複雑・ファジー小説
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- 夏の終わる頃に
- 日時: 2016/10/14 07:39
- 名前: 零二 (ID: uSNXuk4N)
図書室に落ちていた一枚の漫画の原稿。
たったその一枚の原稿が、二人の幼い頃の絆をより戻すこととなる。
夏の空の下で起こる二人の運命とは…
登場人物-順次更新
主人公
希朴羅 綾乃
きばくら あやの
高校一年
学校には内緒で漫画家として活動中
祥平の幼馴染
綾乃の幼馴染
大城 祥平
おおき しょうへい
高校二年
野球部所属、ファーストで常にスタメンは確定
綾乃の幼稚園からの幼馴染
祥平の一番仲のいい友達
御永 優星
おなが ゆうせい
高校二年、祥平と同クラス
野球部所属、ポジションはショート
祥平と同じくほぼスタメン確定
では…始まりますよ?
- Re: 夏の終わる頃に ( No.1 )
- 日時: 2016/10/14 07:38
- 名前: 零二 (ID: uSNXuk4N)
序.落し物
「もういっぽーん!ラストー!」
外から雄叫びのような野球部の声が飛んできた
私は本棚から目を離して、図書室の窓から外を覗く
声はあまり聞こえないけど、サッカー部もグラウンドの左隅で走り回っている
そろそろ夏もそろそろ本番に差し掛かった空には夕焼けが広がっていて、時計はもう直ぐ18時半を指す頃だ
机の上に積み上げた本を抱き上げ、カバンを持って教室を出ようとした
一瞬、教室の中でか白い何かが舞ったように見えたが、気のせいだと私はそのまま教室を出た
…教室を舞うその一枚の紙切れから、運命が狂うとも知らずに。
1.見知らぬ、誰か
「えー、祥平、今日も図書室行くのかよ。せっかく部活ないのに」
優星が不機嫌そうな顔で、おにぎりをムシャムシャと頬張りながら文句をつけてきた。
俺は心の中で、またこいつシャケのおにぎり食ってる。とどうでもいいことを考えながら、窓の外を眺める。
「今日もって、そんなに毎日は行ってないだろ」
すると、額にシワを寄せまくったブッサイクな顔を前に突き出しながら二度目の文句をつけてくる。
「週に二回は行ってんじゃんか!おまけに部活がない日に一緒に帰ったことなんてねえだろ?!」
まずさ、食べ物口に入れたまま喋るのやめろって。
なんで図書室に行くことをそこまでして拒むのか理解できないんだけど。ましてや、高校生にもなって一緒に帰るなんて精神年齢何歳なんだ?お前。俺は内心文句をつけまくりながらも、ただ流すように返事を返す。
「たったの二回じゃん。別に自由な時間をどう使うかなんて人それぞれなんだから、どう過ごしたっていいじゃねえかよ。お前だって自分の生活に文句つけられたら嫌だろ」
「そりゃそうだけどさー」
優星が、チッと舌打ちして机に顔を伏せてしまった。
ったく。こいつとは中学からの付き合いだが、何年経とうと本当に全く変わっていない。図々しく文句つけまくってくるところも、そうやって直ぐ拗ねるところも。でも、なんだかんだで一緒にいてくれて知らないうちに仲良くなって。今じゃ一番の友達で、いいチームメイトだ。
そう思うと、俺の前でぐでっとしている優星に無性に伝えたくなってきた。
「…ありがと」
「はー?いきなりなんだよお前」
「なんでもないさ。気にすんな」
「変なやつだな」
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、女子の笑い声と男子のどこからやってくるのかわからない物音がピタッと止まった。
優星も前を向いてごそごそと授業の支度をしている。
俺は机の中から教材を探り出し机の上に置くと、再び窓の外に目を向けた。
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