複雑・ファジー小説
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- 埋もれた世界の、
- 日時: 2016/08/06 13:45
- 名前: Tomoyami (ID: xbduus1y)
【あえてのここに目次】
story1
[0]目次の下
[1]>>1
[2]>>2
[3]>>4
[4]>>5
[5]>>6
[6]>>7
[7]>>8
***
窓から隣の線路の上を歩くダンゴムシを眺める。
耳へと繋がるイヤホンから柔らかい音楽が流れる。
膝に置いたリュックサックの上には二行しか埋まっていない作文原稿用紙。
男性の車掌さんの、まもなく出発しますのアナウンス。
電車の動きと共に小柄な体が少しずつ揺れ始める。
ダンゴムシは石の間に潜り込んでいた。
窓に映る絵は右から左へとスライドされていく。
少年は、緑ばかりに彩られた風景を見ながら、誰もいない車両の中、悲しそうな瞳で、
呟く。
「...ダンゴムシになりたい」
ただ、ただ、響く、響く
———響き渡る。
この地球のどこかに、異次元の空間がある。
どっかの誰かがそんなことを言ったのを、何かで聞いたのを覚えている。ただ、信じる信じないは別の話だった。
海の底のことなのでは?
宇宙の反対側のことなのでは?
地球という星の中心部のことなのでは?
もしかしたら、この世界のことなのでは?
ただ、『なのでは?』を考えることに夢中だった。
昔から異世界とかもう一つの世界とか、非日常的なジャンルは嫌いじゃなかった。この平凡な僕の人生のスパイスぐらいになればいい、位の程度だった。
あの日、かけていたスパイスの蓋が外れてドバッと出てきてしまうような出来事がおこる時までは。
『...次—かみ———ち...——みかわ——...』
イヤホンの音楽でかき消されそうなアナウンスを、なんとなくで聞き取る。
出発してまだ十五分。
終点まで、あと約一時間二十五分。
僕の家から学校まで、車、電車、徒歩まとめて約三時間かかる。四時に起き、五時に家を出て、五時半の、一日中走る電車の中でも一番早く出る電車に乗り、しばらくゆらゆら。終点に着くと、そこからは歩いて学校へ行く。帰りはほぼこの逆。
つまり、一日のうち六時間を登下校の時間として使っている。正直、つらい。
しかし、それも人生のスパイスとして受け入れるべき現実なのだ。そう考えると「苦」ばかりではないのだと感じる。いや、そう思い込む。
ポケットからイチゴサイダー味の飴を取り出し、袋を指先で開ける。
「作文終わらない...」
止まった駅から数人乗車してくる。
向かい合った形の席には、仕事服の女性と、人間の三分の一ほどの大きさの、人型の真っ黒な物体が座る。
少年は真っ黒をみる。
すぐに、視線を緑一色の窓へ逸らす。
口へ持っていく途中だった飴を袋へ一旦戻す。
そのままポケットから折りたたみ式の拳銃を取り出し、銃口を真っ黒に向けて、
引き金を引いた。音は無い。
真っ黒は一瞬ビクッとした後、ドロドロと溶けていきながら消えていった。
仕事服の女性は窓を眺めている
「先生に期限伸ばしてもらおう」
飴を口の中へ入れ、誰にも聞こえない声で言った。
これは、普通で平凡の少年が、異常で非日常的な日々を送るお話。
***
はじめまして、Tomoyamiというものです。目次の場所は気にしないでくださいw
夏休みに入りました!ほぼ毎日学校あります!夏休みじゃない!小説書いていきます。
エピローグ、というより物語のあらすじみたいな感じになりましたが...。まあ、結果オーライ(違う)。
腹痛と戦いながら書きました。死にそうです。助けて。
てことで(?)、『埋もれた世界の、』を、これからよろしくお願いします!
Tomoyamiはこちらの小説も書いてます↓↓
『殄戮電車-give ×× anemone-』(ダーク・ファンタジー板)
【お客さん(コメントくださった方)】
- Re: 埋もれた世界の、 ( No.4 )
- 日時: 2016/07/28 13:10
- 名前: Tomoyami (ID: Zn9JBKpx)
story1
——奥にある、
[3]
***************
馬鹿だった馬鹿だった馬鹿だった馬鹿だった馬鹿だった馬鹿だった馬鹿だった馬鹿だった馬鹿だった馬鹿だった馬鹿だった馬鹿だった馬鹿だった馬鹿だった馬鹿だった馬鹿だった
救いようのない、馬鹿だ。
***************
この世界には『DCE』(Different world Creature Expulsion organization、異世界生物駆逐組織)という秘密組織が存在する。
同時に、おそらく異世界のものと思われる生物がこの地球に存在する。
目撃されているものとしては、『ヒトガタ』『チイサイノ』『ハヤイノ』『ノロイノ』の四つだ。
名前からしてどんな特徴を持つのかが瞭然だが、組織の中で行き交う言葉としてすぐに伝わるように工夫して名付けているらしい。
これらを地球上から駆逐するため、異世界生物駆逐者、略してDCEPが数人存在する。
彼らは『ディーケイプ』と呼ばれる。
サツメはその人間の1人だ。
ディーケイプは一般社会に入り込んだ異世界生物を駆逐するために生きており、そして一部の人間以外に自分の正体を明かしてはならない。
一部の人間とは、サツメでいうと学校(理事長と担任のみ)に値する。その一部の人間は決して他人に明かしてはならず、厳重極秘事項として扱ってもらうようになる。
明かしたものと明かされたものは、容赦なく組織に連れていかれることとなる。
現在において現れたものはまだ1組だけだ。
その1組の行方は、未だにわかっていない。
明かす対象となった人間には必ずこの説明を聞かされる。そして、恐怖を覚える。
当たり前だ。自分が異世界を知るごく僅かな人間になることで、自分、そして周りの命がかかわることになるのだから。
—continue—
***
Tomoyamiです。補習無事に終わらせることが出来ました。
今日からまた更新していきます!ご迷惑をおかけ致しました。
- Re: 埋もれた世界の、 ( No.5 )
- 日時: 2016/07/31 18:37
- 名前: Tomoyami (ID: NywdsHCz)
story1
——大地に、
[4]
キーンコーンカーンコーン...
お昼休憩のチャイムが鳴る。
ざわざわとし始めた教室の端で、サツメはスクールバッグからコンビニで買ったサンドイッチを出す。三角状の2枚のパンにはハムとレタスと卵が挟まっている。いつものサンドイッチだ。
サツメはガサガサと袋から出し、それを一口かじる。
机の上には今朝の作文原稿用紙。シャーペンを握った手はピタリと止まっている。やはり六行のまま一向に進んでいない。
サツメは大きなため息をつく。
「全く進んでねぇなお前」
後ろから男の声が聞こえた。サツメはゆっくりと振り向く。
「...柳田くん」
柳田と呼ばれた、背が高くがたいの良い男はにやっと笑い、サツメの原稿用紙を覗きこんだ。
「その柳田くんってのやめろよ...ヤナギでいいヤナギで。...どれどれ、『僕の人生は平凡でとてもつまらないものである』...。ははっサツメらしいな!」
ヤナギはサツメの頭を荒く撫でる。サツメのサラッとした髪は途端にボサボサになる。
「『人生』をテーマに書くって難しすぎっしょ!高校生にそんなの書けるわけがねぇ」
「柳田く...ヤナギはどのくらい書けたの?」
「あ?俺か?て言ってもお前よりは結構書けてんぞ!」
「そっか...」
「おいおい、がっかりすんなよ!こんなの適当にちゃちゃっと書いちまえばいいんだ」
「がっかりはしてない...」
サツメは無表情でヤナギを見上げる。
「...ま、作文頑張れよ。飯一緒に食ってもいいか?」
「うん、...いいよ」
ヤナギは持っていた大きな弁当箱をサツメの机の上にドンッと置き、誰もいない前の席の椅子をサツメの方に向けて座った。
ヤナギは弁当の蓋を開ける。中には大きな卵焼きや大きなハンバーグなど、とにかく大ききな具がぎっしり詰まっていた。それが、二段。
「いただきまーす」
「...」
サツメは、大きな口にみるみる吸い込まれていく弁当の具を可哀想な目で見つめていた。サツメがサンドイッチの2枚目を食べ終わった頃には、ヤナギの弁当は空っぽだった。
さらにヤナギはサツメのサンドイッチを羨ましそうに眺めてきたので、1枚与えた。それも、一口で食べ終える。
...まるで、掃除機だ。それも吸引力の良い、あの掃除機。
ーcontinueー
- Re: 埋もれた世界の、 ( No.6 )
- 日時: 2016/08/03 18:34
- 名前: Tomoyami (ID: UK8YjfXC)
story1
——ボクは、
[5]
——『ああ、邪魔だなぁぁー』
——『僕がせっかく作ったカゲも、ぜーんぶあいつが壊しちゃうんだもーーん』
——『あいつさえいなくなれば、この世界は僕のモノになるのかなぁー?』
「——ああああ、邪魔だ、邪魔だ、邪魔だ」
殺 し て や ろ う か
*************
「あー、ごちそうさまでしたっ」
ヤナギは「うまかったうまかった」とつぶやきながら、空っぽの大きな弁当箱を片付け始める。
それを眺めながら、サツメは最後の一口を食べ終えた。
「うっし!俺はもう行くぜ。次の授業は......はぁ?英表かよ!うわあと2分だし!くっそ移動しねぇと...、めんどくせぇ!」
ヤナギは文句をいいながら、弁当箱を自分の机の上に投げ、机の中から教科書を掴み出した。そして荒くドアを開け、「サツメ早く行かねぇと遅れんぞ!」と叫んで教室を飛んで出ていった。
サツメは冷静に小さい声で「うん」と返す。絶対に聞こえていないというのは分かっているので、サツメは自分で独り言だということにする(言い訳だというのも分かっている)。
...いつの間にか教室にいる人間はサツメだけになっていた。サツメは教室に取り付けられている時計の短い針を、数分間目で追っていた。
授業はもうとっくに始まっているだろう。
サツメは、動かない。
「......」
サツメはゆっくりと立ち上がって目を閉じ、集中する。
「..........」
異様な空気が、すっからかんな教室に満ちていく。
「..................。」
サツメは急に振り向くと右側のロッカーに向けて、
——撃った。
『ヒトガタ』がドロドロと溶けていく。
「.........違う」
サツメはそうつぶやき、教室内をゆっくりと見回す。
「...どこだ......?」
「ざんねんざんねーーーんっ!!こっこでっしたーーーーー!!」
教室の窓ガラスが、外からの衝撃で甲高い音を立てながら破損した。
割れた窓から、1人の男性が飛び込んでくる。
「やあサツメ!てめぇを殺すよー!」
サツメの目は、冷たい。
「......いた」
—continue—
- Re: 埋もれた世界の、 ( No.7 )
- 日時: 2016/08/05 11:29
- 名前: Tomoyami (ID: xbduus1y)
story1
——いた。
[6]
「あはっあはははっ!あはははははっ」
男は不気味な笑い声を発しながら拳銃をサツメに向けて乱雑に撃ってくる。
「...」
サツメはそれを全て避ける。
男によって撃たれた弾丸は部屋中のあちこちに当たり、教室内は一気に騒がしくなった。
「ねぇーー、避けてるばっかじゃつまんないじゃーーん!反撃ぐらいしてから死んでよーー!」
男は拳銃を持った右手を休めずに言った。
「...わかった」
サツメは撃った。
サツメの弾丸は男の右手に当たった。
「ぎゃああっ!!」
男の右手が真っ黒になってドロドロと溶けていく。
「ひどいーーっ!!反撃するなんてひでぇ奴ー!!てめーはおとなしく死んでたらいいんだー!あはははっ!」
...さっきと言っていることが違う
サツメは小さくため息をついた。
「...ひとつ、いいですか」
サツメが男に話しかけた。
「なーにーー?降参なら喜んで殺してあげるけどっ!!」
「ここで暴れると教室ぶっ壊れちゃいます」
男はきょとんとした。が、すぐに大きな口を開けて大笑いをした。
「あーっははははっ!!お前面白いなーー!!そーんなにおべんきょーが大切かぁーーっ!あはははははっ!!」
「それで、提案があります」
サツメは淡々と話す。
「僕を殺るなら、場所を変えましょう」
サツメは指をパチンッと鳴らした。
教室内がぐにゃぐにゃと変形しだす。
「んーー?」
「僕のお気に入りの場所です」
その場所は、「教室」だった。しかし、ただの教室ではない。机、床、窓から見える空、全てがカラフルに彩られているという、異様な場所だった。
ディーケイプは、それぞれひとつの部屋を持っている。
もし、普段の異世界生物(カゲ)とは違う、人間の姿をした強敵のカゲと戦うことになった時にこの部屋を使う。この部屋は捕獲したカゲを科学的に調べあげ、分かった異世界の原理のほんの一部を使って作られた。ディーケイプらは『あの部屋』と呼ぶ。
『あの部屋』でどれだけ暴れても、現実世界とは違う世界なのでその世界には影響がない。
「ここでなら、好きなだけ暴れていいですよ」
サツメは銃口を男に向けた。
—continue—
- Re: 埋もれた世界の、 ( No.8 )
- 日時: 2016/08/07 09:46
- 名前: Tomoyami (ID: .HplywZJ)
story1
——そこに、
[7]
「...こ、こんな技術、この世界にはないって聞いてんだけどーー...?」
男から笑顔が消える。
「まさかてめぇら......俺のカゲをぉぉぉぉォッ!!!」
「はい、有効利用させてもらいました」
サツメは薄らと作り笑顔をつくる。
「...殺す......
殺すっ!殺すっ!殺すっ!殺すっ!殺すっ!殺すっ!コロォォスぅぅうあああああああああアッ!!!!」
男の目からは涙が溢れていた。
男の周りに直径50cmほどの大きな黒い玉が無数に現れた。そして、サツメに向かって次々と飛んできた。
「よくもォッ!!」
サツメは黒い玉を避けた。
黒い玉はひとつの机に当たり、インクのように飛び散った。
机の黒く染まった部分は濁ったような煙を出しながらどんどん広がっていった。
「僕のォッ!!」
サツメは黒い玉を撃った。
撃たれた黒い玉はどろどろと溶けていく。
「カゲをォッ!!!」
サツメはまた撃った。
しかし、カチッと音がしただけで弾丸は出なかった。
「......弾切れ」
...サボらずにちゃんと弾の確認しておけばよかったなぁ
サツメはポケットから小型ナイフを取り出し、飛んできた玉を真っ二つに切った。
ナイフについた黒い玉の液体の1粒が、サツメの右腕についた。
「...あ、しまった」
「あーーっはははははははッ!!!!」
男の大きな笑い声が響いた。
「ざぁんねぇえーーんっ!!その液体はやがて心臓まで届いててめぇは死ぬだろうよォーーッ!まさかの自滅とはなぁーーっ!!あはははははっ!!」
腕についた液体は煙を出しながら広がっていく。
サツメは拳銃に弾をひとつ入れた。
「痛ぇだろォ?どうだっ!自分の体が汚染されていく感じはぁぁーーっ!!あはははっ!!」
そして、銃口を自分の腕に向けて、撃った。
「......はっ...?」
男は唖然とした。
サツメの右腕からは黒い液体と赤い液体が混ざって流れている。
やがて黒い液体は腕から完全に流れ切り、赤い液体だけとなった。
「......はい、弾丸ぶち込まれるよりは、痛かったです」
「.........」
男が有り得ないといった顔で固まっている間、サツメは隙を見て拳銃の弾の補充をせっせとした。
「...どうですか、まだ僕を殺りますか?今ならハンデ付きですよ」
サツメは男に銃口を向け、冷たい目で見つめる。
「殺られる前に殺りますが」
男は後ずさりをした。
「...な、なんだよお前......おかしいだろ......」
男の周りに黒い煙が纏う。
「......今日はもー撤収。俺は疲れたよ。......覚えてろよ、サツメ...!!」
男の姿が消えた。
「ふぅ......」
サツメは右腕を見た。血がドクドクと流れている。
「......そろそろ止血しないと流石にやばいかな...」
—continue—
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