」だなんて言い始める始末。驚いた。
 てっきり毎日恨めしいような顔を見せて泣いてしまうかと思ったのに。
 アイツは強いんだ、と思った。
 そんでアイツの一番の強さは打ち合いになった時の火力だ!どんな堅い防御や、避けられてしまうスピードや知略でもそれを撃ちぬけるぐらいの力だある。
 教育方針上、あまり褒めることができなかったが、お前は将軍級の器だ!
 もっと、もっと誇れ—————……。
 そしてごめんな。1人にして。


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