複雑・ファジー小説

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スリンガーズ
日時: 2016/07/02 20:30
名前: Arachne (ID: bbfUlH82)

レインと呼ばれる街では、とある遊びが流行っている。
実銃そっくりのモデルガンと、それ専用のペイント弾を用いた遊び——しかし、人の優劣をつける一種の手段でもある。
そんな独特の風習を持つレインに、一人の青年がやってきた。

Re: スリンガーズ ( No.1 )
日時: 2016/07/02 21:02
名前: Arachne (ID: bbfUlH82)

「染め合い、という。お互いがペイント弾の色に汚れることから、そう呼ばれている」

 ジョルジュ・ステラが門番の男から聞いたのは、レインを語る上で必ずや出てくる銃を用いた遊びについてだった。

「お前には、この銃を渡しておく。最も安価で部品が組み込みにくい銃だ、初期装備にはうってつけだろう?」
「なるほど、スタート地点はどん底か。そこから這い上がって名を馳せたければ実力次第だと?」
「その通りだ」

 染め合い——撃ち合いともいうその行為こそが、レインの街で行われている遊びのことである。
 用意するものは、染め合い専用のモデルガンに専用のペイント弾を数発、テーブル、防弾チョッキ。
 形式は主にデュエルだが、例外としてトーナメントやチーム戦を行うこともある。
 遊びの手順は、まず銃をバラバラに解体してテーブルの上に並べる。これが事前準備であり、ここからが本番。第三者のスタート合図を頼りに染め合いが開始される。内容は至って単純。相手よりも早く銃を組み上げ、ペイント弾を装填し、相手に撃つ——それだけだ。
 ルールは数あれど、最もスタンダードなものは、先に相手に2発撃ちこんだ者が勝者となる。

「血を流さない遊びか——平和なものだな」
「そうでもしないと、国がうるさいからねぇ。よっぽどこの街は銃が好きなんだろう。アンタだってここに来たってことは、そうなんだろう?」
「まあな」
「そうかそうか、まあ頑張りたまえ。あとは君が、伝説のスリンガーを倒すことを祈っているよ」
「伝説のスリンガー?」

 問いかけるジョルジュだが、門番の男はそれよりも早く門を開けた。
 あとは自分で調べろ——そう言外に伝えられたようで、彼は首を振りながら門を潜る。
 やがて門が見えなくなった頃合、彼は一人の女性に声をかけられた。

「アンタ、見ない顔ね。この街は初めて?」
「あぁ。噂には聞いていたがな」
「なら丁度いいわ。この街じゃ、染め合いを制する者が強者なのよ。いつバトルを仕掛けられてもいいように、実践訓練をしましょう」
「遊びじゃなかったのか……まあいいが」

 乱暴に白髪の頭を掻きまわし、ジョルジュはその女性——ローザについていく。染め合い用のテーブルを探しているのだ。
 その道すがら、彼は銃の構造を把握していた。

「さあ、始めるわよ。そこのアンタ、審判やって。今回の相手はビジターだからね」

 通りすがった青年を捕まえ、いそいそと準備を開始する。
 ローザは慣れた手つきで銃を解体し、すぐさまテーブルに並べた。一方でジョルジュも、初心者とは思わせない素早さで銃を解体した。

「——アンタ、ほんとに初めて?」
「あぁ。だが銃の構造は既に把握している。組み上げも容易いだろう」
「ガンマニアかしらね……」

 話が終わるや、2人は静かに両手をテーブルから離す。位置は、体の横だ。

「ビジター君、ゲームの流れは分かってるかな?」
「あぁ、頭には入っている」
「そうか。なら、用意————ファイト!」

 即座にジョルジュは、銃身の要となる筒とバネに手を伸ばす。
 手早く組み上げ、弾を装填。持ち手にそれを収めると、銃身をセット——しようとするが、門番の言ったとおりだ。手入れがされていないのか、組み付ける際に何かしら引っかかる。
 やがて装弾し、銃口をローザへ向けた頃には。

「第一ラウンド、私の勝ちね」

 既にローザの銃口が彼に向いていて、胸元が鮮やかなピンク色に染まっていた。ローザは妖艶に微笑みながら胸を張る。

「そんなんじゃまだまだ——って言いたいところだけど、アンタ正直早すぎるわ。何、才能でも持ってんの?」
「あったらいいな」

 気付けば胸元がチクチクと痛むジョルジュ。2ラウンド目に突入するも、あっけなくローザに負けてしまうのだった。


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