複雑・ファジー小説
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- 暗黒勇者は何を斬る(旧題:黒の勇者)
- 日時: 2016/02/25 01:37
- 名前: クリオネ (ID: .7qV.whT)
初めまして。
クリオネといいます。
小説は初めてですが、少しでも多くの方に目を通して頂けると嬉しいです。
また、誤字脱字等ございましたらご指摘して頂けると幸いです。
『暗黒勇者は何を斬る』の舞台はRPGゲームに酷似した「異世界」。
ありがちな設定ですが、昔から書いてみたかったので挑戦してみようと思います。
もくじ
第一章
>>1
>>2
>>5
>>6
お知らせ
2016/02/24
タイトル変更しました。
リザ様より感想をいただきました。>>3
1-1、1-2を修正しました。
【大まかなあらすじ】
発売したばかりの新作RPG『フロンティア』。
このゲームの発売を待ち望んでいた少年「リク」は、タイトル画面の指示に従ってスタートボタンを押す。
これが異世界への扉を開くことになるとも知らずに……。
「何がどうなってる……。ここはどこだ? 俺の家は?」
剣と魔法の世界に訪れたリクは、戸惑いながらも自分の世界へ帰る方法を探す。
そんな中、リクは悪魔の少女「サキ」と出会うのだった。
サキはリクに告げる。
「喜べ。今日から貴様は暗黒剣士だ」
「嫌だよそんな中二くさい肩書き!」
悪魔のサキ、暗黒剣士のリク。
そんな奇妙な二人の物語。
- 1-1 ( No.1 )
- 日時: 2016/02/24 01:21
- 名前: クリオネ (ID: 6afFI3FF)
何をどう間違ったらこんなことが起こるのか。今から五秒前まで、俺は自宅で新作のゲームをやろうとしていたはずなのだが、何故か俺は青空の下、道のど真ん中に座り込んでいた。
石畳で造られた道を挟むように、両サイドに露店がずらりと並んでいる。市場は大勢の人で賑わい、行き交う人たちは皆、西洋人に見えた。
俺が持っているものはスマホと、今かけている黒縁メガネだけ。普段、困ったことが有れば便りにしているスマホは、何度電源ボタンを押しても真っ暗な画面が表示されているだけだった。
今日は次世代機対応の新作ゲーム『フロンティア』の発売日だった。
『フロンティア』は発表当初から、綺麗なグラフィックが注目を集めていた新作RPG。透き通る水、揺らぐ炎、モンスターの質感、全てがリアルで俺の中のゲーマーの血が騒ぐ。
そして迎えた発売日当日の午前八時、ようやく俺の手元にこのゲームが届いた。
本来ならば学校にいるはずの時間だが、発売日からこのゲームのスタートダッシュを決めることは、俺にとって学校よりも大切なことなのである。
「あ、もしもしリク? 今日学校来ないの?」
ゲームを始める準備をしていると、同級生のアズサから電話がかかってきた。
アズサとは小学校からの幼なじみで家も近く、俺が学校を休むとこうして電話をかけてくることがある。お人好しと言うかお節介なところもあるのだが、これがこいつのいいところでもある。
「今日は朝から調子悪くて……」
「ゲームするつもりでしょ」
アズサは初めから俺が高校を休んでいる理由をわかっていながら、電話をかけてきているようだ。電話越しに彼女の深いため息が聞こえてくる。
「とにかく今日は忙しいんだよ。学校行ってる暇無いの」
アズサをあしらいながら、『フロンティア』を起動した。テレビ画面にゲームタイトルが映し出されると、タイトルの下に「press start」の文字が浮かび上がる。
「毎日ゲームばっかり……。明日も来なかったら、ノート貸さないからね」
「ごめん! 明日は必ず行くから!」
初めから本当に学校を休むのは今日一日だけのつもりだった。また明日から頑張ればいい、今日はこいつを遊びたい。俺はコントローラーのスタートボタンを押し倒た。
- 1-2 ( No.2 )
- 日時: 2016/02/24 01:25
- 名前: クリオネ (ID: 6afFI3FF)
覚えているのはここまでだ。時計を持っていないため、どれほど時間が経ったのかもわからないが、体感的にはボタンを押したその瞬間から、ここへやって来てしまったように思える。
ゲームの世界に迷いこんでしまったなんて、ラノベのような事が現実になってしまったのだろうか。
「何かお困りかな?」
市場のど真ん中で立ち尽くしていた俺を見かねたのか、屋台で果物を売っていたオヤジが店の中から声をかけてきた。
大柄でスキンヘッドだったので、少々身構えてしまったが、声だけ聞くと気さくな感じがする。
「あの……ここってどこですか?」
「どこってここはガルチュア市場だよ。ガルチュアで一番大きな市場さ」
「ガルチュア……?」
「ガルチュア」と聞いて俺は確信した。ガルチュアは『フロンティア』に登場する架空の地名で、冒険の拠点となる街である。
本当にここは「ゲーム」の世界のようだ。異世界に対する不安は拭えないが、少しばかり元の世界よりも楽しく暮らせるのではないかと思ってしまう。
「それにしても変な格好だな。お前さん、どこから来たんだ?」
オヤジは眉をひそめて俺を指差した。灰色の上下セットの部屋着は、確かにこの世界には相応しくない。この世界で暮らす人から見たら変だと思われて当然である。
「まあ……ちょっと遠くの街から」
「東京から来ました」なんて言っても恐らく伝わらないだろう。果物屋のオヤジもこれ以上突っ込んではこなかった。
「俺の名前はダズって者だ。あんたの名前は?」
「リクっていいます」
「リクか。これも何かの縁だ! 困ったことがあれば言ってくれ。 俺きできることだったら聞いてやる」
ダズさんは強面だが、やはり気さくで親切な人だった。ガルチュアに来て、初めて話した人がでよかったと思う。
感傷に浸っていると、街がやたらと騒がしくなり始めた。馬の鳴き声と、数頭の馬が駆けていく足音、そしてざわめく街の人々。穏やかな雰囲気ではないように感じた。
「ありゃ、悪魔狩りの連中だな。悪いことは言わんから、奴らには近づくなよ。奴らの回りは争いばかりだ」
ダズさんは顎を右手で擦りながら俺に忠告した。
ダズさんの話によれば、「悪魔」はこの世界で絶対悪とされており、悪魔を崇拝することは法で禁じられている。
一方、「悪魔狩り」はその名の通りなのだが、悪魔を退治するためには手段を選ばない連中のようで、一匹の悪魔を退治するために村を焼き払ったこともあるそうだ。これだけ聞くと、正直どっちが悪なのかよくわからない。
また、この悪魔と悪魔狩りの設定も、『フロンティア』の設定に忠実なものだった。
ダズさんの言葉を耳に入れながら、俺は三人の騎兵隊が小さな路地へ消えていくのを眺めていた。
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