複雑・ファジー小説

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spinning world
日時: 2016/08/17 17:06
名前: Orfevre ◆xf1U3qaRb2 (ID: ix3k25.E)

 能力者の出現は世界を変えた。従来の世界は崩れ、新たな世界が作られようとしていた。しかし、変化の中にある世界は不安定かつ混沌を極めようとする。世界各地で能力者をめぐる争いは確実に起ころうとしていた。

 世界は常に変わろうと周り続けている。能力者の出現がもたらした世界の変化、その先にあるものは果たして……。

 どうも、久々に小説を執筆するOrfevre(オルフェーヴル)です。今回は能力ものを書いていきます。

chapter1「無双天性の少女」

ep1.chap1「無双天性の少女」 ( No.1 )
日時: 2016/08/20 15:18
名前: Orfevre ◆xf1U3qaRb2 (ID: 4OBDh6qC)

 能力者が生まれたのは今よりも少し先のこと。Dr.fagerによる研究の末、能力の存在が確認されたのを皮切りに多くの能力者が出現し始めた。その後の研究はさまざまな科学者が追随し、研究競争はし烈を極めていた。国家間での競争も激しくなり、国際関係は急速に冷え込む。しかし、戦争だけは避けたい各国間の思惑が一致し、紙一重の平和が保たれていた。

「行ってきます」
 ブレザーを着た一人の少女が革靴をはき、玄関の扉を開ける。限りなく透明に近いブルーの髪と紅の瞳が非常に印象的だ。
「ああ、気を付けるんだよ。父さん今日は遅いから夕食は自分で済ませてほしい」
 玄関の方へと、優しい声を届ける父に見送られ、彼女は家を出た。

うしお〜、おはよう!」
 先程の少女、潮は学校の下駄箱で声をかけられる。潮はそのまま振り返り、声をかけてきた相手に返す。
「おはよう、実里」
 潮に明るい声で声をかけてきたの少女の名はは山岸実里やまぎしみのり、潮に比べるとかなり小柄だが、彼女と同じ緑色のリボンをしていることから、同じ学年であることが伺える。この学校では、1年生が青、2年生が緑、3年生が赤いリボンを着けることになっているのだ。教室内に入り、潮たちは席につく。少し経ってから担任の教師が入ってくると、ホームルームが始まった。の

 ホームルームの終わり際、潮は教師から、教室の外に呼び出される。
阪神さかがみ、昼休みに保健室に向かってくれ、万田先生が呼んでいた。この前の健康診断のことで話があるそうだ」
「……わかりました」
 教師がそれだけを言うと、潮は教室へと戻った。

 桜が散り、若い新芽が木に息吹きはじめる4月の半ば、こんな心地よい春の陽気は誰しもが眠くなるもので、潮も例外なく、眠気と死闘を繰り広げていた。
「春休みの課題確認テストを返却する。各自名前を呼ばれたら、返事をして、受け取りに来い。青山!」
 教師は春休みの確認テストを生徒たちに返却し、それぞれにアドバイスをしている。まあ、もっと頑張れとか耳が痛くなるようなものが大半であろう。
「阪神!」
 教師の声に潮は反応するが、眠気との死闘はまだ続いていることがその表情からうかがえる。
「点数はいいんだが、お前はもう少し積極的に取り組んだ方がいいな」
 潮は教師からの小言を聞き流すように席へと戻り、テストを見直す。もっとも、テストの見直しなんてまじめにやるような生徒はほんと一握りであり、潮も点数だけチェックするとそれをあっさり折み、眠気との死闘を再開した。

「ああ、相変わらずね。ほぼノー勉でその点数なんて」
 昼休みになると、実里は潮の方の机で弁当を広げながら愚痴をこぼしている。先程のテスト、実里は決して芳しい出来ではなかったようだ。
「実里だって、そんなにやってないでしょ」
「そうだけどさ、潮ってやっぱり天才なのかな?」
 悪態をつかれた実里は自らをフォローするように、潮を持ち上げる。

 実里の言う天才なのかはともかく、潮はこれまでそれほど勉強しなくても高得点をとり、実技授業も必ず上位に入る。要領のよさ、飲み込みの早さは確かにあった。しかし、すべての分野でそれを発揮するのはかなりのレアケースといっていいかもしれない。しかし、潮はそれを否定するように軽く笑い、弁当をたたむ。
「ごちそうさま、行ってくるよ」
 潮は席を立ち上がり、保健室へと足を進めたのだった。

ep1.chap2「無双天性の少女」 ( No.2 )
日時: 2016/08/20 15:17
名前: Orfevre ◆xf1U3qaRb2 (ID: 4OBDh6qC)

 潮が保健室に向かうと万田先生の他に、茶色のスーツを着た年配の男がいた。スーツに詳しくない潮でさえ、そのスーツが高級品であると感じ取れ、事の重大さを感じた。
「阪神さん、今日呼んだのはある報告のためなの」
 万田先生は男の方を見てから、潮の目を見る。

「精密検査の結果、あなたには能力があることが確認されたわ」
 潮はそれを聞いて絶句する。能力者の存在は知っていたが、自分がどんな能力を持っているのか心当たりがない。
「万田先生、いきなりすぎますよ」
 横に座る男はホットコーヒーを潮に差し出す。とりあえず、落ち着かせようとしているが、潮はそれに口をつけない。
「すいません、熱いのは苦手で」
 潮はそういうが、男は気にすることもなく、万田に話の続きを促す。

「あなたが持っているのは自分の才能を高める能力、さしずめ【天性の才能で無双する】といったところね」
 潮が万田先生の言ったことに目を見開くと、万田は潮に説明を始める。潮が持っている能力は自身に比類なき素質を与えるというもので、一般的な能力とは一線を画し、それゆえに今まで普通の生活を過ごしてきたのだ。
「能力者であることが分かった以上、あなたは能力者として生きる必要があるわ。でも、あなたは普通の人として生きてきた、いえ、生きてこれた」
 万田先生が潮を総評すると、彼女に選択肢を与える。
「能力者として生きていくか、このまま普通に溶け込んで生きていくか。好きな方を選びなさい」

 万田の宣告と共に予鈴が鳴り、潮は保健室を後にした。しかし、潮は午後の授業に身が入るはずもなく、どこか上の空だった。

「阪神、ちょっと来な!」
 放課後、クラスメイトの男子数人組から声をかけられた潮、誰もそれを止めることなく、潮は校舎裏へと連れていかれる。
「どうだったよ、今までのイカサマ生活は?」
 挑発するように、男子たちの一人が話し出す。どうやら、潮が能力を持っていたことがクラス内に広まったらしく、彼らはその事に反発しているのだ。ましてや、その能力で(潮が意図していなかったとはいえ)自身の生活をかなり有利にしていたので、なおさら彼らの反感が強まっていた。

 能力者と非能力者の間には確かな溝があり、その原因の一つに能力の性質が挙げられる。現在のところ、能力は遺伝性である。という学説が主流であり、非能力者にとって能力者は羨望と共に嫉妬の対象になりがちなのだ。
 もちろん、能力者の出現で生活の質が向上した面もある。しかし、まだまだ彼らは少数派であり、能力者を騙る犯罪や、能力者を狙った国際的な誘拐事件も多発している状況では能力者を全面的に受け入れることは難しいだろう。

 潮はその後も激しく、男子たちからバッシングされた。彼らの心の奥底にある良心が暴力こそためらわせたが、彼女の心は大きく傷ついた。

 今の社会では普通に溶け込んで生きていくのが難しい。そう痛感した潮は、翌日、保健室を訪れる。そして、彼女は自らの思いを告げた。

「万田先生、私……能力者の施設にいきます」

ep1.chap3「無双天性の少女」 ( No.3 )
日時: 2016/08/20 15:17
名前: Orfevre ◆xf1U3qaRb2 (ID: 4OBDh6qC)


 能力者の集う町に移住する。能力者の社会的立場を考えた末の決断だった。そして、それから1ヶ月ほどした週末、出発の日を迎えた。
「それじゃ、体に気を付けて。たまにでいいから連絡もな」
 父が運転してきた車を降り、駅の中へと向かう潮。改札前にはそんな彼女を待つ小さな一つの影があった。実里だ。

「ありがとう、来てくれると思ってた」
 学校内では友人たちがお別れ会を開いてくれた
「潮。私、やっぱり寂しいな……急にいなくなるなんて」
 潮と実里は別れ際に言葉を交わす。もう会えなくなるかもしれない。仮に会えたとしてもその時には、かなりの時間が経っているだろう。だからこそ、二人の言葉はより重くなる。
「……ごめん」
 潮からはただ、それだけしか言えなかった。
「ううん。でもこれだけは、忘れないでほしいな」

--能力があろうとなかろうと、潮は潮で私の友達だから--
 涙声になっていく実里の一言を聞いて、潮は彼女に手を差し出し、泣きながらに笑顔を見せる。
「うん!元気でね」
 実里は潮の手を握り、そして……離した。

--まもなく、14番線に遠前町えんぜんちょう行き特別列車が到着いたします--

「じゃあ、行くね……ありがとう」
 そのままホームへと降り立ち、潮は特別列車へと乗り込んだ。離れていく町並、母が死んでから越してきた父の地元。10年間住んでいたこの地を離れ、能力者としての教育を受ける。これからの生活に思いを馳せながら、展望席から眺めを見ていた。

「ここが日本か、母さんがいってた通りだ」
 そんな彼女に1人の男が横から声をかけてくる。潮と同じくらいの年齢に見えるが、金髪で青い瞳、欧米人を思わせる見た目の彼は、日本に来たのは初めてのようで、景色に感嘆の声をあげる。
「そうね、風情と言うのかしら」
 潮はその男の発言に相づちを打ちながら、話を聞いていた。どうやら、男も潮と同じ目的地らしい。
「あなた、能力者?」
 遠前町は能力者の保護区であるため、外国人の入国にはかなり厳しい。非能力者の外国人など、セレブや政治家などのVIPでなければ入ることは許されない。
「……鋭いね、僕はロベルト=ヘイロー。ロビンと呼んでくれ、君は?」
阪神潮さかがみうしおよ」
 互いに自己紹介を済ませると、列車はトンネルへと入る。トンネルから抜けると遠前町の中、二人はそのまま席に戻った。

 トンネルを抜けてすぐに、列車は遠前町の駅へと到着する。その改札を過ぎた潮はスーツ姿の女性から声をかけられた。

「ようこそ、阪神潮さま。この遠前町へ」

Re: spinning world ( No.4 )
日時: 2016/09/01 22:33
名前: ラニ (ID: cEkdi/08)

ラニです。
ここでは初めてだね。
桜ちゃん!
少し前に星海の話を送ったんだけど、返事とかなかったから心配になって来てみました。
もし見ていたらごめんなさい。
私は何時でも返事オッケーだからね!
(夕方〜深夜までならいつでも!)

Re: spinning world ( No.5 )
日時: 2017/02/12 11:17
名前: Orfevre ◆xf1U3qaRb2 (ID: UXIe.98c)

「お待ちしておりました。寮まで案内いたします」
 改札を出た潮に声をかけてきたスーツ姿の男性に促され、彼女は駐車場へと案内される。遠前町は能力者を保護するという特殊な構造でできているためか、能力者が移住するときは町を案内する手はずになっているのだ。
 
「申し送れました。この町の役場に勤める臼井久良うすいひさよしと申します」
「阪神潮です。こちらこそよろしくお願いします」
 臼井はそう自己紹介をすると、駐車場に止めてある車に乗り、助手席に潮を乗せる。しかし、彼女の荷物をトランクへ入れようとしていたが、潮は突然、助手席の扉を開け、臼井に声をかける。

「あの、自販機はどこですか?」
「のどが渇いたかい、買ってくるよ。なにがいいかな?」
「自販機の品揃えがわからないですし、ついていきますよ」
 そういうと自販機のほうへと向かう臼井に潮はついてくる。
 潮たちが乗ろうとした車は爆発したのは、彼らが自販機の前についた時のことだった。

「助かったよ、これでよかったかな?」
「ありがとうございます」
 そういうと、自販機で買った紅茶を彼女に差し出す。潮がそれを受け取ると、臼井は電話をかけている。
「はい、こちら臼井、護衛の能力者1人。こちらまでお願いします」
「あの」
 潮は少し動揺したように、臼井に話しかける。
「さっきの爆発はどうして?」
「おそらく、能力者を狙っての行動だ」
 潮の問いを切り捨てるように、臼井は彼女に現実を突きつける。能力者によって世界は変わりつつあるが、その変化を喜ばない勢力が存在しないわけではない。おそらくその勢力が仕組んだのだろう、と。

「さて、迎えが来ます。下に行きましょう」
「……」
 潮の表情は曇ったまま、迎えの車に乗る。能力者とそれ以外の人たちにはそれだけの溝があることを改めて実感させられ、能力者として生きる覚悟を求められていたが、ほんの少し前まで普通の人たちとともに生きてきた彼女にはどうしても、その対立関係を受け入れることができなかった。

 能力者専用の町といっても、遠前町の町並みは駅を中心にした商業施設があるなど、普通の町と大きく変わらなかった。
「ここが君の通う星嵐学院、そこを右に曲がったつきあたりにあるのが、その学生寮だ」
 一通り町を案内した臼井は、最後に学校に向かった。

 そして、彼女が過ごす学生寮に案内する。
「今日はありがとうございました、臼井さん」
 車を降りて、荷物を受け取った潮へ、臼井はこういった。
「今はまだ、現実味を帯びてないかもしれない。でも、ここが君の町になることを祈ってるよ」

 臼井の車を見送ってから、潮は学生寮へと入っていった。


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