複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 作り直します。
- 日時: 2016/09/24 21:26
- 名前: 遊太 (ID: bD140njr)
つくりなおします。
- The Ability World Chapter01-01 ( No.1 )
- 日時: 2016/07/25 18:32
- 名前: 遊太 (ID: 784/wjkI)
未来暦91年───東都ヤマト
「いたぜっ!!透明人間だ!!」
そう言いながら、子供たちは手にしていた石やゴミを「透明人間」と呼ばれる少年・日月透(ひづき-とおる)に投げつける。透はその場にしゃがみ込み、何も言わずに飛んでくる石やゴミを受ける。透が反抗しないことを言いことに、子供たちは更に悪戯をエスカレートさせる。
「早く透明になれよー!」
「そうだそうだ!弱虫なんだから早く透明になって消えちまえよー!」
「おいおい、もう消えてるみたいなもんだろっ!」
子供たちはそう言うと大笑いしながら透を取り囲むと、一番体格の良い男の子が透の胸ぐらをつかんで立たせる。透は「うっ」と呻き声を上げ、顔を上げた。
「なんか言い返せよ、面白くないな」
「……やり返したら、お前らと一緒だ」
「あ?」
「お前らの方が弱虫だろ!1人だと弱いくせに!」
「なんだと?」
透は泣きながら叫ぶ。体格の良い男の子は透を地面に叩き落とすと、他の仲間を後ろに追いやり、透と1対1となる。透は涙目になり、地面にしゃがみ込んだまま後ずさる。その姿を見て、男の子は笑った。
「なんだよ!逃げるのか透明人間!1対1ならやってくれんだろ!」
男の子がそう言いながら、透に飛びかかろうとした、その時だった。
透と男の子の目の前に、突如、男性が割り込み、男の子の拳を掴む。男の子は、顔を上げてその男性の顔を見ると、驚いた。
「うわっ!!大和団長だっ!!」
男の子はそう叫び、仲間たちのもとまで下がる。
黄金の夜明け団第7師団団長の大和宗司(やまと-そうじ)は仁王立ちで、いじめっ子たちの方を見ながら言う。
「お前たち、弱い者いじめしていることをママとパパに言いつけてやろうか?」
「に、逃げるぜっ!!」
さっきまでの威勢は消え、子供たちは一目散に逃げていった。大和は呆れながらため息を吐くと、振り向き、地面にしゃがみ込んでいるボロボロの透に手を伸ばす。透は黙って大和の手を掴み、立ち上がった。
「透、大丈夫か?」
「…うん」
「お礼の言葉はないのか?」
「別に、助けてなんてお願いしてないし」
「はぁ……あのな、透」
大和は透の目線にしゃがむと、彼の頭をポンポンと叩きながら話し始める。
「もっと社交的になれ。小学校、中学校を卒業したら寮生活の超能力者専門学校に通うことになるんだぞ。そこに俺はいない。今みたいに助けてやれない。お前は一人だ。だから今のあいだに友達を作って、もっと色々な人に触れろ。一匹狼じゃ生きていけないぞ」
大和の言葉を聞き、透は大和を睨む。
大和はそんな透のほっぺを両手で挟み、むぎゅっとする。
「ひゃめて」
「透。俺も仕事でお前に構ってやれないのは辛いよ。本当に心の底から思っている。でも、仕事を放り出すわけも行かないんだ。分かるよな?」
「………」
「黄金の夜明け団、ましてや団長はそう簡単に休みもとれない。だから一人にさせてしまう時間が多いかもしれないけど、これでも俺は…」
「親みたいなこと言うなよっ!!」
透は大和の手を振りほどき、叫んだ。
「本当の家族でもないくせに偉そうなこと言うなよっ!!僕の気持ちなんか分かるかよ!!」
「透…」
声をかけようとした大和だったが、かける言葉が見つからなかった。
透は大和を押し、走り去って行く。大和はすぐに振り向くが、すでに透の姿はなかった。
*****
同時刻───王都エデン 世界政府本部「シエロタワー」
エヴァングリモワールを統治する機関・世界政府。本部が位置するシエロタワー最上階フロアは、世界政府のトップである代表の部屋である。世界政府代表のクラウディウス・G(ゴッド)・ホルテミウスは、部屋から夕日に照らされ橙色に染まった王都エデンを見下ろしていた。上空には都市間の移動に使われる民間飛空艇、黄金の夜明け団専用の飛空艇が飛び交っている。
ノックが部屋に響き、黄金の夜明け団の制服を着た若い男性が入ってきた。
「失礼いたします」
「アーサー君か」
クラウディウスが振り向くと、そこには黄金の夜明け団第1師団団長であり団を統括する総団長であるアーサー・ウィリアムライトが立っていた。アーサーを一礼をする。身長は180cmを超す長身であり、長い髪を後ろで束ねている。腰には剣が装備されていた。
「どうしたんだ。部下も通さずに、君が直々にここまで来るとは珍しい」
「直接、代表にお伝えしたいことが」
クラウディウスはアーサーをソファーに招き、2人は向き合って座る。
「おい、ソロネ」
「はい」
クラウディウスが呼ぶと、秘書のソロネ・スローンズが入ってくる。
「彼にお茶を」
「長居はしませんので結構です」
「まぁまぁいいじゃないか。最近、西都の方で良いお茶を手に入れたんだよ」
「貧困街でですか?」
「表向きはな。裏ではドン・ラクササという男が交易をしていてな、珍しいものばかり手に入れてくるんだ」
「初耳ですね。貧困街の裏でそのようなことが行われているとは」
「まぁいい。それで、用件はなんだ?」
クラウディウスが尋ねると、アーサーは表情を曇らせながら話し始める。
「南都アプカルネスでの極秘実験途中での爆発事故から3年が経ち、魔剣の消失、団員の不審死、内部で良からぬことが続いています。5年前のレジスタンスによって起きた王都エデンでの暴動騒ぎ。あの騒ぎ以来、謎の事件や事故が続き過ぎです」
「それで?」
「同一犯による犯行は我々の調べでほぼ確定ですが、犯人が単独犯とは考えにくい。考えたくはないのですが、世界政府の内部に裏切り者がいる可能性があります。それも複数人」
「目的は何だ?」
「純粋に考えれば、世界政府の転覆や復讐行為ですが、王都エデンの暴動以外の事件は、世界政府転覆や復讐行為には結びつけにくいのです。何か、先に狙いのあるような事件や事故ばかり。あくまで私の推測ですが」
「それは私も薄々感じていた。5年前の暴動で、もしかしたら中にばい菌でも入ったのかもしれんな」
「そうだとすれば、シエロタワーやスカイタワー、政府の主要機関には防犯対策として世界政府に登録していない人物の侵入を防ぐゲートがあるので、反応するはずです」
「しかし反応はしていない。何かしらの超能力を持つ人物、あるいはそれ以外の"何か"でゲートをやり過ごしている」
「考えても今の所では検討が付きません」
「そうだな」
ソロネは二人の前にお茶を置き、クラウディウスの横に立つ。
2人はお茶を飲み、満足げな表情を浮かべる。
「おいしいですね」
「良い代物を手に入れた。さて、アーサー君。裏切り者もしくは侵入者のお掃除、君に任せたよ」
「お任せください」
Page:1