複雑・ファジー小説

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暗黒のリベリオー
日時: 2016/12/20 22:54
名前: 零二 (ID: G/182c4y)

一つひとつの章がとてつもなく短いですが、どうかご了承を。

・登場人物(随時追加)

丹慈エイリン(あかしえいりん)
街で一番大きな屋敷の当主の娘。幸貞とは幼馴染。

嗣智之幸貞(つぐのりのゆきさだ)
エイリンの側付き兼幼馴染。

湊(みなと)
エイリンを黒霊から助けた除霊師(サルバドル)。

白零(はくれい)兄
黒零(こくれい)妹
除霊師の双子。湊と同じサルバドル。

秋冥(しゅうめい)
黒霊を生み出している本人。インバシオン。

西園寺シエラ(さいおんじしえら)
秋冥のご近所さん。
晩御飯の調達が日課。

Re: 暗黒のリベリオー ( No.1 )
日時: 2016/11/22 06:33
名前: 零二 (ID: MYmyvGlS)

-序-

「貴様っ、いい加減に!」
「てめえ、どこまで追いかけてきても同じだぜ?」

彼の右手から発せられている赤黒い光がどんどん俺から離れていく。
速い…追いつけない…!

「今日こそは仕留めさせてもらう!」
「いっつもそう言って失敗じゃねえか!そろそろ諦めろって」

びゅっ、っとガラスの破片のような物が俺の頬をかすめ、切り傷を作った。

「くっ…」
「当たったかあ?それ結構痛えだろ」
「こんなもの俺にはっ!」
「うるせえんだよ!いい加減落ちろって!!」

目の前に黒い霧が広がった。いつもの光景だ…

「いい加減こんなものには…」

呪文と唱えようとした瞬間、ふっと右手から光が消えた。と同時に、宙に浮いていた体も降下しはじめる。

「しまっ...!」
「ざまぁ」

そう言うと、赤黒い光は夜空に吸い込まれていった。

どうしようもなくなった俺は、体を空気に預けそっと目を閉じた。

Re: 暗黒のリベリオー ( No.2 )
日時: 2016/11/22 06:34
名前: 零二 (ID: MYmyvGlS)

【消えない記憶】

ベッドに横になりながら、幾千もの星が輝く星を見上げて、ふと思い出した。

私は見た、あの時確かに見た。

赤黒く光を放つ何かを青白く輝きを放つ何かが、月明かりがまぶしい夜に天を駆け抜けていったのを。

私自身あまり記憶力がいいわけじゃなく、小さい頃の思い出とかは全然と言っていいほど覚えていない。

でもこの記憶だけは本当にはっきりと覚えている。

不思議なものだ。

今宵も月明かりが綺麗で、まるで夜空が月に吸い込まれてしまいそうなほど輝いている。

外の景色を無感情に眺めながら、眠りについた。

Re: 暗黒のリベリオー ( No.3 )
日時: 2016/11/22 06:35
名前: 零二 (ID: MYmyvGlS)

【幼馴染】

「おはようございます、エイリン様」
「おはよう、幸貞。あなた、何度言えばわかるの。いい加減その堅苦しい接し方はやめてと言ってるでしょ」
「ん…これは立場上守らざるを得ないのです」
「立場など関係ないと言ったはずよ。私たちのどこに上下関係があるっていうの」

幸貞は、うぅーんと唸りながら困った顔をして頭の後ろをぽりぽりとかき始めた。
彼とは幼なじみなのだが、私は屋敷の当主の娘で幸貞は私の側付きとして配置されている、ということで彼は私が立場上上だと思っているらしい。私は普通に、家族とか友達とかみたいに接して欲しいのだけど…

「まあいいわ。そんなことよりあんた、また寝癖直してないでしょ」
「え、直しましたよ!」
「いいえ、直ってません」

胸元からすっと手鏡を取り出し、幸貞に向かって突き出した。

「げっ、本当だ…直ってない…」
「もう、早く直しに行きなさい!こんな恥ずかしいところ私以外に見せるんじゃないわよ!」

だらしないんだから、とぶつくさ言いながら幸貞の背中をバシッと叩く。
しょんぼりしながら遠ざかっていく彼の背中がいつもより少し小さく見えて、クスッと笑ってしまった。

彼といると静寂と言う言葉のひとかけらも見失ってしまう。
でも、本当はそんな彼との時間が楽しくてしょうがない。

不思議と彼の後を追いかけそうになったけど、用事を思い出して彼に背を向けながら自室に戻った。

Re: 暗黒のリベリオー ( No.4 )
日時: 2016/11/23 05:17
名前: 零二 (ID: MYmyvGlS)

【影】
用事を思い出したと言っても、そう大した用事でもない。
ただ今朝送られてきた手紙とメッセージ、ニュースをチェックするだけのこと。毎朝の習慣のひとつでもある。
テレビをつけてニュースへとチャンネルを切り替え、机の上に並べられた封筒を一つづつ手に取り中身をチェックしていく。
重要な書類もあれば、ただ単に個人宛の手紙までさまざまだ。
一通り見終わって、最後に青色の封筒を手に取り開封した瞬間、黒い霧のようなものが手の周りを覆った。

「え、ちょ、なにこれ?!」

霧はどんどん広がり、あっという間に自分の体を覆い尽くすまでの大きさまで広がってしまった。
目の前が黒く染まっていく。
私は頭の中がパニックになり、振り払おうとひたすら手足をじたばたさせた。しかし、まったく薄くなる気配を見せない。

「ひ、ひいいい!!!」

黒い霧は部屋中に充満し、部屋の外まで走って逃げる。が、霧は何かを形取りながら追いかけてくるではないか。
逃げ場を失った私は廊下にへたりと座り込んでしまった。
だんだんと形がはっきりしていく。霧が形取っていたもの、それは人間「のようなもの」だった。
肩幅が極端に広く、背中には枝のようなものが伸び、2mほど上から見上げてくる赤い目に恐怖を覚える。
抱きつかれるような形で全身が霧に覆われてしまい、途端に息が苦しくなる。

「ぐっ、ぐはっ…だれ、か…誰かぁっ!うっ!」

必死にもがき続けるが、黒い霧はどんどん私を飲み込んでいく。
息がほとんど吸えずに意識も途切れかけた瞬間、ぼんやりと遠くの方から青白い光が近づいてくるのが見えた。

「はああ!間に合え…間に合えぇぇ!!」

誰…?

青白い光は上空からそのまま私に向かって降下してくる。

味方…?

「くっ…この化け物め!」

降ってきた光が龍のような形に変形し、雄叫びをあげながら首に噛み付いた。
そのまま首を食いちぎり、背中の枝、腕と他の部分も次々に食いちぎっていく。

「嘆きの闇よ…」

その一言を合図に、黒い霧は白い光へと変わり、蒸発するように天へと散った。
体を覆っていた霧はあっという間になくなってしまい、龍の形をしていた光は爆散して光のかけらを撒き散らしながら消える。
すると、龍を操っていた男の人が走り寄ってきた。

「大丈夫か?」
「え、ええ…」
げほっ
「よく耐えたな。黒霊など、普通の人間がとりつかれたら1分もしないうちに意識を失い、時によっては死に至るんだが…」
「黒霊って?」
「今の黒い霧のことだ」
彼はじっと私の瞳を見つめている。
「…なに?」
「透き通るような青い瞳に、あれだけの時間耐えるだけの抵抗力……君は…」
「?」
「いや、なんでもない。気にしないでくれ」
「変な人ね」
彼は誤魔化すように軽く咳払いをした。
「そんなことより、これから気をつけろ。君ほどの人物なら、また狙われてもおかしくはない」
「私のこと知ってるの?」
「当たり前だ。この街で一番でかい屋敷の娘だぞ?知らないやつのほうがおかしい」
「そんなに有名なのね、私。でも、何が起こったの?なんで私なの?」
「君は、今は知らない方がいい」
「…」
「まあ、そんなところだ。じゃあ私はこれで失礼する」

そう言うと彼はふわりと宙に浮き、こっちに向かって手を振った。
すると再び彼の右手に青白い光が灯った。
それを見て、私はふと昔の記憶を思い出した。

「ねえ、待って!」
「ん?なんだ?」
「あなたの名前は?」
「名前?名乗るほどでもないが…君が望むなら。俺は、湊だ!」
「ありがとう、湊!助けてくれてありがとう!私は…」
「エイリン、だろ?」
「なんで知ってるの?!」
「言っただろ?君は有名だ、って」
「湊…」
「じゃあな、二度と会わないことを願うが、もし会ったらその時には君に真実を伝えよう!」
「うん、わかった!」
大きく頷いて返事をすると、なにやら小さな飾りが彼の手から降ってきた。
「あとそれ、お守りだ。もう二度と霊にとりつかれないように!」
ふわりと手の中に収まった小さな水晶がついた首飾りを、そっと首にかけた。
「何から何まで、本当にありがとう!じゃあね!」
「ああ」

そう言って湊はものすごいスピードで青空へと上っていった。

私は首飾りの水晶を、そっと握り締めた。

Re: 暗黒のリベリオー ( No.5 )
日時: 2016/11/29 06:03
名前: 零二 (ID: MYmyvGlS)

【日常】

部屋に戻って約5分後、幸貞が朝食の迎えに来た。

「エイリン様、朝食いきませんか?」
ついさっき私の身に起こったことなど何も知らない幸貞は、あ、寝癖直しました!などと付け加えながらへらっと話しかけてくる。
「いいけど。あなた、朝食ぐらいいい加減一人で行こうと思わないの?」
「え…別に思ったこと無いですけど。もしかして、嫌ですか?」
「正直、最近は一人で食べたいとよく思うわ」
「そんなぁ」
「まあいいけど。いきましょうか」
「はい…」
ぐすん
まったく。幸貞はずっと私にべっとりで、いつになっても自立という言葉を覚えそうなくて不安で仕方ない。
「たかが朝食のことだけで落ち込むこと無いでしょう」
「そうですよね」
しょぼん
「もう、いい加減にしなさいよね!朝なんだからもっとビシッとして!いつもの街中でのデカイ態度はどこに行ったの」
「僕が元気が無いと、エイリン様も元気が無くなっちゃいますか?」
はあ。全くあきれてしまう。
でも、都合のいいことだけ言っておけばすぐに機嫌が直るので、まあ楽といえば楽かな。
「そう、わかってるじゃないの。あんたが元気ないと私まで気分が落ち込むから、さっさと元気出しなさい」
「やっぱり、そうですよね!俺が元気出さないとですね!」
ほら、ね?
馬鹿正直に感情を晒すのもほどほどにしておくべきだと思う。まあそれが彼のチャームポイントでもあるのだけどね。
でも、一体なぜ彼は「俺」と「僕」をごちゃごちゃに使うのかが理解できない。
…よく考えれば、彼に対しての疑問やらなんやらが私の中には溜まりまくってるし。
いつか、疑問も直して欲しいところも全部ぶつけてやるんだから。
「エイリン様?」
もー!この子、私に考え事をする暇すら与えてくれない!
「はいはい、なんもないわ」
「なら、お腹減ったんで早く行きましょ!」
「お腹減ったなら先に行けばいいじゃないの」
「えー!」
「うるさい!声が無駄に大きい」

こんなくだらないやり取りをしながらやっと部屋までたどり着き、幸貞の今日私をどこに連れ回したいかという話を聞き流しながら朝食を食べ終えた。

食後に、うっすらと湯気の立つ紅茶を口にしながら、彼が訪ねてくる。
「そういえば、昨日までそんな綺麗な首飾りしてましたっけ?」
「ああ、これ?お守りよ。もらったの」
「誰から?」
「…私の守り神」
「…はい?」
さすがに知らない人とも言えないし、あの時の状況を全く知らない幸貞に湊のことを言うにしても、説明のしようがない。
守り神、この瞬間から私は彼のことをそう呼ぶことにした。
「寝ぼけてるんですか?」
「寝ぼけてません」
「だってエイリン様を守るのは俺の仕事じゃ」
「誰だっていいでしょ。私を守ってくれた命の恩人なんだから」
「誰が…俺からエイリン様を…」
いい加減にして欲しかった。
今までのこともあるが、湊のことをこれ以上なんというのか不安になって仕方なかった私は、そろそろ堪忍袋の尾が切れそうだった。
「いい加減にしなさい!私がいつでもあなたを必要としているのではないのです!いい加減私に依存するのはやめたほうがいいわ!」
私の突然の大声に、幸貞は目を見開いて驚いている。そして、彼にここまできつく言ったのは今回が初めてだから、余計にショックも大きいのだろう。

私は彼を置き去りにして部屋を離れ、少しだけ早足で自室へと向かった。


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