複雑・ファジー小説

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The Ability World
日時: 2016/10/09 21:24
名前: 吾妻遊太 (ID: bD140njr)

初めましての方は初めまして。吾妻遊太(あずま-ゆうた)と申します。
小説の内容は「超能力」を軸としたものになっています。興味のない方は遠慮なくブラウザバックしてください('Д')。
誤字・脱字が多いかもしれませんが温かい目で見守って下さい(-_-)zzz。
投稿は『毎週月曜日』を予定しています(時と場合で更新回数は変わります)。



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※第1話修正しました。

登場人物

Episode01『Awake』
01-01「宿命」>>001
01-02「忘却」

01-01「宿命」 ( No.1 )
日時: 2016/10/09 21:23
名前: 吾妻遊太 (ID: bD140njr)




2020年 4月1日─────私立東平河高等学校 入学式



東京都世田谷区に位置する私立東平河高等学校。在校生徒およそ1500人、偏差値も高く、文部両道で有名の高校である。今日は東平河高校の入学式が行われていた。ホームルームを終え、下校する新入生めがけて、正門近くで待っていた部活動生が一気に動き始める。あちこちで新入生が足を止め、部活動生の必死の部活動アピールを聞き入る。
集まる新入生と部活動生を掻き分け、正門に出たのは日月透だった。
透も今日、東平河高校に入学したばかりの新入生である。透が腕時計を見ると、時刻は12時を過ぎようとしていた。

「あ、いたいた!行くの早いよー!」

「どこ行ってたの?」

「いやぁー勧誘に捕まっちゃって、入部届けもらっちゃった」

透の下に駆け寄ってきたのは、透の幼馴染である衛藤あゆみだった。透とあゆみは幼い頃から近所付き合いがあり、幼稚園から高校まで同じところだった。

「何の部活?」

「生徒会執行部」

「へぇー、すごいね」

「まったく興味なさそうだね。どうせ透は帰宅部でしょ」

「正解」

透の素っ気ない返答に、あゆみは鞄で透のお尻を叩く。
2人とっては何気ない会話で、傍から見れば付き合っていてもおかしくないレベルの仲の良さだ。

「あ、そういえば昼御飯さ、家に帰って家族でお寿司食べに行くんだけど、一緒に行かない?」

「いや、いいよ」

「いいじゃん。別にお母さんもお父さんも気にしないって、一緒に食べようよ」

あゆみにしつこく誘われるが、透は断った。
何度も誘うのに何度も断る透にイラついたのか、あゆみはまた鞄で透のお尻を叩いた。
あゆみが足早に行ってしまう。透はため息を吐きながら、そんなあゆみの後を追う。
透の家庭環境は、周囲と比べると色々と問題を抱えていた。
まず一つは、母親がいないこと。透が幼い頃に交通事故で亡くなっている。今現在は透、父・光馬、兄・秀彦の3人で暮らしている。しかし、光馬と秀彦は仕事が多忙なため、滅多に家に帰らない。光馬は、最近世界進出を果たした電気・精密機器を取り扱う大手企業ミラーズコーポレーション東京支部の支部長を務める。秀彦は警視庁捜査一課の刑事であり、若いながら数多くの難事件解決に関わり、上層部に期待されている
警察官である。
そんな優秀な父と兄は、家族を顧みることはなかった。母の死も、その後の透のケアも。透は母の死を一人で乗り越えた。そのことを、幼馴染のあゆみだけが知っていた。だからあゆみは、そんな人生を辿ってきた透をなるべく一人にしたくはなかった。
しかし、透は引っ込み思案な性格で寡黙なため、誘っても中々乗らない。

「あゆみ、待ってよ」

「待たない」

「断ったぐらいで怒るなよ」

「だって、透のこと思って誘ったのにさ、変な遠慮とかいらないから」

「でもさ、高校の入学式って人生一度だけじゃん。家族だけで祝うべきだよ」

「……………」

あゆみは何も言い返せなかった。
あゆみに追いついた透は、あゆみと並んで歩く。透の顔を、あゆみがチラリとみる。
透の横顔は、あゆみにはとても寂しく見えた。

「透。最近は、お父さんと秀彦さん、家に帰ってるの?」

「ここ2ヶ月は見てないね。まぁ俺が寝た頃に一回着替えに帰ってきて、朝早くに家を出てるってのが多い」

「すれ違いなんだね」

「そうそう、すれ違い通信」

透が重い空気を変えようとボケるが、あゆみは一切笑わなかった。むしろ、透を睨み付ける。

「お父さんはともかく、秀彦さんも変わっちゃったね。小さい頃は3人で遊んでた覚えがあるなー」

「そうだっけ?」

「覚えてないの?よく3人で遊んでたじゃん!!近くの公園でかくれんぼしたり、私のわがままでおままごともしてたよね。確か、透はペットで犬の役してたよね」

「はぁ?そんなことしてないよ」

「したよー!もう忘れないでよ!!」

あゆみが透の頬っぺたをつまむ。頬っぺたをつまみながら、透の顔を右へ左へ動かす。

「痛い」

「忘れた方が悪い」

あゆみは透の頬っぺたから手を離す。透は少し赤くなった頬っぺたを擦る。
2人が大通りを歩いていると、少し前を歩いていたあゆみが足を止めた。電化製品を扱うお店のショーウィンドウに置かれたテレビを見ていた。あゆみが見ていたのは、報道番組だった。内容は、最近東京都内で多発している連続殺人事件だった。司会者のアナウンサーと、若者の間で人気の芸能人、警察関係者が出ている。

『現在、被害者は15名。被害者全員が鋭利なモノで体全体を傷つけられ殺されるという非常に残酷な事件です』

『犯人は男か女かも分からないんでしょ?刑事さん、監視カメラとかにも犯人は映ってないの?』


「あれ?これ、秀彦さんじゃない?」


あゆみの言葉で、透は画面に目を凝らす。確かに、テレビに映っているのは透の兄の秀彦だった。

『犯人は監視カメラのないところで犯行を繰り返しています。犯行時刻も犯行現場も規則性は無く、今まで15名の犠牲者が出ていますが、これまで目撃証言は一切ありません。この段階で犯人を見つけるのは、かなり難しいです。しかし、捜査の手を緩める気は一切ありません』

『ははっ、でも逮捕しないと意味ないよね』

『えー白馬君、言葉気を付けてね』

司会者のアナウンサーが注意をする。スタジオが笑いに包まれるが、秀彦の顔は笑っていなかった。そのテレビを見ている透とあゆみも笑っていなかった。秀彦は今、巷で話題の連続殺人鬼の事件を担当している。そのことをテレビで知る透とあゆみ。

「透は、秀彦さんがこの事件を担当してるの知ってた?」

「知らないよ。最後に喋ったの何か月前だと思ってんの?」

透はため息を吐きながら、歩き始める。あゆみが後を追う。住宅街に入り、2人の自宅に近づいていた。
平日の昼間だが、住宅街は閑散としていた。
やがて、交差点にぶつかり、2人は顔を見合わせる。

「本当に来ないの?」

「誘ってくれたのはすごくうれしいけど、また今度にするよ」

「そう。それならまた誘うね」

「ありがとう」

「じゃあね、また明日」

透とあゆみは手を振り、互いに自宅を目指して別れた。





***** ***** ***** ***** *****





透はふと、昔のことを思い出そうとする。
あゆみの言っていた透、秀彦、あゆみの3人で公園でかくれんぼやおままごとをして遊んだ思い出。
透には一切覚えがなかった。あゆみの勘違いか何かだろうか、それとも完全に忘れてしまったのか。
透はそんなことを考えながら、角を曲がる。

「え?」

透は目の前に広がる光景に、唖然とした。
平日の昼間。道に倒れている血まみれの女性。体のあちこちが切られ、おびただしい量の血がアスファルトの上に広がっていた。女性の腹部には複数のナイフが突き刺さっているが、微かに体が動いていた。女性の目玉だけが、透の方を見る。
透は女性と目が合った。

「た、たすけ………」

「おいおい嘘だろ」

女性の横に立つ、およそ180cmほどの高身長の黒ずくめの若い男性。透の頭に、先ほど店先で見たテレビを思い出していた。


─────現在、被害者は15名。被害者全員が鋭利なモノで体全体を傷つけられ殺されるという非常に残酷な事件です。


まさに、その犯行現場だった。透はズボンのポケットに入れていた携帯電話に手を伸ばそうとした。
しかし、動きは断然、犯人の方が早かった。
犯人の片手は首を仕留め、そのまま電柱に押し付けられると、持ち上げられる。透の首を掴む手の力は強く、透は息ができなかった。必死にもがくがビクともせず、犯人の男も微動だにしなかった。

「止むを得ないか。見られたからにはしょうがない」

男はそういうと、もう一方の手の平を透に向ける。すると、手の平からまるで植物のようにナイフが生えた。透は目を見開き、驚く。男は生えたナイフを握りしめ、不気味に笑った。


「すごいだろ、俺の超能力」


そういうと、透の首を掴む手を離す。
そして握りしめたナイフを、何の躊躇いもなく、透の首に叩きつけた。


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