複雑・ファジー小説
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- きみのいろ
- 日時: 2016/09/20 23:25
- 名前: 日 (ID: d4ff9UDO)
「僕のこと、好きなんだよね?」
街頭に照らされた先輩の顔は、暗くてよく見えない。
でも光に鋭く反射する、その手に持った赤いものはなに?
_____
日です。
小説は初めてなので、
文章がおかしかったりするとは思いますが
よろしくお願いします。
展開早かったり遅かったり。
マイペース更新。
- Re: きみのいろ ( No.1 )
- 日時: 2016/09/20 23:23
- 名前: 日 (ID: d4ff9UDO)
「好きです、付き合ってください……!」
全力で臨んだ一世一代の告白。
……も、虚しく。
「ごめんね、僕彼女は作らない主義で。
でも嬉しかった。ありがとう」
彼、宮坂先輩は笑顔でそういった。
きっと、何人もの人に告白されてるんだと思う。
だからこんなにスマートに振られた。
でも、そこが好き。
スマートで動きに無駄がなくて、とにかく大人の男性っていう感じの、
艶っぽさが出ているところが。
「はあ……」
開始一分足らず。
藍田 乙葉、撃沈。
まあ、想定内っていうか。
予想はしてたよ。
私と先輩が付き合えるわけなんかないってことぐらい。
でも嬉しかった。
ありがとう、なんて言ってくれて。
それにあの笑顔、最高。
『乙葉、どうだった?』
夕美から入っていたメッセージに気づく。
撃沈。なんて言ったら、きっと夕美は大声で笑うだろう。
だから無理って言ったじゃん、って。
宮坂先輩はたぶん、全年齢からモテる人だと思う。
普段の行動から滲み出てくる優しさ。
甘いルックス。
この二つだけでももうイチコロなのに、さらに運動もできちゃうんだから。
そりゃ、私も無理だよ。
でもなんだか夕美の大声で笑う姿が頭に浮かんだから、
夕美のメッセージは既読無視してやった。
- Re: きみのいろ ( No.2 )
- 日時: 2016/09/22 10:44
- 名前: 日 (ID: d4ff9UDO)
「おーとは、あんた昨日既読無視したでしょ?」
「あ、バレてた?」
バレてた?じゃないわよ、と頬を膨らませながら夕美はお弁当箱を開けた。
相変わらず夕美のお弁当は毎回豪勢というか、さすがお金持ちっていう感じ。
私はいつもと変わらずコンビニパン。
朝から作る余裕もないし、親は朝早いから作ってはくれないし。
栄養が偏るからダメなんだけど。
「で、どうだったの?
……大体予想はつくけどさ」
「予想通りだよ。撃沈」
「やっぱり」
想像してたのと少し違った。
もっと、ざまあみやがれ!って感じに大笑いしてくるかと思ったのに。
なんか、気が抜ける。
それならいっそ笑ってくれれば私も少し気がまぎれる。
分かっていたとはいえ、失恋のショックは女子高生には大きいのだ。
「なーんかさ、悲しい」
「なにを悲しがってんのよ。
わかりきってたでしょ?
振られることぐらい」
「そうだけど……」
今まで先輩で埋められていた穴が、急に陥没したみたいな。
朝起きたら家が無くなってたくらいの衝撃がある。
だって、明日の朝起きたら家が無くなってるってわかってても、
本当になくなってたらびっくりするでしょ?
それと同じだよ。
「あ、乙葉、噂をすれば」
サンドイッチの袋を開けたとき、
「藍田さん」
入り口に立つ宮坂先輩が、確かに私の名前を呼んだ。
確かに、名前を呼んだから。
体が固まって、動かない。
それと同時に、たまごサンドが袋から勢いよく飛び出して、着地。
「み、みみみみみ、宮坂……先輩」
「藍田さんに話があって来たんだけど……たまごサンド、落ちてるよ?」
夕美が口元を押さえて必死に笑いを堪えているのが横目に映る。
宮坂先輩が来ることによって急に静かになった教室内に、私の椅子を引く音が響く。
「……はい」
- Re: きみのいろ ( No.3 )
- 日時: 2016/09/24 00:09
- 名前: 日 (ID: 9yNBfouf)
落ちたたまごサンドは袋に戻して、私は先輩と一緒に教室を出た。
来て、と言われるがままに先輩の後ろを歩く。
決して体育会系の人みたいに大きくはなくて線は細いけれど、しっかりとした体つき。
いつも丁寧にセットされた髪。
ワックスとか、必要ないくらい綺麗。
先輩は急にピタッと足を止めて、
「藍田さん、隣おいでよ」
笑った。
「あっ、はい……!」
この笑顔。
この笑顔は、ずるいよ。
私は振られたのにこんなに優しくしたら、勘違いしちゃうでしょ。
先輩は誰にでも優しいんだから。
私にも、当たり障りなく接してるだけ。
他意はないよ。
前を向くと先輩が横目に映るから、俯いて歩く。
「こんなところ連れてきちゃってごめんね。
みんなに聞かれたくない話だったから」
「いや、大丈夫、です……」
先輩は慣れた手つきで真っ暗な理科室の電気をつけると、端っこから椅子を引っ張り出した。
「座って」
促されるままに椅子に腰掛けた。
「そんな大したことじゃないんだけど」
「はい…」
先輩も椅子に座ると、顔をぐっと私に近づけた。
なに、この至近距離。
化粧崩れしてないかな、歯に青のりとかついてない?
先輩のアルパカみたいに長い睫毛が目に影を落とす。
「藍田さんって、僕のこと、好き?」
「……なっ、え……?」
先輩、それは単刀直入すぎませんか?
僕のこと、好き?って。
そんなの、昨日言ったとおりだよ。
まだ諦めきれてないよ、好きなまま。
口元を少し緩ませて、じっと私の目を見つめる宮坂先輩。
耐えきれなくて目をそらす。
「す……好きです……まだ」
きっと顔は真っ赤だろう。
それに、二回も告白するなんて。
しかも一回目は振られたのに。
恐る恐る先輩に目をやると、満面の笑みでこちらを見つめていた。
「そっか、ありがと」
「……はい…?」
先輩はしばらくの間私の顔を見つめて、
「じゃ、もどろっか」
と立ち上がった。
……え?
これだけ?
好きかどうか確認しただけなの?
「戻らないの?」
なかなか立ち上がらない私に、先輩は訊いた。
いや、戻るけど、でも。
好きかどうかなんていわずもがな、でしょ?
まだ好きか確認したの?
次の日に?
それをしてどういう意味があるの?
先輩は来た時と同じように慣れた手つきで電気を消すと、理科室のドアをゆっくり閉めた。
先輩は笑顔のままで。
どういう意味だったんだろう。
私の心のモヤモヤは消えないままだった。
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