複雑・ファジー小説

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無限の廓にて、大欲に溺す
日時: 2020/08/16 20:36
名前: にっか ◆ShcghXvQB6 (ID: jtELVqQb)

無限の廓にて、大欲に溺す

開始日:2016/8/22(8/21 15:00スレ立ち上げ、創作解禁)


設定については、次レスに張るURLから確認願います。

なお、コメント等は差し控えて下さい。

Re: [リレー企画]無限の廓にて、大欲に溺す ( No.216 )
日時: 2019/06/04 00:50
名前: NIKKA ◆ShcghXvQB6 (ID: eldbtQ7Y)
参照: https://twitter.com/NIKKA_Nonbe

 廓へ至らざる者達は、地上にて顔を突き合わせ、屋敷の中に在った。フェベスの横隣にカルヴィン、その向かい側にレーナルツ、その左隣にはシューミットの親子と、ジャッバールと相対すべき者達が軒を連ねていた。三つの貴族と、一人の兵士。彼等に睨み付けられる様にして居たのはガウェスであり、その右隣には空席が一つ。
「……あの馬鹿野郎、まだ来ないのか」
「突然、呼び出しましたから……」
 煙草を咥えたレーナルツが明らかに苛立ち、ガウェスを睨む。どうも、このナヴァロという貴族の人間は都度都度荒ぶる。彼等はそういった場所、つまりは戦場で生き続け、それが極まった末に貴族の一員となったのだから、そもそも気性が荒くなければ生きて行けない。レーナルツがその凶暴な性格をチラつかせるのも仕方がない話だろう。
「女の所にでも懇ろなんじゃあないか、若いなぁ」
 カルヴィンの軽口もいい加減、耳に慣れ始め、彼という人物が分かって来た。故にガウェスは何も言及する事なく、苦笑いだけを向けている。酷い皮肉屋で、飄々としている。その癖して突然、真面目になる。語気と主張から粗暴にも思えるが、その実はそうでもなく、ただただ言葉が足りない。そんな不器用な人間だ。だからこそ、信頼が置けるのだが。
「カルヴィン、貴方だってまだ三十路を超えたばかりでしょう?」
「お前、もうそんなになったのか。そりゃあ俺も歳を取る」
 シューミットの二人なんかは割りと良心的に見え、アドルフェスに至ってはその堂々とした風貌通りの性格である。エストールこそ、狡賢く、時折黒い顔が見える事もあるが、それも仕方がない話だろう。彼を蝕む病は実の父や、レーナルツ、カルヴィンの様に振舞う事を許してくれない。彼等の様に振舞った途端、床と仲良くしなければならない。
「しかし、ハイドナー。俺はお前の所の親父が首を取られて、屋敷が燃えた時、死んだと思ってたんだがな。何だお前、生きてたのか。こっそり来てくれたって良かったんだぞ?」
 シューミットとの接点こそないが、アドルフェスは何故か懇意にしてくれる。聞けばエストールは次男らしく、その上にガウェスと同じ位の長男が居る。どこか重なって見えるのだろうか。
「……迷惑は掛けられませんから」
「迷惑掛けられんねぇなら、お前ジャッバールの商人殺したりすんなよなぁ」
 バーカと罵るレーナルツであるが、言い返す言葉もなくガウェスは苦笑いをするばかり。彼もまた薄ら笑いを浮かべており、ただただ揶揄しているだけに過ぎない様だ。それもそうだろう、彼等はジャッバールと正面切って抗争に望み、バシラアサドを討ち取る寸前まで追い詰めたのだから、どうせ争うのは避けられないのは分かっているのだ。彼等が知らなかったのはハイドナーが弱兵揃いだという事で、歩調を合わせようとした最中に表向き滅ぶのだから、笑い話にも出来ない。
「いいか、此処みたいな最前線は商売第一で生きるもんじゃあねぇ。流血、暴力その為に生きな。そうじゃねぇとあっさり死んじまう」
 血腥く生きるのが正解だぜ、と彼は続けていた。商売なぞ商人に任せていれば良い、態々貴族がそこに踏み込む理由はないのだ。だからこそ、南方からの補給が途絶えかけたナヴァロだが、割とどうにでもなるのだろう。
「半世紀ばかり遅いですよ。……もう少し我々も貴方達の様に生きていられたら良かったんですが」
「まぁ、先の西伐。お前の所は前線に来てないからなぁ。兵站を軽視する訳じゃあないが、そんなもん徴収した農民、商人で充分ってもんだ。……貴族は戦う為の存在さ」
 やはりレーナルツも、カルヴィンやジャリルファハドと同じ様な事を言う。アゥルトゥラの貴族も、セノールの武門も然したる差はなく、謂わば戦う為の兵器であるのだ。だからこそ、ある者は名を残し、名を上げる。
「ラノトールを討ち取った時みたいに荒れてみろよ、なぁ。カルヴィン」
 思わずガウェスは、名を呼ばれた彼を見遣ってしまう。気にしてない、昔の事を引き摺るなと、彼は再三言っていたがそれでも気にしてしまう物だ。勿論、カランツェンの反撃に遭い、ハイドナーの家人にも死者は出る上、山吹の戦いで死なずに済んだ者も後遺症に苦しんだり、結局負った傷が元で死んでしまったりと、少なからずハイドナーもダメージを負っていたのだが。
「馬鹿め、今ハイドナーと戦えばカランツェンの勝利だ。八人も居ない」
「……確かに八人死にましたからね」
 ラノトール一人に家人、その傍流がそれだけ死んだのだ。ある者は馬ごと叩き切られ、ある者は組み討ちに遭い。またある者は目を潰され、舌を抜かれて。最も惨い死に方をしたのは、当時の当主の息子だろう。彼は捕らえられた後、生きたまま腹を裂かれ、溶けた銅を頭から掛けられたのだ。その行いはザヴィアに対する不義、許すまじとして行った処刑である。彼等以外にも後々、死んだ人間を数えたなら、直接的に殺された者の倍は居る。
 目を閉じたなら、嘗て幾度となく戦場となったクルツェスカの風景が思い浮かぶ。ある時はセノールとの戦争で。ある時は内紛。この都は幾度となく炎に呑まれ、幾度となく血の海に没した。そして、今これから同じ事を繰り返そうとしている。人間という生物は、何百年も経ち、生活様式や文化、街並みが変わったとしてもやる事、やらかす事だけは変わらず、愚かしい生物だとガウェスには思えるのだった。
 不意に扉が開け放たれ、寒気が部屋に飛び込んでくる。
「すまない、遅くなった」
 扉を開け放った人物へと一気に視線が注がれた。突然呼び出され、ランバートも困惑しただろう。そして、此処で来なかったら何を差し向けられるか、分かった物ではない。それを分かっているから、軽口を叩く事もないのだろう。雪を払う暇すらなかったのか、彼の肩には雪が積もり、凍ったままだ。
「詫びずとも良いさ、掛けろ」
 呟く様に言い放ち、フェベスはランバートを見据えた。彼の瞳もまた、キラやソーニアの様に深緑を放つ。白髪混じりの赤毛は彼女達のそれと比べ、色褪せている様にも見え、それがまた得も知れない空気を醸す。その所為か、両翼に控えるカルヴィンやレーナルツまで恐ろしげな物に見えるのだ。
「茶すら出さないのか?」
「我々は貴族ごっこをしている、お前達とは違うのでな」
 戦の為の存在、それが貴族である。戦の算段をするだけである。客人を出迎え、歓迎し、美辞麗句、甘ったるく温い言葉、話などする事はない。昔の貴族達の様に屋外、しかも馬上で会話しているよりはマシな話だ。
「時代錯誤だぜ、メイ・リエリス」
「だとしても、今は昔のやり方に倣うのが良いだろう。平和に感けて、呆けて生きるのは全てが終わった後にしろ」
 まるで今まで呆け、生きてきたかの様な物言いをされるも、それもまた事実。女を漁っては享楽に耽る。だからこそ西伐で名を上げ、意気を示した新興貴族達との差が付いたのである。ナヴァロは勿論ながら、その傍らに居るシューミットの親子とてまた然り。元よりクルツェスカの防備に組み込まれ、重宝されてきた貴族だ。傭兵を雇い入れるしか出来ない、戦争の素人とは話が違う。彼等は一日、一昼夜の為に私財を擲ち兵を養ってきた者達であるのだから。
「手厳しい事で」
 軽口を叩きながら、肩に積もった雪を払う。
「まぁ、お前達の傭兵は捨て駒だがな。初動でどれだけジャッバールを削るか、って話だ」
「酷い話だぜ。なんだ、ジャッバールの屋敷を囲めってか?」
「それが出来るならやってみろ、兵は残ってるのにお前の死体が宙吊りにされて終いだ」
 逆さ吊りか? とおどけて切り返せば、串刺しにしてから首吊りだと笑って返され、ランバートは苦笑いをしていた。確かにそういった反撃を受ける事だろう、ロトスの首を切り落とした様な者達をジャッバールは幾人も囲っている。市街戦ではクルツェスカ側が優位性を保つ事も出来るだろうが、夜間戦闘や、闇討ちだけはどう逆立ちしても敵わない。
「俺なら腹を裂いて吊るすが……これじゃあジャッバールと同じだな」
 ぼそっと呟いたカルヴィンだったが、そんな行いをしてはジャッバールと同じ立ち居地に落ちるという意味合いなのか、彼等と同じ事をしては面白くないという意味合いなのかが分からず、ランバートの苦笑いは消え失せてしまった。彼等カランツェンはやりかねない。ラノトールの子孫なのだから。
「……で、何で呼んだんだ」
「お前達が傭兵を募り、兵が揃った場合の話だ。すぐに事を起すなよ。……暫くは警戒に努めてくれ」
 警戒、つまりは夜警である。日中は人の目もあり、民間人から支持を受けているジャッバールとて身動きはし難い。事実、彼等の攻撃は今まで全て夜間に発生している。バッヒアナミルの攻撃とて、また然り。過去の西伐、東伐を考慮しても彼等の攻撃の殆どは夜間に集中している。
「それで傭兵が損耗したら」
「それはその時だ、死んだ人間は生き返らない。それだけの話」
 捨て置けと、語るフェベスをじっとランバートは睨んでいた。手勢を減らし、人的資源を損なった状態でジャッバールと戦闘状態に陥ったなら、彼等が数の少ない方から食い破ろうとするのは目に見えている話だ。食い破るというよりも、水に濡れた紙の様にいとも容易く破る事だろう。指揮も、兵站も滅茶苦茶にされ、残存する兵は勿論ながら、その関係者まで鏖殺である。
「鉄面って呼ばれる理由が分かったぜ」
「冷徹でなければ、メイ・リエリスなど疾うに滅んでいる。……俺の娘とてそうさ、強かだ」
 キラは強かったが、ソーニアは強か。確かにその通りだろう。あの姉妹、特にそうは見えない方は棘を隠している、棘が刺さった瞬間、毒を盛るか、盛らざるかを考えている辺り、まだフェベスよりはマシといった所なのだろうが。
「カルヴィン、お前絶対苦労しただろ?」
「別に」
 さらっと答えた彼はランバートの問いに関心を示す訳でもなく、傍らに立て掛けた刀の柄を握って、外を睨んでいる。ガウェスもまた然り。窓に背を向けているレーナルツや、シューミットの親子は気後れしながらも、窓の外に視線を向けた。その瞬間である、窓が突き破られ"獣"が飛び込んできたのだ。それは一振りの刀を携え、ガラスの破片など気にした様子も見せない。長かった髪は切られており、その様子にカルヴィンは溜息を吐いた。セノールの兵が死ぬ覚悟を決めた時、神前に自分の身から離れた物を捧げる。ある者は爪、ある者は歯。そして、この"獣"は髪。
 手負いの虎は抜き身の刀を晒して、牙を剥く。ただ一匹、虎は吼えるのだった。

Re: [リレー企画]無限の廓にて、大欲に溺す ( No.217 )
日時: 2019/05/12 02:01
名前: ポテト侍 ◆jrlc6Uq2fQ (ID: umHqwPxP)
参照: http://twitter.com/imo00001

 一時も彼から目を離してはならぬとガウェスの頭の中で警鐘が鳴っている。肌を灼くようなプレッシャーを放つ男は死地を定め煌煌と瞳を輝かせている。覚悟と闘志を宿した男を止められるかと問われれば首を横に振るしかあるまい。汗を拭うことすら忘れ、虎を凝視する。多勢に無勢とはよく言うが、彼はそれでもなお、平静を崩してはいなかった。標的を見て、更には周りを見て、警戒の手を決して緩めない。何か不審な動きをすれば直ぐさま野生動物の如く反応し、排除するべく行動に移すことだろう。
「あいつは……」
「確か、バッヒアナミルと呼ばれていたはずです」
「バッヒアナミル? あぁ、ナッサルの」 
 どこの武門かを簡単に言い当てるランバートに驚く。それなりにセノールの勉強はしているらしい。だがそれよりも彼がどこか嬉しそうな表情をしているのが気になった。 嫌な予感がガウェスの胸に過ぎる。
「ラシードまで手玉に取るとはな。是非とも一度話してみたいな。バシラアサドはさぞや聡明で強かな女性だろうな」
 ランバート、心からの賛辞であった。状況を考えてくれと呆れる。これでは
豪胆なのか馬鹿なのか分からない。心なしか味方からの視線も痛い。いたたまれない気持ちになる。この場に不釣り合いな穏やかな笑みを浮かべた。
「えぇ、彼女は素敵な人ですよ」
「へぇそれはそれは」
「生きてここを出られたら、どうぞ行ってみたらどうです?」
「……言ってくれるなぁ」
 逃がしてくれる気なんぞないくせに、と心の中で悪態をついた。そこまで考えて違うと否定した。恐らく、標的さえ殺せれば見逃してくれるかもしれない。だが、例え、逃げ果せたとしてもアゥルトゥラ、セノール、両陣営を敵に回して生き残れるほどのツテも実力も無い。選択肢など無いにも等しい。それを理解してて言うならば、この虎は良い性格をしている。
「こうなるなら一時間遅く来るべきだったかな」
「馬鹿なこと言わないでください」
 ランバートの手に握られている銃の口は確かに虎の額を捉えている。しかし、彼は一瞥をくれただけで動揺しない。それが恐ろしい。目的のために躊躇無く捨て駒になれる彼が、セノールが得体の知れない生物に見えてならない。そもそも彼がここに来た目的は本当に殺しに来ただけか。ここに足止めするために命を賭したのではないか。では足止めした理由は何か。
「おい」
 唐突に踵を足先で蹴られる。声からカルヴィンだと判断した。確認しようと首を捻ろうとすれば「目を離すな」と叱られる。
「余計なこと考えてるんじゃねぇよ、お坊ちゃん。今は目の前の心配だけしてろ」
「しかし」
「無駄に考えを巡らす必要はないんだよ。お前はお前の役目を果たすべきだ」
 変に考えるなと叱咤すればガウェスは苦々しい顔をした。本人に不安があるのだろう。もっと声をかけるべきかと思ったが、バッヒアナミルが動き出したことによって中断される。
  銃弾を放つも物言わぬ壁にめり込むことになる。易々と銃弾を躱され、ランバートから舌打ちが洩れる。せめて頭ではなく太股を狙っておけばかすり傷くらいはつけられたかもしれないと悔やまれるが後の祭りだった。
 地を這うように虎が駆けて、バネのようにしなやかな筋肉で一気に距離を詰めていく。狭い室内ならば、標的の喉笛を噛み切る距離まで行くのは容易い。
 虎の進行を止めたのは、若い狩人。否、セノール憎しと息巻いていたカルヴィンだった。剣を抜きバッヒアナミルに合わせて前へと飛び出した。口元に隠しきれぬ笑みを携えて、彼と刃を交える。真一文字に裂く斬撃を紙一重で躱し、お返しと言わんばかりに鋭い一閃をくれてやる。
 加勢しようとするも右へ左へ飛んでは追いかけ、コロコロと立ち位置が変わり、目で追いかけるので手一杯となる。ランバートもカルヴィンを撃ってしまいそうだと手を倦ねているようで眉をひそめて成り行きを見守っている。しかし幾らもそうはしていられまい。
 鍔迫り合いとなった。カタカタカタと笑う刀。鬼すらも震え上がらせるような鬼気迫る表情で互いを見据えれば命のやりとりをしていると実感させられる。
 双方の動きが止まったとき、バッヒアナミルは視界の端で、背後に忍び寄る影を確かに捉えた。一気に腕に力を込めれば均等が崩れ僅かにカルヴィンが押し込まれる形になる。焦ったようにタンッと地面を蹴る音が背後から聞こえた。温い。と虎は嗤った。
 ガウェスが斬りかかるよりも先にバッヒアナミルの平手が不意を狙う彼の鼻の頭めがけて飛ぶ。叩かれ止められるのも想定内である。気が逸れた一瞬の時間を用いて、刀の柄で思い切りガウェスの鳩尾を突いた。内臓が逆さまになったような嫌悪感と衝撃に呻き声すら漏れないが、すぐさま激痛が襲い来る。視界が一瞬白く染まり、脂汗が毛穴から噴き出す。患部を抑え苦悶の表情を浮かべるがグンと踏み止まる。更なる追撃をと思ったがカルヴィンによって阻止される。軽く攻撃をいなし半歩後ろへと下がった。瞬間、発砲音と太腿の裏側に感じるジクジクとした痛み。ただ貫通はしなかった。掠り、表皮が剥脱したのだ。致命傷を与えるには足りない。
「しくったな……」
 確実に太股を撃ち抜いたつもりだった。しかし、半歩ずれたせいで銃弾は貫通せず、細い赤い線を一本つけたのみ。動きを読まれていたとしか思えない。舌を巻くランバートを射殺すような眼光が捉えた。

Re: [リレー企画]無限の廓にて、大欲に溺す ( No.218 )
日時: 2019/06/04 00:52
名前: NIKKA ◆ShcghXvQB6 (ID: eldbtQ7Y)
参照: https://twitter.com/NIKKA_Nonbe

2019/5/13 23:14 加筆修正

 つぅっと脚を血が伝い、床を汚していく。疼く様な痛みが走り、それは纏わり付いてくる。銃で撃たれたのは初めての事、しかしそれは決定打にすら成り得なかった。刀の切っ先は下を向いたまま、ぐるりと見回すと人数が合わない。何時の間にか、シューミットやナヴァロ、メイ・リエリスの者達を逃がしてしまったのか。何れにせよ、早々にこの三人を討ち、殺めてしまえば良いだけの事。
 撃たれた事など忘れてしまったかの様に、虎の刀はランバートを目掛けて行く。音すら置き去りに白刃は走り、駆け、中空を舞う。銃の鉄を穿ち、既に込められていた鉛弾と火薬の粒が弾け飛んでゆく。ただの一撃、たった一撃だ。拉げた銃の部品が白刃の後を追う様にして、中空を舞って行く。そして迫るのは虎。見開かれた黒い瞳は無感情に、厭に冷たく、人のそれと掛け離れた物に見えた。そう、恐怖の化身が眼前に迫っているのだ。
 伸ばされた手は首へ、袖口から覗く手首には鉤の様な先端が見えた。セノールが組討に使う、鉤付きの篭手だろう。首や動脈のある部位に引っ掛け、そのまま抉り取るのだ。それを目掛けて走る白刃が一筋。カルヴィンでもなければ、ガウェスでもない。大きく上を向いた腕からは、金属同士がぶつかり合い、火花が散る。
 白刃と見えていたのは火掻き棒。それを持っていたのはレーナルツだ。得物らしい得物を携えておらず、逃げ出したかの様に思えた彼だったが、フェベスやシューミットの親子を離脱させて戻ってきたのだろう。真鍮製の火掻き棒は大きく拉げ、曲がっている。あと一太刀でも受けたならそれごと、身を斬られかねないだろう。
「化物が」
 誰かが呟いた一言、このバッヒアナミルという兵を語るなら、その一言が最も相応しいだろう。ただただ強く、ただただ恐れを知らない。アゥルトゥラが先の戦争で刻まれたであろう、心的な傷を抉るに容易い。しかし、それ以上にセノールが負った傷は深いだろう。アゥルトゥラによる戦後工作に依って、周辺諸国からの孤立を深め、飢えと乾きに喘ぎながら生きて来た。故に若い世代は歪められ"化物達"が生まれてしまったのだ。人間を捨てざる得なかった、その怨嗟を吐き出す様に、獣は暴力を振るう。
 柄を握る手に力が込められ、その化物はじっくりと品定めをする様に緩慢な動きでぐるりと見回した。銃で撃たれる事もない、すっかり気勢を削がれ、積極的に攻撃を仕掛けて来る気もないランバートと視線が合うなり、動きが止まった、様に見えた。彼はその背後の女を見ているのだ。その視線の先、小銃と短刀を携え、様子を見に来たハイルヴィヒの姿があった。カルヴィンの退け、というジェスチャーよりも早く、その獣は駆ける。視界に納まる者全てを斬り、殺めようというその本能が、彼の背を押し狂奔へと駆り立てたのだ。
 振り上げられた切っ先、それは真っ直ぐ彼女へと降りて行く。小銃の銃身で受け太刀をしても力で負け、押し倒されては火花が散っていた。あと少し、あと少しでも押し込められたら刃は彼女へと届く事だろう。引き離すべく、飛び出したのは人斬りと騎士。獣の背を追っては、左右へと凪ぐもそれすら躱され、廊下で向かい合う。ハイルヴィヒの身体の上から、彼の獣が退いた時、篭手の鉤で肉を裂かれたのか、彼女は右の肩口から血を流していた。
「立て」
 差し伸べられた手は酷く痛んでおり、包帯の向こう側から血が滲んでいた。人を斬った返り血ではなく、手の傷が開いたのだろう。憚る事なく、それを左手で掴むと引き揚げる様にして立たされる。足元に転がったままの小銃の銃身は拉げ、恐らくもう使い物にならないだろう。
「すまない」
 詫びるな、と人斬りは眼前の獣を指差し、じっと睨んでいた。応接間に続く、一路にて対峙したその者にハイルヴィヒは得体の知れなさ、未体験の恐怖を覚える。そして、一つの懸念を胸に抱きながら、静かに溜息を吐いた。まだスヴェトラーナは屋外に脱出出来ていないのだ。二階へと逃げる様にと指示してしまった、自分を恨む。魔が差したのか、何故そんな指示をしてしまったのだろうか。
 傍らの二人はスヴェトラーナの安否を問う様な真似はしない、そんな余裕がないのだろう。向かい合っているだけで、じりじりと身を焼かれる様な言い得がたい不快感を抱き、それに呼応して心臓は早鐘を打つ。それは皆一様である。レゥノーラとはまた違う、違和感である。人でありながら、人とは違う。そんな風に思えている。ふと、背後から手が伸びてくる。携えた短刀を奪い取り、割り込む様に入ってきたのはレーナルツだった。
「女はすっこんでろ」
 あの刀と短刀で渡り合おうというのだから、とんだ馬鹿であるが、彼の名とその貴族としての勇名は聞き及んでいる。ナヴァロ、嘗ては同郷の士。国を離れ、幾百年も経ったが、それでもその尚武な傭兵の血は続いている。
 がしゃんと背後にて、燭台が音を立てた途端、虎は一気に駆け出した。八双に構えた刀は横凪に振られ、それを受ける人斬りの表情に苦悶が見えた。やはり撃たれた事など微塵も響いていないのか、返す刀でガウェスの斬撃を篭手で受け止めつつ、鉤を返しては剣を引き戻せない様にするなり、そのまま手首を掴み、それを軸にしては体を崩した刹那、顔へと蹴りを見舞っていく。レーナルツの攻撃を阻害する様に、彼の身体はゆらりと揺れていた。その身を押し退け、短刀を振るえど切っ先は中を斬るばかり。
 一合繰り出す度、三合分の反撃を行わなければならないはずだというのに、息が上がる所か、何処か淡々とした様子は異質だった。切っ先が目の前を掠めど、たじろぐ事などなく、左胸に染み出した血痕も、拉げた手から滴る血も気にした様子はない。これが化物、砂漠の化身か、とハイルヴィヒは息を飲む。銃を持っていたとしても、勝てる気がしない。そんな尋常成らざる兵が眼前に居る。
 刹那、切り上げられた短刀が中空を舞い、天井を穿つ。すぐさま、レーナルツは足元に転がる燭台を手にするも、虎に手傷らしい手傷はなく。勝手に出血してきた分だけに留まっていた。三者三様、ある者は鼻血を流し、またある者は肩で息をしている。酷く苦戦している様に見えた。たった一人、たった一人の兵に圧倒されている現実、酷く残酷な現実が目の前にはあった。
「……砂漠の化身」
 ふと、ハイルヴィヒの口を告いで出た言葉。セノールを形容する言葉だ。人の血を、人の死を好むシャボーの広大な礫砂漠。まともな地図すらなく、一歩踏み込んだならば死を覚悟しなければならない、魔境。そんな砂漠が生み出した、自身の代弁者。死を齎す、砂漠の化身。
「あぁ。そうだとも」
 短い返答と共に、彼は右腿から鎧通しを引き抜き、それは音すら置き去りに中空を舞う。三人の男達をすり抜け、ハイルヴィヒの脇腹を穿つのだ。身体を焼けた鉄で掻き回された様な言い得がたい痛み、どくどくと傷が脈を打ち、血が滴っていく。壁に寄り掛かる様にして、倒れ込んだ途端、眼前の男達は虎へと向かって行った。背後で起こった異常事態を察した訳ではない、攻撃に対し反射的に動いてしまったのだ。彼女の視界、その背を追う様にしてランバートの背まで遠ざかっていく。声を出そうとしても出ず、ただただ脇腹を押さえ込む手が赤く染まっていくばかり。触れた柄は血でぬるりと濡れている。
 背後の事など、露知らず人斬りの一撃は虎の刀を叩く。火花が散り、斬り付けた方の剣が欠け、刀が食い込んでいく。幾ら受け太刀しようと、刃毀れ一つなく、おぞましい程に斬れるその刀。血を吸うまで鞘に納まる事を拒んでいるのか、主は止まる事を知らず、体躯に勝る騎士の一撃すらも篭手で受け、それでもなおその体は崩れない。それどころか、そのまま斬り返されては切っ先がレーナルツへと向かって行く。燭台で絡め取り、刀を伏せては捨て身と言わんばかりの頭突きが入り、ごつりと鈍い音を立てながら両者、額から血を流れていく。目の前に散る、火花を掻き消す様に虎は迫り来る。人斬りが彼の服の端を掴むも、止まらず、燭台を蹴り上げては詰め寄り、短剣を抜いたランバートの腿へと鉤が襲い掛かった。それは腿を裂き、だらだらと赤い血が滴り落ちて行く。呻き、一瞬身体が止まった途端、膝が腹に入り、そのまま蹲ってしまい、目の前に散る火花を振り払おうと身体に鞭を打つも、視界は暗転して行くばかり。
 虎は三歩ばかり後ずさり、再び刀を八双に構え始めた、彼の左胸からの出血は更に酷くなり、額からの出血に顔は赤く染まっていた。左胸の傷からの出血は、腕を伝い始める。そうであったとしても、退く事を知らず、彼は刀を携えては一刀の元に断ち切るべく、作られた構えを取る。ただただ駆け、出会い頭に刀を振り下ろす。髪の毛一本分でも、相手よりも早く一撃を見舞うという単純な技の為の構えである。それは鎧兜すら叩き切る、ガリプの業。
「いい加減……いい加減、死にやがれ」
 人斬りの悪態に、虎はにぃっと口角を吊り上げた。まだ死なない、死ぬはずがないと、言葉なくせせら笑っている。死ぬのはお前達だ、と血に濡れた歯を剥いて嗤っているのだ。
 それに打ち勝つべく、それに足掻くべく、蹲っているランバートを庇うようにして、今度は三人の兵が得物を携え、再び彼と対峙していた。一人は燭台を得物にしているという、間抜けな絵面であるが、仕方がないだろう。まさか、日中にジャッバールの手勢から攻撃を貰うとは想定していなかったのだ。
 ふと、外で砲声の様な轟音が鳴り響く。何かに気付いた様に、まるで憑き物でも落ちたかの様に"バッヒアナミル"は玄関口を見遣った。
「……時間だ」
 血を流しながら、彼は言い放つと踵を返して走り出す。その表情はどこか穏やかで、嬉しげにも見える。三人は呆気に取られながらも得物を手から下ろし、疲れ切ったのか、へなへなと座り込む様にして廊下に腰を下ろした。銃を持っていたとしても、その背中に鉛弾を見舞う様な気力すら残っていない。何故ならば、カルヴィンは右脇腹と右上腕を斬り付けられ、ガウェスも左前腕と右腿、レーナルツに至っては蹴り付けられ肋骨が折れてしまっているのか、額から血を流したまま俯き、天井を睨む様に身を投げ出した。
「あの野郎……次、次に……会ったらただじゃあ……おか、ねぇ」
 ただ一人、語気荒く息巻いているカルヴィンだったが、言葉は途切れ途切れだった。流血のせいか、立ち上がろうとしても立ち上がれず、血に濡れた手で壁に手を付くも、ただただ滑るばかり。終いには失神しているランバートにも、刺され倒れ込んでいるハイルヴィヒの姿にも気が付かず、そのまま俯いてしまった。ただ伸びているランバートは捨て置き、彼女の異常に気付いたガウェスが大声で何かを喋っているが、その言葉は耳に入らず意識が遠ざかっていくのだった。



 肉刺が潰れ、傷が裂け、血に塗れた掌を見下ろしながら彼は駆けていた。小路と小路を梯子し、人の目に出来るだけ付かない様にだ。傷だらけの手に残る、肉を引き裂いた感触は形容しがたく、僅かな抵抗と張りのある柔らかさが手から消えない。鎧通しを刺した女だけは、手元から離れての加害であったから、その女を斬った、刺したという感触は手に残っておらず、惜しいなぁ、と内心一人ごちるのだった。彼女の持っていた小銃はやはり硬く、刀の刃を滑らせたなら、かちかちと耳障りで高い金属音を発するばかりで、斬り心地は悪い。持ち主を斬ったなら、さぞ心地良い事だろう。そんな猟奇性を伴った思いが、頭の中を反芻し、彼は無意識に刀の柄に手を掛けていた。
 寂れ、人気など、疾うに消え失せた小路に入り、廃墟へと差し掛かる。元は売春宿だったのだろうか、看板には艶かしい裸婦が描かれており、それは微かに上気させた顔を向け、扇情的な格好、姿勢をしている。裸同然で乳房を晒したそれを見て、寒そうだ、と思いながらも廃墟の扉を片手で押す。凍り付いている所為か、最初は開かずムッとした表情を浮かべながら、扉を蹴ると漸くそれは開き、暗闇の伽藍が口を開く。カウンターに店番など居るはずもなく、それを飛び越えては売春婦共が春を鬻ぐべく、待ち構えていたであろう控え間へと入っていく。そこは床板が剥がされ、ぽっかりと更に深い闇が口を開いていた。胸の傷を庇う様に降りて行けば、真っ直ぐ伸びた道が見え、ほぼ等間隔で篝火が立っており、篭った熱に誘われて空気が吸い込まれていく。
「はぁ……」
 溜息を吐きながら、胸の傷を押さえて地下道を歩んでいく。何でもこの道は嘗てヴェーリスカと呼ばれていた頃、セノールの襲来に備えて作り上げられた避難路であるらしい。道は蜘蛛の巣状に広がり、都を暗がりから見上げ続けている。メイ・リエリスの屋敷を襲撃する際も、此処を通り人目に付かない様にしてきた。帰路も勿論である。昼間から血塗れのセノールが大路を歩くなど、冗談では済まされない。
 石壁に大きく矢印が描かれており、それはジャッバールの屋敷、地下にある酒保庫へと繋がっている。酒保と言っても名ばかりで、実際の所はハヤの隠れ家、或いは彼女のサボり場というべきだろうか。二年ほど前から、こそこそと壁に穴を空け続け、地下通路へと繋げたそうだ。
 曲がり角の向こう側に死体が転がっている。いつぞや、ジャッバールの屋敷に招き入れたキールの傭兵のそれだ。酷く拷問を受け、顔は原型を留めておらず、歯は勿論、手指、目まで損なわれており、一様に腹を裂かれて死んでいた。どこからどう見ても二度と動く事はない。その内の一体は十一月の間にやや腐敗した様で、腹からは糞便なのか、腐って変色した腸なのか、よく分からない何かが飛び出ていた。砂漠で死んだなら鳥の餌、臓腑を引きずり出されて、鷹が死体に頭を突っ込んで貪っている光景は見慣れたものだ。
 不意に自分達がクルツェスカという都で死んだなら、どうなるかという思いが沸々と沸き立った。恐らくは死体は原型を留めない事だろう。死後、弄ぶ対象となるのもそうだが、穏やかな死など期待は出来ない。壮絶な討死しか道はなく、バッヒアナミル自身もそれ以外を選ぶ気は全くないからだ。暴力と流血を好み、この都でそれを振るい、それを流し続けてきた存在が、穏やかな死を望むのは都合が良過ぎる。燃え、爆ぜる様な死以外は受け入れられないのだ。いつか、殺し殺されをしなくてはならない。カランツェンも、ナヴァロも。ハイドナーの死に損ないもだ。
「……すみません、鍵開けてもらえます?」
 鉄格子の前に辿り着き、語り掛けるとハヤの姿が見えた。此処から向かう際も彼女が此処に居り、帰って来るまで待っていると言っていた。昔から意地は悪かったが、自分の言葉には責任を持つ人間だ。歳を取ってもそれは変わらないのだろう。
「はいはい、酷くやられたねぇ」
 彼女は二本の閂を抜き、鍵を開く。彼女の爪紅、その鮮やかな赤を見るなり、何故か安心を覚え、安堵の溜息を吐いた。ぎぃと錆びと錆びが擦れ合い、赤茶色の粉が微かに舞う。
「これ俺の血ですよ、傷開いちゃって」
「あんまり無茶しない事だね。ファハドもあんたも昔から無茶苦茶だ」
「その言葉、そっくり返しますよ」
 バシラアサドの従姉妹であり、幼い頃から見知ったハヤであるからこそ、こういった軽口を忌憚なく交わせるもの。彼女と同年代のラシードのマティーンや、ガリプのヘサーム等には出来た物ではない。彼等は色々な意味で恐ろしく、厳しい。
「……っ」
 ふと、身体はバランスを崩し、積上げられた木箱へと身体を預ける。どうにも視界がちかちかと点滅し、線という線がゆらゆらと蠢いている。ハヤの顔が面白くなっている事に乾いた笑い声を発しているのだが、相反す様に彼女は叫んでおり、焦っている様だ。何を叫んでいるのかも分からないうちに、視界は霞み始め、天井を睨んだと思えば暗転してしまうのだった。



 寝台の上、力尽きた様にバッヒアナミルは眠っていた。傍らにはルトの姿もあり、ハヤもその顔を見下ろしている。動揺を必死に隠す様に、一点だけを睨むバシラアサドの姿もある。足を撃たれていた、出血が酷いという文言を聞き付け、彼女がすっ飛んできたのは遂四半刻前。その時点で止血は済み、足の銃創も応急処置は済ませていた。後は勝手に目を覚ますと伝えているのだが、どうにも不安を拭い切れないのか、全く席から離れようとしない。それもそうだろう、今彼女を支配しているのは、悔恨と心配の念。メイ・リエリスへの牽制を行うと志願してきた時点で、彼を止めておけば良かったと悔やんでも、悔い切れないのだ。
「アサド、言っておくが──」
 じっと見つめ返した青い瞳、ドレントの海よりも深いその青にルトは思わず閉口した。開いた瞳孔に燻り続けた煙と昂ぶり、燃えつつある怒りが見えたのだ。感情的に振舞うのではないか、と不安を覚えるのだった。折角、十年にも近い歳月を費やしてきたというのに、今此処で感情任せに東伐を始めてしまうのではないか、と。あと僅かの道程を堪え切れず、本格的な戦をしてしまうのではいのか、と思えるのだ。
「……死なないんだろう、ナミルは」
「あぁ、だいぶ血は出ただろうがな。……帰って来て気が緩んだんだろ」
「そうか、なら良いんだ」
 彼女の発言の真意は計りかねる。二度と目を覚まさない屍と化したなら、今の言葉もなかっただろう。此処最近の彼女の危うさに、不安を抱かざるを得ない。バシラアサドがやると言えば、駆け始める者も多い。自身の妻であるハヤとて、その類の人間である。眠っているバッヒアナミルすら、目を覚まし得物を携えて再び戦地へと赴く事だろう。
「コイツは頑丈だから気にする様な事でもないよ。……それよりさ、アレは上手く行ったの?」
「……外から砲声が聞こえた、少し早かったが問題はないんだろう。今に奴等も戻って来る」
 出払っているアル=ハカンや、ルーイットという面々達の事を言っているのだろうか。何も聞かされておらず、然程興味のないルトはバッヒアナミルの傷だらけの手に治療を進めていく。
「態々、此処より寒い所に行ったって仕方ないしねぇ」
 バシラアサドとハヤは顔を見合わせながら笑っている。笑った顔はよく似ており、改めて彼女達が従姉妹同士にあるという事を実感させてくれる。幼い二人の幻影が重なって見え、今此処に居ない者達の姿すら見えてしまう。二人は仏頂面で、もう二人の更に幼い者達は馬鹿笑いをして、じゃれあっている。少し離れた所で見ているのはナッサルの上二人だろうか。ラシードとガリプの長男に首根っこを掴まれ、泣いているのはラシェッドだろうか。古い記憶から呼び起こされた幻は、朧げではっきりとしない。もう昔の事など、誰も覚えていないのだろうか、と思えば何処か空虚に感じる。
 バッヒアナミルの手を治療しながら、ルトは内心一人ごちるのだ。我々は何処で道を違えてしまったのだろうか、と。

Re: [リレー企画]無限の廓にて、大欲に溺す ( No.219 )
日時: 2019/05/27 21:38
名前: ポテト侍 ◆jrlc6Uq2fQ (ID: kcj49vWg)
参照: http://twitter.com/imo00001

 霞んでいた世界が徐々に色彩を取り戻す。瞼が開かれたばかりのサファイアの瞳はまだくすんでいたが、ここが現世であることはうっすらと理解していた。どうやら、治療の途中でベッドに寝かされてそのまま意識をなくしたらしい。白い天井に染みついた汚れの数を数えていたがやがて飽きてやめた。体勢に違和感を覚えて寝返りを打とうとした体に電撃のような痛みが走る。そして思い出したのだ。死を見ること生の如し。覚悟を決めた虎の恐ろしい力を。
「死んだと、思っていましたよ」
 視線を感じて顔を横に向ければ同じようにベッドに横になってる男と目が合った。憎まれ口を叩かれようともランバートは薄く笑ったままだった。
「失礼な奴だ。俺が男の攻撃で死ぬとでも?」
「あぁ、意外に呆気なく逝くかもしれませんよ。それぐらい人間は……脆い」
 イザベラも父も、同志達も皆、泉下の客となったからだろう。希望を謳っていた彼らしくもない悲観的な言葉にランバートは僅かばかり驚きを覚えた。もちろん、それを隠す術はイヤと言うほど身についており、彼から出たのは驚嘆からの「なぜ?」ではなく、うっすらと微笑を浮かべながらの「ほぉ」という言葉だった。
「ハイルヴィヒ殿は生きているのでしょうか?」
 ランバートは即答した。
「生きてるらしいぞ、一応な」
「なぜ分かるのです?」
「勘だよ」
 自信ありげにニィと笑う彼と絶句する彼。そこは茶化す場面ではなかろうとツッコミを入れたいが、傷に障るような気がして貝のように口を閉じるのみ。微妙な空気が流れるがそれを打破するようにガウェスがわざとらしく咳払いをした。
「彼女はもう前線に出すべきではありません」
 覚悟を決めた、芯の通った声だった。凜とした声とは裏腹にランバートは眉をピクリと動かした。この声を出すときは大抵強い意志を持っている時で意見を曲げようとしない。恐らく、動けるようになったら直接彼女に言うのだろう。ランバートはハイルヴィヒの性格を思い出し、そして嗤った。
「あいつがそんなこと聞く玉か」
「このままでは彼女は死にます」
「まぁ、確かにスヴェトラーナの為なら後先考えないところがあるが」
「ちがう。違うんです。恐らく、彼女はスヴェータ嬢を守るためならアレを使ってでも前に出るでしょう」
 アレとはシュルツ家の者が常用している薬物のことだった。過去にハイルヴィヒはあれを「ただの薬である」と公言していたが、ガウェスからしたらとんでもない。あれは薬なんて上品な言葉に収まる代物ではない。身体能力の向上と精神の興奮高め、代わりに命を削る。
 それでもランバートは残酷だった。普段のように人を小馬鹿にするうすら笑いを浮かべたまま、普段のように彼に言うのだ。
「それがハイルヴィヒが選んだ道なら認めるべきだろう」
「人命は至重だ。無闇にすり減らすものではないかと」
「人命は至重? 馬鹿言うな。友人だから至重なんだろう」
「だから自由に使うんだ。口を出して良い権利は誰にもありはしない。あー、そもそも、お人好しなお前が忠告しないわけがないからな。あの子が無視をして使っていたんだろう? ならば好きにさせてやれ。それが幸せなんじゃあないか?」
 立てた板を滑り落ちる水のようにペラペラとよく回る口だとガウェスは思った。熱が籠もり得意気に語る彼に反比例するように、ガウェスの心は冷静になっていた。やめればいいものを、頭の片隅でそんなことを考えていたが、止めるよりも先に口が動いていた。
「自分と重ねているのですか、ランバート卿?」
 ランバートは何も言わない。ただ薄っぺらい笑顔が一瞬剥がれ、感情を映さない瞳が揺れた。恨めしそうな視線と真一文字に結ばれた口が彼が何を思っているのか表している。「そんなわけないだろう」と一蹴するが普段よりも幾何か声が低く不機嫌なように聞こえる。
「薬の副作用で常時心臓に過度な負担がかかっています。いつ死んだっておかしくない。もしかしたら、数歩走っただけで心臓が止まる可能性だってある」
 まだ二十歳にも満たない少女が自らが撒いた種とはいえ、命を散らそうとする彼女が不憫でならない。
「緩和させるため、己が思いつく限りの薬は作りました。全く効果がありませんでした」
「そうかい……。お前さんで打つ手がないなら、お手上げかもしれないからな。なんたって」
「勉強が出来たって成果があがらなければ何の意味もない」
「なんだ、今日はえらく暗いじゃないか。太陽の騎士が聞いて呆れるぞ」
「私だって感傷的になりたい時はありますよ」
 笑っているが、どこか草臥れた印象を受ける笑顔だった。
「まだだ。まだやり直せる。俺もお前も生きてる。生きていれば、人生どうにでもなるもんさ。それに俺が死んでもお前が生きていればハイドナーは続く。お袋さんのハイドナーを守れって願いは叶えられる。そうだろう?」
 納得させようともガウェスは首を立てに振らなかった。視線をランバートから逸らし天井を見上げた。
「フェベス殿に顔を出して、スヴェータ嬢の様子を見にいきます」
「行けるもんなら行ってみろ。俺はまだ動かないからな。カワイ子ちゃんに身体を拭いてもらうまではこのままがいい」
「言っておきますが、恐らく、貴男が一番軽傷ですよ」
 ちらりとランバートに向けられた視線には軽蔑と呆れとほんの少しの憐れみだった。男女関係なく、今まで散々向けられてきた視線であった。怯むわけがな
「悪かったよ」
 からかうような声にガウェスは手をヒラヒラと振って応えるだけだった。もう相手にするのも疲れたのだろう。彼のニヒルな笑顔はガウェスに背を向けられると消えた。息をついて彼は現実から逃げるように瞳を閉じる。兄妹揃って手がかかるとごちる割に心は穏やかで意識が朦朧としてくる。 自分が眠る頃にガウェスは布団を這い出てフェベスやスヴェトラーナの様子を見にいくだろう。怪我をしたズリズリと引き摺りながら。あとどれくらいで眠れるのだろうか、答えが出る前に意識は闇へと落ちたのだった。

Re: [リレー企画]無限の廓にて、大欲に溺す ( No.220 )
日時: 2019/06/01 20:45
名前: NIKKA ◆ShcghXvQB6 (ID: eldbtQ7Y)
参照: https://twitter.com/NIKKA_Nonbe

 屋敷の二階に、怪我人は集っていた。
 裂かれた腹を見て、カルヴィンは大きく溜息を吐いていた。身を捻るだけで痛みが走るのだ。どうしたものか、と再び溜息を吐きながらも、レーナルツの手によって縫われた傷に指を這わせた。やはり出血は止まっておらず、指先を赤く汚す。背に彫った剣と盾、それに巻きつく蔦。カランツェンの家紋であり、メイ・リエリスの守護として振舞うべく己の証、矜持の証に傷が付かなかったのは幸いという所だろうか。
「怪我人に怪我の手当てさせといて、何だ、今度は文句か? ふざけんじゃねぇぞ」
 骨が折れているというのに、随分と元気な奴だと苦笑いを浮かべながら、消毒用に使った蒸留酒に口を付けた。キラを亡くしたばかりの頃、よくこの安酒には世話になったが、まさか今此処でも世話になるとは思っても居らず、やはり彼は溜息を吐いている。
「レーナルツ、お前随分と元気そうだな」
「俺だって骨折れてんの、頭だって切れてるしなぁ。空元気って奴だ!」
 鏡に向かい合い、額の切創に硬膏を塗りたくりながら、彼は大声で答えて見せた。肋骨が折れてしまっては固定のしようもなく、根性で乗り切るしかない。やはり"東部帰り"は少し違うと感心を覚えつつも、再び瓶に口を付けた。
「またいつやって来るかわかんねぇんだ、酔っ払うだけ呑むんじゃねぇぞ」
「……分かってる」
 あの虎を殺し切れなかった、自身を悔やむ。それを忘れるため、酒に逃げているだけの事。この酒の味がキラを止められなかった、自身の惨めさを思い起こし、ただ沈んでいるだけの事。しかし、逃げてはならない。であるから程度は弁えている。
「ハイドナーの坊ちゃん共、どうしてんだ?」
「知るか、切り刻まれてなきゃ生きてるだろ」
「お前、あいつ等が切り刻まれてたら、次は俺等の番だぜ」
 口元は軽口に笑っているが、目は笑っておらずカルヴィンの足元、床に寝かされているハイルヴィヒをレーナルツは見つめていた。抜かれた鎧通しは、とても厚く研ぎ澄まされていた。ぎらぎらと鈍く輝く刀身を僅かに晒し、血液は拭き取られる事もなく、乾いて固まってしまっている。
「起きんのか」
 カルヴィンは彼女をじぃっと見据えている。彼女が意識を失ってから、もう暫く経つのだが、一向に起きる気配はない。やはり男女で身体の強さは違う。彼女は如何せん血を流し過ぎた。
「さぁなぁ、血はばっちり止まってるし、傷だって縫った。あとはそいつ次第だ。なんて言ったっけ──」
「ハイルヴィヒ・シュルツ」
「へぇ、こいつシュルツの所の」
 元を正せばナヴァロも傭兵の一族、先の西伐で成り上がり貴族の一員となった者達である。シュルツと聞けば、それだけで分かる何かがあるのだろう。
「あんま似てねぇなぁ」
 眠っている彼女を見下ろしながら、レーナルツは笑っていた。誰の事を言っているのやら、と酒瓶に再び口を付けるも、中はすっかり空でカルヴィンは再び溜息を吐いた。
「シュルツの奴等、今はどうしてるか知らねぇけどなぁ。よーく"薬"の世話になってんだ」
「古柯か? 麻か?」
「さぁなぁ。セノールの奴等は煙草に少し麻混ぜてんだろ。そんなもんじゃねぇよ、シュルツが使ってたの」
 煙草に火を付けながら、レーナルツは語る。セノールを例として挙げたのは、自身が吸っている煙草が彼等の物だからだろう。傷を負い、痛みが伴うなら便利な代物だが、常用すべき物ではない。彼の口ぶりからは感じるに、それよりも悪い物だというのは明らかな事で、故に何を言いたいか察するに容易い。この傷すら致命傷に成り得る程、身体を壊す代物だと言いたいのだ。
「自分を奮い立たせ、戦地に駆り立てるのは自分の意思だろうに。……そんな中身が弱くては勤まらんだろう」
「あぁ、そうだなぁ。だが、それでも戦わざる得ない。人が人である内はな」
 肩を震わせて厭味っぽく、レーナルツは嗤っていた。彼もまた遥か西方から流れ着いた傭兵の末裔。ハイルヴィヒと背景は似ている。だからこそ、そういった薬を使ってまで……という事に理解を示す事が出来ないのだろう。
 それとほぼ同時であった、屋根裏からがたりと物音が発せられ、二者ほぼ同時に得物を手に取る。レーナルツは鎧通しを、カルヴィンは刀を。怪我の気配こそ感じさせなかったが、傷からは血の一筋が伝い流れていく。
「……誰だ、出て来い」
 此処で"虎"が出たなら、終いであるがそう言わざる得ず、カルヴィンは言葉を発する。出て来ないなら自分から乗り込むまでの事。屋根裏の書斎の存在を知っているからこそ、隠し扉の真下まで行っては椅子でそれを小突く。短い女の悲鳴が上がって、それがスヴェトラーナの物と分かるなり、その椅子に腰掛た。
「あの……開けて貰えますか」
 逃げたのは良いが、閉じ込められたのだろう。開け方も分からず、下の様子も分からず息を潜めていた。さっさと言えば良いだろうにと、レーナルツが肩を震わせて笑っている。痛み止めの薬でおかしくなったのだろうか、と呆れた様に彼を見遣りながら、屋根裏への隠し扉を小突けば、力を失った様に梯子が下りてくるのだった。


 床に寝かせられている従者を見ては、彼女は取り乱した様に振る舞い、その生き死にの狭間を彷徨っている身に縋る。どうしたものか、と武辺者二人は顔を見合わせるも掛ける言葉などない。主を守って死したならば、その労を労う。戦って死したなら、その勇敢さを讃える。配下の死に涙や、慟哭と言った物は必要ない、そう思っているだからだ。古いアゥルトゥラの考え、その物であったがそうであるからこそ、武力の象徴たる貴族の"剣"と成るのを是と出来ていたのだ。故に彼女と彼女の関係など分からず、二人はほぼ同時に溜息を吐く。
「嬢ちゃん、言っておくけどよぉ。お前さんがどんだけ泣いたって、生きるも死ぬもそいつ次第。どうやって自分の身を守るか、って事だけ考えた方が良いぜ」
 レーナルツの軽口に、反応したのはカルヴィンであった。彼はスヴェトラーナの腰の辺りを指差す。そこには一丁の回転式拳銃。古く扱い難い物であったが、身を守るには充分。恐らくハイルヴィヒの持ち物だろう。二階へと逃された際に持たされたのか。何かあったら撃て、という指示だったのだろうがバッヒアナミルが相手では撃つ暇すらないだろう。ランバートの様に銃を叩き壊されて終いである。
「なんでぇ、自分で守れんじゃあねぇか」
「銃を持っていても、死ぬ時は死ぬ。撃てど当たらず斬り付けられて終いだ」
 それもそうだな、とレーナルツが相槌を打ち、泣いているばかりのスヴェトラーナを余所に椅子に腰掛けた。肋骨が痛んだのか、一瞬だけ表情が強張ったのは気のせいではないだろう。
「……誰が、これをやったんですか」
「セノールのナッサル。バッヒアナミルって奴だ。……やめておけよ、報復だなんて。お前の首が並べられて終わりだ。武門の奴等、女は斬らないって聞いてたが、そんな事ないからな」
 スヴェトラーナの青い瞳、そこに怒りが沸き立っているのは気のせいではないだろう。穏やかなあの色は何処に消え失せた事か、ドレントの淀みがそこにあるのだ。
 溜息を吐き、彼女は椅子に腰を掛けては、黙ったままカルヴィンを睨んでいた。その姿が四年前の自分に重なって仕方なく思える。故に彼女を見ていられず目を瞑る。瞼の裏の闇に左腕、手に残る酷く軽い棺桶の感触、何も語らぬ墓石。彼女が抱く、その念は恨みや、怒り。言い様のない負の感情が、腹の中でとぐろを巻く。赤い割れた舌がちろちろと姿を現しては、血を求めて暴力を求める。彼女に宿る、ドレントの大海蛇は目を覚ますのだろうか。そんな事を思ってしまえば、目を開く気にもなれず、カルヴィンもまた溜息を吐くのだった。
「……人智を超えた力、という物が今ほど欲しいと思った事はありませんよ」
 彼女の言葉に閉じられていた瞳は開かれ、怪我の事など忘れた様に立ち上がってはスヴェトラーナの身を突き飛ばす。突然の事に彼女は驚いた様に瞳を見開き、怯えた様な素振りを見せていた。カルヴィンの突然の行動に、レーナルツは立ち上がり、制そうとするも得物を抜かない人斬りに違和感を覚え、立ち止まる。
「スヴェトラーナ。罷り間違って、お前がそんな物を振るおうというなら、俺はメイ・リエリスに仕える者としてお前を縊り殺さなければならない」
 女の細首など絞め殺すに容易い。女の一人や二人、少しの暴力で死んでしまう事など知っている。であるから、その様な行いは誹られるべく物として忌諱され、それをしない事を当然としてきた。しかし、スヴェトラーナが見たであろう"それ"を蘇らせ、振るおうとする者は今、この世に存在してはならない。半世紀前の戦も、それに端を発したのだから。
「……嘗てのメイ・リエリスは炎を放ち、この都を守った。……セノールともそうして戦ってきたと。人智を超えた、その力。羨ましくないですか?」
「俺はそんな物を当てにしようと思った事はない。そこまで弱くない。復讐がしたいなら、何かを守りたいなら、全部手前の手でやる事だ。お前の様な臆病者が魔術を望むなど、持っての外だ」
 弱いと誹られ、臆病者と罵られ、彼女の青い瞳に翳りが差したのは気のせいではないだろう。そして、この部屋の屋根裏にある、魔術の資料を見たのも確かな様だ。禁じられた力、多くの死を齎した忌むべく力。忌むべく術。そんな物は二度と復活して良い物ではない。その術が存在した事すら、忘却の彼方へと消え失せるべきなのだ。
「……私には力なんてありませんもの。得物を持っていたとしても、満足に扱えたものではないです。ですから──」
「なら、引っ込んでろ」
 戦場に立つ権利すらない、と耳を傾けていたレーナルツが言葉を放つ。先もハイルヴィヒを後ろに下がらせたりと、彼には女が戦うという事自体に良い印象がないのもあるが、抱いた怒りを血で雪ごうとしないその姿勢に辟易したのだろう。力がないと卑屈になるその内面にもだ。得物を持ったなら、一矢報いるのは誰でも容易い事。やっても居ない事を無理だと、何千も何万と繰り返した訳でもないのに無理だと言ってのける、その弱さに苛立ちを覚えたのだ。
 二人の男は別々の理由で怒っており、その様子にスヴェトラーナは居心地が悪くなったのか、眠っているハイルヴィヒを伏せ目がちに見つめていた。口は噤まれ、すっかり意気消沈した様にも見えた。眠る女、沈む女。怒る男達。彼等は目の前の事柄に囚われ、屋敷の主が帰ってきた事にすら気付かない。階下から顔だけ覗かせて、何があったのか、とフェベスは首を傾げつつも、全員の生存を確認し安堵するのだった。


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