複雑・ファジー小説

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精霊館〜ウンディーネ【水妖姫物語】〜 【開館中】
日時: 2016/09/18 20:24
名前: 鏡杏 (ID: HKLnqVHP)

こんにちは。初めまして、かしらね。
私はこの館の案内人の白泉はくせん。どうぞよろしくね。
此処は【四大精霊】のことを取り扱った物語を保管する館。貸し出しもしているし、図書館みたいなものね。
色々あるわよ。四大精霊以外にも箸休めなのか知らないけど普通現代の小説も置いてるし。どんどん読んでってみて。
きっと楽しいはずだから。



—物語を執筆するにあたりまして、実際に存在する小説などを参考にさせていただきます。—

【目次】
一冊目 ウンディーネ【水妖姫物語】

Re: 精霊館【開館中】 ( No.1 )
日時: 2016/09/18 19:47
名前: 鏡杏 (ID: HKLnqVHP)

ウンディーネ【水妖姫物語】—序章—

なんだかその日は何かが起こる。そんな気がしていました。


「ウンディーネ」
こっちこっち、と言わんばかりにお母様は手招きをして私を呼びました。
「なんです?お母様」
少し丈の長いドレスの裾を持ち上げながら小走りでお母様の許へ行きました。
普段なら「お行儀が悪い」と叱られる行動ですが今日はお母様は何も言わず私を見ていました。
そして、口元にいつもの優しい笑みを浮かべていいました。
「お父様がね、貴女に人間と同じ魂を持たせたい。と願ったの。
そこでね、貴女の叔父様である、キューレボルンがここから少し離れたところの漁師の娘と貴女を取替えっ子することにしたの」

私の父はこのあたりの海を治める王様です。私はその一人娘。
王である父の弟のキューレボルン叔父様なら私とその漁師の娘を取り替えっ子することなんて簡単でしょう。
でもなぜそんなことをする必要が?

「お父様はね、貴女にも魂を持った者になってほしいとずっと願っていたのよ」
穏やかな口調で私にそう言うお母様。
私のような水の精は愛を持って人間と結ばれることで魂を得ることができます。
私も魂、と謂う物は得たいです。ただ、それだけの為に親許を離れたくないという気持ちもあります。

「ウンディーネ。貴女は十分成長したわ。大丈夫よ、ちゃんと生きていけるわ」
だから、ね? と、幼い子供を宥めるようにそう言いました。
「……わかりました」
私の小さく開いた口から出た言葉に一瞬驚いたような顔をしてその後どこか嬉しそうにお母様は笑いました。
「流石、物わかりの良い子だわ」
そういってポンポンと私の頭を撫でました。
「明日の朝、キューレボルンに迎えに来るように頼んであるから、ちゃんと彼についていくのよ」
「はい、お母様」



そして翌朝。叔父様と一緒にその漁師の夫婦の許へ私は旅立っていきました。

Re: 精霊館〜ウンディーネ【水妖姫物語】〜 【開館中】 ( No.2 )
日時: 2016/09/19 12:47
名前: 鏡杏 (ID: HKLnqVHP)

第1章—水妖姫と騎士—

「ウンディーネ! ちょっとこっちに来ておくれ」
母さんがが私を呼んでいる。 少し面倒くさいな、と思いながらもそちらの方へ行く。

漁師の娘として育てられて15年。今の私の年齢は20歳。もう立派な大人の年齢だ。
でも、お母様には「人間と同じ魂を得てから帰っておいで」と言われている。
だからまだ、水界へ戻れない。 そもそも人間になったらあそこへ戻れないんじゃないか?

また、母さんが私を呼ぶ声がした。
「ウンディーネ。毛布を持ってきておくれ! 急いでっ」
『急いで』と強調して言われたから走って布団部屋に行き毛布を取りに行く。
誰か海にでも落ちた人を見つけたのだろうか。 いや、今は冬。そうそう海に近づかないはず。

「ハイ、母さん。 誰か海にでも落ちたの?」
毛布を渡すついでに、そう聞いた。 母さんは首を横に振った。
「道に迷った人を見つけてね。吹雪の中歩いてたからうちに連れてきたんだ」
今玄関にいるからあんたもおいで。といい母さんは毛布を持って私の前を歩いて行った。
私はそれについていく。

玄関にいたのは若い男。 …しかもなかなか格好いい。
「ほら、毛布。 これ掛けてな」
体が冷えるだろ。 と男に毛布を掛ける。
「ありがとうございます……」
微笑んで、礼を言う男を私はじっと見ていた。 それに気づいて男は見つめ返してきた。

「お嬢さん。お名前は?」
「人に名を聞くときは自分から名乗るのが一般的では?」
少しツン、とした口調でそう言う。 もしかしたら傷つけてしまったかも。といった後から後悔する

「おっと、失礼。わたくし、フルトブラントと申します」
彼は気にする様子もなく、そう私に名前を教えてくれた。
「……ウンディーネ」
対する私は小さく、そっぽを向いて名前を言う。
ウンディーネ…良い名前ですね。 と微笑むフルトブラント。
そんな彼に対してなんだかココロがふわふわした、何とも言えない感情が湧いてきた。

Re: 精霊館〜ウンディーネ【水妖姫物語】〜 【開館中】 ( No.3 )
日時: 2016/09/19 13:32
名前: 鏡杏 (ID: HKLnqVHP)
参照: http://展開ちょっと早いかもしれないけどそれは気にしない。気にしない。

第2章—騎士・フルトブラント—

フルトブラントと出会って1週間経った。彼は泊まるところもなく、ここに暫く置いてほしい。 と願った。
母さんや、勿論父さんも喜んでそれを受け入れた。 ウンディーネの恋人にピッタリそうだ。なんて言う理由で。
元々狭いこの家には空き部屋なんてない。だから私の部屋にもう一つベッドを置きそこで彼は寝ている。

「ウンディーネ。起きてください。朝ですよ」
フルトブラントが私を起こすのは毎朝のこと。だからもう慣れたけど…
「起きるからさ、少し退いて」
妙に近いこの距離はどうにかしてほしい。
朝起きたら真っ先に目に入るのはドアップの彼の顔。流石に慣れたけど最初の頃は悲鳴を上げていた。

「なんでいつもあんなに顔近いわけ。私が起きるとき」
朝起きたばかりでまだ少し掠れた声だが気にせずにフルトブラントに問いかけた。
ただ、ちょっと気になっただけ。
私は軽い気持ちで聞いたのだが彼は意味ありげに少し頬を赤くして「嫌、でしたか…?」と聞き返してくる。
「別に嫌じゃないけど、なんでか気になっただけ」
「そう…ですか」
なんだか言いにくそうだったけど、少しして口を開いた。



「好き、だからです。ウンディーネのことが」



「ぇ…?」
私の口から小さな声が漏れだす。
「出会ったときから、とても可愛らしい人だなって。一目見て思って…」
ぽかんとなっている私を置いてきぼりで彼はつらつらと話している。
その話の半分以上は右から左へと流れてしまっている。 こういうのを『 愛の告白 』というのだろうか。
「ウンディーネ?」
どうしました。 と私の顔を覗き込みきいてくる。
顔…近すぎ…!! ちょっとだけ、彼のことを意識したら一気に恥ずかしくなってきた。
「端かしい、ですか。わたくしも、恥ずかしいですよ」
ほら、と言って私の手を取り、彼の胸—心臓のあたりを触らせる。

心臓が激しく動ている。 耳を当てれば音だって聞こえそう。
「それで…ウンディーネ。改めて言います。わたくしは貴女のことが好きです。だから…お付き合い、してくれますか…?」


『愛を持って人間と結ばれよ』


父様が最後に言っていた言葉が頭の中でリピートされる。
愛を持って。 きっと私もこの人のことを愛しているはず。

「えぇ、喜んで」

嬉しそうに彼は笑い、私の唇に唇を重ねてきた—。

Re: 精霊館〜ウンディーネ【水妖姫物語】〜 【開館中】 ( No.4 )
日時: 2016/10/15 15:29
名前: 鏡 (ID: HKLnqVHP)
参照: http://鏡杏改め鏡です。(あまり名前が変わっていないのは気にしないでください)

第3章—いえない理由わけ

フルトブラントと恋仲になり、数日が経ちました。 いまだになれないことが多く戸惑う日々。

それでも私たちは幸せに暮らしてる。


「暫くここには帰れません。すみません」


彼がそう言いだしたのはつい一昨日のこと。 とても言いにくそうに私と目を合わせないようにしながらそう言ってきたのです。

「ねぇ、どうしてなの?理由をちゃんと説明して!」

「それは…、また、帰ってきてからお教えします。ただ今現在言えるのは数日帰ってこられない、ということです」

それでは。 それだけ言って彼は私を置いて家を出ます。

結局何も言わずに。どこかに隠してあったのか。全く見たことのない大きな剣を持って、私の前から去っていきました。


彼のいない間はとても寂しかった。

外で物音のする度。彼が帰ってきたんじゃないかと外を見る。

彼は全く帰ってこない。

私のココロになんだか大きな穴があいたような、そんな気がする。


何をやっても楽しくない。いつも寂しい。




「早く帰ってきて。ねぇ、はやく」


それを呪文のように唱える日々。

そんなことをやっても彼は全く帰ってくる気配はなかった。


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