複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 猫と犬の獣道【☆オリキャラ募集中@基本採用】
- 日時: 2015/06/01 20:58
- 名前: ネギトロ丼 (ID: EEo9oavq)
「またしても勝者はライオネット!!! 29連勝だ!!!」
次の獣王を決める獣王祭。
適当に穴を掘られただけの雑多な円形のステージの中にいたのは、29の死体とたてがみを逆立てた獣族の男がひとり。
獣王はこいつで決まりだろう、と誰もが思った。
「百獣の王だ。あいつに勝てるのはいねぇ」
「あのパンチをくらったら即死だ」
「おい、また挑戦者が出たぞ!」
どうやらまた死体が増えるらしい。
どんな挑戦者だろうと気になるが、前に観客が溢れかえって何も見えない。
俺は前に立っていた狐の男の上によじ登った。
「おい小僧、乗るんじゃねーよ」
「ハハハ、ちょっとだけ許してよ」
挑戦者は黒いまだら模様の耳と尻尾をつけたヒョウ系の獣族だった。観客席から飛び降り、ライオネットの前に立つ。
「決闘を申し込む」
「ほほーう、俺様に挑もうってか? 死体が30になるな」
ガハハ、とライオネットは笑い、ヒョウの男を睨みつけた。
「名前は何だ」
「いや、名前は無いんだ。とりあえずレパードって呼んでくれ」
「よし。それじゃあレパード………始めよう」
決闘開始の合図のゴングが鳴り、一瞬にしてレパードの体は宙に飛んだ。
___まぁ、当然の結果だろう。
「つまんねーの」
「挑戦しただけでも凄いだろ」
俺があくびをしながらぼやくと、狐の男は苦笑しながらそう言った。
「待て待て待て待て、降参だ」
ライオネットがとどめを刺そうと鉤爪をぎらつかせると、レパードは慌てて手を上げて降参した。
「降参、だぁ? ガッハハハハハハ!!! 笑わせるな!」
周囲にどっと笑いが巻き起こった。
獣族たるもの、一度決闘を申し込んだ者は死ぬまで戦い続けるのが獣としての誇り。
降参なんてもってのほかだ。
「いいだろうレパード、生かしておいてやる。逃げるがいい」
「いや、降参しても続けて決闘を申し込めば、まだ僕にも挑戦権はあるはずだ」
そう言ってレパードは再び危ない足取りで立ち上がった。
これだけ恥を晒されて、まだ懲りないらしい。
「諦めが悪いと格好悪いぞ、レパード」
「格好悪くて結構。始めよう」
レパードはニヤリと笑った。
こてんぱんにされたはずなのに、何か裏のある笑みだ。
___ゴングが鳴った。
ライオネットの鉄拳が振り下ろされ、レパードは首をヒョイと動かし、難なく回避した。二度目の鉄拳も続けてかわし、ライオネットの背後に目にも止まらぬ速さで回り込む。
___ライオネット唖然、観客唖然、俺唖然。
「今まで遊ばれてたんだな」
狐の男は興味深そうな顔をして笑った。
普通の速さではない、異常だ。
「魔法……だ」
よく見ると、レパードの足元には風が巻き起こっている。
風魔法であのスピードを出せるのだ。
「よくわかったな、小僧。獣族が魔法を使えるってだけでも稀なのに、あんな魔法の使い方ができるのは、もっと稀だ。人族も魔族もできるのはそうそういねー」
狐の男も魔法だとわかっていたらしい。
レパードはあまりにも速いスピードについていけないライオネットを後ろから蹴り飛ばした。
「拳の力だけが取り柄の鈍足は嫌になっちゃうね」
レパードはピンとたった耳の後ろをポリポリとかき、ライオネットに詰め寄る。
たった一度蹴られただけ。
そのはずなのに、ライオネットは立ち上がることができなかった。
「降参?」
「するわけないだろう……俺様には獣としての誇りがある」
「あ、そう。諦めが悪いと格好悪いよ」
レパードがバチンッと指を鳴らすと、目の前に魔法で作られた竜巻が現れた。
竜巻はじりじりとライオネットに近付く。
「ナーンちゃって、殺しはしないよ。獣王になりたいわけでもないし」
竜巻は既のところでパッと消え、レパードはステージから立ち去った。
「待て……」
ライオネットの声にレパードの足がピタリと止まる。
「どうしたら……お前に勝つことが出来る?」
問われ、レパードはうーんと首を傾げて考えた。
「世界を知ることだね。あ、それと……僕降参ね」
そう言い残し、今度こそレパードはステージから立ち去った。
勝者、ライオネット。
今なら、全身傷だらけで立ち上がることのできないライオネットを倒すことは簡単だ。
だが、それ以降挑戦者が現れることはなかった。
この時、思ったんだ。
俺も強くなりたいって。
- Re: 猫と犬と獣の掟 ( No.2 )
- 日時: 2015/05/26 19:25
- 名前: 林檎 (ID: rLG6AwA2)
初めまして、林檎と申します。
なんかもう、文章が神懸ってますね!
私文章(話も)酷いんで・・・(´・ω・`)ムリダヨー
早く続きがよみたいなぁ。
頑張ってください!
- Re: 猫と犬の獣道 ( No.3 )
- 日時: 2015/05/30 18:33
- 名前: ネギトロ丼 (ID: EEo9oavq)
林檎様
わわわわわわ、あ、有難う御座います。
プロローグだけでコメントもらえるなんて感激です!
更新頑張ります
- Re: 猫と犬の獣道 ( No.4 )
- 日時: 2015/06/01 06:04
- 名前: ネギトロ丼 (ID: EEo9oavq)
新たな獣王はライオネットとなった。今後、この獣の森に住む獣族たちは獣王に従うことになる。
本来ならば、「今年の獣王はライオネットだぁー!!!」とか言って皆で胴上げするところなのだが、やはり観客席から出てくる獣たちはレパードの話で持ちきりだった。
俺は29の死体だけが残ったステージの方を振り向く。まだレパードは立ち去ったばかりだ。
「キャシー、どこ行くつもり?」
ステージに向かって走ろうとすると、尻尾をグイッと引っ張られた。聞き覚えのある声だ。
「ちょっと母さんやめてよ! 今ならステージに匂いが残ってるはずだから追いつけるかもしれないんだ!」
「探してどうするつもり? だいたい、キャシーの嗅覚なんてあてにならないでしょう」
「どうするも何も、あの決闘見ただろ? 一瞬でビュンっビュンって! どうやったら魔法が使えるようになるか聞くんだ」
「はいはい、帰るわよ。世話の焼ける猫ちゃんだこと」
無理矢理尻尾を引っ張られ、俺は家まで地面に引きずられた。
***
「あーあ、俺も魔法使いたいなー」
もともと獣族は身体能力が高いので、魔法を使う必要は無いし、魔法の原理さえ知らない。ただ、使えるにこしたことはないだろう。
俺は木のテーブルに置かれたコップを覗き込んだ。中に入っている水に自分の姿が映る。
赤茶色の髪から飛び出る黒い猫耳に、黄金色の猫目、長い尻尾。耳と尻尾を取れば、ほとんど見た目は人族とは変わらないらしい。人間ってやつだ。
「夕食、出来たわよ。ジアの塩焼き」
テーブルの上に皿からはみ出るほどの大きさの焼き魚が置かれた。ジアはそこら辺で捕れる魚だが、最近は野菜ばかりだったので嬉しい。
「いただきます」
ジアに手を伸ばすと、横から別の手が現れてジアが消えた。
「もーらいっ!」
___俺はそいつを見逃さなかった。
「このやろぉぉぉぉぉぉ!!!」
肩までの長さの黒髪の上に垂れている白い犬耳、反り返った尻尾。我が宿敵の泥棒犬はジアをくわえて猛スピードで駆け抜けた。
「返せ! てか人の家に勝手に侵入すんじゃねぇ!」
「ヤーだねッ、あたいのもんだーい」
「あんニャろー……ふざけやがって」
俺は両手を地面につき、四足で走って追い掛けた。
「キャシー! 四足で走っていいのは狩りの時だけだぞ! はしたないぞ! あんたはプライドってもんがないのか!」
はしたなくてプライドがないのは魚を盗るお前の方だ。
今の俺はプライド<魚である。
俺は泥棒犬に距離を詰め、助走をつけて強烈な猫パンチを炸裂した。
「痛ぇっ!」
衝撃で泥棒犬の毛皮の服がずれ落ち、ユサユサ揺れる大きな二つの山があらわになる。
「いやーん、キャシーのえっちぃ……」
胸元を手で隠し、必死の甘え声とつぶらな瞳でごまかす犬。
残念ながら、今は発情期ではないので全くそそられもしない。
今の俺の欲は性ではなく食だ。
「ノア、魚は何処だ」
「さ、魚? あたい知らない」
しらばっくれ、急いで服を着る泥棒犬ノア。
「ノア、さっき魚盗ったろ? いっつも俺の食い物貪りやがって……何処だ」
「あはは、胃袋に入っちゃってるかも」
爪を研ぎ、斬りかかる準備をした。
「ううっ、ごめんなちゃーい………ってあれ? なんであそこ開いてんだろ……ほら見てよ」
ノアは俺の後ろを指差して首を傾げるが、その手にはのらない。
「俺がそっち向いた瞬間逃げるだろ」
「逃げないって! あたい嘘つかないもん」
ノアにしては嘘がうまい。
いや、本当なのだろう。
「確かに、変だな」
後ろを向くと、普段閉ざされている扉が開いていた。この獣の森の象徴ともされる、樹齢百万年以上の御神木。その前に設置されている扉だ。
御神木の中は空洞になっていて、中には獣の森の守り神である獣神様がいる。
御神木の中に入れるのは獣王とその家来のうちの何人かだけで、部外者が勝手に入ったら即死刑だ。それくらい獣神様は獣族にとって特別な存在である。なんせずっと昔からこの森を守っているのだ。
___なんてことを、俺はよく母さんから聞かされた。獣族なら誰でも知っていることだ。
そのはずが、いつも厳重に閉まっている扉が普通に開いている。ようこそ、お入り下さいとでも言っているかのようだ。
___明らかにおかしい。
が、中はどうなっているのだろうと気になる好奇心もある。
………いや、勝手に入るのはよくないだろう。
俺は人の家に侵入して魚を泥棒する何処かの犬とは違う。
「っておいバカ!」
何処かの犬は既に侵入罪を犯していた。なんのためらいもなく進んで行く。
「ねえキャシー、御神木の中って意外と綺麗なんだね。あたい初めて入ったよ」
あーあ、彼奴は死刑だ。
「ほら見てよ、階段がある」
「俺は行かねえぞ」
「入らなくても扉にギリギリ近付けば見えるから」
それもそうか。入らなければどうってことない。
「分かった」
俺はあともう一歩というところまで近付き、御神木の中を覗くー。
「何も見えねえよ」
「隙ありっ!」
まんまと罠にかかり、限界まで近付いた俺は御神木の中に引きずり込まれた。
「お前、俺まで道連れにしやがって……」
「キャシー、泣いてるの?」
「泣いてねーよ!」
___中は心が揺さぶられるほど幻想的で美しく、さっきまでの怒りも忘れてしまった。
木の幹の内側に張り付いている苔があちこちで青白いほのかな光を発し、天から差す太陽の光に向かって螺旋状の階段が伸びている。
「すげー……ヒカリゴケがこんなところに」
ヒカリゴケは環境によって光る色が変わる特殊な苔だ。普通の苔は湿気が多い場所にあるが、ヒカリゴケは太陽の光がよく当たる場所にある。青白い光は平和を表し、赤い光は危険を表す。昔、兵士達の多くがヒカリゴケを戦争の時に持って行き、その光を頼りに敵から自分の身を護ったという。そのため今は数がほとんど無く、探して見つかることはまずない。
それくらい珍しい物がこんな身近にあったとは。
「キャシー、上行ってみようよ!」
ノアは興奮した表情で螺旋階段を指差した。
どうせ中に入ってしまったのだ、思う存分堪能しよう。それに、俺は入ったのではなく、道連れにされただけだ。罪があるのは犬だけである。
そう考えると踏ん切りがつき、俺の中に迷いは無くなった。
「行こう」
ついでにヒカリゴケを幹から握り取り、俺は階段を駆け上がった。
「ちょっと、あたいも行くから待ってってば」
慌てて追い掛けるノアの先を越し、俺は階段の先にある部屋に辿り着いた。
部屋というか、ただ葉っぱが敷き詰められただけの空間だ。それなりに広い空間だが、葉っぱで囲まれているだけで何もない。
何だか期待外れだ。
ノアも同じことを思っているだろうと思い、後ろを振り向いたが、違った。
「何か、嗅いだことのない匂いがする」
ノアは鼻をクンクン動かしてそう言った。
確かにそんな気もしないではないが、正直よくわからない。嗅覚に関しては、猫より犬の方が遥かに上だ。
「あ、もしかして獣神様かな? 生活感のある匂いがするし」
見た感じは生活感など微塵も感じ無いが………そうか、獣神様は御神木の中で森を守っているんだった。
「だとしたら、獣神様は何処に居るんだよ」
少なくとも俺は獣神様が外にいるのを見たことは無いし、姿かたちさえ知らない。
御神木の中にも居ないとしたら、何処に居るのだろうか。
「あたいの知ったことか。それより見てよ、これ」
空間の葉っぱの壁から頭を突き出すノア。俺も隣で葉っぱから頭を突き出した。
「おお、すげーな」
頭を出すと、獣の森の全体の様子を見渡せた。自分が登っている時は何とも思わなかったが、螺旋階段で相当高いところまで来ていたらしい。
一生のうちに御神木から森を見渡すことがあるなんて、思いもしなかった。
追いかけっ子をしているチビっ子たち、隣近所のおばさんと世間話をしている母さん、レパードにやられて落ち込んでいるライオネット。
あ、獣王祭の時に俺を肩に乗っけてくれた狐の男も見えた。小さな木箱を持って、何やら辺りをキョロキョロ見回している………何やってんだか。
こうしてみると、世の中いろんな奴がいることがよくわかる。きっと世界はもっと広く、獣族以外にもいろんな種族がいて、俺の知らないことも山ほどあるのだろう。
「キャシー、もう帰ろー」
ノアが大きなあくびをして言った。
「そうだな、ノアにジア食われたせいで腹ペコだ」
家に帰ったら、母さんにまた魚を焼いて貰おう。
そう思い、頭を引っ込めようとし___
「__え?」
___森が爆発した。
何の前触れもなく。
- Re: 猫と犬の獣道 ( No.5 )
- 日時: 2015/06/02 06:16
- 名前: ネギトロ丼 (ID: EEo9oavq)
何が起きたのか整理がつかない。
が、ここに居てはいけないのは分かる。
「逃げるぞ!」
俺は未だに状況が掴めず固まっているノアの手を引っ張り、螺旋階段から飛び降りた。
あちこちでヒカリゴケが赤く光る。
御神木から出ると目の前は火の海。慌てふためき溢れかえる獣たちの波にのまれて、右手に繋いでいたノアの手が離れた。
「ノア!」
ノアを見失い、ひとりになった。
嫌だ、怖い。どうすればいいのかわからない。心臓がバクバク鳴る。
前から押し寄せてくる獣たちの波に足をすくわれ、俺は地面に仰向けになって倒れた。次々と顔や腹を踏み付けられ、立ち上がることが出来ない。
母さん。母さんは何処だ。もう逃げただろうか?
わからない。家に戻らなくては。
***
母さんは、とにかく明るかった。
俺が落ち込んだり、辛いことがあった時はいつも寄り添って励ましてくれて、笑わせようと一生懸命面白いことを言おうとしてくれて。
母さんのギャグは本当に寒くてつまらなかったんだけど、無口な父さんが棒読みでツッコミをすると、俺いつも笑っちゃって、辛いこと忘れられたんだ。
いつも自分より先に俺のことを考えてくれる母さん。自分のこと忘れちゃって、三日間絶食しちゃってたこともあったっけ。
半年前に父さんが死んだ時も母さんはすぐに立ち直って、引き籠もってた俺に黙って笑顔で寄り添ってくれた。
でも、母さんが夜中にひとりで泣いてたのを俺は知っている。本当は弱いのに、俺の前では強いふりしてて。
そんな母さんのおかげで、俺は徐々に立ち直ることが出来た。
母さんも俺も、昔の父さんの話をして笑い合えるくらいになった。
___それなのに。
今、母さんまで居なくなったら、もう俺の心は折れてしまう。
誰もいないと信じ、俺は家に向かって走った。
いた。
爆発で崩れ落ちた我が家の下敷きになっていた。
「キャシー………」
弱々しい声で助けを求める母さん。
状態は酷いが、生きている。
「母さん!」
急いで助けようと駆け付けると、いきなり黒いローブを着た何者かが現れた。
「おっと、僕ちゃん……生きててもらっちゃ困るんだわぁ……」
母さんの頭が踏み付けられ、地面にめり込んだ。何者かは不敵な笑みを浮かべる。
わけがわからない。何が起きているのかわからない。
「やめ……ろ……」
嫌だ。母さんが殺される。
それなのに、体が動かない。かすれた、震えた声しか出ない。
「ご愁傷さま」
グシャリと鈍い音がして、頭が潰れた。
俺の心も潰れた。
粉々になった骨と肉の断片から血が噴き出る。
「ぶはははっ、面白い音出して潰れたな………」
何者かは嬉しそうに笑うと、俺の方を向いた。
「よし、次はお前だなぁ」
何者かは人差し指をたて、指先に赤く光る小さな球弾を作り上げた。球弾はどんどん膨張し、
「死ね」
俺に向かって放たれた。
___その時、誰かに身体を引っ張られた。俺を取り逃がした球弾は地面にぶち当たって爆発する。
誰かに助けられたらしい。
別に、どっちだって良かった。
どっちにしろ、もう母さんは死んだんだ。
***
心地良い風に吹かれ、目を覚ました。隣ではノアがすやすやと寝ている。
俺は身体を起こし、辺りを見回した。
ぐるりと一周見回しても、特徴の似たような木々しかない。
はて、こんな森の茂みでノアと一緒に寝るような展開があっただろうか。
少なくともここは獣の森では無い。匂いからして違う。
獣の森の葉はもっと青々しいし、基本的に背の低い木しか生えていない。最も、御神木は例外だが。
ここは濃い緑の葉をつけた高い木ばかりだ。獣の森からかなり離れている。
「起きたのか」
振り向くと、黄土色に黒いまだら模様の耳と尻尾をつけた獣族がひとり。
というか、レパードだ。
ん? ますます分からなくなった。
何故レパードがいるのか。
……………。
……………。
_____あ。
赤く光るヒカリゴケ、爆発して火の海となった森、黒いローブの男。
俺は助けられ、母さんは潰された。
全部、思い出した。
「あああああああああああああああああああああ!!!!!」
怒りと悲しみと憎しみがゴチャゴチャになって頭がはち切れそうになった。
草木を蹴り、殴り、のたうち回った。
死んだ。何もかも消えた。無くなった。
「うっ……おげぇっ」
母さんが残酷に殺されたのを思い出し、吐いた。気持ち悪い。悪夢だ。
「何でだよ………何で俺のことだけ助けて、母さんは助けられなかったんだよ……」
「気付いた時には遅かった」
もう何処に怒りの矛先を向けていいのかわからず、レパードにあたった。
「あんただったらあんな黒ローブなんか倒せたんじゃないのかよ。何の為の力なんだよ」
「彼奴は僕の手に及ぶ相手じゃなかった。すまない」
「………うるせえよ!」
俺はレパードを地面に押し倒し、何度もぶん殴った。
何度も何度も何度も何度も何度も。
レパードは抵抗しなかった。
涙で視界がグチャグチャになり、何を殴っているかも分からなくなる。
途中で殴るのも疲れ、俺は地面に突っ伏した。
もう、生きる希望も何も無い。
- Re: 猫と犬の獣道 ( No.6 )
- 日時: 2015/06/01 20:06
- 名前: ネギトロ丼 (ID: EEo9oavq)
「その………本当にあの時は殴りかかってごめんなさい」
「もうこの前謝ったじゃないか。ほら、ノアに食われる前に食え」
レパードは焚き火で焼いていた、木の枝で突き刺した魚を俺にくれた。
___あの正体不明の爆発から約一ヶ月が経つ。
今では母さんの死にも向き合えるようになった。
「俺って、本当に弱いな」
好戦的で食料のために狩りもする獣族は、いつも死が付き物。ひとりふたり身内が死んだところで、悲しみに明け暮れる奴はいない。
獣王祭の時だって、ステージで殺されて増えていく死体を見ても何とも思わなかったのに。
父さんと母さんが死んだ時は、ダメだった。
「ノアの方が、よっぽど強い」
ノアの家族、両親は行方不明だ。というか、行方を聞ける人すらいない。俺達三人以外、獣族はほぼ間違いなく全滅した。
バカなノアでも、そんな事は分かってるはずだ。
でも、ノアはしばらく泣いただけで、自分で心の整理が出来ていた。
本当に、強いと思う。
「獣族でも、誰だって悲しみは一緒だ。どうやって心の整理をするかが違うだけで」
レパードは俺の隣に座り込み、昇り始めた朝日を眺めた。
「もう、そろそろノアが起きる。食わなくていいのか?」
「ああ、そうだった」
ぼーっとしていて全く焼き魚に手をつけていなかった。早めに食べておこう。
「本当に悪かった。君の母さんを助けられなくて」
「いや、俺とノアを助けてくれただけでも本当に感謝してるよ」
(随時更新)