複雑・ファジー小説

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worthless
日時: 2016/10/28 12:16
名前: Orfevre ◆xf1U3qaRb2 (ID: vyWtoaEp)

 この作品はたまには小説を書きたいが募集とか大がかりなものではなく、息抜き程度に気軽に書く方針の小規模作品です。

 というより、普段は3人称なのでたまには昔のような1人称を書きたくて用意したようなものです。

 それでも、あなたの心を暖めていられたら……。

Re: worthless ( No.1 )
日時: 2016/10/28 13:54
名前: Orfevre ◆xf1U3qaRb2 (ID: vyWtoaEp)


 13日の金曜日というのは世間的には不吉らしい。理由というのはよくわからないが、とにかく不吉らしい。今日は建校記念日で休みということもあり、暇をもて余していた。

--この前、ビニール傘盗まれたんですよ…………
 テレビの向こうでは芸能人が傘についてのマナーで苦言を呈し、サクラはそれに対して笑っている。

「アンタ、暇ならちょっとコンビニに行ってきてくれない?」
 そんな昼のバラエティ番組を見ていると、母親がオレにお使いを頼んでくる。結果的にお駄賃であっさりと釣られ、行かされることになった。

 外は雨が降りそうな空模様だ。オレはビニール傘を持っていくことにした。
「いらっしゃいませ」
 コンビニにたどり着くと、他の人に間違われないようにビニール傘を一番端へ差してから入店する。それから、母親に頼まれていた要件を済まし、本売り場へ向かった。

 オレはその中からマンガ雑誌を手に取り、続きの気になっている連載もののページを探す。
--……なんだ、今週は休載か。雨も降り始めてたみたいだし、さっさと帰ろう。
 そう思ってオレはコンビニの外に出る。すると、橋に指しておいた傘を抜こうとしている少女がいた。その人のもとに駆け寄りオレは声をかける。

「コラ!それはオレの傘だ」
 間違われないようにわざと端においておいたのだから、その傘は間違いなくオレのものなのだ。少女はオレを見てこういうのだ。

「あなたのものである証拠は?」
 悪びれることもなく、オレのものである証拠を聞かれる。オレは差した場所について彼女に説明する。
「他の人が抜いたあとに差されたものかもしれないじゃない」
 全く反省する気がないその女の子に怒りを覚えながらも、少女は続けた。

「ビニール傘の所有権なんて、どうやって証明するのよ」

 彼女はそういいながら、濡れた肩を震わせる。明らかにここにくる前に雨に降られたものだろう。動かぬ証拠である。
 しかし、このまま濡れて帰れというのも良心が痛む。たとえこの子がオレの傘を盗もうとしたとはいえ、傘がない人間にそのまま歩けというのは気が引けた。

「入っていくか?」
「さっきまで泥棒扱いして今度はナンパなの」
 泥棒は事実だろ、そう突っ込むのも野暮だから、傘がないなら入れてやると伝える。少女は少し悩みながらも頷いた。

「相合い傘、はじめてなのに」
 オレだってはじめてだし、ましてや相手は泥棒未遂、気遣いの1つもないのか。そんなことも言わさず、道を案内される。

「ここでいいよ、そこのマンションだから」
 少女はそう言って、傘から出ようとするが、オレは彼女を引き止める。
「家まであげてもらおうか、お前の親にこのことを話す」
「え、ちょっと待ってよ!」
「待たないね、家までついていく!」
 はっきり言ってこいつの親に会いたいとは一ミクロも思わないが、こいつのことは話しておかないといけないと思うのだ。

「悪かった、悪かったって」
「今、認めたよな。お前、自分が盗みを働こうとしたの」
 少女の表情が変わる。その表情はすべてに絶望したように光を失う。ようやく自分の罪を認めたし、今回は許してやることにした。
「全く、もう二度とやるんじゃないぞ」
 親に知られることがないと分かってから彼女の表情に光が戻り、彼女は頷いた。
「ありがとう。ここまで送ってくれて」
 正直、意外だった。こいつがお礼を言うなんて思いもしなかったのだ。 
「私は栗谷奏乃くりやそうの、あなたは?」
速水裕はやみゆたかだ。じゃあな」
 そう言って俺たちは別れた。

 ……不吉というよりは嵐のような1日が過ぎていった。


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