複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

姫の罪と代償
日時: 2016/11/05 22:41
名前: ゆた (ID: XcEXsBGd)

これは、とある魔法の国の姫ととある英雄の冒険譚。




× × × ×

第1章 過去

Re: 姫と英雄 ( No.1 )
日時: 2016/11/03 17:08
名前: ゆた (ID: XcEXsBGd)


「アリア様だめですよっ!」
「いいの!ソフィは黙ってて!」
とある城の一角で、窓に足をかけた少女、アリアは侍女ソフィに向けて口を尖らせる。
アラルガンド国、その大きな国の中心部の城。
アリア=アラルガンド、この国の姫、または王女だ。
金色の髪を後ろで纏め、胸元にリボンをあしらった淡い青のローブを羽織っている。期待したような栗色の瞳は窓の外のレンガの家々がたつ街を見つめている。
「そんなことしてたら、ディル様にお叱りを受けてしまいますっ……!」
「兄様には見つからなきゃいいんだから大丈夫!」
窓の鍵に結んであるロープはアリアの部屋から城の庭に垂れていて、彼女にとっては城から抜け出す唯一の手段。城の門には厳つい顔の門番がいる。庭の塀には小さな穴があり、そこから抜け出せるのだ。
部屋には高価そうな家具がずらりと並んでいて、綺麗に整えられている。広いベッドには桃色のドレスが脱ぎ捨ててあり、忘れられているよう。
もう片方の足も外に出そうとして手を窓に掛けたとき、部屋に、ノックの音が響く。

「アリア」
「え…あ、ディル兄さま………」
アリアは引きつった笑いを浮かべ扉の兄の方を見る。
「______アリア」
「ごめんなさいいいっ!!」
すぐに窓から足をひき、バタンッと閉める。
作り笑いをして、アリアはその場に正座をした。そっと上目でディルの表情を伺うと、ディルは眉を寄せて考え込んでいるようだった。
そして目を伏せたディルはその額に手をやり、ため息をひとつ。
「アリア、……その好奇心旺盛な態度は認めても、さすがにその行為は許せないぞ」
「……」
その小柄な身体をさらに縮めて、じっと俯くアリア。でも少女は食い下がる。
「……だって兄様、私最近街に行ってないのよ。お父様が私をいかせてくれないから……」
さっきまでの威勢は何処へやら、アリアは小さく呟く。
「お願いだからちゃんとしてくれ……お前には他国との同盟のためにも国務について学んでもらいたいんだ。分かっているのか。国の未来もかかっているんだぞ。父さんのためだとも思ってしっかりしてくれ……」
「はい……兄様」
しゅんとしたアリアを置いて、ディルは続ける。
「それと、魔法の勉強も怠るな。我が一族にとって基本的にはそれが最優先なのだから」
その兄の言葉には応えず、アリアはぎゅっと唇をむすぶ。
「ソフィ、妹を頼む」
「はい、ディル様」
頷いたソフィ。
無言で去っていくディルにお辞儀をして、今まで蚊帳の外だった彼女は心配気に主の顔を覗きこんだ。



______魔法が、怖い。


魔法をそう捉えているアリアの気持ちには気づかずに。

Re: 姫と英雄 ( No.2 )
日時: 2016/11/05 17:10
名前: ゆた (ID: XcEXsBGd)

「ソフィ……ディル兄様におこられちゃった」
ぺたんと床に座り込んだまま、アリアはぽつり呟く。
伏せた目と固く結んだ唇は普段のアリアとは別人のようだ。
いつもの愛らしい様子がみえないと、ソフィは対応に困ってしまう。
「アリア様……」
幼い頃からアリアと一緒に過ごしてきたソフィはアリアの感情と比例した感情を持つようになっていた。
哀しげな彼女に何と言葉をかければよいものか。頭を悩ませる。
____アリアの兄、ディル=アラルガンド。彼は国で国王である彼女らの父親に次ぐ魔法の腕前の持ち主だ。幼少期より父の稽古に励んでおり、しかも長男。今では12人いる王子、王女の中において、もっとも国王後継者に近いといわれている。逆に末の子であるアリアはそれからもっとも遠い存在である。そして1人の王族に使用人は3人以上つくのが当たり前のアラルガンド家だが、アリアの天真爛漫な振る舞いにより、今ではソフィと……もうひとりのみ。その振る舞いから、さっきのように、兄や姉に叱られること……または国王直々に叱られることも少なくはない。
ただ今回の件は少し違う。
ディルはアリアにとって憧れの存在。
そのため、彼女の心境が心配だ。
しかし……アリアにも非はある。
なにせ、無断で出かけようとしているのだ。
しかも、庭から。それについて口にだしてみようか……。
それでも、主を傷つける言葉はいっては____

「なーんてっ!」

てへっと言わんばかりの勢い。
いきなり立ち上がった衝動でソフィの白い髪がかぜになびく。
そしてアリアは先ほどのことが嘘だったような、意地悪な表情まで見せる。
「ソフィったら私のこと信じすぎ。ちょっとは疑ってもいいんだよ」
「え……は?」
「私がこんなことで傷つく姫じゃないってわかってるでしょ?何年一緒にいると思ってるの!」
______否、嘘だったのだ。
藍色の目をぱちくりさせるソフィの前で手を上下に振って見せるアリア。
「____っあ__ありあさまああっ!」
ソフィは顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。
「あはっソフィまっかだよ!」
それを後ろ目に、アリアは窓の外へ足を踏み出す。
手袋を
ロープを手にひっかけ、おちないようにしっかり絡ませる。
「ソフィっ行ってくるね!」
「駄目です!!!」
ソフィが窓に駆け寄ってくるのが見えたが、見ていないふりをした。
「アリアさまあっ」
窓から身を乗り出すソフィは今にも落ちていまいそう。
「日が暮れるまでには帰るからっ」
そう叫ぶと、アリアは視線をロープに定める。
____ゆっくりしてると捕まる。
そう考えたアリアは手を緩めにして、
「ぎゃあああああああっ」
______あ、死ぬ。
そんなことを思った。

Re: 姫の罪と代償 ( No.3 )
日時: 2016/11/06 22:03
名前: 沖田 ゆた (ID: XcEXsBGd)


「ゔゔあああ」
意識を半分くらい失いながら落下した先は、

「アリアさ____ぶふゔゔぅっ」

アリア付きの使用人の2人目、ルイのお腹だった。
たまたま庭仕事をしていたルイは、アリアが空から降ってくるのを見て飛び出してきたらしい。
「いたあ……やっちゃった……」
「あ、ありあさま、はやくどい、て」
「あー!ルイ!」
慌ててルイのお腹から出て、ルイに手を出す。
「あ、ありがとう、ございます」
腰を痛そうにさすりながら、ゆっくりとルイは立ち上がる。
執事服は土で汚れ、ぼろぼろになっていた。
「ごめんごめん、大丈夫?」
「ああ、はい」
擦りむいたのか、ルイの白い腕や足はところどころ血が滲んでいた。
男なのに、女の子みたいだ。
そうアリアは思っていたが、自分を抱き留めようとするとは。
______ふと、周りを見渡せば。

「もっ……もんばんのおじさんっ」

______厳ついおじさんがこちらへはしってくる。こちらをみて、怒ったようなかおをしている。
捕まったら何をされるのか分からないし、父に報告なんてされたら……やばい。

「るいっいってくるから!」

「えっ! アリアさま!?」

ルイの手を離して、逃げるように足を運ぶ。柵の小さな穴はアリア1人入れるくらい。

____ここから、私の冒険は始まるんだ。


何が、待ってるんだろう。


Page:1



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。