複雑・ファジー小説
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- 【第三章】ウェルリア王国物語-鏡の世界の王子様-【更新再開】
- 日時: 2018/02/06 16:20
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: bp91r55N)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=15213
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│光ある処、影がある │
│ 真偽もまた表裏一体 │
│ 対なす者が消滅するは │
│ 世界の均衡が崩れる時│
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〜『レーゼ=ファミリアの手記』より抜粋...
▼━━━━−−更新情報 】 2018.2.6 更新】
・第二章 異世界編-リークの受難>>38-40
→→更新
・>>10 説明不足だと感じたので、加筆修正しました。
・さて。覚えている方は果たしているのか……疑問しかないのですが
・せめて完結させねば! と、約1年ぶりに帰ってきました。
・こっそりただいま、です。
・1人でも「待っていたぜ」という方がいらしたら、
とってもとっても嬉しいのですが、
本っっ当に長いことお待たせしてしまってすみませんでした。
・なんとか私生活が落ち着いて、
こうしてキリちゃんたちとも向き合える時間が、
ようやく出来ました。
・とにかく、懐かしい気持ちでいっぱいいっぱいです。
・初めまして、という方も、
よかったら、キリちゃんたちの冒険に、
もう少しだけお付き合いいただけたら嬉しいです。
・Twitterも復活しました。
・そちらでも気軽に話しかけてやってください。
・長くなりましたが、本編をお楽しみください。
・ご感想もいただければ猛ダッシュでお礼に伺います。
・いつもありがとうございます。
2018.2.6 明賀 鈴
▼━━━−−あ ら す じ】
ウェルリア城の監視下に置かれることとなった主人公・キリ。第一王子であるアスカが目覚める気配は一向に無い。
そんな中、国王が助けを求めたのは、隣国の魔術大国の王女様だった。
アスカの許嫁と名乗る彼女に敵視されるキリだったが、ある日、城の中で奇妙な鏡を見つけて……
▼━━━−−注意】
この作品は『前作、前々作のネタバレ』を非常に多く含んでおります。
第一部『ウェルリア王国-紅い遺志と眠れる華-』からお読みいただけたら
嬉しいです(*^^*) <上記URLから是非!
この話からでも大丈夫ですが、第一部から読むと倍楽しめる。かも。
※基本コメディー・ほのぼのですが、時々鬱展開入ります(汗)
※ファジー板失礼します‥
<目次はこのスレの下の方にあります↓>
▼━━━━−−お知らせ 】
・上半期の終わりにひっそりと改名しました。
・あきすず、改め【明賀 鈴(あけが すず)】、
よろしくお願いいたします。
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::::::::ウェルリア王国物語-鏡の世界の王子様-【 目次 】::::::::
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主な登場人物 >>001
プロローグ >>002
第一章 魔術編
第一話:黒の少女 >>005-006
第二話:目覚めの声 >>007-014
第三話:黒猫のニーナ >>015-25
第四話:鏡の番人 >>26-34
第二章 異世界編
第一話:リークの受難 >>35-40
第二話:少年の思惑 >>更新予定...
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▼━━━━お客様 ♪
・書き述べる様
——and you!
・第一部『ウェルリア王国物語-紅い遺志と眠れる華-』→
【2013冬小説大会・複雑ファジー板】【銀賞】
・第二部『ウェルリア王国物語-摩天楼の謎-』→
【2014夏小説大会・複雑ファジー板】【金賞】
【2015夏小説大会・複雑ファジー板】【銀賞】
【2015冬小説大会・複雑ファジー板】【銀賞】
・【二次創作(紙ほか)板】書き述べる様「AsStory」ファンタジーパートに
ウェルリア王国キャラクター(Sトリオ等) 出演
★━━━━−−—————————————————
『複雑・ファジー板』書き始め日*2016.03.01〜
参照100突破*2016.03.08 参照200突破*2016.04.02
参照400突破*2016.06.14 参照500突破*2016.06.30
参照600突破*2016.07.07 参照700突破*2016.07.14
参照800突破*2016.07.19 参照900突破*2016.07.29
参照1000突破*2016.08.23
- Re: 【第三部】ウェルリア王国物語-鏡の世界の王子様- ( No.16 )
- 日時: 2016/06/25 08:56
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: N0L12wyN)
++++++++
「え? キリさんがいなくなった?」
イズミは電話越しに驚きの声を上げていた。
電話の主はユメノ皇女の専属メイド、ウィンクであった。
「城内は兵士たちが目を光らせているし……そんなことって、あるのか?」
半ば独り言のようにつぶやき、訝しげな表情を浮かべる。
電話を通して、ウィンクも不安げな声を漏らした。
『分からない。とにかくウェルリア兵のみなさんが捜してるみたいなんだけど……。また何か分かったら報告するね』
「ありがとう、姉さん」
ごめんねイズミちゃん、と言って、ウィンクは申し訳なさそうに電話の向こうで首を垂れた。
「……そういえば姉さん。風の噂でアスカ王子が目覚めたと聞きましたが」
『そうなの! こないだ隣国のミラ王女様が……』
『キャーーッ!』
「っ!?」
ウィンクの声に被さるように、突如遠くの方から確かに聞こえた。
女性の悲鳴だ。
「姉さん? どうしました?」
慌てて受話器を両手で掴み、急くように姉に話しかける。
電話の向こうからは、しばらく物音や人々の会話がぼそぼそと聞こえるのみだった。
「姉さん? 姉さんっ?」
しばらくして、ようやく応答があった。
『イズミ………ちゃん』
「姉さん? 何があったんです」
『ごめんね、何かあったみたいだから落ち着いたらまた連絡するわ』
「待って……!」
ブツッ……
一方的に電話を切られ、イズミはしばらく受話器を握りしめたままその場に立ち尽くしていた。
周囲の環境音がざわめきとなって急激にイズミの元に帰ってきた。
カウンターの向こうから、枯れ木のような指を伸ばしてジュリアーティが電話のコードを引っ張った。
「おい、小僧。何うずらボンヤリしとるんじゃい」
「……師匠」
イズミの薄い唇が開かれた。
ジュリアーティの眉がぴくりと動く。
「すみません、僕、今からウェルリア城に行ってきます」
言うやいなや、イズミは壁に掛けていた茶色のコート羽織ると乱暴に扉を開け喫茶店ジュリアーティを飛び出していった。
ジュリアーティはそんなイズミの背中を見つめ、ぼそりとつぶやいた。
「なるほど。世界の均衡が崩れる……とな」
- Re: 【第三部】ウェルリア王国物語-鏡の世界の王子様- ( No.17 )
- 日時: 2016/07/06 08:28
- 名前: 明賀 鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: N0L12wyN)
街のはずれまでやって来たイズミは、そこで馬車を拾い、ウェルリア城がある湖に続く森付近で降ろしてもらった。
その道中で御者に「城なんかへ、一体何しに行くんだい」と聞かれ、イズミは思わず固まってしまった。
確かに、自分の身なりは城に呼ばれるようなものに見えないし、御者が不思議に思うのも無理はない。
イズミはしばらく黙ったのち、何を答えるでもなくにっこりと微笑み返した。
御者はそれ以上何も聞いてこなかった。
お礼とともに運賃を支払い、あとは城を目指してひたすら歩き続ける。
湖の中央に築かれたウェルリア城は、外敵から完璧に守られていた。
ゆえに、簡単に外部からの侵入は許さない。
外壁から城内に続く入り口は一つ。しかもそれは、ある一定の時間にしか開かれないようになっていた。
それは、湖の道が開かれる時間帯だ。
学者曰く潮の満ち引が関係しているらしい。
ある時間になると、突如として湖が干上がって一本の道が現れる。
その道をゆくとウェルリア城へたどり着くことが出来るのだが、それ以外は湖を渡るため船が必要になる。
イズミはどうしたもんかと湖のほとりでしばし佇んでいた。
ウェルリア城は、目と鼻の先にある。しかし、侵入することは安易には出来ないだろう。
けれども、一刻も早く城内にいるウィンクたちの無事を確認しなければならなかった。
電話越しに聞こえた声。
消えるはずの無いキリさんが失踪——
そして、アスカ王子の目覚め——
(……嫌な予感がする)
明白な理由は無いが、何かが気にかかるのは、自分の第六感が何かを感じとっているからだろうか。
(気のせいだと良いんだけど……)
- 第一章 魔術編-黒猫のニーナ ( No.18 )
- 日時: 2016/06/25 09:00
- 名前: 明賀 鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: N0L12wyN)
それよりも、だ。
まずはどうやって城内に侵入するべきかが最重要課題だ。
正面突破、というわけにもいかない。
自分には《前科》がある。
とはいうものの、革命以前にこの国を統治していたファーン家の生き残りを軍へ引き渡したということで国からそれ以上のお咎めを受けることは無かったが、それでもこれ以上城を敵に回すようなことをすれば今度こそ監獄行きである。
ただでさえ反政府軍の動きが活発化している今、軍は常時警戒している。
そこへ自ら飛びこもうなんて、バカのすることだ。
知り合いのツテを頼るか……
イズミの脳裏に浮かぶ、優しげな《あの人》の顔。ヨハン=ファウシュティヒ。
彼はこのウェルリア王国の国王のために使役する兵士の統帥であり、イズミの育ての親であった。
とはいうものの、とある事件以降、顔を合わせていないのだが。
(まだ——会うことは出来ない)
「あれ、イズミじゃないか」
「え……?」
「久しぶりだね。何してるんだい、こんなところで」
目の前に現れたのは、ノートパソコンを片手に抱えたノアルであった。
丸眼鏡の奥に見える目がまんまるく見開かれている。
「——ノアル君じゃないですか。お久しぶりですね。こんなところで何してるんですか」
「それはこっちのセリフだよ。イズミ……噂で聞いたよ。ようやく《こっち側》に戻ってきたって」
「どこからの情報ですか。ノアル君らしくないですね、ガセネタなんて掴まされて」
「ガセネタなんかじゃないよ。なんたって、当人から聞いたんだから。あの、モトロ博士にね」
「…………で、博士はなんて?」
ノアルは手にしていたパソコンのブラウザの光で眼鏡のガラスを青白く反射させると、近くの木の幹に背中を預けた。
「色々聞いたよ。あのファーン家の生き残りがこんな近くにいたなんてね」
「…………」
「【彼女を城に連れてきた】事実は、軍部の中でも一部しかその理由を知らされていない。秘密裏に行われたことだ。その任務を遂行したキミが今更何を言おうと——」
「あれは……僕と姉さんが生きるために仕方なくおこなったことだ。それ以外の理由なんてない」
「それでしばらく監視付きで城下町で暮らしていたのかな」
ハッとした表情を浮かべ、イズミはうつむくノアルを穴が開くほど見つめた。
しばらく沈黙が続く。
それを破ったのはやはりノアルであった。
「どこまで知っているんだ、と言った表情だね。心配しなくてもボクが知ってるのはここまでだよ。
監視が無くなった今、キミが何処で何をしようと、ボクには関係のない話だ」
「でも、僕にこんな話をして、何か言いたいことでもあるんじゃないか」
「フン……」
ノアルが顔を上げた。
その瞳は自嘲を含んだものだった。
- 第一章 魔術編-黒猫のニーナ ( No.19 )
- 日時: 2016/06/25 09:01
- 名前: 明賀 鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: N0L12wyN)
「今のウェルリア兵の実態を知ってるかい」
「いいえ」と、首を振るイズミ。
「『あの事件』で一人の兵士が行方知らずとなったろう?」
「例の子、ですか」
「それから、だ。少しずつだが兵士の中で不穏な動きを見せるものが増えたような気がする。……統率がとれていないんだ。
いくら【あのこと】を隠しても、隠し事は結局は何処からか漏れ出てしまう。
絶対的な力を持ってしても、兵士をまとめ上げることが困難になりつつある——」「何故です」
食い気味にイズミが尋ねる。
「だって……ヨハン先生がいるでしょう」
ノアルは少し拍子抜けしたようにイズミを見上げた。それから、にやっと唇を吊り上げた。
「興味があるようだね」
イズミはぐっと唇を噛んだ。
「教えてあげようか」
額から汗が滲み出てきた。
嫌な予感がした。
それでもそんな素振りは見せずに、イズミは笑みを見せ言った。
「『教えて欲しい』なんて言ったら——ノアル君のことです。どうせギブアンドテイクでしょう」
「いいや、今回のことはキミに聞いて欲しいんだよ」
「……おや。ノアル君にしては、やけに素直ですね」
嫌な予感が拭えない。
「このことはだね、イズミ。ヨハン先生が関係しているんだよ」
「…………?」
「キミも不思議に思っただろう? 今まで従順だったウェルリア兵たちが何故いきなりバラバラになってしまったのか。
——ヨハン先生が、倒れられたのだよ」
「ヨハン先生がっ……!? ……病気……か?」
「度重なる心労のせいと聞いた。その理由は……分かるな、イズミ」
「……僕は…………」
「兵士の間でも知られていない。上層部だけの機密事項だ。それをキミに伝えるということは、どういう意味か、分かるだろう。イズミ」
「…………っ」
「イズミ、ウェルリア兵士として戻ってこい」
- 第一章 魔術編-黒猫のニーナ ( No.20 )
- 日時: 2016/07/06 08:30
- 名前: 明賀 鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: N0L12wyN)
すぐ目の前で、真っ直ぐに見つめてくるノアルの視線をふいと躱して、イズミは拒絶の意を込め背を向けた。
……何度も何度も悩んだ。
夢にまで見た。けれど——
「ヨハン先生、ごめんなさい……」
そうつぶやいて、
「俺は、戻らない」
決めた。
自分にはやるべきことがあるのだと。
それは、生前素晴らしい呪術師だった父、レーゼに近づきたいという想いだった。
それに、今自分は呪術師ジュリアーティに弟子入りしている身だ。呪術師禁止令を掲げている政府とは正反対の立ち位置にある。
「…………そうか。残念だよ」
「随分とあっさりしてますね」
「フン。予想はついていたからね。ボクのパソコンもこう言っているし」
ノアルは喋りながら弄っていたパソコンの画面を、イズミに向けた。
そこには、『99.9%』と表示されていた。
イズミは、ふっと息を吐き出してから、
「ああそうです、ノアル君。最後にひとつキミに聞きたいことが」
「なんだい?」
「キミは城外のあんな森の中で、一体何をしていたんです?」
「フフッ……。なんてことはない。植物の観察だよ」
ノアルはそう言うと、パソコンを抱えて歩き始めた。黙って見つめるイズミを振り返って、声をかける。
「ついてきたまえ、イズミ」
イズミは、拍子抜けしたようにノアルの顔を見つめた。
「どうしたんだい。城に用があるんだろう?」
「……はい」
湖の畔に、城からの迎えの船が来ていた。
それに乗り込み、たどり着いた裏口から城内に入る。
「——ノアル君。外部の人物を入れたって怒られますよ」
「長々と付き合わせたお礼だよ」
「まったく……」
ノアルは不敵な笑みを見せると、「それじゃあ」と言って、地下の研究室にこもってしまった。
イズミはその背中に「ありがとう」とお礼を述べると、ゆっくりと廊下を歩き始めた。