複雑・ファジー小説
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- 佐倉 茜・狂想曲
- 日時: 2015/09/28 08:59
- 名前: うたり ◆Nb5DghVN/c (ID: Ic8kycTQ)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=18174
最強キャラの小説が書きたくなりました。
あぁ、イライラの結晶が増えていく……。
・はい。無理やり終了しました。番外編を「小説家になろう」に作成中。
イライラも大分和らぎましたので 役目が終わりました。
・あまりにも酷いので No.9 変更。
目次
・プロローグ :>>1
・「ウィルス・イータ」:>>2 R1
・いじめ :>>3 R1
・卑怯者じゃない :>>4
・スペース・デブリ :>>5
・静香 :>>6
・デストロイ :>>7 R1
・遭難者 :>>8 >>9
- 佐倉 茜・狂想曲 ( No.1 )
- 日時: 2015/07/26 15:39
- 名前: うたり ◆Nb5DghVN/c (ID: bGZR8Eh0)
佐倉茜は女王である。
彼女は、天才で、暴君で、自分の気に入らないことをする者には一切容赦しない。誰にも彼女の意思を拘束することは出来なかったし、行動を停められない。
生国が嫌いになって、幾つかの島を購入し独立国とした。ちゃんと国連にも登録してあるから、名目だけのモノではなく間違いなく独立国だ。
国名は「茜王国」。
彼女が女王で、国民は皆臣下だ。この国の人口は千五百人。税金は、なし。
政務と経理は執事隊が取り仕切り、高齢の執事長が指揮を執っている。メイド隊も、本来はその指揮下にあるのだが、実状は女王の親衛隊となっている。
そして、この国は、全て女王の意思によって運営されている。
税金がなくて、どうして運営できるかって? 彼女の収入によってである。
毎日、黄金(ナインナイン)二百キログラム分に相当するモノが複数のスイス銀行に入金されている。これは時価ではない。契約時にそのように決めたことであって、誰もが了承した事柄である。遅滞は一切認められていない。
彼女の収入の殆どは、発明品の特許料だ。銀行に入っている財産の九割九分までがそうで、残りが両親の遺産である。
しかし彼女の資産は、それだけではない。電子マネー、この資産が凄まじい。
それについて、少し語ってみよう。
約二年前の話である。
- 佐倉 茜・狂想曲 ( No.2 )
- 日時: 2015/08/01 19:34
- 名前: うたり ◆Nb5DghVN/c (ID: yIVvsUU5)
茜王国が建国して間もない頃のある日、茜は ふらりとメイド室のひとつに立ち寄った。
そこは、世界中のニュースを検索し、女王の要求を満足するための組織であるが、何を要求されるか判らないので、とにかく何でも珍しいものを探しているという、かなりいい加減な、しかし最重要な部署である。
五十人のメイドがパソコンを操作している。今日は、何か雰囲気が悪い。何かあったのだろうか。
「どうしたの? 何があったの」
メイド達は、始めて茜の存在に気付いて、説明を始めた。女王は無駄が嫌いだ。くだらない挨拶などしていたら叱られる。
「ウィルス? ハッカー? 何よそれ」
「ふ〜ん。私の国に、攻撃を仕掛けるとは、良い度胸ね」女王の眼が光り、メイド全員が震え上がった。女王の顔には、怒りと、しかし面白い玩具を見つけた子供のもうな微笑が浮かんでいた。
この時点では、彼女はパソコンについて何も知らなかった。メイドの中で、その系統について詳しい者が説明する。彼女が質問し、メイドが答える。それが何度か繰替えされた後、女王の命令がくだった。
「私に、プログラムを教えなさい」
数人のメイドが、女王の居室に赴き、レクチャーした。早朝の七時頃であった。
次の日の朝八時頃、茜は二枚のディスク持って来た。その一枚は、全く新しいOSのプログラム。もうひとつには、逆探知形アンチウィルスソフト『ウィルス・イータ』のプログラムだった。
「OSをこれに変えなさい。そんな中途半端なのは使わないで!」「……いや。そうね、何台か残してても良いわ。面白そうだもの」
メイド達は、驚愕の表情で自分達の主人を見上げた。たった一日でプログラムをマスターしたのか、それもOSを自作するほどに。代表のメイドが、震える手で そのディスクを受け取った。
「残したパソコンに、これをインストールなさい。ウィルスを喰い尽し、作成者のパソコンを破壊するわ」「ハッカーにも効くわよ。ここに入ろうとしたら、ボン! よ」
その日、世界中の国家秘密組織の情報部では、据付式のスーパ・コンピュータが次々に壊れていった。ソフト的にも、ハード的にも修復不可能なほど徹底的に。
そして、世界中のハッカー達にも。「間違っても『茜王国』は手を出すな」という、ひとつの大きなタブーが出来た。
以来、茜王国にサイバー攻撃を仕掛けるような無謀な者はいなくなった。
そして、「ウィルス・イータ」のダウングレード版(相手のパソコンを破壊する部分を削除したモノ)が、ネット販売されるや大ヒットした。一ヶ月に一度のアップデートに費用がかかる仕組みなのに、売行きは伸びるばかりだ。
その後、茜は面白がってウィルス・イータの上位バージョンを造った。
それはとんでもない化け物だった。ついでだが、それには隠し技として(茜も意識しなかった)ハッキング機能がある。世界中の機密は丸裸になった。まぁ、茜王国にとってだけではあるが。
そのソフトの名称は『デストロイ(破壊神)』という。
- 佐倉 茜・狂想曲 ( No.3 )
- 日時: 2015/07/28 12:16
- 名前: うたり ◆Nb5DghVN/c (ID: yIVvsUU5)
佐倉茜の容貌を記していなかった。大変失礼した。うっかりしていたのだ。
今年で、彼女は十六歳になる。
身長は百五十八センチメートルで、体重は内緒である。
以前は腰の付近まであった髪を ショートボブにしてしまったため、後ろから見ると何処にでもいそうな少女である。しかし、正面から彼女を見た者は、いや 眼を見た者は、誰もが皆 狼狽した様子で目を逸らし、コソコソと遠ざかって行く。
彼女の容貌は、整ってはいるが超絶美少女という訳ではない。まあ、そう言う輩もいないではないが。ハッキリ判る特徴がある。眼が違うのだ。彼女の深く澄み切った真黒の瞳をみると、誰もが自身の汚点を探し出し、眼を逸らしてしまうのである。彼女の両親からしてそうだったのだから、他人が耐えられる筈がない。
このようなエピソードがあった。
彼女は当時十歳、ニッポン国の小学校に通っていた。
お笑い種である。
当時でさえ、大学卒業どころか 博士号を複数持っていた彼女を 誰がどう教育するつもりだったのだろうか。平等という美名に隠れた押付けである。
彼女のクラスで『いじめ』があった。両親のいない、遠い親戚に育てられていた少女に対し、市会議員の息子が手下を使って嫌がらせをしていたのだ。
最初は茜も気付かなかったが、彼女がトイレで泣いているのを たまたま見かけて声をかけてのだ。
「ふーん、そうなんだ」一見興味なさそうに聞こえたが、眼が怒っていた。事情を話した少女の方が怯えて腰を抜かしてしまった。
茜が教室に戻ると、もう次の授業の準備が済んでいて担任も来ていた。市会議員の息子もいた。彼女はツカツカとその席の横に行き、睨みつけて言った。
「立ちなさい! 卑怯者」たかだか十歳の少年だ。彼女の言葉に抗える気力などある筈もない。フラフラと立ち上がった。教室中の皆が 注目して見ていた。彼女の声は好く透る。
彼女は、左足を踏ん張り、右手を平手のまま振り上げた。
パッチーン!
鮮やかな音がして少年の身体は弾き飛ばされた。窓ガラスを割って廊下の壁にブチ当たって止まった。廊下のガラスが衝撃で粉砕され、バラバラと彼に降りかかった。
教室内の全ての音が消えた。
市会議員の息子は左側の頬を打たれ、奥歯をへし折られて口から血を流していた。顔や体中を割れたガラスの破片で傷つけらながら、泣き声も出せず、失禁して、震えていた。
「担任! あなたも、知っていて放っていたでしょう」茜の瞳に睨みつけられた教師は、黒板に背中を押し当てて 冷や汗をダラダラ流しながら震えていた。
それでも言い逃れようとした。
「な、何のことかな。わ、私は何も知らないよ」その言葉を聞き、更に怒りを募らせたのか、左手で(さすがに右手は 少し赤く腫れていた)傍にあった椅子を持ち上げ、無造作に教師に投げつけた。
ガーン! バキッ! ガタターン。
人間の潰れた音ではなかった。
外れたのだ。
椅子は黒板に当り(それでも教師の位置とは いくらも離れていない)、それが二つに割れて、床に落ちた音だった。
担任の教師は、目を剥いて座り込んだ。
「ちッ」女の子らしからぬ舌打ちをして、茜が他に何か投げる物を(右手で)探していると察した教師は、慌てて教室から逃げ出そうとした。
彼が教室の扉を開けたのと、彼女が鉛筆を取り上げて投げつけたのは、同じくらいのタイミングだった。
教師は、廊下を走って逃げて行った。脹脛(ふくらはぎ)に孔があき、血をダラダラと流しながらも、その痛みさえ感じ取れないほどの恐怖に怯えながら。
教室の扉には、血に濡れた鉛筆が突き刺さっていた。
その いじめられていた少女は、今メイド隊の中にいる。忙しそうに、しかし楽しそうに働いている。
- 佐倉 茜・狂想曲 ( No.4 )
- 日時: 2015/08/16 08:37
- 名前: うたり ◆Nb5DghVN/c (ID: yIVvsUU5)
前作の後日談を記して置きましょう。
あれほどの事があったのですから、ただで済む訳がございません。相応の処分がなされました。
まずは、懲戒免職された者。当然ながら担任教師。同じく教頭、彼も『いじめ』を知りながら放置した罪です。いじめっ子の父親の市会議員も同じ罪で裁かれました。
親権剥奪に課せられたのは、いじめっ子の両親。保護者義務放棄の罪は、いじめられていた女の子の保護者である親戚の夫婦。彼等は彼女の発する『いじめ』の訴えを無視し続けたのだから、当然の報いです。
ああ、子供達はどちらも被害者として、県立の教育施設に居住することになりました。そして、そのまま学校に通いましたよ。
校長は『いじめ』の事実すら知らなかったようで、管理責任不備により更迭され、別の学校で教頭からやり直しになりました。
え、茜は裁かれないのかって。
何故でしょうか? 彼女は、誤った事をした同級生を諌めただけです。罪になど あたる訳がないでしょう。
五十年後のお話です。
元いじめっ子は、成人して議員になりました。
市会議員、市長、県会議員、県知事、国会議員、そしてニッポン国の大統領にまでなりました。彼が常に語っていた言葉があるそうです。「私は、卑怯者にだけは絶対になりません。どんなことがあってもです」
事実、彼は どんな圧力にも屈することなく国をリードして行きました。そうあと三年。あと三年間 彼が大統領を勤めていたならば、ニッポン国は世界でも最高クラスの文化国家になっていたことでしょう。
彼が五期目の途中で大統領を辞任したのは、ある低俗な週刊誌の記者が発した 軽い気持ちの質問が原因でした。
「大統領は、昔『いじめ』をしたことがあったそうですね」
「はい。ありました」全く躊躇のない即答に、記者の方が驚いた顔をしていたそうです。
「ああ。それが罪だというのであれば、私は 本日付で大統領を辞任致します」
事実、彼は その日の内に辞表を提出し、引き止める多くの人々に謝辞を述べながらも決意を翻すことはなかった。「私は、卑怯者だけには なりません」と。
詳細に調査すると、彼もまた被害者であることが判ったのです。
雑誌記者は全国から猛烈な非難を浴び、会社を解雇されました。その記者の所属していた会社も、その親会社までもが連続して倒産したそうです。誰も その会社を信用しなくなったのが原因だそうですが、当然でしょうね。
彼は、家に帰ると妻に事の次第を話しまた。
「まあ、仕方のない方ですねえ」妻は にっこり笑いながら受け止めました。
入浴を済ませ、食後に寛いでいると 彼の妻が話しかけたのです。
「『茜王国』に移住しませんか?」
妻の問いかけに、少し考えて 元大統領はこのように言いました。
「私などが 入国させて貰えるのだろうか」
「大丈夫ですよ。私は あそこの『メイド隊』の一員だったのですから、融通して頂けると思います」
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