複雑・ファジー小説
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- 超能力者と少年の合奏曲(合作)
- 日時: 2016/09/20 07:19
- 名前: 波坂&マグロの煮つけ (ID: wSTnsyhj)
こんにちは。波坂です。
えー、今回はマグロの煮付けさんの『英雄と少年の前奏曲』と私の『超能力者と絶対に殴り合う能力』をコラボレーションするという形で合作することになりました!(題名の戦闘力の差が……私のが圧倒的に敗北している……)
題名は『超能力者と少年の合奏曲』です。
初めての試みですが、完結目指して頑張りたいと思います!
はじめまして。マグロ煮つけです。
波坂さんと合作させていただきます。題名の戦闘力は勝っていても、文章力が波坂さんと全く釣り合っておらず見苦しい所があると思いますが、優しく見ていただければ幸いです。
完結目指して頑張らせていただきます。
目次は随時作って行きます。
荒らしはご遠慮願いたいです。
後々追記していきます。
- Re: 超能力者と少年の合奏曲(合作) ( No.1 )
- 日時: 2016/09/20 13:27
- 名前: マグロ煮つけ ◆AXS9VRCTCU (ID: wSTnsyhj)
______これはマズイことになった。
そんな感情が少年の胸中を支配していた。
まだ、正午なのに辺りはまるで月明かりの無い深夜の様に真っ暗。上下の感覚すら闇に呑まれ曖昧になっている少年は、ひんやりとするコンクリートの感覚を 全身に味わいやっと自分が横たわっていることを理解出来た。
足音が聞こえる。
その足音から離れようと立ち上がると不意に闇は晴れ、驚いた少年は目が眩んだのか一瞬閉じまた開ける。彼が見た景色は、彼が先程までいた世界とは別の世界だった。
きっかけは僅か十数分前へと遡る。
制服を着た平凡な見た目の男子高校生__望月 康太郎。
身長が高くかなり痩せていて一部分だけ髪がはねている男子高校生__三島 大樹
黒スーツ姿で長めの銀髪が特徴的な堅苦しい雰囲気の青年__ガウェイン
腰まで届くほどの白い髪が特徴の小柄な少女__月詠
烏羽色の美しい髪を肩ぐらいの長さでポニーテールにした和服を着た美少女__スサノオ
五人はこれから起こる事件の事など気にもかけず家路に着いていた。
角を曲がり近道である裏路地に入った時だった。全員の動きが、文字通り金縛りにあったかの様に動かなくなった。いや、動かなくなったと言うのは、正確では無い。全身の震えが邪魔して動こうとしても、動けないのだ。
張り詰める緊張感の中、少女の声が奥の路地から飛び込んでくる。
「やっほー、お前ら元気〜」
その少女を見た瞬間、その場に居た全員が命の危機を感じ、咄嗟に『能力』を発動する。だが、届く寸前。砂の腕がコンクリートを突き破り現れ、紙屑を潰すかの様に能力を握り潰した。
それからは十分もかからなかった。
五人は持てる力を全て使い排除しようとするが、圧倒的破壊力を持つ砂の腕に蹂躙される。康太郎がコンクリートに叩き付けられ、少女の悲鳴が響いた後。闇が彼の視界を覆い尽くし、世界を覆った。
そして、状況は冒頭に帰る。
文字通り彼等は異世界に飛ばされてしまった。
- Re: 超能力者と少年の合奏曲(合作) ( No.2 )
- 日時: 2016/09/21 00:00
- 名前: 波坂&マグロの煮つけ (ID: hSqi2epP)
その少女は白い髪だった。
真っ白い、まるで雪のような長い髪はさんさんと降り注ぐ日光を浴びて光る。
プリーツスカートから伸びる細くも太くもない足は白いニーソックスに膝まで包まれている。
腕は半袖のブラウスとキャミソールを組み合わせた服からスラリと伸び、肌色の健康的な肌をあらわにしていた。肩には小さな肩掛けバックが背負われている。
そして、その少女ーーーー平野平子が呟いた。
「……早く涼みたいって訳ですよ」
愚痴気味に漏れたその言葉は、街の控えめな騒音と未だにしぶとく生き残り続けるセミの無遠慮な鳴き声によって誰の耳に入る訳でもなく、夏の青空に消えた。
一定のリズムで道に靴を合わせる平子。蒸し暑さを感じて左手で扇ぐが効果は最早ゼロに等しい。
汗の浮かんだ顔をハンカチで拭きながら平子は髪の心配をする。
平子の髪は真っ白で色素が殆どないので日光に対しての耐性が全く存在しないのだ。そのために髪には外出時は薬品を塗ったりしているのだが、平子はそれが汗で落ちないか心配していたのだ。
多少の汗では落ちないようになっているが、それでも平子は自分の髪を大切にしているので、余計な心配までしてしまうのだ。
「近くだからって徒歩で来たのが間違いだったかなー?」
そんな後悔をしつつもようやく目的のものが視界に映り込んだ。
噴水のある公園の、噴水の近くのベンチで並んで座っている二人に平子が声をかける。
「お、おはよう……」
「おはようございま……平さん!?大丈夫ですか!?」
平子の心底暑そうな様子に驚いたのは鋼城緋奈子だ。青紫の髪を長く伸ばした少女。身長は180cmと平子が少し見え上げる程には身長が高い。またその胸は豊満で、地味な色のドレスのような服の胸辺りを押し上げている。
凍った麦茶の入ったペットボトルを小さめのタオルで包んだそれを緋奈子が渡すと平子はすぐさまそれを首の裏に押し付けた。
「ははは〜平ちゃんも大変だね〜」
笑い事のようにニコニコと平子を見るのは古都紡美だ。癖のある真っ黒い髪はショートカットに切られ、大きくて丸い瞳と柔らかそうな頬の童顔の持ち主であり、身長は緋奈子とは対称的に150cmにも満たない。
笑い事じゃないんだけど……とため息を漏らす平子。体調の方は緋奈子のくれた凍った麦茶のペットボトルが効果抜群で回復の兆しを見せ始めていた。
- Re: 超能力者と少年の合奏曲(合作) ( No.3 )
- 日時: 2016/09/20 23:02
- 名前: 波坂 (ID: hSqi2epP)
「緋奈子ちゃ〜ん、膝枕してって訳だよ〜!」
駄目元で冗談っぽく平子が緋奈子に頼み込む。
すると緋奈子が顔をほんのり赤らめて、絞り出すように声を紡ぐ。
「ち、ちょっとだけなら……い、いいですよ?」
「え?」
平子としては冗談を返すように断られると思っていたのだが、緋奈子が羞恥を堪えながらもOKを出したという予想外の出来事に驚く。
ーーーー今の緋奈子ちゃん凄く可愛い。
頭の中で呟きながらも「じゃ、じゃあお言葉に甘えて……」とベンチに横になって緋奈子の膝に頭を乗せる平子。
ーーーーそんなに恥ずかしがられるとこっちまで恥ずかしいって訳だよ……。
顔を真っ赤にして羞恥心を隠そうともしない緋奈子を見て段々と羞恥に襲われる平子。それから目を背ける為にスカート越しに伝わる太股の柔らかさに全意識を集中させる。
人体特有のゴムの役目をする筋肉と柔軟性のあるしなやかな肉体の、特に柔らかい部分でもある太股は平子が頭を乗せると少しばかり沈み込む。その柔らかさを首筋と後頭部で感じる平子は全国のリア充がこぞって膝枕をしたがる理由が分かった気がした。
「とっても柔らかくて気持ちいい」
その柔らかく、ある意味凶器的なそれに集中し過ぎて声が出ていた事に、緋奈子が「ふぇっ!?」と声を出してからようやく気が付いた平子。焦りつつも必死に弁明しようと試みる。
「ち、違うって訳だよ!?た、ただ緋奈子ちゃんの太股が凄く柔らかくて気持ちいいなって訳で」
ーーーー最も、それは弁明と言うより内容はただの惚気話なのだが。
「ごめん、それ全然弁明になってないんだよね」
紡美の冷静なツッコミが入るが二人はもうそれどころではない。
「と、とにかく体調が良くなるまでじっとしてて下さい!平さん!」
「わ、分かったって訳だよ」
する側もされる側も顔が真っ赤に染まる膝枕で一番得をしたのは、近くで二人をニヤニヤと見ていた紡美だった。
〇
「あ、ちょっと忘れ物しちゃった」
平子がそうバックを漁って呟く。
そう、平子のバックからはあるものが無くなっていた。いつもはあるアレが。
「何を忘れたの?」
紡美が細いスティック菓子をポキッと噛み砕いて聞くと、平子はこう平然と答えた。
「スタンバトン」
その物騒な武器以外の用途が見当たらない単語を耳にした紡美が率直な意見を一言。
「女子高生がスタンバトンを持ち歩く世の中って結構物騒だと思うんだよね」
それを聞いた平子も確かにそうだとは思うが、今の社会は実際はかなり物騒である。
2045年、人類、と言うよりは日本国はある薬品の開発に成功した。
そう、超能力を手にする可能性を生み出す薬だ。
それの開発により日本は高度経済成長並の発展を遂げ、薬の摂取が義務化され、約90年程経過した現在2136年にはもはや超能力と超能力者は日常の一部へと溶け込んでいた。
勿論、全ての人間が超能力者な訳ではない。
能力が発現する際に多少の遺伝子情報が書き換えられることによって起こる髪の変色。平子も緋奈子も12歳辺りの頃は紡美と同じように真っ黒い髪だったのだ。
だが超能力が芽生えると同時にその髪は、平子は真っ白に、緋奈子は青紫色に変色した。
が、髪の変色が起こらない者。すなわちーーーー能力の芽生えない者達もいる。それらは総称として『黒髪』と呼ばれ、黒い髪は無能力の象徴でもあると言える。
能力を手に出来なかった者達はとにかく、能力を手にした者達は変わった。
それを善行に使う人間も悪行に使う人間も現れ、そのためか能力を手にして十年もしない少年少女が暴走することは多々あるのだ。
平子もそれの被害、というか巻き添えを食らった事もある。また路地裏に連れ込まれてナンパをされた事も少なくは無い。最も平子は護衛術と言う名の戦闘術を学んでいるので、今のところ殆ど返り討ちにしているのだが。
とは言え、平子の能力は実際は発電したり発熱する類のものではないので、武器が必要なのだ。
「じゃあ一緒に行きましょうか」
「え?いいの?」
「またその……膝枕しろと言われても……は、恥ずかしいですし……」
それを掘り返した事により再び平子と緋奈子の顔が羞恥に染まる。
それを見てただ一人ニヤニヤする紡美はとても幸せそうだった。
〇
「あれ?」
平子が唐突にその場で立ち止まった。
が、二人はキョトンとしていて平子に、どうしたのか?と問いたげだ。
「今、何かドサッって音がした気がするって訳だよ」
平子がそのまま音源が聞こえた方向に向かって小走りで行く。二人は戸惑いを覚えながらも平子に付いて行く。
平子が恐らく音源があるであろう路地裏を覗き込んだ。
まず目に映えたのは、仰向けで倒れている一人の少女だった。
現代社会の日常生活ではまずありえないであろう和服を着ていて、カラスの羽ように真っ黒で艶やかな綺麗な髪はポニーテールに括られている。その顔は可愛くもあり綺麗でもあるという誰もが認めるであろう美少女だった。
次に映えたのは、俯せ倒れている一人の、高校生辺りの少年だった。
平子達が見たことも無い恐らく制服であろうものを身に纏い、その長い体は細く、まさしく細長い印象である。顔は俯せになっていてよく分からない。
そして、もう一人の青年が目に映える。
ブラックスーツは少し薄汚れているが、長い銀髪と共に堅苦しい雰囲気を醸し出している。
「何かありましたか……ああ」
緋奈子が現在進行形で倒れている三人の謎の名前も知らない人物を見付ける。しかし対した驚きは見せない。
当たり前と言えば当たり前だ。この辺りでは喧嘩などは多く、路地裏で人が倒れているのは珍しくないのだ。
とは言え、平子は少し違和感を感じていた。
ーーーーなんでコンクリートの敷き詰められた路地裏で、砂なんて付いているんですかねぇ?
「とにかく見捨てるのも後味悪いし、起こそうか」
平子がその少女を、緋奈子が少年を。そして遅れてやってきた紡美が青年を起こさんと体を揺さぶって時折「起きてますかー?」と声をかける。
「ううん……」
「あ、目が覚めた」
平子が起こそうとしていた少女が真っ先に目を開けた。
少女がゆっくりと体を起こし、目を擦る。その動作を終えると凛とした雰囲気を纏い始めた少女。
「……ここは……それに貴女は……」
「私は平野平子。ここは路地裏」
〇
その後、少年と青年も目を覚ましたところで、状況を整理したいと銀髪の青年が提案したので今は状況を整理している。
「俺は三島大樹、三つの島に大きな樹で三島大樹。呼び名はご自由に」
身長の高いガリガリに痩せた少年は三島大樹と言う名前のようだ。髪の毛はのっぺりとしているが前髪だけはピョンと跳ねている。
「私の名はスサノオ。好きなようにお呼び下さい」
和服のポニーテールの美少女はスサノオ。という名前らしい。凛とした空気は一層彼女の魅力を立てている。
「僕はガウェイン。ところで君達、お礼にお茶でもいかがかな?」
ブラックスーツに長い銀髪の青年はガウェインと呼ぶらしい。そして出会った直後からナンパとはある意味凄い度胸である。
若干キメ顔のガウェインに、スサノオの蹴りが容赦なく見舞われた。
直後、鳴っちゃいけない音を伴ってガウェインが壁に向かって吹き飛び叩き付けられてコンクリートをひび割れさせた。その威力、最早少女が何の予備動作もなく出せる出力を遥かに超えていた。
「アレはただの変態なので気にしないように」
そのスサノオの言葉に早い復活を果たしたガウェインが堅苦しい雰囲気を纏いつつも紳士的(笑)な発言を挟む。
「ふっ。貴女はツンツンしていても魅力的だ。だが一つ訂正させて貰うとするなら、僕はただの変態ではないッ!変態紳士だッ!」
訂正、紳士的(笑)どころかただの変態発言であった。
「この……ど変態騎士!」
スサノオの手に青みのかかった刀が現れ、その刀から腕に赤色の鱗が纏わり付き、直後スサノオの腕が、ありえないような速度でガウェインを刀の柄で殴り付けた。
すっ飛んでいくガウェインはとてもシュールに思えた。壁に激突して爆発するような音とコンクリートが軽く砕ける音が路地裏に派手に響く。
そしてガウェインの無様な様を見て「ウェヘヘへへ」と奇怪な笑い声で笑う大樹。
目の前で繰り広げられる、本当の意味で世界観の違う光景に、三人は唖然とするしかなかった。
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