複雑・ファジー小説
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- 街路灯に星光 《序章、so i go to heaven》
- 日時: 2016/06/29 19:34
- 名前: 妖 (ID: nHgoSIOj)
生き物達が眠る午前1時。満点の星空の下に私は居た。
特に意味も無く、そこに居た。
何をしているのだろうか。
夢遊病というものだろうか。いや、意識ははっきりしている。
それじゃあ、何故?
理由は誰にも分からない。
私にも分からないのだから。
雲が満月を隠した。辺りは一層暗くなり、足元すら確認するのが困難な状態になった。
「…so i go to heaven…」
私が呟いた言葉。意味は知らない。ただ天国と言っているのは分かる。天国がどうしたんだろう。そう自問した。
- Re: 街路灯に星光 《第一章、不幸な事故》 ( No.1 )
- 日時: 2016/06/29 21:39
- 名前: 妖 (ID: nHgoSIOj)
警察に呼ばれ、なすがままに指定された場所へ向かうと、その光景を見て私はただただ口を開けた。
「お気の毒ですが…不幸な事故でして…」
申し訳なさそうに目を伏せる警察なんて眼中にも無かった。私の唯一の家族、姉が見るも無残な姿で死んでいた。警察によると姉が乗っていた飛行機が何らかのアクシデントで事故に遭ってしまい、そのまま墜落したという。ショックは受けていた。不思議と涙は出なかった。
「…」
「それでは…私どもはこの辺で…」
警察は部屋から出て行った。残されたのは私と死んだ姉だけ。私は黒く薄汚れた姉の頬を撫でた。変わらぬ感触に涙が出た。しかし泣いていても仕方が無い。どれだけ悲しんでも死んだ者は帰らない。姉の亡骸に別れを告げて私も部屋を出た。
不意に私はあの時呟いた言葉を思い出した。〔so i go to heaven〕
意味を調べてみた。〔昇天〕
昇天と言った意味があった。私は何かの不安を覚えた。実に馬鹿らしい考えだが有り得なくも無い。もしかしたら私はあの時[予言]をしていたのかも知れない。姉の死を予測して、満月の日に伝えた——。いや、馬鹿な考えは止そう。きっと何かの偶然だ。自分にそんな能力があるわけなかろう。生まれて23年、そんな事は一度も起こっていない。絶対に偶然だ。そう自分に言い聞かせた。だが辛い事は別れを告げても何度も何度も走馬灯の様に思い上がってくる。どれほど忘れようと努力をしても脳裏に焼きついた記憶は忘れる事が出来ないのである。一瞬忘れては思い出させ、また忘れては思い出させる。まるで拷問だ。例外もある。
記憶力が極端に鈍ければ忘れる事も可能だろう。私の記憶力は人一倍強く、幼稚園に入園した頃の記憶もある。こんな記憶、作ってしまったら私は今後永遠に苦しむであろう。神はこんな残酷なことを望んだ。凄惨な結末を向かえ苦しむ人間を見ては愉悦の笑みを浮かべる魔神だ。そんな下衆の魔神はどこぞの勇者にでも成敗されてしまえ、今の私はそんな事を心の中で懇願していた。
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