複雑・ファジー小説

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ロッカールームオバケ
日時: 2016/12/22 12:06
名前: ネルシャツクン (ID: 1Nlxg6y3)

僕が1人で漫画喫茶を出ようとした時に、店員から声をかけられた。
「もしかして、誠?」
振り向くと、その店員は、どこかで見覚えのある顔だった。記憶が脳内で遡る感覚と共に、その凛とした雰囲気から、すぐに中学時代の同級生、柊マリカだと分かった。
「あっ、マリカ?」
「うん、そうだよ、久しぶり!」
マリカは、大人びていた。中学生だったあのころと比べ、髪も伸び、化粧もしていて、綺麗になっていた。僕は少しその佇まいに驚いたが、別に同級生というだけの関係性だったので、滑らかに会話を成立させようと緊張をしてないふうにして見せた。
「本当、久しぶりだね、ああ、ここでバイトしてるんだ」
「うん、ここにはよく来るの?私、週末だけしか来ないんだけど」
「ああ、うん、まあ、たまに来る程度かな。そうか、頑張ってね、じゃあ」
マリカは笑顔で手を振り、僕も手を振り返すと、店内を後にした。
柊マリカ。懐かしい。2年ぶりの再会だったが、あんなに変わるものなんだろうか、女子というのは。僕はスマホをジーンズのポケットから取り出すと、SNSのページに飛び、書き込んだ。
『同級生と2年ぶりの再会。元々綺麗だったのに、段違いに綺麗になっていた・・・半端ない』





Re: ロッカールームオバケ ( No.1 )
日時: 2016/12/22 12:29
名前: ネルシャツクン (ID: 1Nlxg6y3)

僕は、呪術部に所属していたw
呪術部と聞いて、皆は思うところがあるだろう。待てよ、と。何だその行くところのない人たちの集まりのようなふざけた名前の部活は、とさじを投げたくなるだろうが、至って本気なのだ。本気の部活、呪術部。
高1の春、中学生のときのように、毎日フラフラしていた僕に突如舞い込んだ呪術部への勧誘。入ってみたら、これがけっこうはまったのだ。呪術に関して知識・関心がなくても、のめり込めるし、好きになれる。それが呪術だった。
柊マリカとの再会も、翌日の呪術部の部室にたどり着くころには、脳の片隅にすら無かった。それほどに、呪術というのは今の僕にとって最先端・マイブーム。
「ヘイ、メン。ワッツアップ?」
既に部長の山田先輩がそこにいた。イスに座り、カップラーメンを食べている様子だ。
「今日は3年生だけのテストのため、早く授業終わっちまったのSA。NASA。すわれよ誠、イスはあるかRA。RA−MEN。」
このように、面倒くさいクセのある先輩だが、呪術に関しては常人よりも秀でているため、部員の皆は彼を心から尊敬している。
「今日覚える魔法は何ですか?」
「よくぞ聞いてくれTA!TA−JIMAHARU。先週は水の中でも息をせずに1時間耐えられる魔法を覚えただろ?それの応用編、『炎の中でも火傷1つせずに1時間耐えられる魔法』を体得するための有意義な部活にしたいと考えてIRU、IRUMALI。」


部活も無事終わり、僕はコンビニに寄った。パンを1つ買うと、すぐ人込みで溢れる店を出た。外は冷ややかな風が5月の温度をさらに下げていた。空は曇っているため、星1つ見えなかった。

Re: ロッカールームオバケ ( No.2 )
日時: 2016/12/22 12:53
名前: ネルシャツクン (ID: 1Nlxg6y3)

家に帰りテレビを何気なく観ていると、ニュース速報が入った。テロップと共に、バラエティ番組が特別報道番組と銘打った番組に切り替わった。テロップには、こう書かれていた。
「北アメリカ大陸に巨大隕石衝突、北アメリカ滅亡」
僕は、目をしばたかせた。うん?アメリカ滅亡?
番組のアナウンサーが、慌てふためいた様子で、手元に届く原稿らしきものを手に、次々と情報を読み上げる。
「えー、巨大隕石が19時30分ごろ、北アメリカに衝突、・・・北アメリカ全土が火の海に包まれていると・・・えー、今入って来た情報ですが、謎の未確認生物が、数百体・・・数え切れないほどの未確認生物が南アメリカ方向に移動している模様です・・・爬虫類のような、形態をしていて・・・」
何だこれは?ふざけたドラマか?


時が進むと共に、事態の深刻さが増してきた。
まず、北アメリカは隕石衝突により滅亡した。そして、その隕石から未確認生物が大量に解き放たれ、南アメリカへ移動を始めた。その生物は水陸両用らしく、その何千体という生物たちはアジア、ヨーロッパ、アフリカに移動をした。その生物たちは人を襲った。人と同じ180センチほどの身長から繰り出されるひっかき攻撃で、もう何億人死んだだろうか。分からない。死傷者多数。いつしかテレビ放映も終わりを迎えた。テレビ局も襲われたのだろう。通称「トカゲ星人」は、地球侵略を虎視眈々と開始したのだ。

Re: ロッカールームオバケ ( No.3 )
日時: 2016/12/22 13:12
名前: ネルシャツクン (ID: 1Nlxg6y3)

爬虫類は火が苦手のはず。
そんな安易な発想だったが、僕はコンビニでライターを大人買いし、電車で30分のところにある山に登った。山といっても、富士山の半分、森林もほぼ無い、盆地のようなところだが。しかし、たき火をするにはこの場所がもってこいだ。小さい木がたくさんあるため、簡単に木も折れるし、薪になる。早速、リュックに入っている千個はあるライターの1本を取り出すと、集めた木々に火をつけ、自分の周囲を囲った。
まさか、宇宙人に侵略される日が来ようとはな。自分が生きている間にこんな人類史上1度しかないであろう稀有な経験をしようとは、思ってもみなかった。
コンビニも、電車も、ありえない人であふれていたが、おそらくあの中の人はほぼ死ぬだろう。間違いない。トカゲの姿をした宇宙人を前に、大半の人がどう対処すればいいか見当もつかないだろう。テレビもラジオも放送しなくなり、さらには電波塔も破壊され、携帯も使えなくなった今、人類はどうすることもできないのだ。僕だけだ、対処できているのは・・・おそらく。
何故なら、呪術部だからだ。
皆笑っていたさ。最初は。高1の4月の部活紹介でも、山田先輩が先導を切り5人のメンバーを紹介しているときだって、呪術部の部室の隣にある将棋部の奴等とすれ違ったときも、野球部なんて休み時間に呪術ごっこなど始める始末。笑われた日々。笑われた青春。だが、そのみんなが笑った呪術を、甘く見ていたようだな。ついに呪術が日本、いや世界を救うときがやってきたのだ。笑ったやつはとっくにトカゲ星人に殺されたに違いない。御愁傷さま。
そろそろ呪術部メンバーがこの山に集う。食料隊、衣服隊、住居隊に分かれている。それぞれの役割をになう呪術部が集うときがくる。そのとき、トカゲ星人VS人類という人間対人間の戦争をはるかに上回る大戦の最中、僕たちは英雄になる第一歩として彼らに宣戦布告をするのだ。


呪術部こそ、人類の希望なのだ。


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