複雑・ファジー小説

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Connecting dimension
日時: 2017/03/05 17:44
名前: リィル (ID: HbV5gn68)

なんか変えるにしてもいろいろ変えすぎちゃってる気が…読みにくくてすみません。

【CONNECT MIRAGE】(CM)
組織「Raven Fluegel」(RF)に対抗するために集められたコネクトダイバーたちが所属するチーム

【コネクトダイバー】
自分自身に加え、もう一人の自分を持つ者。
自分自身がそのもう一人の自分に意識、五感、あらゆるものを委ねることで(コネクト)、超人的な力を得て戦闘することを可能とする。


登場人物(順次更新)

パトリオン・エリファー(16)
Code Name(CN)
-ヘレン&ヘレナ
主人公。チームに所属して1ヶ月の新人。


ハイネ・サラ(19)
CN-紫羅(シイラ)&セイラ
ヘレンの世話役。チーム内でも上位の成績残す優秀なコネクトダイバー。


一城(18)
CN-楷瑠(カイル)&ザイル
チーム内で一番元気。レスカトーラのお気に入り。


ヴァレス・カトラ(22)
CN-レスカトーラ&ヴァレッカ
副リーダー。紅のよき理解者であり、ライバルでもある。


トゥエル・セトランター(22)
CN-紅(クレ)&殺(サツ)
CMのリーダー。
レスカトーラから絶大な信頼を得ている。


エレア(12)
CN-550
テレアの妹。
少女が持つ特殊知能をRFが狙っている。
コネクトダイバーではない。


テレア(18)
CN-***
エレアの姉。
コネクトダイバーだが、現在はもう一人の自分を見失ってしまった。



Start.


「エレア?」
「…ん……て…テレア…」
「今日もひどくうなされていたのね」
「また…あの影が……うっ」
「泣かないで、大丈夫よ。エレアの事は私が絶対守るから」





次の瞬間、二人の目の前が真っ白に染まった






1st CONNECT …



「ちょっと、ヘレンってば!」
「もーシイラ先輩、今度は何ですかー?」

私はヘレン。チームに入隊してまだ1ヶ月の新人。
本名はパトリオン・エリファー。
チームの仲間を呼ぶときはコードネームで呼ばなければいけない規則がある。だから私はみんなに、コードネームであるヘレンと呼ばれている。

そして、今私の手をグイグイ引っ張りながらガラスの向こうを覗き込んでいるのは、シイラ先輩。本名は、当然知らない。
入隊以降、ずっと私の世話をしてくれている。
きりっとした大人っぽい顔立ちには、子供のようは言動は正直似合っていない。と、いつも思うのだが流石の本人には言えない…

「これ、すごいかわいいよ!私これ欲しい!!」
「確かにかわいいですけど…ちゃんと値段見ました?」
「…うげっ、高っ」
「私たちの貯金では到底無理ですよ。あと、先輩はそんなに飾らなくても元々かわいいですから」
「え、今なんて言ったの!?聞こえなかった!もう一回言ってー?」

すぐ調子に乗るのも先輩。毎回対応に困るのも事実なのだけど…

ぶるるっ
私と先輩のポケットの携帯端末が震えた。

「何よこんなときにーっ」
先輩がぷくーっと頬を膨らませながら端末の画面を起動させた。
画面にメールの内容が映し出された瞬間、先輩の表情が一気に険しくなった。その理由は私にもわかる。

「テレアたちの家が爆撃にあった?!」
「…!本人たちは…何とか無事みたいですね」


テレアとエレアは私たち、コネクトダイバーが守るべき少女たち。そう、つまり私が所属しているチームは二人を守るために作られたCONNECT MIRAGEというチーム。

「ひとまず、基地に戻って詳しい事情を聞くわよ」
「了解しました」

私たちはリンクを使い、仲間たちのいる基地へと飛んだ。

Re: Connecting dimension ( No.1 )
日時: 2016/10/13 06:41
名前: リィル (ID: uSNXuk4N)

真っ白だった視界にふっと景色が戻った。
ここは基地の中にある自室。白がベースのシンプルな部屋だ。

「ねえ、聞いた?」
「爆撃の件でしょ?知ったから戻ってきたのよ」
「やっぱり」

迎えてくれたのはもう一人の自分、ヘレナ。
身長はさほど変わらない。私と違うところは、髪の色と長さに顔立ち、口調といったところかな。

「ひとまずリーダーのところへ行く」
「そうだね」

そうして、ヘレンとヘレナはともに部屋を出た。

会議室へと続く廊下を歩いていると、後ろからハイヒールのような足音がコツコツと迫ってきた。
とんとんっと誰かに肩を突かれて振り向くと、そこにはシイラ先輩とセイラ先輩(もう一人のシイラ先輩)が。

「早かったね」
「そんなに変わりませんよ。リンクタイミングも同じでしたし」
「そうね、部屋に戻ってからセイラと話していたから少し遅かったのかもしれないわ」

買い物に出かけていた時とはまるで別人のように大人になったシイラ先輩に、内心びっくりする。
ヘレナとセイラ先輩も最近だいぶ仲良くなり、よく2人で話している。
セイラ先輩はシイラ先輩よりも背が高く、髪は一つに束ねている。顔つきはやんわりしていて、優しいお姉さんという言葉がぴったり当てはまる。でも、いざ戦闘になると今の優しそうな雰囲気はどこかへと…

「しかし驚いた...いきなり爆撃なんて。なんで彼らに居場所がわかったのか不思議だわ」
「確かに。二人はあそこに引っ越したばかりですよね?なぜあんなれほど正確に位置を特定出来たのでしょう...」

「そのことについては、会議室で集まってから話そう」
後ろから声がした。この声は...
「二人とも、迅速な帰還ありがとな」

CMのリーダー、クレ先輩だ。
ずば抜けて背が高く、左の頬には短く傷が入っている。でも、凄く、ハンサムだと思う。

「はい、これはすぐに対応しなければいけない事件ですから。」
「そうだな。ひとまず会議室に移動するぞ」
「「了解しました」」

会議室に入ろうとドアを開けると、ほぼ同時に二人の声が聞こえた。

「遅いぞ、クレ」
「待ってましたよリーダー!」

リーダーのことをクレ、と呼び捨てにしているのがレスカトーラ先輩で、もう片方の元気のいい方がカイルくん。
カイルくんはあまりにも馴れ馴れしく話してくるので、もはや先輩と呼ぶのがめんどくさくなってしまった。

「悪かった。これで全員揃ったな。では、今回の爆撃事件について会議を始める!」
「「はい!」」

「まず、爆撃があったのは二人の新しい隠れ家。ほんの15分前のことだ」
「あのメールの情報、ほぼリアルタイムだったんだな」
「ああ、テレアから直々に音声通信が入ってな。いつもなら短い暗号文が送られてくるだけなんだが」
「なのであそこまで情報が細かく書かれていたのですね」
「いかにも」

いつものメールにはだいたい事件の内容しか書かれていないのに、今回のメールは、時間、場所、内容、安否情報までしっかりと書かれていた。本人からの連絡があったのなら今回のメールにあれだけの情報が書かれているのも納得出来る。
その上、実際に通信したのなら生きているのも確実だ。

「で、さっきヘレンたちが話していた位置情報の特定についてなんだが、俺の予測では……おそらくヘレナの特殊知能を利用したのではないか、と思っている」
「彼女の特殊知能、ですか。なぜです?」
「シイラ、君ならわかるだろう?」
「彼女の特殊知能、それに関わってくるのは、RFの特殊電磁波、過去にあった彼女の知能への介入実験の辺?……あ、まさか…!」

Re: Connecting dimension ( No.2 )
日時: 2016/10/13 06:42
名前: リィル (ID: uSNXuk4N)

シイラ先輩はデータ収集や集めたデータをつなぎ合わせることがチーム内での担当だ。それに、先輩の両親は特殊情報調査機関で働いていたという。
そのことを踏まえた上で、先輩自身で答えを出すように促したのかもしれない。

「わかったか?」
「だいたいの予測はついたかもしれません。過去に彼女の知能へ介入した際、特殊知能のみが発する脳波を観測されていたと考えればね。彼らの中には脳波干渉できる人物がいるわね。その脳波干渉できる人物が、あらかじめ彼女の脳内に介入し自らの脳波を植え付ける。そうしておけば、いつでもRF独自の特殊電磁波で観測できるようになるわ。それを利用して今回の特定を行った。どう?」
「まさにその通りだな。」

さすがだというように、クレ隊長は深く頷いた。
するとカイルがズイッと質問に出る。

「その脳波干渉できる人物というのは誰のことなんすか?」
「G.ハーダー。脳波干渉のために開発されたヒューマノイドね。」
「彼女の確保のためにわざわざ作ったのか…」
「多分、そうだと思うわ」

そこまでして、少女の知能を欲しがるか…
私には正直そこまで欲しがる理由がわからないが、悪用するという予感だけはしてならない。

「そんなことより、今はまずは彼女たちの安全確保を。まずレスカトーラ、お前は彼女たちをここに呼んでくれ。いつもは暗号通信だが、今回はおそらく音声通信が一番早く確実だろう。可能なら彼女たちの元へ迎えに行ってやってやれ」
「了解だ」
「シイラとカイルは情報収集とその解析。ヘレナ、君は二人を迎え入れる準備の手伝いを頼む」
「任せてください!」「了解、早急に取り掛かります」「わかりました」

私たちは各自の役割につき、各自専用の部屋へ移りもくもくと作業を始めた。
私は急ぎ足で部屋を出るクレ先輩を足早に追う。

しばらくたっても、私はさっきの心の中の質問が疼いていた。
「あの、クレ先輩」
「ん?どうかしたか?」
「すごく根本的な質問なんですけど、なぜ彼らは特殊知能を奪おうとするんでしょうか?そんなに特別なものなんですか?」

クレ先輩は振り向くことなく、歩きながら話し始めた。

「この話は長くなるかもしれんな。特別かと聞かれたら、そりゃあえらく特別で特殊なもんだ。そして、特殊知能を持つものは数世紀に一度だけしか現れない、と聞いたことがある。」
「数世紀?!そんな稀にしか現れない特殊な人物が、今私たちが関わっているあの少女なんですか?」
「ああ、そうだ。そして今までに特殊知能を持って生れたものは皆少女だった。そこからついた彼女たちの名は、【可憐なる奇跡の華】」
「可憐なる…奇跡の華…。すごいですね、まるで世界の悪を消し去ってしまいそうな」
「俺も初めはそう思ったよ。でも、そうとも限らなかった」
「彼女たちになにかあったんですか?」
「ああ…今も昔も変わらなかったんだ。知能が発見された初めの頃は皆がその能力に驚き、惹きつけられ、感動した。しかし、それが続くはずもなく、特殊能力について世紀を超えて語り継がれるようになって以来、今で言うRFと同じような奴らが現れるようになった。彼らは特殊知能を己のものとするために、傷つけあい、時には本人を巻き込んでまで争った。」
そんな…
「なぜ争ってまで欲しがるんです?」
「彼女らの大いなる力はいつしか、一部の人物からは世界を変える力と見なされるようになった。本人たちは求めていなくとも、世界の革新のため、文明開化のため、そして、世界を統一するためにその知能の力を利用しようと考えたんだ。つまりは、彼女たちを利用して世界統一という善行を装いながら己で支配しようとした。だが、そう簡単にはいかないもの。彼らの悪行は今までに一度も成功した例が無いんだそうだ。」
「善行を装いながらの悪行、ですか。過去にそれを試みたものたちは、一体何を企んでいたのでしょうか」
「さあな…それに限っては俺にもわからない。でも、じきにわかる時が来るだろう」
「いつか彼らとぶつかる時、その真実が明かされる、ってことですね」
「ああ。俺たちが、暴き出し、語り継ぎ、悪の連鎖を断ち切らなければならない…」

「「未来に生まれ来る、少女たちのために」」

Re: Connecting dimension ( No.3 )
日時: 2016/10/13 06:43
名前: リィル (ID: uSNXuk4N)

テレアに指定された建物まできたはいいが、がれきが多くてなかなか部屋が見つけられない。もう10分ほど歩き回っているだろうか。

お、ここの部屋か?確か指定された部屋の番号ではここのはずだったが…

「レスカ、ここよ!早く!!応急処置は施したけど、このままだとエレアが!」
「わかっている、そう騒ぐな。こいつは俺に任せて、お前は先に基地に行け」
「そういうわけにはいきません!私はエレアを守る義務が…」
「うるさい。ごちゃごちゃ言ってないで、さっさとリンクの準備しろ。あと、基地に連絡を飛ばしてドクターにすぐ治療に当たれる準備をさせておけ」
「うっ…わ、わかってるわよ!」

テレアもそこそこな怪我を負っているが、本人は気にしていない様子だ。
というか、自分である程度の処置を施したのか。

「なぜ…なぜ私ではなくエレアに傷が…」
「そんなもん運だ。今回は爆破位置が悪かったせいで、こいつの方が遠くまでぶっ飛ばされたんだろ」
「運なんて、そんなことで済ませられることでは!私が彼女をもっと早く抱き寄せていれば、彼女の盾になっていれば…」
「反省会は後で一人でやれ。基地に移動する」
「冷たいのはいつになっても変わらないのね?!了解、いくわよ…!」

ブワアっと二人の体を薄い虹色に光が覆った。
次の瞬間、真っ白な光が目の前に広がる。

「「リンク!!」」



ギシッ。体重をかけた椅子の背もたれが音を立てた。

「なかなか情報が集まらないっすねー」
「ええ…手当たり次第探ってはいるけれど、ここまで情報が少ないと困ったものね」

シイラ先輩はむーっと口を尖らせた。
俺は思わず…か、可愛いっす!!と心の中で叫んでいた。
なんでシイラ先輩にこうもすぐに気を取られてしまうのか。ブンブンブンっと頭を横に振り、考えるのを止める努力だけはしてみた。
が、無駄だった。

「どうしたの?そんなに顔赤くして。あ、まさか変なことでも考えてるんじゃないでしょうね?」

何もかも、お見通しだったようだ。
なんてこった…

「え、べ、別にそんなことないですよ!考えてませんからね?!考えて……そ、そんなことより、彼女たちに聞けば少しは集まるでしょうかっ?」
「はははっ、あんたって本当面白いわ!いつも言ってるけど、顔に全部出てるんだし嘘ついたって無駄よ?ああ、そうね、その手があったじゃない!彼女たちの帰還を待つのがいいかも」

俺に、逃げ場はないというのか…
まあ、しょうがないか。よく考えれば、こうして相手してもらえてる時点で嬉しいしな!

「お、おおー噂をすれば!第1帰還室にレスカトーラさんのリンクを確認!もう一つリンクが、おそらくテレアさんかと!」
「無事に来れたのね、ナイスタイミング!迎えに行きましょ!」
「了解っす!」

帰還室に着くと、服を赤く染めたテレアとぐったりとしたエレアを抱っこしたレスカトーラが立っていた。

「レスカトーラさん!」「テレア、エレア!!」
「無事二人とも回収した。ただ、エレアが頭部に深傷を負っているから先に医務室に連れていく」
「テレアからの連絡を受けて既にドクターに用意させているから、すぐに治療に当たれるわ」
「ありがとう。んじゃ、俺は先に」
「ええ、頼んだわ。」

レスカトーラが小走りに部屋を出て行った。
心配そうにテレアが目で追っている。

「あ、テレアさんは少し私たちに付き合ってもらってもいいですか?」
「あ、はい。別にかまいませんけど」
「でも、先に傷の手当てをしたほうがいいんじゃないすか?」
「気にしないで、自分である程度は応急処置を施しましたから」
「なら大丈夫ね。じゃ、テレアさん、カイル、行きましょうか」



ふっと、後ろから聞こえていた足音が消えた。
気になって後ろを振り向くと、少し後ろの方でテレアが壁に掛けられた絵を眺めていた。
特殊知能を持つ少女たちの母、創造神が描かれた絵だ。

「どうしたの?」
「いや…少し気になって…」
「何がっすか?」
「いえ、なんでもない。止めてごめんなさい、行きましょ」
「え、ええ」

気になったというか、なんか…この絵の中の創造神の姿が、つい最近見たかのように鮮明に思い出せるのだ。
おかしい…こんなの…私、疲れてるのかな。あとで少し休養をもらおう。

あの長いブロンドの髪に、透き通った瞳。優しい微笑みを浮かべる唇。

私の心の中にふと思い浮かんだ。



全世界(すべて)を飲み込め、忘却の麗歌…

"ベルカント・オブリーオ"

Re: Connecting dimension ( No.4 )
日時: 2016/12/28 06:56
名前: 零二 (ID: MYmyvGlS)

ベルカント…オブリーオ?
なぜそんな言葉が思い浮かんだかは自分でもわからない。
だけど、自分に関係あるような気がしてならない。少し気持ち悪い感覚だ。
再び足が止まってしまっていたらしく、前の二がこちらを向いて立っている。

「さっきからおかしいけど、本当に大丈夫?」
「本当は傷が傷んでたりしないですか?」
「ごめんなさいね、本当に気にしないで。今度こそ大丈夫よ…」

二人ともこくりと頷くと再び歩き出した。
私ったら…しっかりして!
自分にそう言い聞かせると、二人を追うように後をついていった。

モニターがあちこちに配置された部屋に連れてこられると、そこに座って?と促される。
ふかふかのソファに腰掛けると、シイラがお茶を淹れてきてくれた。

「大変だったわね。お疲れ様」
「いえ…でも、こんなにすぐに追撃されるなんて思っていなくて。無防備すぎた私の責任です」
「まあ、そんなに気負いすぎないでくださいよ。しょうがないハプニングですから。俺たちにも予測できないぐらい突然だったんですから」
「そう言ってくれるとありがたいけど…私は、彼女を傷つけてしまった。あの時と同じように」
「テレア、あなたは相変わらず気にしすぎよ。もっと心にゆとりを持ちなさい」
「わかった気ではいるんだけど…」
「実行しなきゃダメよ」

そういうと、シイラはカタカタとキーボードを打ち始める。
彼女に変わり、今度はカイルが私の前に腰掛けた。

「今回のこと、全くと言っていいほど情報が集まらないんですけど、何かわかることというか…とにかく、なんでもいいです!情報はないですか?」
「ごめんなさい、私も本当に何もわからなくて。あ、今回のこととは関係ないかもしれないけど。最近夜にひどくうなされるようになってた」
「なるほど…彼女は、あらかじめ何かが忍び寄っていることを察知していたのでしょうか?」
「それもありえるわね。彼女はさまざまな気配を感じ取る性質があるから」
「じゃあ、私たちにも予兆はあったってことに…それを見逃していたなんて!」
「もったいないことをしたっすね」

私はぐっと唇をかみしめた。
なんという失敗をしてしまったの。これでは、私が彼女の保護についている意味がなくなってしまう!
エレアがいっていた、影とはそのことだったのだろうか?それとも、もっと先に起こるかもしれない何かの警告なのか。私は見極めなければいけない。彼女に落ち着いて生活出来るように安全を作ってあげなければ。
思えば思うほど心の中が混乱して、ゆとりとは程遠くなってしまう。
それを感じたのか、カイルが「まあ今は俺たちがいます。心を楽に休んでください」と声をかけてくれた。
それじゃあ、お言葉に甘えてと答えて立ち上がると、シイラが「エレアが回復したら連絡するから、それまではいつもの部屋にでもいるといいわ」と笑顔で送り出してくれた。



「ドクター、エレアは大丈夫そうか?」
「ああ、一応容態は安定した。ただ、現時点では頭部の傷が脳にどれぐらい支障をきたすかわからん。そこは彼女が目覚めてから検査するつもりだ」
「わかった。一命は取り留めたとシイラたちに伝えておく」
「頼んだ」

俺は、ベッドに横たわる少女の姿を眺めた。
こんな小さな体でこの世界を揺るがす力を背負っているのか…無謀だ。こんなものを作り出した神という名の存在は、何を考えていたのだろうか。彼女が生みの親である神のことをどう思っているかは知る由も無いが、俺がもしこいつの立場になったら、きっと恨むだろう。親を、神を。
なぜ俺にこの身を託したのか、なぜこんな存在を生み出したのか。


そして、今の俺に植え付けられた過去の黒い記憶。


そのトラウマを晴らすために、持つ力すべてを使って、神を殺しに行くだろう。


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