複雑・ファジー小説
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- 僕 が 彼 女 を 殺 し た
- 日時: 2016/08/08 17:23
- 名前: セリ (ID: cdCu00PP)
はじめまして!セリと申します。
小説書くの下手なんで意味わかんないとかあると思いますが読んで頂けたら嬉しいです!
あとよろしければコメントお待ちしています
【 登場人物 】
・新田航平 ニッタ コウヘイ
物語の主人公。科学研究センターの研究員。
・橘 由岐 タチバナ ユキ
科学研究センターの研究員。ある日遺体が発見される。
・真島 凌 マジマ リョウ
航平や由岐の同僚。
・山岸飛鳥 ヤマギシ アスカ
航平、由岐、凌の後輩。由岐の事件を不審に思い・・・。
・久遠直登 クドウ ナオト
警視庁の刑事。由岐の殺人事件を追う。
- Re: 僕 が 彼 女 を 殺 し た ( No.1 )
- 日時: 2016/08/07 16:09
- 名前: セリ (ID: cdCu00PP)
10月15日—————— PM 21:30
僕 は 今 、 人 を 殺 し た 。
不思議なことに、何も感じない。
罪悪感や恐怖を感じると思っていた。
それなのに今の僕は、なぜだか清々しい気持ちだ。
これでもう、悩まなくていい。
それしか思わない。
空には幾つものは星がちりばめられ、いつもと何も変わらない景色。
ただ変わったことといえば、今目の前で人が死んでいるということだけ。
僕は人を殺したこの十字架を一生背負って生きていかなければならない。
人はこういう時、何を思うのだろう。
- Re: 僕 が 彼 女 を 殺 し た ( No.2 )
- 日時: 2016/08/07 16:00
- 名前: セリ (ID: cdCu00PP)
翌・AM8:00—————。
発見されたのは役11時間後。
すぐにパトカーの音が鳴り響いた。
大丈夫、冷静に、いつも通りでいれば何の問題もない。
センターに入る前、新田は心の中で一人呟いた。
驚いた顔をして、他の連中に紛れるんだ。
何があったのだろう、とそんな表情を浮かべるんだ。
そして事を知らされたとき、驚きと共に哀しみの演技をする。
それで完璧なはずだ。
センターへ入ると、さっそく驚いた表情をした。
「一体なんの騒ぎですか」
新田がそういうと、センター長である野村が反応した。
「おお、新田くん・・・。その・・・・」
野村は気まずそうな表情で、俯きながら語尾を濁した。
「新田先輩・・・」
野村の隣で、後輩である結城亜里沙は顔を真っ赤にして泣きながら新田を見た。
大袈裟な女だ。
「亜里沙ちゃん?どうしたの?一体これは・・・」
優しい先輩を、焦っているように演じる。
亜里沙は泣いたまま何も言わない。
言いたいことはわかっている。
「新田航平さんですね」
そこにいた警察の二人組がきて、中年の男が言った。
「はい、新田は僕ですけど・・・」
新田は、何があったのか予期できていない表情で言う。
「警視庁の諏訪です」と中年の男。
「同じく久遠です」と隣の若い男。
「少し、お話いいですか」
諏訪が言った。
「いいですけど・・・一体何があったんですか」
新田はきょどった態度で言う。
「今朝方、橘由岐さんの遺体が発見されましてね。新田さんあなた、橘さんの恋人だと伺っておりますが間違いないですね」
諏訪に言われ、新田は「えっ由岐が?いや、確かに由岐は僕の恋人で間違いありませんけど・・・・。ちょっと何言ってるのか・・・・」と状況を把握できていない様子で言葉を口にした。
「お気持ちはわかりますが、橘さんは何者かによって殺害されたようで」
諏訪は淡々と言った。
「殺害って・・・殺されたってことですか?由岐が?」
予想通り。
すべて計画通りに進んでいる。
朝いつも遅く来る俺に、野村と亜里沙はきっと駆け寄ってくる。
そして野村たちに話を聞いたあと、二人はきっと警察に俺と由岐の関係を話す。
そして警察は俺に話を聞きに来る。
俺は現実を受け入れられない、恋人を失った可哀想な男————。
そして警察はきっというだろう。
「橘さんは何者かに絞殺されていました」
諏訪が言った。
やはりそうだ。って、俺が知ってて当たり前か。
だけど次の瞬間、俺は耳を疑った。
「そしてその後、複数個所を刃物を刺されていました」
久遠が言った。
そんなはずはない。
だって俺は、絞殺してそのまま由岐を放置していたのだから。
- Re: 僕 が 彼 女 を 殺 し た ( No.3 )
- 日時: 2016/08/08 00:09
- 名前: セリ (ID: cdCu00PP)
「えっ」
不意に、違う意味の驚きを浮かべてしまった。
諏訪は、不審な顔で新田を見る。
「い、いえ。・・・何で絞殺したあとにわざわざ刺したのかなあなんて」
咄嗟の言い訳をした。
半分くらいは本当の疑問だ。
「さあ、それはまだわかっていませんが。場所を変えてもよろしいですか」
諏訪がそういい、「会議室はこちらです」と野村が誘導した。
諏訪と久遠は「どうも」と言って野村に続く。
「大丈夫?」
新田は隣で泣きじゃくる亜里沙に声をかけた。
亜里沙は泣きながら何度もうなずく。
大丈夫じゃないだろ。
って、俺のせいか。
などと思いながら新田は亜里沙を背中をさすると諏訪たちに続いた。
会議室へ行き、諏訪、久遠は窓側、野村と新田は廊下側の椅子に腰を下ろした。
「突然のことで、混乱していると思いますが、大丈夫ですか」
諏訪は新田を見て言った。
新田は恋人を失った可哀想な男だ。
心情を察してくれているようだ。
「は、はい・・・。でもあまり、冷静じゃないのでうまく話せる自信はないです」
新田は俯きながら答えた。
なぜだ。
一体誰が、俺が由岐の首を絞めたあとに刺したんだ。
なんのために?
まさか首を絞めているところを見られた?
だとすれば、なぜ共犯になるようなことをするんだ?
見てしまったなら普通は通報する。
というより、見られていたとすればセンターの人間ということになるから、そんなことが起きていたら俺はとっくに捕まっている。
その人物も由岐に何らかの恨みがあったのか?
だが由岐は俺が殺した。
ならわざわざ自分の手を汚す必要なんてない。
それに、由岐はそう簡単に恨みを買う人間じゃない。
そんな噂、一度も聞いたことがない。
なぜだ。
なぜ刺した。
まさか由岐ではなく俺に恨みがあって、わざわざ犯行を露呈しようとしている?
いや、ならさっさと俺を警察に突き出せばいいだけの話だ。
目的がわからない———————。
新田がそんなことを考えていると、「新田さん」と呼びかける声が聞こえた。
「は、はい」
新田は驚いた表情で二人を見た。
「やっぱり、今日は無理みたいですね」
諏訪が言った。
「すみません」
新田は静かにつぶやいた。
「いえ、よくあることなんです。関係者は混乱していて、その日に話せる方がすごいですから」
久遠がフォローした。
「そう、なんですか。すいません、お力になれなくて」
新田はそう言って小さく頭を下げた。
「いえ。また次の機会に」
諏訪と久遠はそう言って立ち上がった。
二人出口の方へ向かい、諏訪は廊下へ、久遠が出ようとしたとき、新田は口を開いた。
「あの、刑事さん」
言われ、二人は新田を見る。
「絶対犯人捕まえてくださいね」
そんなこと、思うわけがない。
- Re: 僕 が 彼 女 を 殺 し た ( No.4 )
- 日時: 2016/08/13 20:13
- 名前: セリ (ID: J/brDdUE)
「もちろんです」
そう言った2人の刑事の目は本気だった。
新田は悲しい表情のまま「お願いします」とだけ呟いた。
その日家に帰った新田は、1人コーヒーを淹れてからパソコンを起動した。
コーヒーカップを片手に、無表情で画面を見つめる。
カップを持つ手は、新田も知らないうちに震えていた。
ディスプレイには、『日本の検挙率』が表情されている。
検索ワードは『完全犯罪』。
完全犯罪はできますか?
という質問に対し、簡単にできます。という回答。
殺人を犯したら絶対に捕まりますか?
という質問に対し、処理をちゃんと行えばそんなことありません。という回答。
新田は思わず変な汗をかいていた。
だがその瞬間、安心しているのがわかった。
正直、警察に会ったとき心の中が常に何かで刺されているように痛かった。
平気で嘘をつく自分に、罪悪感でも感じていたのだろうか。
それとも、捕まってしまうのではないかという不安からなのか。
どんなに冷静を装っていても、実際頭の中はパニック状態だった。
いつ捕まってもおかしくはないのだ。
そこまで用意周到に隠蔽工作をしたわけでもないし、綿密な計画もない。
ディスプレイをスクロールしていくと、『完全犯罪』についてもちろん批判の声もあげられていた。
『完全犯罪なんて存在しません。悪いことをすれば必ずその報いがきます。どんな人間でもどこかでミスをします。日本の警察をなめない方がいいですよ』
との回答があった。
どうせネット上の意見だ。
ネットに書き込んでるいるやつなんて暇なやつに違いない。
きっと無職で何もしてないからこそ、もっともらしいことを言ってみたいだけだ。
日本の警察のことなんか何も知りやしないだろう。
なんて、自分に都合のいいように偏見を思い込ませた。
もちろんそんなの言い訳だ。
この人が言っていることは事実だ。
警察をなめない方がいい。
事実、殺人の検挙率はほぼ100パーセントに等しいと言われている。
瞬間、新田は呼吸が乱れた。
やっぱり殺人の十字架は重い。
自白してしまった方が楽なんじゃないか。
と、その時初めて思った。
- Re: 僕 が 彼 女 を 殺 し た ( No.5 )
- 日時: 2016/08/15 23:33
- 名前: セリ (ID: cdCu00PP)
橘由岐の遺体が発見されてから数日が経った頃だ。
改めて諏訪と久遠がセンターを訪ねてきた。
新田は数日が経ったため冷静に行動することを判断した。
「ではまず、新田さんと亡くなった橘さんの関係を教えてください」
諏訪が言った。
新田は「はい」と言ってから冷静に答えを出す。
「刑事さんたちも知っているように、由岐とは付き合っていました」
「交際期間は」
「二年くらいです」
「なるほど。では次に、新田さんのことを教えてください」
「僕のこと?」
「はい。新田さんはこのセンターでなんの研究を?」
「最近では、クローンについての研究をしています。由岐も一緒でした」
慎重に。
余計なことは言わないようにしなければいけない。
「クローン?」
久遠はメモを取りながら不思議そうに聞き返してきた。
新田は冷静に答える。
「はい。一度は聞いたことがあると思うんですけど。そうですね、一人の人間の細胞を取り出して、同じ人間を増やすというものです」
「ドッペルゲンガーのようなものですか」
「いえ、ドッペルゲンガーとは少し違うんですけどまあ、姿形はそういうもんですかね」
新田はそう言って苦笑を浮かべた。
これが捜査に必要な情報なのかどうか、皆目見当もつかない。
「へえ、面白いですね」
久遠は微笑みを浮かべて言った。
「次いくぞ」と諏訪。
「橘さんはどんな方でしたか」
「由岐は、明るくて元気な人でした。・・・って、こんなんじゃわかんないですよね。なんというか、何事も一生懸命で曲がったことが許せないタチでした」
新田は微笑みながら言った。
「他の方からも橘さんの評判を聞きましたが、みなさん同じこと言っていました」
と諏訪。
そうだ。由岐は優秀な人間だった。
恨みを買うことなど滅多にない。
事実、由岐の悪口を言っている人間をこれまで見たことがない。
彼女は誰からも好かれる性格で、おまけに美人で。
いつも笑顔で、不機嫌な顔など滅多にしない。
頭もよく、センターでも活躍していた。
「そうですか。彼女は誰かも好かれていましたから、きっと」
新田はそう言って微笑んだ。
いつの間にか、橘由岐のことを楽しそうに話している自分がいた。
彼女はもうこの世にいない。
そう考えたらなぜだか、胸の中に鉛が落ちたように重かった。
これが罪悪感なのか。
彼女と過ごした時間は幸せだった。
それなのに——————。
自らその幸せを壊してしまったのだ。
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