複雑・ファジー小説

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僕らの文化祭
日時: 2016/12/07 07:38
名前: あぽろ (ID: NVWDGLkv)

「ふわ〜あ…」

窓から差し込む暖かい光が俺の頭にあたる。
少し硬く、冷たい「何か」に頭の体重を乗せて、眼をゆっくり閉じた。

「カンッ」

何かが固い物にぶつかる音がした。カーテンは閉められ、日差しが消える。
体温が下がったように、眠気が飛んだ。

「松坂…」
「ふわ〜…おはようございます?」

「…え」

ふと我に返る。周りを見渡せば、自分を見てニヤニヤしている。
つまり、教室で寝ていた。

「おはようございます?ノートはどうした?」
「え…あ、ノートっすね。はい。書きます。すぃやせん…」

我に返り、言い訳も何もできない俺は、いい加減に反応して、注目されないようにその場をしのいだ。

顔がどんどん赤くなっていくのがわかった。
友人ににやけた目で睨まれ、俺は笑っていかにも「やってしまった」感を出した。

さっきまで窓側の席に座れる幸福感に浸っていたのに、今では姿勢を少し悪くするだけで怒られてしまうんじゃないかと警戒する。

さっきみたいに無言の間を作られてしまったら反応に困る。どうせなら笑いを取ってくれよ。

そんな愚痴を心の中でつぶやいて、授業の終わりを告げるチャイムを待った


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「うっ…」

今日は寒い…目を少し開けて、布団を探す。
手で布団をつかんだ後に、自分の背中に不器用にかけた。

ふとスマホを時間を見た。
自分の好きなキャラの上には、『8時15分』と大きく表示されている。

…寝ぼけているのかな。
そんなありもしないことを願う。

目を擦って、もう一度スマホを見た。

8時15分ではなく、1分経って8時16分になっている

「はあああああああ!?」

近くしたという絶望感と、なぜ起きなかったのだと自分に苛立つ。

この際ズボンの向きが間違っていてもいい。いつもなら5分かかる髪のセットも、今日は2分で終わらせ、制服は1分で着終わった。

『ガチャ』

そうドアを思いっきり開けて、靴のかかとを踏みながら出て行った。

そして、宿題もしていなかった俺という自分を恨んだ

Re: 僕らの文化祭 ( No.1 )
日時: 2016/12/07 21:31
名前: あぽろ (ID: WcBiLP0T)

『パン、パン、』

先生がそう二回手拍子をして、少し低い声で言った。

「今日は文化祭で何をやるかの発表だ。この教室の出し物は、『白雪姫』だ。

白雪姫、誰もが知っている童話の一つ。
姫に嫉妬し、毒リンゴを食べさせ、それを王子がキスして助ける。

このストーリーをする上で、王子様の役はどうするだとか、本当にキスしてしまったらどうするだとか、そんなことでざわついていた。

俺はあまり目立ちたくないので、木のコスプレでもしていたい派。
なんとも存在感を放つ、あの木。

顔出しパネルのような木に、自分が入る。
そこで変顔をこっそりしている奴がいたような気がする。

「はい、静かに!そして役決めだ。主役となる姫、やりたい奴。

そんな目立ちたがりの奴がこのクラスにいた覚えがない。そう思って後ろに振り返った。

そんな中、一人長い手を挙げていた、『後藤 珠理奈』
スタイルも良く、顔も大人っぽいが、極度のぶりっ子。

そのことから、勘違い野郎だとか、挙句女子からの好感度も低い。

こんな奴を助けようと出る奴はいないはずだ…たった「一人」を除いて。



「はい!」

潔く手を挙げた男、『松井 高性』。唯一珠理奈を愛する第二の勘違い野郎。

「うわあ…出たよ松ぼっくり。」

クラスの男子…いや女子までもがざわつき始める。
考えてみよう。クラスで嫌われ者として定着している二人が主役の劇を。

見ている親には違和感がないだろうが、こっちは違和感どころか嫌気がさす。

こりゃ駄目だ…クラスの誰もがそう小声で呟いた。


文化祭当日。

体育館では大きな声が響いていた。

「おお、鏡よ鏡、この世で1番美しいものは誰?」
「それはもちろん女王様です。」

「そうだよなぁ!!おっほほほほ!!」

自分に自惚れ、最終的にはすべての行為が水の泡になる。
そう分かっている役をするのには、かなりの覚悟が必要だ。

無理やり女王役に抜擢された『清家 遥』に同情した。
それにしても、なかなか演技がうまい。

気持ちいいぐらいの声量と、自然に感情を入れる。
これはなかなか難しいものだと俺は思う。

ちなみに俺は、役にも何にも抜擢されず、店を回るだけ。

少しラッキーだったような、寂しいような。

友人と一緒に射的をしながらそんな気持ちを紛らわせた。


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