複雑・ファジー小説

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海辺のひより
日時: 2018/08/31 19:47
名前: 美華 (ID: tOQn8xnp)

私は…。君にフラれて…。

ーーーーーー息ができない。視界は青に染まっている。

そうだ…私は、死のうとして…

海に、身を投げたんだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【注意】
*グロ含みます
*R表現は控えめにあるかもしれません。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


それでも構わないという方は、どうぞ。


【第1章-1】>>1-5

【第1章-2】>>6-9 >>14-16 >>19 >>22



Re: 救えない愛の壊し方。 ( No.16 )
日時: 2015/10/03 20:55
名前: 美華 (ID: zKu0533M)


「……っごめんね。こんな事聞いて」

隼人とやっと会えて話せたのに、嫌な空気にはなりたくなかった私は、笑って誤魔化した。
今のは忘れてって付け足して。

「いや…ひよりの言うとおりだよ」

隼人は私の目を見てこう言った。

「え……?」

「俺、あれからずっとひよりのことばっか考えてた」

顔を赤らめて言う隼人を見て、昔に戻った気分だった。
昔といっても、たった一週間前のことのはずなのに。
あぁ、この一週間、長かったなぁ、とつくづく思う。

「じゃあ……」

「それはできないんだ」

私の言葉を塞ぐように、隼人は言った。
何で……隼人は、私の事、まだ愛してくれてるんだよね?
何で、何でできないの。
私は隼人の目をじっと見つめた。

「そういえばさ、兄さんに何されたの?」

話を流すように隼人はあの件を持ち出した。

「身体見られて…首筋噛まれたり、胸触られたりしたけど……特に一線を越えるようなことはしなかったよ?怯えてた。よくわかんないけど」

そう言い終わってから隼人を見ると、険しい顔をして私へ近づいてきた。

「ずるい。ひよりは俺のものなのに」

「えっ……隼人」

Re: 救えない愛の壊し方。 ( No.17 )
日時: 2015/10/04 19:58
名前: ヒイラギ (ID: DU.Bh3c8)  

あああ何て素敵な…
乱暴なお兄さんに奪われそうになると本気で怒って、ひよりの幻聴が聴こえるだなんて…
切ないです!
更新楽しみです…

Re: 救えない愛の壊し方。 ( No.18 )
日時: 2015/10/09 07:58
名前: 美華 (ID: nAGkhkN.)


ヒイラギ様

いつの間にかコメントが(O_O)

私の作品にコメントくださる方はまだ少ないですが、皆さんわああとか何か叫んでらっしゃいますね(笑)

たぶん私もこうなるのですが。

ちょっと大人な恋愛ものは初挑戦なので、温かい目で見てもらえたら幸いです

更新楽しみだと言ってもらえて凄く嬉しいです!

更新頑張ります!ありがとうございました!

Re: 救えない愛の壊し方。 ( No.19 )
日時: 2015/11/06 19:56
名前: 美華 (ID: g3crbgkk)

隼人は私を抱き締めて、大きな溜め息を吐いた。
この溜め息さえも愛おしく感じる程、私は隼人に飢えていたのだと実感する。
長い時間待っていた。こうやって、隼人に抱きしめてもらうのを。
たった一週間という、本当は短い時間の筈なのに、どうしてあれ程にも長く感じられたんだろう。
隼人の呼吸が聞こえる。私の呼吸が聞こえる。
当たり前のことなのに、それが嬉しくて堪らなかった。
もう、ずっとこうしていたい。ずっと隼人の側で生きていたい。隼人の息を聞いていたい。彼の呼吸が途絶えるまで、私は彼と共にありたい。

「ねぇ、隼人……私の事、まだ好き…?」

私の声は震えていた。答えを聞くのが怖い。でも、知りたかった。彼が私をまだ愛してくれているのか。
この矛盾する考えは、きっと、ずっと変わらない。
私の中で永遠に渦巻くであろう、厄介なもの。
隼人は黙ったままだった。
ただ、沈黙の中、隼人の心臓の音がやけに大きく感じた。

「愛、して……る…?」




「私は、隼人の事まだ好きだよ…。隼人がいない一週間、どうしようもなく寂しかった。苦しかった…。隼人が同じ気持ちだったらって、ずっと想ってた…」


私はとうとう泣き出してしまった。込み上げた感情がどんどん言葉となって私の口から出ていく。
本当は、こんなことを言いに来たんじゃない。なぜ別れたのか聞きたかった。もう一度でいいから、隼人に会いたかった。ただ、それだけの事なのに……。
どうしてだろう。涙とともに、思ってもみない言葉が溢れてくる。
私は、隼人の事が好き……?
わからない。でも、隼人がいなきゃ生きていけない。
私には隼人が必要だ。でも、隼人は…?
そう考えてしまうと、もう涙は止まらない。
嗚咽が止まらなくて、途中から言葉さえ出なくなってしまった。




「……ずるい」


隼人から聞こえてきたのは、そんな言葉だった。
そして、首筋に電気の走ったような痛みを覚えた。


「……っ」

「そんな顔してきて。俺に何を求めてるの?」


驚きのあまり固まる私に、隼人は顔を近づけてきてキスをした。
隼人の舌が強引に入ってきて、私は思わず隼人を突き飛ばしてしまった。


「こうして欲しかったんじゃないの?」


違う。こうして欲しかったんじゃない。
そう言いたかったけど、言えなかった。
嗚咽がまだ続いていた。


「隼人は……私の事…っ」

「”どう思ってるの?”って言いたいんだろ?」


私は頷いた。すると、隼人は怒ったように、「バカじゃねぇの」と私を見ずに吐き散らした。


「好き。俺は、ひよりのことが好き」


そう言って隼人はまた、私を抱きしめてキスをした。
あぁ、これが夢だったらどうしよう。



どうか夢なら、覚めませんように。

Re: 海辺のひより ( No.22 )
日時: 2019/03/29 10:40
名前: 美華 (ID: 8hur85re)

あれから、隼人と私は、一週間前別れを告げられたあのファミレスに来ていた。
2人ともジュースを頼むだけで、かと言って一口も口にする事なく、沈黙に身を任せていた。
いつもは髪型もバッチリ決めてくるのに、今日はボサボサでーーー下ろした前髪から覗く瞳を見ていると、それだけで満足だった。
愛おしいと思った。
私は隼人が好きで付き合った訳じゃない。隼人を利用していた自覚もある。
そんな私がこんな事を思っていいのだろうか。
私がじっと見つめているものだから、隼人は目をそらして「なんだよ」と言った。「こっち見んな」とか言わないのが、これまた可愛い。
愛してくれる人が目の前にいるという幸せ。私は愛れている自分に酔っていて、本当は隼人のことなんて好きじゃないんじゃないかなんて思ってた……だけど。
今となっては、ちゃんと言える。


「私、やっぱり隼人が好き」


本当はまだ、ただ単に酔いしれているだけなのかもしれない。でも、それでいい。恋は、心の麻酔だ。
麻酔が切れるまで、私は隼人に愛され、私も愛していたい。
隼人の返事は無かった。言葉の代わりに出て来たものは、彼の頬をつたる一筋の涙だった。




「…ごめん」


小さい声で、隼人は確かにそう言った。


「どう…したの?」

「やっぱりさ、ちゃんと話さなきゃダメだよな。わかってたんだけど、どうしても言えなかった。
……わかってると思うけど、別れようって言ったのはひよりを嫌いになったとか、そういう訳じゃなくて……
ひよりは俺にとって大切な存在だから…だからこそ、知られたくなかったし、それが理由で別れられるんじゃないかって思って…怖くて、先に離れようって思った」


そしてまた、小さな声でごめんと呟いた。


そうだった。私達はお互いの気持ちを確かめ合っただけで、まだ別れた理由も聞かされていなかったし、まだ別れている状態なんだった。
そう思うと何処と無く心がチクリと痛んだ。
思いが同じなら、また一緒にいられると思っていた私を恥ずかしく思った。


「どうして…なの?」

聞いていいのか、聞かない方が良かったのか。
これは私にとって得になるのか損になるのか。

もしかしたら、お見合いの話をもらったとか?いや、まさかね。今頃お見合いなんて、ないよね。

実は、私のことも好きだけど、他にも好きな人がいる……とか?
そんなはずない。そんなことあってはいけない。





「俺……病気なんだ」


「……え、…」


それは、私が予想していたよりも遥かに重いもので。
ちゃんと隼人の声は届いていて、理解できるはずなのに、頭がそれをさせぬと必死だった。


「…びょ、病気?」


「そう」

「え、何の?……治るよね?」


隼人は静かに首を横に振った。


「治らない…の?」



「治らない」



紡ぎ出された言葉は「別れよう」という言葉よりも残酷に、私の中に響いた。
ああ、きっとこれは罰だ。隼人を利用してきた私に、神様が罰を与えたんだ。
外はいつのまにか雨が降り出していた。次第に強まる雨は私達のこれからを暗示しているようだった。



【第1章-2(完)】










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